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俳優の社会史
―メディア産業における俳優の意味―
A Social History of Actor
高橋広紀(Takahashi Hiroki)
(指導教員:関谷直也)
2015/9/30
問題意識
• 「俳優が、テレビドラマ、映画、舞台と様々なメ
ディアを行き来し活躍するようになったのはい
つから、始まったのだろうか」という疑問とテレ
ビドラマが、映画化されて大ヒットするケース
が多い昨今の風潮から、テレビ局の攻勢を
キーワードに俳優の社会史を考察したいと思
う。
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問題意識~2008年の映画ヒット作品~
『花より男子 ファイナル』
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『容疑者Xの献身』
『相棒-劇場版-』
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本論の構成~図~
第1章
テレビ普及と最初のテ
レビドラマ
第2章
映画俳優の社会史と
ドラマ、舞台の行き来
第3章
現在のテレビ局製作の
映画、舞台
結論
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第1章 1955年以降の映画入場者数と白黒テレビ、カラーテレビ普
及率の推移
1,200,000
入場者数
白黒tv普及率
カラーtv普及率
1,127452千人
1,000,000
160
140
120
800,000
100
87.8%
80
600,000
60
400,000
40
200,000
0
1955年
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20
15.9%
1960年
0
1965年
1970年
1975年
1980年
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第1章 舞台俳優のテレビドラマ貢献
• 1940年、日本最初のテレビドラマ『夕餉前』が、
放送される。生放送であり、撮影用ビデオ
テープは高価で貴重であった時代のため、
カットをかけることができない演劇がそのまま
撮影される手法であった。幕が上がれば、や
り直しがきかないことを知っている「新協劇
団」所属の劇団員(舞台役者)が演じた。
• 『夕餉前』(NHK)
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第1章 「大河ドラマ」スタート
• 1963年、テレビドラマの時代劇「大河ドラマ」
の放送がスタートする。「五社協定」の規定が
ある俳優たちはテレビドラマに出演することは、
できない。代わって、歌舞伎や新劇出身の俳
優の緒形拳、仲代達矢らが主演として起用さ
れていった。
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第1章 「五社協定」の締結
• 1961年、映画業界が、テレビ産業の発展を
恐れ、映画会社所属俳優のテレビ出演を制
限する締結「五社協定」を結ぶ。他社の映画
会社にも、自社の専属俳優を貸し出さないも
のである。
• 白黒テレビの普及率は、62.5%になっていた。
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第1章 舞台出身俳優の「大河ドラマ」主演
• 代わって、歌舞伎や新劇出身の俳優の緒形拳、仲代達矢らが主演として
起用されていった。
・1965年『太閤記』主演の緒方拳
・1972年『新平家物語』主演の仲代達矢
・2003年『武蔵』主演の市川海老蔵
・2007年『風林火山』主演の内野聖陽
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第2章 舞台俳優の映画貢献
• 1909年から、映画界で
は、舞台出身の尾上松
之助が活躍する。日本
で演劇といえば当時、
まず歌舞伎であったか
ら、歌舞伎をそのまま
フィルムにおさめようと
考え出演に、起用され
た。
尾上松乃助
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第2章 娯楽とは映画の時代
• 1955年、「映画黄金時
代」が始まる。大手6社
(東宝、新東宝、東映、
松竹、大映、日活)が、
週に1本ずつの割合で
作品を公開する「プログ
ラムピクチャー」が始ま
る。
•
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映画黄金期に活躍した原節子、石原裕次郎
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第2章 1958年
• 映画の年間観客数が、
史上最高の11億2745
万2000人を記録する。
• 白黒テレビ普及率は、
まだ15.9%である。
• 名門の歌舞伎俳優の
市川雷蔵など、多く映
画界にやってきた。現
代劇を演じる。
• 『炎上』(1958)の市川雷蔵
・中村獅童
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・市川染五郎
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第2章 1963年
• 仲代達矢ら新劇俳優た
ちは、テレビの普及もあ
いまって、人々の娯楽
が映画だけではなくな
り、舞台と映画とテレビ
を自由に選んで出演す
るのが普通になってき (舞台出身で昨今ドラマ、映画で活躍する堤真一、天海祐希)
た。
• 白黒テレビの普及率は、
88.7%である。
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第2章 「五社協定」の崩壊
• 1968年、東宝所属の三船敏郎と日活所属の石原
裕次郎が、共演した『黒部の太陽』が公開され、当
時の日本映画史上最高の観客動員数を記録する。
「五社協定」の権威を揺らがせる。
• 映画の年間入場者数は、3億1339万8千人まで減
少する。白黒テレビ普及率は、96.4%である。
• 『黒部の太陽』
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第3章 テレビ局製作の映画へ
• 1998年、テレビドラマが映画化された『踊る大
捜査線THE MOVIE』が、大ヒットし、テレビ局
系映画が、主流になる。様々な配給会社の作
品を上映する「シネマコンプレックス」が主流
になり、大手映画会社の映画館支配力が弱
まる。映画配給会社もテレビ局とともに、映画
を製作し始める。
• 『踊る大捜査線』
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テレビドラマの映画化作品と映画が後にテレビドラマ化された作品
配給・興収
1998
50.0
踊る大捜査線
織田裕二
ドラマ→映画
1999
21.0
リング2
中谷美紀(映画)
柳葉敏郎(ドラマ)
映画、ドラマが同
時公開。
2000
12.5
ケイゾク
中谷美紀
ドラマ→映画
2002
12.9
トリック
仲間由紀恵
ドラマ→映画
2003
173.5
踊る大捜査線2
織田裕二
ドラマ→映画
2004
85.0
世界の中心で、愛をさけぶ 大沢たかお(映画)
山田孝之(ドラマ)
映画→ドラマ
2005
37.0
電車男
山田孝之(映画)
伊東美咲(ドラマ)
映画→ドラマ
2006
71.0
LIMIT OF LOVE海猿
伊藤英明
映画→ドラマ→
映画
2007
22.0
大奥
菅野美穂ら(ドラマ) ドラマ→映画
仲間由紀恵(映画)
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作品名
主演
メディア化の順序
公開
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第3章 「映画俳優」もテレビドラマ出演
・永瀬正敏主演
『私立探偵濱マイク』(2003)
映画原作
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・田中麗奈出演
『猟奇的な彼女』(2008)
映画原作
・加瀬亮出演
『ありふれた奇跡』(2009)
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第3章 テレビ局が舞台製作
• またテレビ局は舞台の製作をも担い始めた。
フジテレビは、『踊る大捜査線』、『大奥』など
のテレビドラマを映画化、舞台化させている。
『踊る大捜査線』、『大奥』は、「スリーアミーゴ
ス」と呼ばれる三人組が、それぞれドラマ、映
画、舞台版と同じ役で出演し、それぞれの連
動力を高めている。
• 舞台版『大奥』
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結論
• ドラマ、映画ともに最初は、舞台俳優が出演
した。
• ドラマ、舞台への活動が許されなかったのは、
「五社協定」の映画会社専属俳優のみである。
• 1960年代の新劇の舞台俳優から、ドラマ、映
画、舞台へと活動を行き来できる背景が、整
い始めた。
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結論
• 昨今、「シネマコンプレックス」が普及し、映画配給
会社もヒットを見込むことのできるテレビドラマ系作
品の映画作品をテレビ局とともに、製作し始めて
いった。
• その結果、映画、舞台製作の裏には最も資金力を
持つテレビ局の存在があるために、テレビドラマ化、
映画化、舞台化される作品を通し、特定のメディア
だけを専門に、演じる俳優の垣根はなくなっていき、
縦横無尽に俳優の活動は行き来しやすくなっている。
それは、3つのメディアが、過去のように敵同士では
なく協力関係になったからこそ、成し得ているのであ
る。
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結論~今後の展開~
• 映画公開と同時にテレ
ビドラマ版放送
映画『誰も守ってくれない』
ドラマ『誰も守れない』(フジテレビ)
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映画『容疑者Xの献身』
ドラマ『ガリレオ~エピソード0~』
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結論~今後の展開~
• ネットムービーの普及
・「U-CAN」ネットムービー
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•
『ラストフレンズ』、
『特命係長 只野仁』のスピンオフドラマ
・2004年公開の映画『花とアリス』は、
キットカットのCMとコラボして、
ネットムービーを先行上映してから、
映画公開した。
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