スライド 1 - 労災疾病等研究普及サイト

飲酒(アルコール)に関する
保健指導
中部労災病院
勤労者予防医療センター、産業看護師
茂木 順子
アルコール飲料の特性について
1. 致酔性:飲酒は、意識状態の変容を引き起こす⇒交通
事故の原因・急性アルコール中毒は死亡の原因に。
2. 慢性影響による臓器障害:肝疾患、脳卒中、癌等多く
の疾患がアルコールと関連。
3. 依存症:長期にわたる多量飲酒は、アルコールの依存
を形成し、精神的・身体的な健康を損い社会への適応
力を低下させる。
4. 未成年者への影響・妊婦を通じた胎児の影響が大きい。
※ アルコールに起因する疾病による社会的費用の損失は
大きい。
アルコール飲用に関する国の基本的
方針について
1. 多量飲酒問題の早期発見と適切な対応
医療サービス、保健サービス、地域、職場、学校など多くの場で
アルコール関連問題を早期に発見し、早期に介入することが必要
である。
2. 未成年者の飲酒防止
飲酒自身の健康問題だけでなく、将来にわたっての影響が大きい。
防止の為には地域、学校などにおけるアルコール関連問題に関す
る環境整備など多くの働きがけを行なうことが必要である。
3. アルコールと健康について知識の普及
平均して2日に日本酒に換算して1合(純アルコールで約20g)程度
飲酒する者が死亡率が最も低いとする結果が報告されている。諸
外国でも近似した研究結果がでている。これらのアルコールと健康
について正確な知識の普及が必要である。
大量飲酒とアルコール依存症に
ついて
現在、日本のアルコール大量飲酒者(純アルコール換算、
1日あたり約60g以上=日本酒3合程度)の数は、約200
万人をこえると推定される。これは飲酒人口の約3%にあ
たる。
アルコールの問題が顕在化するのは、飲み始めてから
ある程度の年月が経過してからである。
お酒は、「依存症」のある物質“アルコール”を含む飲み
物である。
「依存症」とは、その物質が人に再び物質体験をしたい
という欲求を脳の中に起こさせる性質を言う。
お酒がきれた時の依存者の症状
について
飲酒状態の診断法について
人の飲酒パターンは4つに分類
「機会飲酒」や適量の「習慣性飲酒」
は正常な飲酒状態と言えますが
1回に飲む量が少量であっても、1日
に何回も飲むようになると病的飲酒
パターンであり「依存症」とされる。
連続飲酒は、アルコール依存症の
終末状態である。
多酒飲酒の影響について
1. 肝機能障害:体内にはいったお酒の90%は肝臓で
分解されるため最もアルコールの影響をうけるのは
肝臓である。
多量飲酒の影響について
2. 肝臓以外への影響
消化器 :高濃度のアルコールは、食道や胃の
粘膜を障害し、慢性胃炎・消化性潰瘍・胃がん
の原因になる。
循環器 :少量のアルコールでは動脈硬化の予
防効果を期待できるが、大量飲酒は冠動脈硬
化を促進し、狭心症・心筋梗塞の成因になる。
生殖器 :男性ホルモンの産生をおさえる。女性
でも性機能が阻害される。
アルコールの処理にかかる時間
について
〔血中からアルコールが消失するのにかかる時間〕
(時間)
○お酒の1単位 ビール 大びん 1本
同量のアルコールを飲んでも、体重の重い人、つまり血液が
多い人ほど血中アルコール濃度は低くなる。
また、アルコール処理能力は1時間に純アルコール9 ~12ml
とされている。
性別では女性の方がアルコール分解能力が低い。
適量のアルコール飲用習慣に冠動脈
疾患予防効果がある
アルコール消費量と総死亡率
の間にはJ字型の関係が認め
られている。
総死亡率が最も低いのは、
「毎日適量の飲酒」を続けた者
であり、(①)
「全く飲まない者」「時折飲むだ
飲酒量が適量を過ぎると、総死亡率は飲酒量の増加
と共に急激に上昇する(②⇒③)
ストレスの緩和とお酒について
適量の飲酒は心身の筋張を和らげ、ストレス発
散に効果的と言われる
但し、お酒だけに頼ってストレスを発散しようとす
ると身体に障害が生じたり、アルコール依存症に
なることもあるので注意が必要である。
※ 飲酒による心理的な利点を多くあげる人は
依存への危険が高い。
(飲酒による利点:ストレスが減る、気分が高
揚する、社会性が増す、リラックスするなど)
飲酒量、やや多め・多量飲酒の人へ
のアドバイス
1.飲酒量を減らしている ➪ 減らそうとする気もち・行動が大切、
節度ある飲酒量を示すので参考に
して下さい。
2.近いうちに減らそうと思っている ➪ アルコールを減らそうと
意識した時がチャンス、期日やきっ
かけを決めましょう。
3.減らそうと思っているが減らせない ➪ どんな時に飲んでいる
のか、飲みたくなるのか自分自身で
ふり返りましょう。周囲へ協力も求め
てみましょう。
4.減らそうと思わない ➪ アルコールによる身心への害、アルコ
ールを減らすことによる利点を説明
しましょう。
アルコールを減らす方法~改善する
行動技法の例
1.目標設定:・ 1回に飲む量の上限を決める(通常と機会飲酒)
・ 飲まない曜日・日を決める
2.社会的技術訓練 ・ ウーロン茶、薄い水割りを手にしておく
・ 人との会話に集中する
・ 医者から止められていると断わる
3.刺激統制法 ・ 飲みたくなる状況を避ける
・ いつもの飲酒パターンをかえてみる
4.飲酒スタイルの修正 ・ 食事をしながら飲む・ゆっくり飲む
・ 薄い酒にする
アルコール飲量の適量・アルコール量(g)
とエネルギー量(kcal)
適正飲酒10ケ条
① 笑いながら共に、楽しく飲もう ~ 適量のお酒はストレス解消に役立つ。
② 自分のペースでゆっくりと ~ 他人に合わせずマイペースで。ゆっくり飲み、食べ、
喋り、雰囲気を楽しむ。
③ 食べながら飲む習慣を ~ 胃腸障害を予防する。
④ 自分の適量にとどめる ~ 性差、個人差、体調により違う。
⑤ 週に2日は休刊日を ~ 肝臓でアルコールを分解・解毒するのに2~ 3時間はかか
る。毎日のアルコールは肝臓に大きな負担。
⑥ 人に酒の無理強いをしない ~ 人にはそれぞれ合った酒量とペースがある。
⑦ 薬と一緒に飲まない ~ 非常に危険。薬の作用が強まることがある。
⑧ 強いアルコール飲料は薄めて ~ 喉や胃腸の粘膜の強い刺激をさけよう。
⑨ 遅くても12時までに切りあげよう ~ 酒量を増やし、翌日に体内にアルコールを残
してしまう。
⑩ 肝臓などの定期検査を。