第1章 コンピュータの歴史と構成 コンピュータ(computer)は人間の命令(プログラム)に従って, 複雑な計算やいろいろなデータ処理ができる機械(道具)であ る.主な特徴は次の3点である. ●高速計算:計算は極めて速い.1秒間に数百億以上の計 算ができる. ●正確計算:人間の命令に従って,間違えることなく正しく 計算できる. ●大容量記憶:文字や数字や音声や画像などを大量に記 憶できる. 1 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 1.1 コンピュータの発展 1946年に世界最初の電子計算 機(コンピュータ),ENIAC がアメ リカで誕生。 真空管:17,468本, 抵抗器:70,000個,コンデンサ: 10,000個等で開発された.消費 電力:150kW,体積:幅24m×奥 行0.9m×高さ2.5m,重量:30トン. 演算能力は,10桁の数の演算が でき,加算は毎秒5000回,乗算 は毎秒14回,20個の変数と300 個の定数が取り扱える. 2 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●コンピュータの4世代 第1世代は1951年から1957年 頃で,真空管が回路の論理素子と して用いられた時代である.プログ ラム言語は機械語である. 第2世代は,1958年から1963 年頃で,トランジスタやダイオー ダが論理素子として用いられた 時代である.プログラム言語はア センブリ言語である. 3 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●コンピュータの4世代 第3世代は,1964年から1979年頃で, 半導体集積技術の驚異的な進歩に よって出現したIC(集積回路)とLSI(大 規模集積回路)が採用された.BASIC言 語,FORTRAN言語などが使われる. 第4世代は,1980年代から現在に至るまで,ICはさらに 進歩し,VLSI(超大規模集積回路)の時代になった.C言 語,Pascal言語などの高級言語が主に使われる. なお,1992年から第5世代のコンピュータを目指して 研究が続けられている. 4 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 1.2 コンピュータの構成(五大装置) 中央処理装置 CPU ■中央処理装置(CPU):コ ンピュータの「脳」にあた り,制御装置と演算装置 からなっている.プロセッ サともいう. ■主記憶装置:プログラム とデータを一時的に記憶 する装置である.メインメ モリとも呼ばれる. 演算装置 制御装置 入力装置 主記憶装置 出力装置 補助記憶装置 データの流れ: 制御信号の流れ: 5 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●五大装置のデータと制御信号の流れ 中央処理装置 CPU ■入力装置:データ,プログラ ムと命令は入力装置により入 力される.キーボード,マウス などは入力装置である. ■出力装置:処理結果は出力 装置により出力される.プリン タ,ディスプレイなどは代表的 な装置である. 演算装置 制御装置 入力装置 主記憶装置 出力装置 補助記憶装置 ■補助記憶装置:プログラム, データなどを保存する装置で ある.ハードディスク,CDROMなどが挙げられる. データの流れ: 制御信号の流れ: 6 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 1.3 コンピュータの種類 ■現在のコンピュータのアーキテクチャ(基本構造)はほとん どノイマン型である.ノイマン型コンピュータの特徴:プログ ラム(命令とデータ)を主記憶装置(メモリ)に読み込み,順 に1つずつ解読して実行していくことである. ■市販のコンピュータは次の5種類に分かられている。 ●スーパーコンピュータ(スパコン) ●汎用コンピュータ(メインフレーム) ●ワークステーション ●パーソナルコンピュータ(パソコン) ●マイクロコンピュータ(マイコン) 7 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●スーパーコンピュータ 大規模な科学技術計算に用いられる超高性 能コンピュータである.スパコンともいう。科学 技術分野で大量の繰り返し演算を高速化する ため,複数のCPUによる並列処理を行なう方 式が主流である. Fujitsuの「PRIMEPOWER HPC2500」 は,世 界最高の理論ピーク性能(1秒間に約85兆回 の演算能力)を誇り,最大16,384個のCPU(128 CPU×128ノード)まで拡張できる大規模並列 型スーパーコンピュータである. 8 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●汎用コンピュータ 汎用コンピュータとは,目的と用途を選ばず, プログラムの入れ替えにより,事務計算,科学 計算のどちらにも利用できる汎用性のあるコン ピュータのことである.集中処理,また,ホスト として使われる.メインフレームとも呼ばれ,本 体のサイズに応じて小型・中型・大型計算機に 分けられる. 企業の基幹業務システム,銀行など金融機 関の管理システム,交通機関の座席予約シス テムなどに使用されている 9 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●ワークステーション ワークステーション(WSとも略される)は,パソコンとほぼ同 程度の規模のハードウェアをもち,科学技術計算やCADやグ ラフィックデザインなどの処理能力はパソコンより高性能なコ ンピュータである.ネットワーク機能をもち,ネットワークサー バとして使用される. 1990年代前半までは,マルチウィン ドウやアイコンなどによるGUI,ネット ワーク機能の標準装備などがパソコ ンと比べた際の特徴であった.今,パ ソコンに代用されつつある. 10 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●パーソナルコンピュータ パーソナルコンピュータは一般にパソコンと呼び, PCとも略される.もとは個人用のコンピュータを指 していたが,現在ではPC/AT互換機,Windows系 の意味で使われることが多い. 現在一般的には,キーボード,マウス,ディスプ レイ,プリンタなどと組み合わせて利用される.机 上等に設置して移動させないで使用する固定型と 持ち運んで使用する可搬型に分ける.固定型には 「デスクトップ型」,「タワー型」があり,可搬型には, 「ノート型」などがある. デスクトップ型 タワー型 ノート型 11 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●マイクロコンピュータ マイクロコンピュータをマイコンともいう.超小型のコンピュー タであると考えても良い.厳密に分類すれば,次のようになる. ■マイクロプロセッサと呼ばれ,パソコンの心臓部(最低限 CPU部分)をひとつの大規模集積回路に集積したものである. ■ワンチップマイコンと呼ばれ,コンピュータに必要な機能を 1枚のチップ(IC)に統合して,コンピュータとしての機能を果す. 電気炊飯器,洗濯機など,マイコンが搭載されている.その 他に,エレベーター,自動車の燃料供給制御,携帯電話等に も使われている. 12 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 ●研究中のコンピュータ 本書はノイマン型コンピュータだけ扱っているが,ノイマ ン型アーキテクチャのほかに,いろいろなコンピュータが 第5世代のコンピュータとして研究されている. 実用に向けて進んでいるのは: ■量子コンピュータ ■ニューロンコンピュータ ■ DNAコンピュータ などが挙げられる. 13 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 なぜ,コンピュータは2進数を使っているのか? ● 2進数に対する2つの状態を表す素子が電気・磁気上で 実現しやすい.例えば,電源OFFは“0” 電源ONは“1” に対 応できる.要するに,2進数のコンピュータは実現しやすい. ● 2進数は10進数より多くの情報量をもつ.例えば,10進数 では,両手で表せる最大異なる情報は11である(0,1,2, …,10しか表現できない).2進数なら,最大1024と表せる. (教科書P.13を参照) ● コンピュータの基礎理論はブール代数である.ブール代数 の変数は2値で,その値は真(1に対応)または偽(0に対 応)の2種類しかない. 14 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 コンピュータによく使う単位 10の指数 記号 名称 呼び方 1012 109 106 T G M Tera Giga Mega テラ ギガ メガ 103 10-3 10-6 K m μ Kilo milli micro キロ ミリ マイクロ 10-9 10-12 n p nano pico ナノ ピコ 15 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 第1章のまとめ 1.コンピュータの発展と歴史 ●コンピュータは電子計算機を指す.ENIACは世界初の コンピュータである. ●使用している素子により,4世代に分けられている. 2.コンピュータの特徴 ●高速性;●正確性;●大容量記憶性 16 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 第1章のまとめ 3.コンピュータは五大装置 ●中央処理装置(CPU):コンピュータ制御とデータ処理 ●主記憶装置:CPUとデータやりとりする場所 ●入力装置:データの入力 ●出力装置:処理した結果の出力 ●補助記憶装置:プログラムやデータの保存 17 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 第1章のまとめ 4.ノイマン型アーキテクチャ ●現在のコンピュータはノイマン型である. ●ノイマン型の特徴: (1) プログラム(コンピュータに対する命令の集合)を記憶 装置に入力して保存しておく. (2) プログラムをメモリに読み出し,命令を1つずつ順次解 読して実行する. (3) 2進数が使われる 18 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展 第1章のまとめ 完 5.コンピュータの種類 ●スーパーコンピュータ ●汎用コンピュータ(メインフレーム) ●ワークステーション ●パソコン ●マイコン ●その他のコンピュータ 19 コンピュータとネットワーク概論 第1章 コンピュータの歴史と発展
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