応援出動を要した交通事故 紋別地区消防組合消防署興部支署 大井雅博 はじめに 多数傷者発生事案では初期対応の良否がその 後の活動に大きな影響を与える。 初動の重要性と現場でのトリアージの難しさ を再認識させられた事例を紹介する。 事例 • 覚 知 平成14年○月○日 13時39分 • 通報内容 「○○牧場付近の国道上で交通事故。詳細は 不 明。」 その後、○○牧場に電話を掛け情報を収集。「乗 用車同士の正面衝突事故」との情報を得る。 時間経過 13:40 救急車出動 13:49 予備救急車出動 タンク車出動 13:50 ポンプ車出動 14:28 紋別救急1 応援出動 14:38 ポンプ車と紋別救急1が ドッキング 14:38 ドクターカー出動 最初に病院に到着した救急車 に、医師が同乗し出動。 4名乗車 13:46 現着 計3名 13:56 現着 2名乗車 13:53 現着 14:46 紋別救急1とドクター カーがドッキング(医師乗り換 え) 状況評価 • 感染防御〜手袋、ガウン着用 • 受傷機転〜乗用車同士の正面衝突事故 • 安全確保〜現場は国道上。交通は遮断されて おらず。ガソリン臭はなし。警察 は未到着。 エンジンキーを抜き、 バッテリーを遮断。 • 患者の数〜3名(ステーションワゴンの運転 席に1名、普通乗用車の運転席及 び助手 び助手席に各1名) • 応援要請〜予備救急車、タンク車、ポンプ車 計5名 現場車両位置図 初期評価 • ステーションワゴンの乗員(女)について 運転席側ドアの壊れた窓越しに頭頸部を保持、 初期評価を実施。意識レベル3桁、顔面外傷、呼 吸浅く、脈は頸動脈で触知可。頭頸部の保持を 交代後リザーバー付マスクを取り出し酸素を接続。 救出に時間が掛かると判断し、途中で酸素ボン ベが空になることを恐れ6ℓ/分で開始した。 ※ 車外救出不能 ※ 隊員2 名で対応 ※ タンク車現着から29分後に救出完了 初期評価 • 普通乗用車の乗員(男)について 助手席に乗車。意識レベル1桁、気道開通よし、 呼吸苦あり。脈拍は速い。隊長バッグに入ってい た酸素ボンベは先の傷病者に使用していたため、 この傷病者に対しては現場での酸素投与ができ ず。活動性の出血はなし。 ※ 救助の必要なしと判断。 ※ エア バックは運転席、助手席とも作動済 初期評価 • 普通乗用車の乗員(女)について 運転席に乗車。意識清明、呼吸正常、脈拍は橈 骨動脈で触知可。 ※ 運転席側ドアが開かず(運転席以外解放可) 救出に多少時間が掛かりそうな感じ。 ※ シー トベルト装着、エアバッグ作動。 搬送の優先順位は? トリアージ • START方式とは Simple Triage and Rapid Treatmentの略。多数の 傷病者を少数の救助者が短時間にトリアージす る方法として高い評価を得ている。 ①呼吸 ②循環 ③意識の3段階で評価する。 (歩 行が可能か否かではじめに分類する方法もある) 転帰 • 救出に時間を要した女性 四肢に多発骨折、脳外傷(-)、肺外傷(-)、腹部臓器損傷 (-)。多発骨折に併発したDIC→全身の出血傾向→出血性 ショック→MOF(多臓器不全)。搬入翌々日に死亡。 • 呼吸苦を訴えた男性 外傷性肝裂創、外傷性左血気胸。トラカール挿入し治療を し退院。 • バイタルが安定していた女性 左膝蓋骨開放骨折。他にたいした外傷なく退院。 結論 • 予想し得る最悪の事態に対応可能な初動体制 を取るべきである。 • 救出に時間を要すると判断した場合は、現場 への医師要請を速やかに行うべきである。 START方式トリアージを覚えておこう!
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