経営情報システムの変遷

経営情報システムの変遷
経営情報システムの役割期待――
歴史的変遷を踏まえて
経営情報システムへの役割期待
自動化(automate)と情報化(informate)
 『ビジネスチェンジ』,p.48
企業組織 : オープンシステム
意思決定のネットワーク
情報は必須の経営資源
情報ニーズ : 適切なときに適切なヒトに
適切な情報を
情報ニーズを満たすためのしくみ
:情報処理パラダイム的発想
ビジネスにおける情報システムの
役割期待(1980年代前半まで)
トランザクション処理


EDPS(Electronic Data Processing Systems)
TPS(Transaction Processing Systems)
意思決定支援


MIS(Management Information Systems)
DSS(Decision Support Systems)
 「内向き」の役割期待
ビジネスにおける情報システムの
役割期待(1980年代後半以降)
戦略的役割 : 外部との競争

SIS(Strategic Information Systems)
ビジネスプロセスの(再)構築 : 外(顧客)を向い
た自己変革

BPR(Business Process Reengineering)
企業間関係の設計 : 外部との共生


バーチャルコーポレーション(virtual corporation)
戦略的提携(strategic alliance)
 「外向き」の役割期待
 知識創造,蓄積,活用
EDPSからMISへ
Gallagher, J.D., “Management Information
Systems and the Computer”, 1961
EDPS : 企業活動において必然的に発生 する
データ処理(受発注処理、給与計算) = トランザク
ション処理

記録的・監督的機能
MIS : 必要とされる情報を、必要なときに、 必要な
人に = 意思決定支援

経営管理的機能
MISの3要素
1.データプロセシングの機械装置を使用

EDPS
2.各デバイス間でのコミュニケーション機構

IDP : コミュニケーションの自動化
3.報告書システム


定時レポート
例外レポート
MISの3要素
1.データプロセシングの機械装置を使用
2.各デバイス間でのコミュニケーション機構


1,2はMISの必要条件ではない
企業規模の拡大と業務の複雑化がこれらを必然に
3.報告書システム



経営管理のための計画と統制に必要な情報を秩序正
しく迅速に準備 : 企業の環境に対する受動的対応を
反映
効果的MIS構築のネック
電子的記録保持、生データからの作表報告書作成装
置に堕す
MISの最終目標を達成するには
データプロセシング担当者/システム要員

どのようなデータを収集し、いかなる表を作成すべきかを
正確に知っている必要性
経営管理者

実際に必要な情報は何であるかを明確に表示する能力
情報処理担当者と情報利用者の分離を前提 = 意
思決定プロセス(情報-設計-選択)
の分担

本来は分離不能なプロセス
統合の手段としてのMIS
統合的DBと柔軟なDBMSの利用




トータルアプローチ
無駄の排除
各階層間・各機能間の情報の流れのシステム化
情報の利用領域を限定しない
ト
ッ
プ
エ
グ
ゼ
ク
テ
ィ
ヴ
ミ
ド
ル
販
売
財
務
製
造
ロ
ワ
ー
MISによる経営意思決定改善のプロセス
多量のデータ選択


報告書内容の量的改善
報告書内容の質的改善
 データ量の増大に伴い意思決定のための情報要求の明確
化が要求されるから
→ 問題定義の正確化
直感・洞察・類推からシミュレーションへ


決定の自動化傾向 ← OR、シミュレーション
科学的方法によってリコメンドされた結果を否定する
だけの積極的理由をマネージャは持たない
MISによる経営意思決定改善
のプロセス
企業に対する包括的視点からの全体最適化

1つの職務分野での意思決定が他の分野に及
ぼす影響を測定可能
実際は・・・

MISに期待された効果と実際の効果の乖離
→ MIS批判 : 「MISの失敗」
AckoffのMIS批判
MISにおける失敗を引き起こす5つの仮定





多くのマネージャが業務を行う際に決定的に問題にな
るのは、関連する情報の欠如である
マネージャには彼/彼女の欲する情報が必要である
必要とされる情報が手に入れば、マネージャの意思
決定は改善される
マネージャ間のより良いコミュニケーションが組織の
業績を改善する
マネージャは情報システムがどのように機能するのか
を理解している必要はなく、それをどう使うのかを知っ
てさえいれば良い
MISの失敗とDSS概念の登場
MISの失敗

トータルシステムアプローチへの反省
意思決定の分類

サイモンの分類 : 構造化 / 非構造化
 問題解決手段の違い

アンソニーの分類 : 戦略計画/管理的コントロール
/業務的コントロール
 情報ニーズの違い
Gorry and Scott Morton (1971)
管理階層と情報ニーズ
情報特性
情報源
範囲
業務的
集計の程度
時間的視野
通用期間
集計的、要約的
要求される正確さ
細目的
過去
即時的で短い
高度に正確
使用頻度
繰り返し頻繁に
時折、ほとんど1回限り
ほとんど組織内部
明確に定義されていて
狭い
管理的 戦略的
ほとんど外部
かなり広い
将来
かなり長い
高度な正確さは不要
意思決定問題とMIS/DSS
構造的
業務的
発注処理
MISの守備範囲
買掛金管理
管理的
戦略的
部門予算分析 倉庫立地
人事報告
輸送方法の選択
差異分析
M&A
半構造的 在庫管理
MISがカバーできると考えられていた問題領域
日程管理 DSSの目指す守備範囲
予算編成
非構造的 資金管理
プロジェクト管理 人事管理
新製品の導入
研究開発計画
DSSコンセプト
経営管理者(=意思決定者)が解かなければならな
い問題と、経営管理者が行わなければならない決定
のために情報を生産するシステム


定期レポート、特別レポート
数学的モデル、ESからの出力結果
3つのキーワード



半構造化問題
支援: 経営管理者の判断に取って代わるものではない
効果: 意思決定における効率よりも
システムの会話型利用
DSSコンセプト
― McLeod(1995) ―
データ
他のグループ
メンバー
問題解決者
情報
報告書作成
ソフトウェア
GDSS
ソフトウェア
数理的
モデル
データ
ベース
環境
コミュニ
ケーション
DSSの利用
問題を定義する : intelligence phase


定期レポート/特別レポート : management by exception
シミュレーション : 隠れた問題の発見
問題を解く : design and choice phases


シミュレーション : 代替案の期待される結果を示す
定期レポート/特別レポート : 代替案を認識させ、代替案の評
価をし、選択をし、さらにフォローアップ情報を提供する
コミュニケーションの促進


グループによる意思決定の支援
GDSS、CSCW → groupware
Wiseman(1988)
情報技術/システムについての
戦略的パースペクティブ

慣習的パースペクティブ
 基本的なプロセスの自動化
 意思決定のために情報を得ること

戦略スラスト
 戦略的パースペクティブの分析枠組み
SIS: Strategic Information Systems

企業の競争戦略を支援し、または形成することを意図
した情報技術の利用
 戦略スラストの支援/形成
戦略スラストの理論(Wiseman,
C.)
X
Y
T
差別化、コスト、
革新、成長、提携
IT/IS
競争優位の獲得・維持
競争相手の優位性弱体化
Case Study: CRS
SABRE & APOLLO


1960年代から開発に着手
1970年代から旅行代理店にリース
 狙いは合理化



バイアス表示・・・戦略的意味
付加サービスの提供による顧客囲い込み
1980年代初頭
 コンピュータ化された旅行代理店市場でのシェア


アメリカン航空
41%
ユナイテッド航空 39%
Case Study: ASAP
AHS(American Hospital Supply)

医薬品、医療器具の製造、販売
 病院、ドラッグストア

大口取引先に受発注端末を設置
 狙いは合理化

サービス内容の追加
 合理化・コスト削減の限界に対応



在庫管理サービス
事務処理代行サービス
 保険手続き
 給与計算
Win-Win関係の構築
 病院:コスト削減
 AHP:顧客囲い込み → 「ニワトリ小屋にキツネがいる」
SISの二重の意味
S/IS


「戦略的意味を持つ」/「情報システム」
情報システムの存在そのものが戦略的意味を持つ
 顧客囲い込みによるシェアの確保 → 競争優位の獲得
 SABRE,APOLLO,ASAP
SI/S


「戦略的情報を供給する」/「システム」
戦略的意思決定のための情報獲得
 SABRE/APOLLO → 航空便スケジューリング
but… Gallagher(1961)がすでに指摘
SISの意義
戦略的武器としてのIT/ISという認識
事例先行型システム

SISブーム
SISの失敗

意図的なS/IS構築の困難さ
 S/IS構築方法論の不在
 「ふりむけばSIS」

IS構築のベンダ主導からユーザ主導への転換
分業からリエンジニアリングへ
3Cs

Customer
 顧客主導

Competition
 競争の激化 : グローバル競争、 新興企業の挑戦

Change
 絶え間のない変化
分業 : 権限と責任の分散 ⇒ 官僚制

安定した環境でなら上手く機能
分業からリエンジニアリングへ
ビジネスプロセスの分断化こそが問題





非柔軟性
反応の遅さ
顧客無視
イノベーション不足
高間接費 : 分断化された仕事をまとめる費用
ビジネスプロセス

特定の事業活動を行うための設計されたアク
ティビティの集合
リエンジニアリングとは
コスト、品質、サービス、スピードのような
重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に
改善するために、ビジネスプロセスを根本的
に考え直し、抜本的にそれをデザインし直す
こと


Hammer & Champy, 1993
既存のものを修正したり、基本的な構造には手を
つけずに漸進的な変化を起こすことではなく、
はじめからやり直すこと
リエンジニアリングとは
4つのキーワード

根本的 fundamental
 前提や制約条件のないところでスタート
 今どうあるかは無視し、どうあるべきかに集中

抜本的 radical
 既存の構造と手続きを無視して、仕事を達成する全く
新しい方法を発明する

劇的 dramatic
 業績において小さな改善や漸進的改善ではなく大飛
躍を達成する
プロセス:第4のキーワード
プロセスとは


一つ以上のことをインプットして、顧客に対して価値の
あるアウトプットを生み出す行動の集合
例 : 注文処理
注文を
受ける
記録する
チェック
する
顧客サービス部門
信用処理
請求金額
決定
財務部門
セールス部門
在庫
チェック
配送計画
バック
オーダー
出荷
在庫管理部門
配送・出荷
部門
BPRに必要不可欠な4つの要素
プロセス志向


旧来の組織構造にとらわれず、業務全体のプロセス
に着目
基礎的なビジネスプロセスをデザインし直すことに焦
点をあてる
 組織構造はあとから見えてくる
野心

漸進的改善ではなく、躍進を目指す
ルール破り

伝統、前提を取り払う
情報技術の創造的使用


古いルールを破り、新しいプロセスモデルを作った動
因は、現在の情報技術
情報技術の存在を前提にしてプロセスを再設計する
BPRと他の概念とは違う?
オートメーション


既存のプロセスをオートメーション化してもリエンジニ
アリングとはいわない
単に間違ったことを効率的にやる方法を提供するだけ
リストラクチャリング/ダウンサイジング


需要の減少に合わせて生産力を削減する
少ないもので少ないものを得る
TQM

絶え間なく漸進的な改善を積み重ねることによって、
既存のプロセスを強化する
Innovation vs. Incremental improvement
Process Reform
ビジネスプロセスを一から作り直すというよりは・・・
S+/T+
a1
a3
S1/T1
S3/T3
a4
S4/T4
a2
S2/T2
S*/T*
a5
S5/T5
IT as complimentary
skill/ tech: necessary condition
事例:IBMクレジット
信用供与プロセスのリエンジニアリング
(旧)
Fed Ex : 書類送付
電話 : 融資要請
信用調査
書類手渡
書類記入
金利決定
書類手渡
ローン契約
特記事項
書類手渡
書類手渡
個別の部門/スペシャリスト/情報システム
平均処理時間 6日間 (最長 2週間)
(新)
平均処理時間 4時間
生産性100倍
案件処理
担当者
アドバイス
単一の部門、ゼネラリスト
案件処理用情報システム
スペシャリスト
事例 : フォード自動車
調達業務プロセスのリエンジニアリング
(旧)
荷受
窓口
受取書
支払
部門
: 3種類の書類が一致すれば支払い
: 一致しない場合は原因追求
・・・ 解決に数週間
商品
請求書
納入
業者
購買注文書
荷受
窓口
購買注文書
コピー
商品
(新)
購買
部門
納入
業者
購買注文書
請求書をなくす
支払部門で500人の
従業員が125人に
購買
部門
・商品と未
到着注文品
との突合せ
・商品受取
のインプット
支払
部門
: 例外処理
小切手
オン
注文インプット ライン
DB
事例 : コダック
新製品開発プロセスのリエンジニアリング
カメラ
設計
: 各ステップを同時並行的に進行
: 各ステップの調整が不調
: 紙ベースでの設計
工作機械
設計
製造部門の技師は、製品設
計が始まってから28週間後
に仕事に着手
35ミリ使い捨てカメラの開
発に70週間を要す
コンカレントエンジニアリング
問題解決
製造部門の技師は、製品設
計が始まってから10週間後
に仕事に着手
35ミリ使い捨てカメラの開
発に38週間を要す/コスト
25%減
CAD/CAM
製品設計
統合DB
BPRがもたらしたもの
リストラ/リエンジニアリング

人員整理の代名詞化
日本企業における根本的、抜本的変革の
困難さ

日本的経営
コアコンピタンス core competence

プロセスは漸進的に、結果は劇的に
情報化組織 information organization


競争戦略、組織戦略、情報戦略の融合
SISへの反省とBPRの咀嚼