Liverpool Care Pathway(LCP)日本語版 ワークショップ 2012年2月26日 館林LCP研修会 東芝病院 緩和ケア科 茅根義和 L C P Wo r k i n g G r o u p J a p a n クリティカル パス 定義:一定の疾患や疾病を持つ患者に対して、入院始動、患 者へのオリエンテーション、検査、ケア処置、検査項目、退院 指導などをスケジュール表のようにまとめてあるもの 歴史:1980年代後半、アメリカにおいてDRG/PPSが導入され たことに呼応してNew England Center for Medicineで看護教 育者をしていたKaren Zanderが、もともと生産工程管理に使 われていたクリティカルパスの手法を医療現場に導入した 「Care Map」から始まっている。アメリカにおいてクリティカル パスは1)在院日数の短縮、2)医療の質の保証、3)業務の 効率化を導入目的としているが、導入の歴史から一次的目 的は1)の在院日数の短縮にある。 LCP Working Group Japan Liverpool Care Pathway(LCP) Dr. John Ellershaw(Marie Curie Center Liverpool)により2003年に提唱された看取り のクリティカル・パスである チェック・リスト形式のパスで、患者を看取 るまで、そして看取り後の治療とケアの手 引きとなり、経過記録を支援することを目的 として作られているIntegrated Care Pathwayである LCPを導入することによって看取りのケア の標準化が図られ、必要なケアがもれなく 行われることができるようになる LCP Working Group Japan Integrated Care Pathway その地域(国、一定の文化圏)での臨床的一致を 得られている、多職種が参加する、ガイドライン およびエビデンスに基づいたものであり、臨床に おける診療記録となりうる様式を持っており、ケ アの質の向上のために容易にその成果を評価 ができるもの National Pathway Association1997 LCP Working Group Japan 看取りのパス Liverpool Care Pathway 作成者:Royal Liverpool University および Marie Curie Center Liverpool 参照website http://www.mcpcil.org.uk/liverpool-carepathway/index.htm Palliative Care for Advanced Disease 作成者:Beth Israel Medical Center Department of Pain Medicine and Palliative Care 参照website http://www.stoppain.org/services_staff/pc ad1.html LCP Working Group Japan 英国におけるLCP LCP Working Group Japan LCPの普及・教育プログラム 2004年にはThe Marie curie Palliative Care Institute LiverpoolにThe LCP Central Team UKが置かれ、LCPの普及、教育にあたっている。 The LCP Central Team UKにより10 Stepsの 普及・教育プログラムが用意され、このプログラ ムによりLCPの導入から、施行、LCPに関する教 育、地域における終末期ケアのResearchが組 織的に行われている。 LCP Working Group Japan 英国におけるLCPの位置づけ NHS end-of-life care programme(2004年) LCPは、 primary careと cere homeにおける終末 期ケアの重要な frameworkとして、位置 づけられている。 LCP Working Group Japan Gold Standards Framework(GSF)とLCP Primary Care settingでの終 末期ケアを総合的にサポート するframeworkである、Gold Standards Framework(GSF) では、Action planの7つのKey Taskの一つである臨死期の ケアにおいてLCPを使用が推 奨されている また、GSFでは特にCare Homesでの臨死期ケアにおい てLCPの使用が推奨されてい る LCP Working Group Japan LCP日本語版の開発 LCP Working Group Japan 開発の過程1 2004年6月 研究チーム(LCP Working Group Japan)の 立ち上げ 2004年12月 著作者の非英語圏へのLCP普及プログラム への登録 2004年12月〜2008年10月 EORTC guidelinesに沿った翻訳作業 LCP Working Group Japan 翻訳過程での具体的作業 LCPver.11の各項目を逐次日本語に翻訳 翻訳した各項目について、項目毎にその内容を日本で 使用可能なものに修正・変更 専門家(緩和ケア領域、サイコオンコロジー領域、在宅 領域の医師および看護師合計40名)による内容の修正 各目標項目の内容を日本の医療に見合う内容に修 正する 日本で使用するにあたっての目標項目の取捨選択 日本語版用アルゴリズムの作成 日本で使用可能なアルゴリズムの作成 LCP Working Group Japan 開発の過程2 パイロット試用とLCP日本語版の確定 パイロット試用(2009年1月〜3月) 淀川キリスト教病院ホスピスおよび聖隷三方原 病院ホスピスにおいて各20例ずつのパイロット 試用を行った 2009年7月 パイロット試用の結果をふまえて、研究チーム によりLCP日本語版の修正を行い、LCP日本語 版を確定した LCP Working Group Japan LCPの構造と解説 LCP Working Group Japan LCPの概要 看取りへのケアにおける治療の手引きを示し、経過記録 を支援することを目的としている。 チェックすべき項目は「目標」として記載されており、それ ぞれの目標を達成するために必要な介入も記載されて いる。 症状緩和のアルゴリズムと屯用指示が別に用意されて おり、具体的な症状緩和について使用できるようになって いる。 LCPはクリティカルパスであるため、治療者は専門職とし ての判断に基づきパスが指示する以外の診療を自由に 行うことができるが、パスと異なった診療行為については バリアンスとして記載する。 LCP Working Group Japan LCPの構成 パスの使用基準 Section 1 Section 2 初期アセスメント 継続アセスメント Section 3 死亡診断と死後のケア バリアンス分析シート 症状緩和のアルゴリズム と屯用指示 痛み 悪心・嘔吐 喘鳴 呼吸困難 鎮静 LCP Working Group Japan LCPのサイクル 1.使用基準に沿って、LCPを開始 2.初期アセスメント(セクション1) 3.経時的なアセスメントとアルゴリズムの使用 (セクション2) 4.死亡診断(セクション3) (必要ならバリアンス分析) LCP Working Group Japan LPCの使用基準 患者に関わる多職種チームが予後数日または一週間程度と判断し、かつ以下 の項目のうち2項目以上が当てはまる場合: 患者が終日臥床状態である 半昏睡/意識低下が認められる 経口摂取がほとんどできない 錠剤の内服が困難である イメージは 終末期ではなく、「看取り期」「日単位」「数日中の死が避けられない」 プレテストでは1~2日から1週間以内(まれにそれより長くなることがある) LCP Working Group Japan Section 1(初期アセスメント) LCPが開始となった時点でのアセスメント項目を チェックする ケアの主体が「看取りのケア」に移行する時に必 要な内容が盛り込まれている LCP Working Group Japan 初期アセスメント 身体症状:この時点で存在する症状を確認する 目標1 投薬/処方の見直し 目標2 頓用指示の見直し 目標3 不必要な治療・検査の中止 目標3a 不必要な看護介入の中止 バイタルや体位交換などのルチーンの見直し 目標5 病状認識 現状で適切に病状が認識されているかを確認する LCP Working Group Japan 初期アセスメント(つづき) 目標7 家族との連絡方法の確認 目標8 家族への施設の案内 目標9・10 ケア計画 パンフレットを渡すか、口頭で説明する 患者や家族と、今後のケア計画について話し合う (説明する) バリアンス LCP Working Group Japan Section 2(継続アセスメント) 経時的なアセスメントを時間毎に繰り返し行う 必要な介入が確実に行われているかをチェック する 症状緩和に関しては必要に応じてアルゴリズム を使用する LCP Working Group Japan 継続アセスメント 原則としておよそ4時間ごとに記入する(時間は厳密で はなくてよい。ラウンドに合わせてなどでよい) 疼痛、精神症状、気道分泌、吐気・嘔吐、呼吸困難につ いては必ずチェックする 上記以外に患者にとって苦痛な症状があれば、それを 「その他の症状」に記入し、チェックする 口腔ケア、排尿障害、投薬が安全、正確に行われてい るかについてもチェックする 各項目について達成(A)未達成(V)に○をつけて、具 体的な問題点を記入する LCP Working Group Japan 継続アセスメント(つづき) 褥瘡ケア、排泄のケア、家族の病状理解、家族ケアな どの項目は原則としておよそ12時間ごと(1日2回)に記 入する 時間は厳密ではなくてよい。日勤帯と準夜帯でチェック などでよい。各項目について達成(A)未達成(V)に○を つけて、具体的な問題点を記入する LCP Working Group Japan 死亡診断 死亡診断に関して、必要なことが確実に行われ るかをチェックする 本来、遺族会の紹介などのパンフレットを渡す ことになっていたが、日本の現状に合わないた め、必要時のみ紹介することとした LCP Working Group Japan LCP使用上の留意点 LCPは看取りのケアを事務的に行うためのもので はない LCPに記入すれば看取りのケアの質が向上する 訳ではない LCPを使用することにより、看取りのケアを常に意 識して、見直しながら統一したケアが行われること が利点である LCP Working Group Japan LCPを導入することで何が変わるか LCP Working Group Japan 海外文献では LCPの導入により臨床現場においては医療者の 意識に変化が起こった。 医師が臨死期の患者への処方を意識するように なり、看護師は臨死期に必要なケア・不必要なケ アを整理して理解することができるようになり、ケ アの質が向上した。 結果として記録も整理され記録量は削減された。 看護師の臨死期のケアに関する知識が高まり、 経験の浅い看護師への教育効果も得られた。 Jack BA, Gambles M, Murphy D et al : Nurses’ pereception of the Liverpool Care Pathway for the dying patientin the acute hospital setting. 2003 LCP Working Group Japan 看護師へのアンケート調査 対象看護師:LCP日本語版パイロットスタ ディに関わった看護師40名. LCP日本語版が看取りのケアにどの程度 有用と思うか、アンケート調査を行った. LCP Working Group Japan 看護師へのアンケート調査結果 患者・家族ケアに関する有用性 有用だと思う (%) 質問項目 LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる 85 初期アセスメントで患者のケアの見直しができる 74 初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる 66 継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える 74 継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える 69 症状コントロールが改善する 67 看取り後に家族に適切なケアを行える 56 LCP Working Group Japan 看護師へのアンケート調査結果 看取りのケア全般に関する有用性 質問項目 有用だと思う (%) 継続したケアが提供できる 69 一貫したケアを行うことができる 69 ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行え る 59 その他の有用性 質問項目 教育的効果 看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる 看取り期のケアが適切に行えている確信になる 有用だと思う (%) 71 53 記録時間の 看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する 64 短縮 LCP Working Group Japan LCP日本語版の有用性 0% 20% 40% 60% 80% 100% 【看取りのケアに関する質問項目】 LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる 継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える 初期アセスメントで患者のケアの見直しができる 一貫したケアを行うことができる 継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える 継続したケアが提供できる 症状コントロールが改善する 初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる 看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行える 看取り後に家族に適切なケアを行える 多職種で情報を共有することができる 多職種にケアについて相談する機会になる .患者と家族の情報量が増加する 【看取りのケアの教育に関する質問項目】 看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる 看取り期のケアが適切に行えている確信になる LCP Working Group Japan LCP日本語版の有用性 患者の状態 看取り 予後が1週~数日 LCPの開始 医療チームでのケアの目標の達成状況を評価し、ケアの改善策の検討す る 期医 で療 あチ るー こム とで を患 共者 通が 認看 識取 でり きの る時 初 継 期 適続 切ア ケア なセ アセ のス 治ス メ 看取りのケアの向上のつながる 見 療メ ン ン ・見落としがない、 直ト やト しで ケで 一貫したケアを継続して提 が患 ア患 供できる で者 が者 きと 行と ・症状コントロールが改善 る家 え家 する る 族 族 の に 看 取 ケり ア後 がに 行家 え族 るに 適 切 な LCP Working Group Japan まとめ LCPの導入によって看取りの時期に 必要なケアを見直し、必要なケア を見落としなく提供でき、より適 切な看取りのケアの提供につなが る LCP Working Group Japan 休 憩 LCP Working Group Japan
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