第 30 回若手研究者のための健康科学研究助成成果報告書 (50) 2013 年度 pp.50∼56(2015.4) 朝食摂取頻度と 2 型糖尿病発症との関連 ―成人男女約6600人の10年間の追跡研究― 上 村 真 由* 王 超 辰* 八 谷 寛*,** 李 媛 英** 江 啓 発* 大 塚 礼*** 玉 腰 浩 司**** THE ASSOCIATION BETWEEN FREQUENCY OF BREAKFAST INTAKE AND TYPE 2 DIABETES MELLITUS INCIDENCE AMONG ABOUT 6600 MIDDLE-AGED JAPANESE MEN AND WOMEN IN 10 YEARS FOLLOW-UP STUDY Mayu Uemura, Hiroshi Yatsuya, Yuanying Li, Chaochen Wang, Chifa Chiang, Rei Otsuka, and Koji Tamakoshi Key words: breakfast, diabetes mellitus, cohort study, Japan. 欠食との関連を調べたうえで、それらの要因を考 緒 言 慮して、朝食欠食と追跡期間中の T2DM の関連 朝食欠食が、インスリン感受性の低下と関連す を調べた。 ることが報告されている 。しかし、朝食欠食と 1) 研 究 方 法 2 型糖尿病(T2DM)の発症の関連についてのコ ホート研究の結果は一致せず、日本人での検討も 十分されていない A.対象者 2002年に35∼66歳の某自治体職員男女を対象と 。 3-5) 2013年の国民健康栄養調査によると、日本人男 した。生活習慣アンケートおよび健診成績の使用 性の14.4%、女性の9.8%が朝食を欠食している 。 に対して同意した男女6648名のうち、分析に必要 朝食摂取の習慣は変容が可能であり、朝食欠食と な変数に欠損のない4631名(男性3600名,女性 T2DM の因果関係を探ることの公衆衛生学的意義 1031名)を分析対象者とした。なお、本研究は、 は大きい。 名古屋大学医学部生命倫理審査委員会の承認を得 本研究では、中高年の日本人男女を対象とした て実施した(承認番号:504-4)。 2) 前向きコホートにおいて、食習慣や喫煙、飲酒等 の生活習慣、仕事の状況や心理社会的要因と朝食 名古屋大学大学院医学系研究科国際保健医療 学・公衆衛生学 ** 藤田保健衛生大学医学部 公衆衛生学 *** 国立長寿医療研究センター長期縦断疫学研究 (NILS-LSA)活用研究室 **** 名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻 * B.T2DM 発症の確認 T2DM 発症は、職場で毎年実施される健診で Department of Public Health and Health Systems, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan. Department of Public Health, Fujita Health University School of Medicine, Aichi, Japan. Section of Longitudinal Study of Aging, National Institute for Longevity Sciences(NILS-LSA), National Center for Geriatrics and Gerontology, Aichi, Japan. Department of Nursing, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan. (51) FBG 値が初めて126 mg/dl 以上となった場合、あ 外した場合、追跡期間 3 年未満での T2DM 発症 るいは、2004年、2007年、2011年に実施した自記 者を除外した場合についても分析した。 式の病歴調査で T2DM の治療開始について申告 すべての統計解析は SPSS Statistics for Windows, があった場合とした。 Version 22.0を用いて行い、統計学的有意水準は P C.朝食の摂取頻度 朝食の摂取頻度については、自記式生活習慣ア ンケートで、 「必ず毎日食べる」 、 「ほぼ毎日食べ < 0.05とした。 結 果 るがときどき食べない」、 「週 3 ∼ 5 日食べる」、 「週 対象者の9.6%が、朝食欠食者であった。朝食 1 ∼ 2 日食べる」、「食べない」の 5 段階で調査し 欠食者は、朝食摂取者に比べ、アルコールの摂取 た。本研究では、 「週 3 ∼ 5 日食べる」 、 「週 1 ∼ 量が多く、現喫煙者の割合が高かった。更に、ス 2 日食べる」 、「食べない」と回答した者を朝食欠 トレスを強く感じている者の割合が高く、夜勤者 食者とした。 の割合も高かった(すべて P < 0.05,表 1 )。 D.統計解析 主成分分析により 4 つの因子を抽出した(表 朝食欠食と食事・栄養素摂取状況、飲酒や喫煙 2 )。第 1 因子は、緑黄色野菜やその他の野菜の などの生活習慣、仕事の状況、心理社会的要因等 高摂取により特徴付けられるため、野菜パターン との関連は、一元配置分散分析およびカイ二乗検 と名付けた。第 2 因子は、洋菓子や和菓子、果物 定によって調べた。 の高摂取により特徴付けられるため間食パターン 食品や飲料の摂取量は、BDHQ(brief-type self- と名付けた。第 3 因子は、パンやスパゲッティ、 administered diet history questionnaire)から推定し、 肉類や加工肉の高摂取と米飯や味噌汁の低摂取に 密度法によりエネルギー調整した。そして全項目 より特徴付けられるため洋食パターンと名付け の摂取量を用いて主成分分析を実施し、食事パ た。第 4 因子は、魚介類や、そば、うどんなどの タ ー ン を 導 出 し た。 抽 出 因 子 数 は、 固 有 値 や 高摂取により特徴付けられるため、魚介類・日本 scree プロット、因子の解釈のしやすさから決定 麺パターンと名付けた。 し、各食事パターンの因子得点を個人ごとに算出 朝食摂取状況と食事パターンとの関連を検討し した。各食事パターンスコアの三分位により対象 たところ、朝食欠食者は、野菜パターンの者や間 者を 3 群に分け、クロス集計により朝食摂取状況 食パターンの者の割合が低く、洋食パターンの者 との関連を検討した。 の割合が高かった(表 3 )。 朝食摂取状況と T2DM 発症の関連性の検討に 8.9年の追跡期間中に、285名(男性231名,女 は、Cox 比例ハザードモデルを用いた。調整変数 性54名)が T2DM を発症した(粗発症率:8.2/1000 として、年齢、性別、総エネルギー摂取量、喫煙 人年)。朝食を「必ず毎日食べる」と回答した者 状況、アルコール摂取量、余暇の身体活動、仕事 を基準とした、朝食を「ほぼ毎日食べるがときど 時の身体活動、糖尿病の家族歴、食べる速さ、自 き食べない」、「週 3 ∼ 5 日食べる」、「週 1 ∼ 2 日 覚ストレス、睡眠時間、勤務形態、満腹摂取、各 食べる」、「食べない」と回答した者の T2DM 発 食事パターン変数、body mass index(BMI)、fast- 症 HR は、順に1.06(0.73-1.54)、2.08(1.21-3.58)、 ing blood glucose(FBG)値を用いた。解析結果は、 1.33(0.80-2.22)、2.11(1.19-3.73)であったが(表 朝食を「必ず毎日食べる」と回答した者を基準と 4 )、欠食日数に応じて T2DM 発症 HR が高くな し、 「ほぼ毎日食べるがときどき食べない」、「週 る線形傾向性は明確ではなかった。 3 ∼ 5 日食べる」、「週 1 ∼ 2 日食べる」、「食べな 朝食欠食者は、朝食摂取者に比べ、T2DM 発症 い」と回答した者の T2DM 発症ハザード比(HR) HR が有意に高値であった(粗発症率:13.9/1000 と95%信頼区間(95% CI)として表した。次いで、 人年 vs. 7.5 /1000人年,Crude HR: 1.85)。その他 朝食摂取者を基準とし、朝食欠食者の T2DM 発 生活習慣や心理社会的要因、各食事パターンスコ 症 HR と95% CI も算出した。また、夜勤者を除 アを調整すると、関連性はやや減弱する傾向が認 (52) 表 1 .ベースライン時(2002年)の朝食摂取状況による対象者の生活習慣、心理社会的要因などの特徴 Table 1.Participants demographic, lifestyle, and psychosocial factor characteristics according to breakfast consumption status at baseline, Aichi, 2002. Breakfast eatersa n Breakfast skippersb 4188 P valuec 443 Men, % 78.2 73.8 Age, year 47.8 (7.1) 46.0 (6.8) < 0.001 Body mass index, kg/m2 22.9 (2.8) 22.9 (3.0) 0.78 Fasting blood glucose, mg/dl d Family history of diabetes mellitus, yes, % 92.3(92.0 - 92.6) 0.04 92.5 (91.5 - 93.4) 0.74 14.8 17.4 0.14 Current 26.7 44.9 < 0.001 Former 23.4 14.2 Never 49.9 40.9 Leisure-time physical activity, ≥ 3 days/week, % 75.5 84.2 < 0.001 61.6 < 0.001 Smoking status, % Sleep duration, < 7 hours/day, % Total energy intake, kcal/day 52.9 1942 (538) 1740 (553) < 0.001 13.6 (19.2) 18.1 (26.4) Very fast 11.4 12.9 Relatively fast 35.8 37.9 Medium 38.5 35.2 Slow 12.6 12.4 Satiation eater, % 61.2 59.1 0.24 5.3 7.7 < 0.01 < 0.001 Alcohol consumption, g/day < 0.001 Eating speed, %e Work-time physical activity, yes, % 0.67 Work schedule, %e Without shift work or night shifts 84.6 78.3 With shift work but without night shifts 1.9 1.4 Without shift work but with night shifts 6.8 7.9 With shift work including night shifts 4.9 11.3 Very much 11.0 13.8 Much 40.1 39.7 Ordinary 43.8 39.1 4.9 6.8 Perceived stress, %e Little 0.02 Values are reported as mean (standard deviation) or percentage. Breakfast eater was defined as those having breakfast eating frequency of‘every day or almost every day with occasional skips . b Breakfast skipper was defined as those having breakfast eating frequency of‘3-5 days/week, 1-2 days/week, or none . c Obtained from ANOVA and Chi-square test for continuous and categorical variables, respectively. d Geometric mean (95% confidence interval) . e Proportions in each category do not add up to 100% when there were missing data. a められたが、結果は変わらなかった(Model 2 HR: 1.65) 。更に、BMI や FBG 値を調整しても結 考 察 果は変わらなかった(Model 3 HR: 1.70)。また、 中高年の日本人男女において、朝食欠食者は朝 こ の 関 連 は、 夜 勤 者 を 除 外(HR: 1.88, 95% CI: 食摂取者に比べ、現喫煙者が多く、飲酒量が多い 1.29-2.75) 、追跡期間が 3 年未満の T2DM 発症例 など、好ましくない生活習慣を保有していること を除外した分析においても認められた(HR: 1.95, が認められた。この関連は、男女ともに同様に認 95% CI: 1.26-3.02) 。 められた。また、朝食欠食者は、ストレスを強く (53) 表 2 .各食事パターンに対する各食品の因子負荷量 Table 2.Factor loading of each food item for each dietary pattern.* Western dietary pattern Seafood and Japanese noodle pattern ― ― ― ― 0.18 ― ― ― 0.18 ― ― ― ― 0.18 Small fish with bones ― ― ― 0.18 Dried fish, salted fish ― ― ― 0.25 Oily fish ― ― ― 0.21 Vegetable pattern Snack pattern Chicken ― Pork and beef ― Ham, sausages and bacon Squid, octopus, shrimp and clam Non-oily fish ― ― ― 0.19 Green leafy vegetables 0.17 ― ― ― Cabbage and chinese cabbage 0.15 ― ― ― Carrots and pumpkins 0.17 ― ― ― Other root vegetables 0.16 ― ― ― Cakes and cookies and biscuits ― 0.23 ― ― Japanese sweets ― 0.25 ― ― Rice crackers and Japanese style pancakes ― 0.21 ― ― Citrus fruits including oranges ― 0.17 ― ― Strawberries, persimmons and kiwi fruit ― 0.15 ― ― Other fruits ― 0.17 ― ― Breads ― ― 0.15 ― Buckwheat noodles ― ― ― 0.17 Japanese wheat noodle ― ― ― 0.20 Spaghetti, macaroni ― ― 0.16 ― Rice ― ― −0.25 ― Miso soup ― ― −0.19 ― Beer ― −0.15 ― ― *Factor loading less than 0.15 is shown by“―”. Food items with factor loading less than 0.15 are excluded (low-fat milk and yoghurt, full-fat milk and yoghurt, liver, canned tuna, potatoes, eggs, tofu, natto, salted green and yellow vegetable pickles, other salted vegetable pickles, raw vegetables used in salad, radishes and turnips, tomatoes and tomato ketchup, mushrooms, seaweeds, ice cream, mayonnaise and salad dressing, instant noodles and Chinese noodles, green tea, black and oolong tea, coffee, cola and sweetened soft drinks, fruit juice and vegetable juice, sake, shochu and shochu mixed with water or a carbonated beverage, whisky, and wine) . 感じている者や夜勤者が多いことも認められ、仕 の交絡要因の調整後も、朝食欠食は追跡期間中の 事の状況や心理社会的要因が朝食欠食と関連して T2DM 発症と統計学的に有意な正の関連を示した。 いることが示唆された。更に、朝食欠食者では、 本研究結果は、追跡後の FBG 値が110 mg/dl 以 パンや肉類、加工肉の摂取が多く、米飯や味噌汁 上で定義した耐糖能異常または T2DM をエンド の摂取が少ない洋食パターンを保有している者の ポイントとした日本の先行研究とも一致した結果 割合が高く、緑黄色野菜やその他の野菜などを多 と考えられた7)。 く摂取する健康的な食事パターンを保有している 本 研 究 に お い て、 朝 食 摂 取(欠 食) 頻 度 と 者の割合が低いことから、朝食摂取習慣と食品選 T2DM 発症の間の、量反応関係は明確ではなかっ 択の間にも関連があることが示唆された。 た。この結果は、米国の白人男女と黒人男性にお 朝食欠食は、仕事の状況、心理社会的要因、そ いて、朝食摂取頻度と T2DM 発症の間に段階的 して食事パターンと関連することが示唆された な負の関連を認めた CARDIA 研究の結果とは一 が、これらの変数および朝食欠食に関連する生活 致しなかった5)。その理由は不明であるが、米国 習慣、ベースラインの BMI や FBG 値を含む種々 の他の研究では、量反応関係の検討はされていな (54) 表 3 .朝食の摂取状況と各食事パターンとの関連 Table 3.The association between breakfast intake and each dietary pattern. Breakfast eatersa Breakfast skippersb P valuec T1(Low) 31.7 48.8 < 0.001 T2 33.7 30.0 T3(High) 34.6 21.2 T1(Low) 32.4 42.4 T2 33.7 30.0 T3(High) 34.0 27.5 T1(Low) 34.6 21.2 T2 33.0 36.8 T3(High) 32.4 42.0 33.7 29.6 T2 33.3 33.6 T3(High) 33.3 36.8 Vegetable pattern Snack pattern < 0.001 Western dietary pattern < 0.001 Seafood and Japanese noodle pattern T1(Low) 0.15 Values are reported as percentage. Breakfast eater was defined as those having breakfast eating frequency of‘every day or almost every day with occasional skips . b Breakfast skipper was defined as those having breakfast eating frequency of‘3-5 days/week, 1-2 days/week, or none . c Obtained from Chi-square test. a 表 4 .朝食摂取状況による 2 型糖尿病発症率およびハザード比 (2002∼2011年) Table 4.Incidence rates and hazard ratios of type 2 diabetes mellitus incidence according to breakfast consumption, Aichi, 2002-2011. Frequency of eating breakfast n of cases/N Every day Almost every day with occasional skips 3-5 days/week 1-2 days/week None 204/3648 35/540 15/121 17/197 14/125 16.6 11.4 15.4 Crude incidence rate 7.4 8.4 Crude HR(95% CI) ( 1 reference) 1.13 (0.79-1.62) a 2.25 (1.33-3.80) 1.54 (0.94-2.53) 2.08 (1.21-3.58) Model 1b HR(95% CI) 1.14 (0.79-1.64) 1.99 (1.15-3.42) 1.49 (0.90-2.48) 2.06 (1.18-3.60) Model 2c HR(95% CI) 1.12(1.09-3.26) 1.88 (1.09-3.26) 1.43 (0.86-2.38) 1.92(1.09-3.39) Model 3d HR(95% CI) 1.06 (0.73-1.54) 2.08 (1.21-3.58) 1.33 (0.80-2.22) 2.11(1.19-3.73) n of cases/N Crude incidence rate Breakfast eaterse Breakfast skippersf 239/4188 46/443 7.5 Crude HR(95% CI) Model 1b HR(95% CI) Model 2 HR(95% CI) c Model 3d HR(95% CI) 13.9 1.85 (1.35-2.54) 1(reference) 1.74 (1.25-2.43) 1.65 (1.18-2.31) 1.70 (1.22-2.38) CI; confidence interval, HR; hazard ratio, n; number, N; number of participants. a Crude incidence rate (per 1000 person-years). b Model 1: Adjusted for age, sex, total energy intake, smoking status, alcohol consumption, leisure-time physical activity, work-time physical activity, family history of diabetes mellitus, eating speed, perceived stress, sleep duration, work schedule, and satiation eater. c Model 2: Model 1 + score of each dietary pattern. d Model 3: Model 2 + body mass index + fasting blood glucose (Log-transformed) . e Breakfast eater was defined as those having breakfast eating frequency of‘every day or almost every day with occasional skips . f Breakfast skipper was defined as those having breakfast eating frequency of‘3-5 days/week, 1-2 days/week, or none . (55) かった3,4)。 済的要因が比較的均一な中高年日本人公務員を対 朝食欠食が T2DM 発症をきたすメカニズムと 象としているが、不明または調査されていない交 して、第一に、朝食欠食者で報告されている昼食 絡要因があるかもしれない。しかし、朝食欠食が 後の血糖値およびインスリン値の有意な高値が挙 不健康な生活習慣と関連していることや、他の生 げ ら れ る。 短 期 的 な 高 血 糖 状 態 の 指 標 で あ る 活習慣や仕事の状況、心理社会的要因に独立して 1,5-anhydroglucitol 値 が、HbA1c 値 に 独 立 し て T2DM と関連することが示されたことから、朝食 T2DM 発症と有意な関連を示すとする報告も存在 を欠食しないような生活習慣を身に付けること することから、朝食欠食によって引き起こされた は、T2DM 予防に有用になるかもしれないと考え 代謝上の変化が累積することによって、T2DM リ られた。 スク上昇に繋がったかもしれない 。第二に、朝 6) 総 括 食欠食により昼食などの食事摂取量が多くなる可 能性がある。本研究対象者の総エネルギー摂取量 中高年の日本人男女において、朝食欠食は T2DM は、朝食摂取者で1942 kcal/day、朝食欠食者で のリスクを高めうることが示された。この関連は、 1740 kcal/day であり、朝食欠食者は朝食摂取者に 他の生活習慣や仕事の状況、心理社会的要因、ベー 比べ、 1 食当たりのエネルギー摂取量が多いこと スラインの BMI および FBG 値を考慮しても変わ が推測された。これは食後の血糖値とインスリン らなかった。 値に、より過大な反応を引き起こし、結果として 謝 辞 T2DM の発症と関連したかもしれない。最後に、 他の生活習慣の残余交絡の可能性である。本研究 では、多くの生活習慣を調整しているが、朝食欠 食者は T2DM 発症リスクの上昇に繋がる他の生 活習慣や行動特性を有するのかもしれない。 本研究の限界として、第一に、再現性が確認さ 本研究に対し研究助成を賜りました公益財団法人明治 安田厚生事業団に深く感謝申し上げます。また、本研究 を遂行するにあたりご指導を賜りました名古屋大学医学 系研究科国際保健医療学・公衆衛生学 青山温子教授、本 研究にご協力をいただいた愛知職域コホート研究対象者 の皆様、健康管理部門の皆様に感謝いたします。 れた質問票を用いているが、朝食摂取頻度は自己 参 考 文 献 申告によるもので、朝食の内容に関する定義や朝 食前の空腹時間に関する解釈は主観的評価に基づ いていることがある。しかし、朝食の内容や時間 が均一でないと想定される夜勤者を除外した分析 でも、同様の関連が認められた。また、朝食の栄 養素構成に関する情報がないため、朝食摂取と T2DM の関連において、朝食の質の効果を評価で きなかった。次に、主成分分析では、主観的な判 断により、抽出する因子の数の決定や食事パター 1)Farshchi HR, Taylor MA, Macdonald IA(2005) : Deleterious effects of omitting breakfast on insulin sensitivity and fasting lipid profiles in healthy lean women. Am J Clin Nutr, 81, 388-396. 2)厚生労働省(2014):平成 25 年国民健康・栄養調査 報告. 3)Mekary RA, Giovannucci E, Cahill L, Willett WC, van Dam RM, Hu FB(2013) : Eating patterns and type 2 diabetes risk in older women: breakfast consumption and eating frequency. Am J Clin Nutr, 98, 436-443. ンの名前付けを行っている。しかし、本研究で抽 4)Mekary RA, Giovannucci E, Willett WC, van Dam RM, 出された食事パターンは、日本人における先行研 Hu FB(2012) : Eating patterns and type 2 diabetes risk in 究で抽出された食事パターンと類似していた。更 men: breakfast omission, eating frequency, and snacking. に、 本 研 究 で は、 1 回 の FBG 値 測 定 に よ っ て T2DM 発症を定義した。この定義は、疫学研究に おいてよく採用されているが、HbA1c 値または経 口ブドウ糖負荷試験結果を併せて用いることがよ り理想的である。最後に、本研究結果からは、因 果関係について断言できない。本研究は、社会経 Am J Clin Nutr, 95, 1182-1189. 5)Odegaard AO, Jacobs DR, Steffen LM, Van Horn L, Ludwig DS, Pereira MA(2013) : Breakfast frequency and development of metabolic risk. Diabetes Care, 36, 31003106. 6)Selvin E, Rawlings AM, Grams M, Klein R, Steffes M, Coresh J(2014) : Association of 1,5-Anhydroglucitol with (56) diabetes and microvascular conditions. Clin Chem, 60 (11) , 1409-1418. 7)Sugimori H, Miyakawa M, Yoshida K, Izuno T, Takahashi E, Tanaka C, Nakamura K, Hinohara S(1998) : Health risk assessment for diabetes mellitus based on longitudinal analysis of MHTS database. J Med Syst, 22, 27-32.
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