ATLAS前後方ミューオントリガーシステム Sector Logic 及び オンラインソフトウェアの開発 修士論文発表会 2008年2月20日 神戸大学 自然科学研究科 物理学専攻 粒子物理研究室 062S108N 門坂 拓哉 1 イントロダクション ATLAS検出器の前後方ミューオントリガー システム(TGCシステム)の構築に本研究室 も参加してきた。 今回、 TGCシステムの一部である Sector Logic の 量産、 TGCシステムへの組み入れ を目的に開発を行った。 2 目次 1. 2. 3. 4. 5. LHCとATLAS実験 TGC (Thin Gap Chamber) システム Sector Logicの開発 Sector Logic量産・インストール。 ATLAS宇宙線コミッショニング(動作検証)に おけるSector Logicの機能検証 6. まとめ 3 1. LHCとATLAS実験 4 LHC(Large Hadron Collider)とは • • 世界最高エネルギー : 重心系 14TeV (陽子ビーム : 7TeV +7TeV) 衝突頻度 : 40MHz (25nsec) 2008年夏に稼動!! 100m 周長 27km 5 ATLAS実験とは LHCの衝突点の1つにおかれるのが汎用検出器がATLASであ る。 目的:Higgs粒子、超対称性粒子(SUSY粒子)などの 新粒子探索。 ATLAS検出器 6 ATLAS検出器 電磁カロリメータ トロイド磁石 ハドロンカロリメータ 衝突点 R Φ 25m Y C-Side X Barrel Z A-Side ミューオンシステム TGCシステム etc.. ソレノイド磁石 内部飛跡検出器 7 ミューオンシステムとは TGC:前後方部のトリガー用チェンバー RPC:胴体部のトリガー用チェンバー MDT:ミューオン運動量精密測定用チェンバー Toroidal Magnetic Field 8 ATLAS検出器でのトリガー ATLASでの高頻度なイベントを 逃すことなく処理するシステムが 必要。 Interaction rate ~ 1GHz Level1 3段階のトリガー(LVL1、LVL2、 EF)を用いて順次イベントレート を落としていく。 < 75kHz <2.5ms Level2 < ~2kHz LVL1はミューオントリガーシス テムとカロリメータの情報を用い たトリガー。 ~ 10 ms Event Filter < ~200Hz ~ 1sec LVL1のミューオントリガーシステムの一部 がTGCシステム。 9 2. TGC (Thin Gap Chamber)システム 10 TGCシステムとは TGC(Thin Gap Chamber)でミューオンの位置・時間情報を測定。 トリガーを出力 TGC+TGCからの信号を処理する回路群TGCエレクトロニクス TGC M1 M2 M3 ASD On TGC Big Wheel edge PS-Board VME crate PP PP ASD Counting Room Trigger SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW CTP Doublet PP Triplet PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout SSW ROD Readout ROB DCS-PS TTC DCS LCS CLK, L1A etc… CTP 11 TGCの配置 •ATLAS前後方(A-Side、C-Side) - M1、M2、M3のビッグウィールから構成される M1 •総チャンネル数 30万~ M2 M3 Y 衝突点 Z 12 TGC • • • • MWPCの一種 ガス CO2 / n-pentane(55:45) 印加電圧 : 2.9kV 二次元読み出し (ワイヤー: R方向、ストリップ : φ方向) ・ワイヤー間隔:1.8mm T7 17 ~41 1365 →ドリフト時間を短くする 時間分解能(25ns以下) ・アノード・カソード間隔:1.4mm →陽イオンが早くカソードへ到達 高レート耐性:1kHz/cm2 1245 単位:mm 1200 トリガーチェンバー →検出効率99% 13 TGCエレクトロニクス Counting Room ATLAS PIT 14 TGCエレクトロニクス・トリガー系 M1 M2 M3 TGC ASD On TGC Big Wheel edge PS-Board VME crate PP PP ASD Counting Room Trigger SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW Doublet PP Triplet PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout SSW ROD DCS-PS TTC CLK etc… 15 TGCエレクトロニクス・トリガー系 On TGC M1 M2 M3 TGC ASD PP Big Wheel edge Counting Room VME crate PS-Board PP ASD ASD Trigger SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW Doublet PP Triplet PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout SSW ROD DCS-PS TTC CLK etc… TGC 16 TGCエレクトロニクス・トリガー系 M1 M2 M3 TGC ASD On TGC Big Wheel edge PSB VME crate PP PP ASD Trigger SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW Doublet PP PSB Counting Room Triplet PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout HPT SSW ROD SL DCS-PS TTC CLK etc… 17 TGCエレクトロニクス・トリガー系 3層 4層(2層+2層) M1 M2 M3 TGC ASD ストリップ・ワイヤー (R・Φ)情報のコイン On TGC Counting Room M2・M3の4層でコイ Big Wheel edge シデンス ンシデンス VME crate PSB Trigger PP PP ASD Triplet 3層 HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW Doublet PP SLB ASIC 2/3 SSW Coin. DCS-PS Readou t SLB ASIC 3/4 Coin. Readout PP ROD SLB ASIC 2/3 Coin. Readout DCS-PS M1のワイヤ3層、ス トリップ2層でコイン シデンス M1とM2・M3でのコ インシデンス ROD SSW TTC CLK etc… TTC CLK etc… 2層 18 TGCエレクトロニクス・トリガー系 R・Φコインシデンスととも Big Wheel edge Counting Room にΔR・ΔΦからPt(横運 動量)を決定。 On TGC M1 M2 M3 TGC ASD VME crate PS-Board PP SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW PP ASD Doublet M2 M3 TGC M1 SLB ASIC 2/3 Coin. Toroidal Magnetic Field ReadoutLow-Pt PP Triplet Y Z PP Trigger DCS-PS M1のワイヤ3層、ス トリップ2層でコイン シデンス SSW ROD ΔRTTC ΔΦ CLK etc… ミューオントラック High-Pt ビーム衝突点 無限運動量トラック 無限運動量トラック 19 TGCエレクトロニクス・リードアウト系 M1 M2 M3 TGC ASD On TGC Big Wheel edge PS-Board VME crate SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic PP DCS-PS HPT strip SSW PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout PP ASD Counting Room Doublet Triplet PP Readout SSW ROD ROB DCS-PS TTC DCS LCS CTP CLK, L1A etc… 20 SL TGCエレクトロニクス・リードアウト系 PSB M1 M2 M3 TGC ASD On TGC Big Wheel edge PS-Board VME crate PP PP ASD Counting RoomROD SLB ASIC 3/4 Coin. Readout HPT wire Sector Logic DCS-PS HPT strip SSW Doublet PP SSW TGC Triplet PP SLB ASIC 2/3 Coin. Readout Readout SSW ROD ROB DCS-PS TTC DCS LCS CTP CLK, L1A etc… 21 3. Sector Logicの開発 22 Sector Logicとは ΔR R-Φコインシデンス: • TGCのワイヤーとストリップからの 信号をコインシデンス処理。 • ΔR、ΔΦからPt(横運動量)を6段階(1-6) で決定する。 6GeV 10GeV 20GeV 15 無限運動量 0 -15 -7 ΔΦ 0 7 特徴 1. 2. 3. 40MHzに同期して、デッドタイムレスで動作。 処理時間はいつも一定。 6段階のPtは、条件により自由に変更。 → パイプライン処理を使用し、処理時間を一定に保つ。 → 書き換え可能なICであるFPGA (Field Programmable Gate Array)や CPLD(Complex Programmable Logic Device)を採用。 → Pt の決定にLUT (Look-Up-Table)を使用する。 23 Sector Logic基板 Sector Logic Endcap Board HPT入力 • Sector Logic FPGA トリガー論理を実装するFPGA。 • Glink Monitor FPGA HPTからのGlinkプロトコル入力の状態を監視する 回路を実装するFPGA。 • VME Access CPLD VMEのマスターモジュールとSLボードの通信を担い、 各FPGAとのアクセスを可能にする回路が実装さ れるCPLDである。 VME インタフェース トリガー出力 • リードアウト出力 Endcap ボード SLB ASIC SLが出力するトリガー情報とHPTからの入力の読み 出しを行う。 24 HDL(Hardware Description Language) での論理回路設計 FPGA・CPLDの回路設計はHDLを用いて行った。 • • • • 記述した文から論理合成ツールで論理回路へと変換される。 C言語に似た文法。 機能単位で記述。 コードから論理回路へは~10分で完成。 (ASICの開発期間は数ヶ月!) HDL記述 わずか~10分で 回路が完成 論理合成 配置配線 FPGAに実装 25 Sector Logic FPGA内部設計 •機能ブロック単位でHDL記述 •パイプライン処理であり、各機能の処理時間が一定(合計6CLK) R-Φコインシデンス パイプライン処理 LUTはFPGA内の Block RAMに実装。 今回新たに追加した機能 26 4. Sector Logic量産・インストール 27 Sector Logic量産・量産品検査 Endcapボード : 55枚量産 Forwardボード : 28枚量産 テストベンチの構築 Endcap ボード Forward ボード 28 Sector Logic量産・量産品検査 Endcapボード : 55枚量産 Forwardボード : 28枚量産 テストベンチの構築 VMEテストモジュール、NIMモジュール、ケーブル、 クレート、オシロスコープなどから構築。 トリガー系動作試験のセットアップ 29 Sector Logic量産・量産品検査 Endcapボード : 55枚量産 Forwardボード : 28枚量産 テストベンチの構築 手順 25分 ICのコンフィギュレーション 検査時間:約50分 / ボード コントロール系の動作試験 10分 Glink Monitor 機能検証 NIM出力試験 TTCからの入力受信試験 15分 トリガー系の動作試験 リードアウト系の動作試験 結果 インストール へ!! 30 インストール SLをCounting Roomに インストールした。 地上 100m先のHPTから光ファイバー(オレンジ色) で1秒当たり1Gbitの信号がやってくる。 SL 地下100m ビームライン 31 5. ATLAS宇宙線コミッショニング(動作検証)におけ るSector Logicの検証 32 ATLAS宇宙線コミッショニングとは 宇宙線コミッショニング:ATLAS検出器で宇宙線を捕らえ、各検出器を 統合運転し、動作検証をおこなう。 TGCも参加! 2007年 Event Display M3 Run 6月 M4 Run 9月 P1 Run 10月 M5 Run 11月 P2 Run 12月 33 TGCのコミッショニング P2 RunにおいてA-Side、C-Sideそれぞれ3セクターを運転。 宇宙線を捕らえるためにトリガー条件の変更 →M3のワイヤー2層での2 out of 2 TGCパラメータ SLの機能検証へ! 34 Sector Logicの検証(1) コンフィギュレーション検証 コンフィギュレーション:数万回のVMEアクセスでFPGAに回路の 設計データを入力させる。 →失敗が頻繁に起こる。 VME Access CPLD でデータ制御線の1つが正しく扱われておらず、 VMEプロトコルに違反していた。 これを、HDLコードを修正しVMEプロトコル準拠とした。 Glink Monitor 検証 コミッショニング中にSLのトリガー出力のレートが20MHzと異常に 高くなるという現象がみられた。 調査の結果、Glink Monitor FPGAが正しくGlink受信ICを制御 できていないことが確認された。 HDLコードを修正し、問題を解決した。 35 Sector Logicの検証(2) トリガー検証 C09セクターで0.15%のトリガー失敗が見られた。 Sector Logicから読み出したHPTの入力情報にありえない 無効なデータを発見。 入力データの遷移とデータ取得のタイミングが重なっている? 監視するシステムが必要。 図:ΔRの分布。右が正しいデータ、左が無効なデータを含む 36 Sector Logicの検証(3) データ検証 A10 Sector / Endcap / Wire PSB Output HPT Output R SL Output TGCシステムでトリガーできた! 37 トリガーレート 最終的に、TGCシステムを安定的に動作させることに成功。 トリガーレート (Hz) 図:トリガーレート。縦軸がトリガーレート横軸が時間。 Sector Logicが正しく機能し、トリガーを出力!! 38 6.まとめ Sector Logicに関して、 • HDLでの論理回路設計 • 量産品検査システムの構築、検査 • インストール を行い。ATLAS検出器の一部として動作させた。 コミッショニングにおいて、SLから読み出した データの解析になどで、いくつか不具合を発見 することができた。 39 Bck Back up 40 LHCパラメータ 41 シンクロトロン加速器 • 最大エネルギーは、 軌道半径Rと双極磁石の強さBで決まる p[GeV / c] 0.3 B[T ] R[m] • 高エネルギーを得るには 半径Rを大きく 磁場Bを強く • 円運動している荷電粒子はシンクロトロン放射によってエネルギーを失う z 2 3E 4 E 4 R m (1周あたりのエネルギー損失) 42 ルミノシティ(輝度) • 断面積σをもつ反応が起こるレートは R L • Point-like particleの反応断面積は s 高エネルギー実験では、高ルミノシティが要求される 1 • 衝突型加速器のルミノシティ L f n 2 4 x y •f : collision frequency [sec-1] •n : number of particles in each bunch •σx,σy : beam size [cm] バンチ数 大 カレント 大 ビームサイズ 小 43 電磁シャワー • γの反応 – Photo-electric effect : γ + atom → e- + atom+ – Compton: γ+ e- → γ+ e- – Pair-Production : γ (+ Z) → e+ + e- 44 ATLAS測定器の最外部にミューオン検出器が設置される。 • ミューオン ⇒ 透過力大 質量 105.6MeV (cf. 電子 0.511MeV) 45
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