透析スタッフに知っておいて ほしい透析処方

当院透析スタッフに知っておい
て
ほしい透析処方
~日本透析学会2013年血液透析処方
ガイドラインの概要と私案~
きたうらクリニック
北浦圭介
平成25年5月作成
血液透析量(小分子物質)
 透析量は尿素(BUN)のsingle pool Kt/Vureaを用いる。
(sp Kt/Vは日本で最も使用されるUNの除去指標)
 透析量は月1回測定する。
 Single pool Kt/Vurea
・最低透析量: 1.2
・目標透析量(当院の最低基準値): 1.6以上
・1.8以上まで死亡リスクが有意に低下している
・短時間高効率ではなく、透析時間を延長して、透析量を
延長
して透析量を増大することで、さらに死亡リスクが低下す
る可能性
がある。
透析時間①
 透析時間と予後
・日本の平均透析時間は約4時間である。
・4時間より透析時間が短いほど予後不良であり、長いほど
死亡リスクが低くなる。
・4時間未満の短時間透析においてKt/Vを大きくしても死亡
リスクの低下は期待できないかもしれない。
 推奨される透析時間
・透析時間が長いほど死亡リスクが低下する。
・Kt/V値に関係なく、透析時間が長いほど死亡リスクは低下
する。
・「透析時間は生命予後規定因子」である。
透析時間②
 血液流量と透析液流量
・「シャント血液流量」と「透析装置の血液流量」は異なる。
・Qb400-500ml/分では心臓や血圧の急激な変化も認め
ず、死亡
リスクや心臓関連死も増加していない。
→高血流量のQbは循環器系の負担を気にしなくていい
(高シャント血液流量が循環器系に負担を与える)
・積極的なQb確保が必要である。
・適切な設定→Qb:Qd≒1:2
血液透析量とβ2-ミクログロブ
リン
 「β2-MGは尿毒素物質であるとともに透析患者の
予後関連因子である。」
(30㎎/L以上で死亡リスクが上昇する)
 Β2-MGの分子量は11800である。
 Β2-MGは拡散や内部濾過促進で除去率は向上する。
 透析前β2-MG30㎎/L未満を最低目標とする。
(25㎎/L未満を当院では目標とする)
 3か月に1回はモニタリングする。
栄養評価の指標①
 栄養状態を向上するには食事摂取はもちろんのこと、体内の尿毒素
をしっかりと除去し、炎症反応を陰性化させる必要がある。
 透析効率の増加には循環動態「シャント血流量」の安定が必要であ
る。
→透析条件の変更以外に、「透析中の血圧低下を起こさないこと」、
「良好なブラッドアクセスを保つこと」、「再循環を起こさない
こと」が
大切である。
栄養評価の指標②
 MIS(Malnutrition Inflammation Score)
:自覚症状、身体状況、BMI、アルブミン、TIBCで栄養評価
 透析前血清アルブミン値:3.7g/dl以上
 GNRI:92以上
 CRP:0.5㎎/dl以下(陰性が望ましい)
ドライウェイトの設定①
 ドライウェイトの定義(すべて満たすこと)
①体液量が適正(浮腫など溢水がない)
②透析流の過度な血圧低下がない。
③長期的にも心血管系の負担がない
ドライウェイトの設定②
 最大透析間隔日の「体重増加を6%未満」にすることが望ましい。
 通常短時間透析(3時間など)と長時間透析(6時間以上)では自ずと
体重増加の目標は違ってくる。
(短時間透析のほうが体重増加制限が厳しい。)
 「食塩摂取量」、「飲水量」、「尿量」、「便秘の日数」が重要な規定
因子である。
☆重要ポイント!!
透析間体重増加で最重要項目は「食塩摂取量」である。
(食塩が飲水量を増やし、食欲を増進させ、血圧を上げ、心臓に負担を与
えて
ドライウェイトの設定③
 ドライウェイトの適切な設定は透析従事者にとって最低限必要な責
務でもあり、最も難しい責務である。
 ドライウェイトの設定方法
・透析中に著明な低血圧がない
・高血圧や浮腫がない
・胸部XPで肺うっ血がない
・心胸比が50%以下(女性は53%以下)
・hANPが60以下である
・透析後の心臓エコーで左心房(40㎜以上)やIVC(7㎜以下)を
目標とする。
エコーの場合、心臓や肺の基礎疾患によって目標設定が変わって
くる。
ドライウェイトの設定④
○血清ナトリウム濃度と塩分摂取
 塩分をたくさん摂取しても、基準値を超えるような高ナトリ
ウム血症になることはない。
 塩分摂取≠高ナトリウム血症である。
 体重増加が多い→まずは「塩分制限」を徹底。
 血清ナトリウムが135mEq/L以下の場合
「水分貯留でナトリウムが希釈されている」状態
→水分摂取が多い可能性がある。
ドライウェイトの設定⑤
 透析中の血圧低下の主な原因は「ドライウェイト
があっていない」のではなく、「除水速度が速
い」ために生じることが多い。
 平均除水速度は10ml×体重/1時間
(例:体重50㎏の場合、500ml/1時間の除
水)
 除水速度や生命予後の観点からも透析時間を延長
した方が望ましい。
オンラインHDF①
 2010年4月よりオンラインHDFに対応した人工透析装置
が承認された。
 2012年4月よりオンラインHDFの保険点数が承認された。
(ただし、原則としてヘモダイアフィルターを使用するこ
と)
 オンラインHDFの適応病名(透析アミロイドーシスなど)は
限定されておらず、すべての慢性維持透析患者に施行が可能
となった。
 前希釈オンラインHDFが透析患者愁訴を改善させる報告が多
い。
オンラインHDF②
 Β2ミクログロブリンの除去効果が高い。
 貧血改善効果やESA製剤抵抗性を抑制する可能性がある。
 炎症改善効果
 透析依存性血圧低下の軽減効果
 生命予後の改善、心血管イベントによる死亡リスクの抑制
透析スケジュール①
 標準血液透析:週3回、3-6時間未満
 長時間透析:週3回、6時間以上
 頻回透析:週5回以上
・頻回短時間血液透析:週5回以上、1.5-3時間未満
・頻回標準時間血液透析:週5回以上、1.5-3時間未満
・頻回長時間透析:週5回以上、6時間以上
透析スケジュール②
○長時間/頻回血液透析のメリット
 除水量が少ない分、透析中の血圧が下がりにくい。
 血圧コントロールが良好になる。
 降圧剤の減量が可能となる。
 心収縮率の増加や左心室重量の減少。
 リン値の減少やリン吸着剤の減量。(食事摂取量が増加す
る)
 カリウム値が下がる傾向にあるため、果物や野菜の摂取制限
が少なくなる。
 心血管イベントの減少、入院率の低下、QOLの向上