中小口径望遠鏡で行う突発 天体・現象の観測 野上大作(京大・理・附属天文台) 2009/12/14(Mon) 連星・変光星・低温度星研究会@広島 中小望遠鏡の強み • 数が多い • 観測時間に融通が利く 中小望遠鏡の弱み • 集光量が小さい • 大きな装置を付けられない • (角度分解能が悪い) ということで、中小口径望遠鏡に 適した観測は -ToO観測 -モニター観測 -サーベイ観測 突発天体・現象の10年くらい前までの地上観測 超新星・新星ハンターなどのアマチュア天文家 &貧弱なサーベイ(ほぼ可視のみ)が発見 発見情報 たまたま観測時間を持っていた観測者が機 転を利かせて断片的な観測 + 世界中に散らばったアマチュアによる可視 測光観測 この10年くらいの状況の変化 発見の部分が「(主に日本の)レベルアップしたアマ チュア+強力なサーベイ(γ線、X線含む)」に変わり、 様々な突発現象が早い段階で検出・報告されるよ うになった。 しかし、発見後の観測状況はあまり変化していない 突発現象発生の初期から多モードでの継続的 な観測を行うことで、これまでに誰も見たことの ないデータを得て新しい局面を切り拓く! 日本の中小口径望遠鏡事情 • 多数の意識の高いアマチュア(新天体捜索+ 小望遠鏡での可視光測光観測) • 多数の1mクラスの望遠鏡(大学・研究機関+ 公開天文台) • 1mクラスの望遠鏡での観測装置の広がり (各種分光器、赤外線カメラ、、、) • なんと言っても意欲溢れる能力の高い多数の 観測的研究者! 日本の口径1m以上の望遠鏡 • 2mなゆた望遠鏡(可視撮像、可視中低分散分光、3波長同時近赤 外カメラ、近赤外分光) • 1.88m岡山観測所(可視高分散分光、低分散分光、近赤外撮像・分 光、HBS) • 1.8m名大・ニュージーランド(MOA;可視広視野カメラ) • 1.5mかなた望遠鏡(可視撮像、低分散分光、近赤外撮像分光、偏 光観測) • 1.5mぐんま天文台(低分散分光、高分散分光、赤外線カメラ) • 1.4m名大・南アフリカ(近赤外3色同時撮像) • (1.3mJAXA; GRB可視残光観測用) • (1.13m阿南市科学センター; 可視撮像?小惑星の発見実績有り) • 1.05m木曽観測所(広視野カメラ、近赤外撮像) • 1.04m mini-TAO(近赤外線撮像、中間赤外撮像) • 1.01m美星天文台(可視撮像、可視低分散分光、中分散分光) • 1.0m鹿児島大学(可視撮像、近赤外撮像) 日本の1m以上の現在望遠鏡2 • 1.3m望遠鏡(京都産業大学・神山天文台) 今年度末運用開始予定! • 3.8m新技術望遠鏡(京大他@岡山) 2012年度ファーストライト予定 • 1.6m望遠鏡(北大@名寄市立木原天文台) ??? 日本の1m以上の望遠鏡3 • • • • • • • • • 1.5m情報通信研究機構 1.3m仙台市天文台 1.1m銀河の森天文台 1.05mみさと天文台 1.05mむりかぶし望遠鏡(可視撮像?) 1.03m さじアストロパーク 1.0m美星スペースガードセンター 1.0m富山市天文台 1.0mかわべ天文台 これらの結果 突発天体のToO観測+ 継続的なモニター観測 を連携して行うことで、 前例のないデータ取得 が可能! 光赤外ToO+モニターでの連携観測 によるサイエンスI • 超新星 -早期の分光観測 →超新星の母天体 →機構 →Ia型は距離指標? • 新星 -測光+分光 →光度曲線の多様性 +偏光 →初期&減光期の振動や 再増光 →爆発の機構(非対称性) 光赤外ToO+モニターでの連携観測 によるサイエンスII • GRB残光現象 -zの測定→古代史、宇宙論 -短時間変動現象、偏光観測→GRBの機構 -多様性;残光を伴わないGRB, short GRB • Blazar ー可視・近赤での短時間変動+偏光変動 →ジェットの機構? 光赤外ToO+モニターでの連携観測 によるサイエンスIII • X線連星、激変星 -短時間変動(測光+分光観測) →降着円盤の挙動や構造 →コンパクト星周りの極限状況物理 ー偏光観測 →ジェットの機構 光赤外ToO+モニターでの連携観測 によるサイエンスIV • いろいろな変光星・変光現象 -V838 Mon, V4334 Sgr →恒星の進化(最期の大爆発?) -Tago Event →カシオペア座方向のマイクロレンズ現象 →恒星の質量分布 -Be星、Be/X線連星 →大質量星の質量放出現象、進化 ー恒星フレア、恒星活動 →MHD現象、ダイナモ 非常に興味深いのに、 断片的な観測しかなくて 理解が進んでいない現 象がいくらでもある! さらに大望遠鏡との連携 や多波長連携、国際連 携で夢は膨らむ! 現在の総力を挙げた連携観測 • OAO/74 HDS + かなた望遠鏡/HOWPol + ぐんま/GLOWS + 西はりま/MALLS(中分散) + 鹿児島/赤外線カメラ + アマチュアの測光観測 • OAO/74 では ISLE/sp. でぐんまで GAOS とか。 • 将来的に 3.8m で高速測光・分光とか。京産大 の1.3m、北大の1.6mはどういう観測装置がつく のか? • IRSFとかMini TAOを含む多経度観測。 今後に向けて • • • • • • 組織作り (All Japan で臨む) 観測人員の交流(大学から公共天文台) 観測データセンター 標準解析手順とソフトウェアの共有 観測装置の製作 自動望遠鏡化 まとめ • 日本には突発天体・現象のToO観測や追跡 モニター観測で大成果を挙げる、物的・人的 資源は既に大いにある • 中小口径望遠鏡で世界をリードできるサイエ ンスのテーマも豊富にある • 個々の観測所の状況に応じつつ、連携観測 を実行する組織作り・環境作りをしていかな ければならない
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