対象世界と その背景知識を扱う統合型教育システムに

対象世界とその背景知識を扱う統合型
教育システムについて
静岡大学理工学研究科伊東研究室
システム科学専攻 高橋 勇
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999(人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999(人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
研究の背景
ミレニアムプロジェクト「教育の情報化」 (文部科学省) H12~17
「教育の情報化推進事業」(経済産業省)
教育機関へのコンピュータの導入を推進
小・中・高等学校へのコンピュータ・LANの導入
(ハード面での環境整備は整いつつある)
ソフト面での環境整備が課題
教育支援システムの需要が高まっている
・教育対象ごとのコンテンツの充実
・高度な教育支援システムの開発
ITS と マイクロワールド
教育支援システム
酸と塩基は中和します。
例.
HCl + NaOH H2O + NaCl
質問はありますか?:
酸とは何ですか?
ITS(Intelligent Tutoring System)
記号的な対話を通じて
背景知識を
学習者と知的にやりとりする
MW(Micro-World)
学習者が自由に操作可能な
世界を提供し
対象世界を直接扱わせる
統合の必要性
ITSの機能の一部
Help
酸と塩基は中和します。
マイクロワールドの
機能の一部
例.
HCl + NaOH アニメーション
H2O + NaCl
質問はありますか?:
HCl は
酸の一種です
酸とは何ですか?
ITS
MW
あらかじめ応答が用意
されている入力しかできない!
操作できない!
統合の必要性
Help
酸と塩基は中和します。
例.
HCl + NaOH アニメーション
H2O + NaCl
質問はありますか?:
ITS
HCl は
ITS
酸の一種です
マイクロワールド
Micro-World
酸とは何ですか?
ITS
MW
統合!
統合型システムの枠組み
酸と塩基は中和します。
例.
HCl +シンボルレベル
NaOH H2O + NaCl
質問はありますか?:
イメージレベル
酸とは何ですか?
ITS
知識や論理に対する
学習者との言語による
対話を扱う
MW
環境に対する
学習者の直接的な
操作を扱う
統合型システムの枠組み
酸と塩基は中和します。
統合!
例.
HCl +シンボルレベル
NaOH H2O + NaCl
質問はありますか?:
イメージレベル
酸とは何ですか?
ITS
知識や論理に対する
学習者との言語による
対話を扱う
MW
環境に対する
学習者の直接的な
操作を扱う
統合型システムの動作
酸は塩基と
中和します。
回答
NaOH が塩基の
一種だということを
知っていますか?
アドバイス
HClは酸?塩基?
回答:
簡単な演習
0.5ml
次の学習課題へ
計算せよ!
ma=NaxMa
m b=
質問!
いきづまり
学習終了!
ITS or MW
統合型システムの構成
教授戦略
初期環境・新規演習問題
設定機構
教授戦略実行機構
対象世界モデル
シミュレータ
問題解決
機構
学習者モデル
進捗状況
推定機構
入力解釈
機構
アドバイス
生成機構
インタフェース
計算せよ!
ma=N1axM1a
mb=
実験
ウインドウ
問題演習
ウインドウ
質問入力:
助けてください
質疑応答
ウインドウ
統合型システム構築のポイント
ITSとマイクロワールドを
適切に制御可能
初期環境・新規演習問題
設定機構
対象世界モデル
シミュレータ
インタフェース
問題解決
機構
教授戦略
教授戦略実行機構
学習者モデル
進捗状況
推定機構
入力解釈
機構
アドバイス
生成機構
ITSとマイクロワールドの
双方から参照・更新可能
計算せよ!
質問入力:
ma=N1axM1a
助けてください
mb=
MWにおける学習者モデルの構築方法に
関する研究はほとんどなされていない
実験
問題演習
質疑応答
ウインドウ
ウインドウ
ウインドウ
関連した他の研究について
AB=AC
<ACB=?
・幾何証明を行う知的CAI(岡本96)
証明過程を文字と図を用いて入力・出力できる
(証明用として図を扱っているが基本的にはITSとして動作する)
学習者モデルはITSと同様
・インテリジェントパッドを用いた教授機能を持つMW(野口98)
道具パッド・操作パッドの張り合わせ構造に応じた
電気を
つける
教授用パッドをあらかじめ用意しておく
には?
学習者モデルは持たない
・Bimodus-CAI(Ohtsuki 93,94,新ヶ江95)
知識の帰納的発見をMWで支援 学習ステップ
知識の演繹的利用をITSで支援 で切り替える
学習者の操作手順のモデル化
(ひとつの操作を見れば、その目的が一意に特定できるドメイン)
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
対象世界モデル
イメージレベルの表現
シンボルレベルの表現
対象世界
ビーカー中に
NaOHaqがあります
実現のための様々なアプローチ
・シンボルレベルのシミュレーション
+可視化機構によるイメージ化
・数値シミュレーション
+モデル解釈機構によるシンボル化
高校化学のドメインは
こちらが向いている
空間座標を扱わない
時間の連続性を扱わない
対象世界モデルとシミュレーション
因果関係をベースとした記号的なシミュレータ(ITSと同様)
数量関係
物質量 ÷ 質量
の知識
=
重量モル濃度
存在する
塩基
ビーカー 塩基
溶解する
存在する
ビーカー 水
世界
モデル
ビーカー 塩基の水溶液
:
存在する
ビーカー1 NaOH
0.1mol
ビーカー1
1mol/kg
存在する
ビーカー1
水
100g
NaOH NaOHaq
KOH KOHaq
因果関係の知識
存在する
GUI
存在する
塩基の
水溶液
NaOHaq
:
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
学習者モデル
学習者モデル
学習者に適した教授を行うために
学習者の教育対象に対する理解状況をモデル化したもの
代表的な例 ITSの分野での研究
・オーバーレイモデル
教育対象知識の部分集合として表記
・バグモデル (Brown(78)など)
典型的な誤りのパターンのどれに相当するかを表記
・パータベーション法 (竹内(87)など)
正しい知識に何らかの変形が加わったものとして表記
MWにおける学習者モデルの特徴
・学習後の学習計画の設定・修正 (長期学習者モデル)
従来型のオーバーレイモデルと同様の手法で構築可能
・学習途中での(ITS的な)支援
次はこう操作
すべきだよ
この知識は
理解して
る?
?
どんな行動をしてる?
何が実行できてない?
どの知識を習得してる?
どの知識が理解不足?
操作
学習者
(短期学習者モデル)
システム
学習途中で 学習者の操作にもとづいて
学習者のプランのモデル の構築が必要
学習者の知識のモデル
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997,
ICCE1998
1.プランについて
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
2.MWにおけるプラン推定の特徴
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
3.プランのモデルの構築アルゴリズム
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
プランについて
・プラン
目的と、それを達成するための行為系列の関係
・プラン構築技術
プランニング
決められた目的と世界の状況からプランを作成
プラン認識
行為者の行動や発話と世界の状況から目的やプランを推定
目的
目的
プラン
目的を達成するために
した行動や対話
ユーザ
正しい
プラン
ユーザの
プラン
実世界
システム
目的
MWにおけるプラン推定の特徴
作業の最終的な目的が自明
作業目的の仮定が可能
対象世界はシステム内の仮想世界
不確定要因の考慮が不要
プランの推定は比較的容易
実験手順に観察行為がある
システムに観測できない行為
行動に一貫性がない
サブ目的
プラン
目的
目的
目的を達成するために
した行動や対話
冗長な行為
を扱う
悪影響を与える行為
作業目的
目的
ユーザの
プラン
観察
ユーザ
試行錯誤
正しい
プラン
実世界
システム
システム内の仮想世界
サブ目的
目的
プランのモデルの構築アルゴリズム
1:プラン認識部
学習者が達成したサブ目的を認識
2:進捗状況判定部
作業の最終目的を達成したか、順調に
作業しているか、いきづまっているかを判定
3:プラン生成部
作業の最終目的を達成するための手順の
何ができていて、何ができていないか推定
・進捗状況
・学習者が達成した目的やサブ目的
・学習者が次にすべき操作
・学習者がした冗長な操作
・学習者がした悪影響を与える操作
知識とプランの記述方法
実験手順の知識の記述方法
目的手段の知識
Action 1
目的の行為
逐次実行
順不同実行
Action 2
Action 3
Action 4
目的を達成するためにすべき手段の行為郡
プランの記述方法
目的手段の知識のコピーを組み合わせて記述する
1:プラン認識部
順調に操作しているときの処理
目的手段の知識
A7
A5
A5
A6
b1
ボトムアップ処理
A7
A6
b2
b3
b4
An 展開可能行為
bn 直接実行可能行為
学習者の操作
A5
A6
A5
A6
b1
b2
b3
b4
b1
b2
b4
b3
2:進捗状況判定部
最終目的
・順調に操作している場合
大きな木が少数生成
操作
最終目的
・目的を達成した場合
木のルートが最終目的と一致
操作
・いきづまっている場合
独立した木や操作が多数生成
(または学習者が助けを求めたとき) 操作
最終目的
3:プラン作成部
最終目的
A7
いきづまったときの処理
トップダウン処理
ここまでの操作は
正しくできている
b1
b1
正しい操作
A7
A5
A6
A5
A6
b2
b2
b3
b8
b4
次はa3かa4の
どちらかをすべき
冗長な操作
システムには観測できない行為
観測できない行為
実験手順のひとつではあるが、入力されない行為
?
見なさ
い
観測不可
環境の状態を見る
操作する
認識する必要がある
観測可
観測可
次にすべき操作
環境への操作
次にすべき操作が正しく実行できていれば、
観測できない行為は実行できている
観測できない行為の処理
A4
b1
b2
b3
A4
b1
b2
観測できない行為(マークを付けておく)
次にすべき操作が実行されたら
すでに実行されていると判断する。
b1しかできていない場合、
次にすべき行為はb2。
b3
b1
A4
b1
b1
b2
b3
b3
b1、b3が実行されたら
b2は実行されていると判断する。
A4が達成されたと判断される。
冗長な行為と悪影響を与える行為
最終目的 酸と塩基を中和する
冗長な行為
目的達成に不必要な行為
無視すればよい
冗長な行為
HCl aq
NaOH aq NaCl aq
悪影響を与える行為
目的達成の邪魔をする行為
NaCl aq
認識する必要がある
悪影響を与える行為
HCl aq
NaOH aq NaOHを作ったという操作を
台無しにしてしまう行為
悪影響を与える行為の認識
ある物質に対して一連の操作をする必要があるときに、
その途中で操作対象の物質の組成や属性を変化させた操作は
悪影響を与える操作である。
正しい実験手順
酸を作る
その酸(水溶液1)と
その塩基(水溶液2)を
混ぜる
塩基を作る
水溶液2
水溶液1
HCl aq
水溶液2 悪影響を与える行為
NaOH aq
水溶液1
NaClaq
水溶液2
NaOH
水溶液2
作られた
塩基とは
異なる!
悪影響を与える行為の認識処理
操作対象のマッチングの際に、
操作履歴と対象世界の状態の履歴を参照し、
操作対象の組成・属性が変化する操作をしているか調べる
酸の水溶液を
ビーカー1に
用意する
塩基の水溶液を
ビーカー2に
用意する
ビーカー1へ
ビーカー2内を
注ぐ
?
HClaqを
ビーカー1に
用意する
NaOHaqを
ビーカー2に
用意する
KClを
ビーカー2に
混ぜる
ビーカー1へ
ビーカー2内を
注ぐ
1
1
2
KCl
2
2
2
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
1.本研究で扱う知識のモデルについて
ICCE1999
(人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.知識推定の問題点と解決案
5.試作システムの実装例(6章)
3.知識のモデルの構築アルゴリズム
6.まとめ
学習者の知識のモデルについて
高校化学の知識の分類
・目的手段の知識
・数量関係の知識
・因果関係の知識
・物質の概念階層の知識
・物質の構造の知識
学習者モデル
(オーバーレイの一種)
1:習得が確実と思われる知識と
それ以外(習得が疑わしい知識)
に分類する (AIED1997)
2:疑わしい知識に疑わしさの
順位をつける (ICCE1998)
知識推定の問題点と解決案
知識のモデル構築における問題点
学習者の行為だけから習得知識を推定する事は不可能
知識を適用した結果がシステムに判別できる形で
学習者の行為に現れる環境が必要!
知識のモデル構築のアイデア
条件付きの作業目的
作業目的
条件を満たす操作
学習者
確実に習得して
いると判断する
条件を満たすために
必要な知識
条件の付与
クラス条件
操作対象の
物質が属すべき
クラスの条件
塩基の水溶液
を作る
概念階層
NaCl
NaOH
NaOHは
塩基である
CH3COOH
H 2O
因果関係
NaOH
H2O
定量条件
操作において
設定すべき
数量の条件
モル濃度 2 mol/l
NaOHaq
の水溶液を作る
H 2O
数量関係
水溶液のモル濃度
0.1mol
0.05l
||
溶質の物質量÷溶液の体積
知識のモデルの構築アルゴリズム
1:知識間の関係の記述
2:習得が確実な知識の推定 (AIED 1997)
(方針・行為の具体化・条件の伝播・知識の収集)
3:習得が疑わしい知識の推定
4:疑わしい知識の順位付け (ICCE 1998)
(方針・ランクによる順位付け・同ランク内の順位付け)
1:知識間の関係の記述
目的手段
の知識
用意する 重量モル濃度
塩基の水溶液
逐次
用意する
物質量
塩基
加える
質量
水
背景知識
因果関係 塩基
の知識
溶解する
塩基の水溶液
物質の概念
階層の知識
水
物質
属性間関係
数量関係
の知識 物質量 ÷ 質量 = 重量モル濃度
塩基の水溶液
NaOHaq
KOHaq
2:習得が確実な知識の推定(方針)
条件付きの
最終目的
用意する 1 mol/l
NaClaq
K1
K2
条件の伝播
行為
属性 X
条
件
の
伝
播
物質 Y
伝播に
用いた知識
K1
K2
習得済み
条件をチェック
行為
属性 x
物質 y
K3
K4
学習者
の操作
用意する 0.5mol
NaOH
行
動
の
具
体
化
具体化に
用いた知識
K3
K4
習得済み
2:習得が確実な知識の推定(行為の具体化)
1mol/Kg
NaOHaq
用意する 重量モル濃度
塩基の水溶液
逐次
学習者
の行為
用意する
物質量
塩基
加える
質量
水
用意する
0.1mol
NaOH
加える
100g
水
因果関係の知識
塩基
NaOH 溶解
水
数量関係の知識
物質量 ÷ 質量 = 重量モル濃度
塩基の水溶液
NaOHaq
0.1mol
100g
1mol/Kg
2:習得が確実な知識の推定(条件の伝播)
目的ー手段間
目的
伝
播
用意する
用意する
重量モル濃度
NaOHaq
用意する
重量モル濃度
塩基の水溶液
物質量
塩基
加える
質量
水
NaOH
手段ー手段間
目的
用意する
学習者の行為 用意する
用意する
1mol/Kg
塩基の水溶液
用意する
重量モル濃度
塩基の水溶液
物質量
塩基
0.1mol
塩基
加える
伝播
質量
100g
水
2:習得が確実な知識の推定(知識の収集)
最終目的
D1
D1
A3
A3
学習者の
操作
K2
B3
K1
C3
B3
K3
C3
a1
a2
b1
b2
a1
a2
b1
b2
c1
c2
C3’
K4
c1’
c2’
c1’
c2’
K4
2:習得が確実な知識の推定(知識の収集)
最終目的
最終目的から
学習者の操作へ
至るパス
D1
D1
習得が確実な知識
マッチングに
成功した部分
A3
条件を満たす
操作ができた
A3
学習者の
操作
K2
B3
K1
C3
B3
K3
C3
a1
a2
b1
b2
a1
a2
b1
b2
c1
c2
C3’
K4
c1’
c2’
c1’
c2’
K4
3:習得が疑わしい知識の推定
目的を達成するために必要な知識
トップダウン木を構成する目的手段の知識と
その背景知識
学習者が習得していると思われる知識
(前述の方法で選ばれた知識)
K6
K5
K4
習得が疑わしい知識
K1
K3
K2
疑わしさの順位をつける
4:疑わしい知識の順位付け(方針)
・順位付けの基準(ヒューリスティックス)を定義し、
疑わしさを3つのランクに分けて順位付けする
・同じランクの知識の順位決定方法を定義する
ランク1
最も
疑わしい
同程度の疑わしさ
1
2
3
ランク2
2番目に
疑わしい
同程度の疑わしさ
4
5
6
ランク3
3番目に
疑わしい
同程度の疑わしさ
7
8
9
4:ランクへの順位付け(基準1)
基準1 学習者がいきづまったとき、
その直後にすべき操作に必要な知識は
それ以外の知識よりも疑わしい
a4をするのに
必要な知識
正しい操作
a1
a2
学習者の操作
a1
a2
a3
a3
a5をするのに
必要な知識
a4
a5
a8
a7
いきづまり
4:ランクへの順位付け(基準2)
基準2 学習者がもし次にすべき操作と一部異なる
操作をしていたなら、その違う部分を決める
のに必要な知識は疑わしい。
知識
a4をするのに
必要な知識
正しい操作
学習者の操作
a4をするのに
必要な知識
a4をするのに
必要な知識
a4
a7
いきづまり
4:ランクへの順位付け(基準2)
基準2 学習者がもし次にすべき操作と一部異なる
操作をしていたなら、その違う部分を決める
のに必要な知識は疑わしい。
知識
操作の決定
に必要
正しい操作
学習者の操作
値の決定に
必要
用意
用意
物質の決定
に必要
0.5 mol/l HClaq
a4
a7
0.2 mol/lいきづまり
HClaq
4:ランクへの順位付け(プランが持つ情報)
最終目的
D1
目的達成に必要なプラン
D1
A3
学習者が
達成した
プラン
学習者
の操作
A3
a1
a2
a1
a2
K2
b1
B3
K1
C3
B3
K3
C3
b2
c1
c2
冗長なプラン
B3’
K4
b1’
b2’
b1’
b2’
K3’
4:ランクへの順位付け(基準1による収集)
基準1
D1 疑わしいパス
最終目的
次にすべき操作
A3
学習者が
達成した
プラン
学習者
の操作
A3
a1
a2
a1
a2
疑わしいと
される知識
D1
K2
b1
B3
K1
C3
B3
K3
C3
b2
c1
c2
疑わしいパスに
関連する知識
B3’
K4
b1’
b2’
b1’
b2’
K3’
4:ランクへの順位付け(基準2による収集)
基準2
D1 疑わしいパス
最終目的
D1
行為間の比較
冗長なプラン
A3
A3
学習者
の操作
a1
a2
a1
a2
K2
b1
B3
K1
C3
B3
K3
C3
b2
c1
c2
B3’
K4
b1’
b2’
b1’
b2’
K3’
4:ランクへの順位付け(基準2による収集)
疑わしい知識のタイプの特定
用意する
モル濃度
1 mol/kg
塩基の水溶液
NaOH aq
用意する
モル濃度
2 mol/kg
塩基の水溶液
NaOH aq
モル濃度
1 mol/kg
水溶液
NaCl aq
数量関係の知識
用意する
モル濃度
1 mol/kg
塩基の水溶液
NaOH aq
用意する
物質の概念階層と因果関係の知識
用意する
モル濃度
1 mol/kg
塩基の水溶液
NaOH aq
目的手段の知識
熱する
温度
80 ℃
塩基の水溶液
NaOH aq
(または冗長な操作がない場合)
4:ランクへの順位付け
ランク1
ランク2
基準1
疑わしいパス
疑わしいパス
基準2
疑わしいタイプ
他のタイプ
ランク3
他のパス
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
統合型システムの構成
教授戦略
初期環境・新規演習問題
設定機構
教授戦略実行機構
対象世界モデル
シミュレータ
問題解決
機構
学習者モデル
進捗状況
推定機構
入力解釈
機構
アドバイス
生成機構
インタフェース
計算せよ!
ma=N1axM1a
mb=
実験
ウインドウ
問題演習
ウインドウ
質問入力:
助けてください
質疑応答
ウインドウ
教授戦略
学習者の状況に応じてシステムの動作を制御
・順調に学習しているとき
行動を監視する
・課題を達成したとき
次の学習課題を設定する
・質問されたとき
質問に答える
・いきづまったとき
アドバイスを提示し、必要に応じて
新たな学習課題を設定する
学習者モデル
長期学習者モデル
知識2
学習者の学習履歴を保存
知識1
知識4
知識3
短期学習者モデル
学習途中の一時的な学習状況を保存
(a) 学習の進捗状況
(b) 次にすべき操作
悪影響を与える操作
(c) 習得が疑わしい知識
(b) 学習者からの質問
進捗状況
終了?
順調?
正しい(誤りの)操作
いきづまり?
操作
疑わしい知識
知識1
質問
知識2
質問
知識3
システムの制御の方法
システムの動作の選択
長期学習者モデル
知識2
知識1
知識4
知識3
順調
行動を監視する
短期学習者モデル
学習終了
進捗状況
終了?
順調?
正しい(誤りの)操作
いきづまり?
操作
質問
質問に答える
疑わしい知識
知識1
次の学習課題を設定する
知識2
知識3
いきづまり
質問
質問
アドバイスを提示し、必要に応じて
新たな学習課題を設定する
システムの制御方法(アドバイス)
長期学習者モデル
知識2
知識1
知識4
知識3
短期学習者モデル
進捗状況
終了?
順調?
正しい(誤りの)操作
いきづまり?
操作
質問
知識2
質問
New
知識3
疑わしい知識
知識1
(1)疑わしい知識を順に示し
詳しく知りたいかをたずねる
(2)正しい(誤りの)操作を
行動を監視する
知りたいかたずねる
知識3
次の学習課題を設定する
解説
(1-1)アドバイスとして知識の
解説を行う.
質問に答える
(1-2)知識にリンクされている
学習課題を用意する
アドバイスを提示し、必要に応じて
新たな学習課題を設定する
プレゼンテーションの流れ
1.統合の必要性と統合型システムの枠組み(2章及び5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
2.対象世界モデル(5章)
3.学習者モデルの構築
3-1.学習者のプランのモデルの構築(3章)
ICCE 1995,人工知能学会論文誌 2001
3-2.学習者の知識のモデルの構築(4章)
AIED 1997, ICCE1998
(人工知能学会論文誌・現在照会中)
4.教授戦略とシステムの制御(5章)
ICCE1999 (人工知能学会研究会研究奨励賞)
5.試作システムの実装例(6章)
6.まとめ
試作システムの実装例
プラットフォーム: UNIX
プログラミング言語: Tcl/Tk and LISP
試作システムの規模
学習対象
酸塩基の中和とそれに関連する知識の学習
演習内容
知識解説 3
問題演習 4
(選択問題3・計算問題1)
実験演習 7
(課題実験6・自由実験1)
知識数
物質概念 274
(中和で使われないものを含む)
目的手段 8
因果関係 18
数量関係 18
試作システム上の学習者モデルのテスト
支援すべき状況に応じた
学習者の行動を想定
習得が不十分な知識
酸の概念階層
(概念階層)
試作システムを
操作して動作を確認
学習者の典型的な行動
塩基の水溶液は作れるが
酸の水溶液が作れない
中和の因果関係
(因果関係)
酸と塩基の水溶液は作れるが
酸の水溶液どうしを混合する
モル濃度の定義
(数量関係)
酸と塩基の水溶液を
不適切な量混合する
指示薬の使い方
(目的手段)
酸と塩基を過不足なく中和
させた後で指示薬を混ぜない
アドバイスの例
学習者は多くの物質を用意したが、
酸を用意することはできなかった。
アドバイスの例
酸の水溶液に関する説明の提案
学習者は多くの物質を用意したが、
酸を用意することはできなかった。
アドバイスの例
学習者は酸と塩基を混ぜることはできたが、
過不足なく中和させるだけのモル濃度ではなかった。
アドバイスの例
モル濃度の定義に関する説明の提案
学習者は酸と塩基を混ぜることはできたが、
過不足なく中和させるだけのモル濃度ではなかった。
アドバイスの例
モル濃度の定義に
関する説明
新しい環境を用意する例
モル濃度の定義に
関する説明
この知識を学習したい場合はこちら
新しい環境を用意する例
課題: モル濃度 0.4 mol/l の
水溶液を用意しなさい。
まとめ
・学習者の操作から、学習者のプランのモデルと
知識のモデルを構築する方法を提案した
・学習者モデルを参照し、学習者に応じて
シンボルレベルとイメージレベルの学習を制御可能な
統合型教育システムの枠組みを示した
・高校化学のドメインにおいて実現手法を提案した
本研究の手法を適用可能な条件
因果関係や数量関係を目的手段と関連づけて
記録しておくことができる領域
対象世界の状態と操作を動詞・名詞・属性を
用いて記述可能な領域
他の研究分野との関連
ヒューマンインタラクション
インタラクションの質
ユーザ
発話
記号入力
操作・行動
言語的
シンボル的
言語以外
イメージ的
言語的な情報と
それ以外の情報を扱う
発話
ユーザへの適応
ユーザの
システム
状態の把握
記号出力
画像・動画
適応的な
行動の実行
ユーザーモデルを
構築する
制御の戦略を
設計する
課題
・学習者モデルについて
偶然にクラス条件や定量条件を満たしてしまった場合、
その条件を満たす知識を習得済みと判断してしまう
→偶然条件を満たした場合に習得済みとしない工夫
・対象世界モデルについて
イメージとシンボルを用いた解説・アドバイスの実現
・教授戦略について
教育システムとしての機能の向上と
学習者を被験者とした評価実験の実施
・他分野への応用の可能性の模索
おわり
静岡大学大学院理工学研究科
システム科学専攻 高橋 勇
学習者モデルの評価
学習者モデルの評価方法
学習者の状況としてありうるケースを想定し、
試作システムの振る舞いをするチェックする
酸塩基の中和に関する課題の達成に必要な知識
(1)物質概念階層知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
学習者モデルの評価
ケース1
酸とは何かについて理解していない。
想定される入力
塩基の水溶液は作れるが酸の水溶液が作れない
習得済み
(1)物質概念階層知識
ランク1に属す疑わしい知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
学習者モデルの評価
ケース2
中和の因果について理解していない。
想定される入力
酸と塩基の水溶液を作るが、酸の水溶液どうしを混合する
習得済み
(1)物質概念階層知識
ランク1に属す疑わしい知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
学習者モデルの評価
ケース3
モル濃度について理解していない。
想定される入力
酸と塩基の水溶液を不適切な量混合する。
習得済み
(1)物質概念階層知識
ランク1に属す疑わしい知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
学習者モデルの評価
ケース4
指示薬について理解していない。
想定される入力
酸と塩基を過不足なく中和した後で操作が止まる。
習得済み
(1)物質概念階層知識
ランク1に属す疑わしい知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
学習者モデルの評価
ケース5
全ての知識を理解している。
想定される入力
酸と塩基を過不足なく中和し、試薬を混ぜて確認する。
習得済み
(1)物質概念階層知識
ランク1に属す疑わしい知識
酸の水溶液
中和指示薬
塩基の水溶液
(2)因果関係の知識
(3)目的手段
(4)数量関係
中和
指示薬の変色
過不足なく中和させる
指示薬を加えて中和を確認する
過不足ない中和における酸塩基の関係
溶液のモル濃度の定義
テストで明らかになった問題点
支援すべき状況に応じた
学習者の行動を想定
習得が不十分な知識
酸の概念階層
(概念階層)
中和の因果関係
(因果関係)
モル濃度の定義
偶然、塩基の水溶液を
(数量関係)
作れてしまったときにも
塩基の概念は理解できて
指示薬の使い方
いると判断してしまう
(目的手段)
試作システムを
操作して動作を確認
学習者の典型的な行動
塩基の水溶液は作れるが
酸の水溶液が作れない
酸と塩基の水溶液は作れるが
酸の水溶液どうしを混合する
クラス条件は定量条件に比べて
酸と塩基の水溶液を
偶然満たしてしまう可能性が高い
不適切な量混合する
↓
酸と塩基を過不足なく中和
偶然には満たせない状況のとき
させた後で指示薬を混ぜない
のみ習得済みと判断する工夫
質問応答の例1
質問応答の例2
問題演習の例
システムの制御方法(課題の設定)
長期学習者モデル
知識2
知識1
知識4
知識3
行動を監視する
短期学習者モデル
進捗状況
終了?
順調?
正しい(誤りの)操作
いきづまり?
操作
質問に答える
疑わしい知識
知識1
質問
次の学習課題を設定する
知識2
質問
知識3
アドバイスを提示し、必要に応じて
新たな学習課題を設定する
システムの制御方法(質問に答える)
長期学習者モデル
知識2
知識1
知識4
知識3
行動を監視する
短期学習者モデル
進捗状況
終了?
順調?
正しい(誤りの)操作
いきづまり?
操作
質問に答える
疑わしい知識
知識1
質問
次の学習課題を設定する
知識2
質問
知識3
問題解決
アドバイスを提示し、必要に応じて
機構
新たな学習課題を設定する
シミュレータ
4:同一ランク内の順位付け(ランク1)
ランク1 ランク1の知識は(因果関係と概念階層を除き)同じタイプ
因果と概念階層の順番を決める
タイプごとにヒューリスティックスを定義
数量関係
プランの木の葉に近いノードに関連づけられた
知識から順に疑わしいと判断する。
(設定した属性値を式を代入する順序に相当する)
概念階層
概念階層の葉に近いものから順に疑わしいとする。
(具体的な物質に近いものを優先する)
因果関係
学習前に構築された学習者モデルを利用する。
プランの木のルートに近いノードに関連づけられた
知識から順に疑わしいと判断する。
(計画を詳細化していく順序に相当する)
目的手段
4:同一ランク内の順位付け(ランク2)
ランク2 ランク2の知識のタイプは
ランク1で疑わしいとはされなかったタイプ
ランク1の疑わしいタイプに応じて
他のタイプに優先順位をつける
→ランク1と同じ処理が可能
ランク1の
知識のタイプ
疑わしさの順位
数量関係
概念階層
因果関係
概念階層→因果関係→目的手段
目的手段
概念階層→因果関係→数量関係
目的手段→数量関係
4:同一ランク内の順位付け(ランク3)
ランク3
ランク3の知識は疑わしいパス以外の
パスに関連した知識。
パスに順位をつける
→ランク1・ランク2と同じ処理が可能
実行順序にそって
パスに順位を付ける
ランク1 & ランク2