LCA講義全部 東北大学使用版

リスク・コミュニケーション道場
安井 至
東京大学名誉教授
国際連合大学元副学長
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『道場』とは何か
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スキルを向上させるために、仲間同士が仮
想的に対戦相手を勤める場
スキルの内容
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リスク・コミュニケーションの相手は、一般市民
であるから、使う技(言葉、ロジック)などは、市
民に理解可能であること。
しかし、出し手のもつ知識の量・質は、市民レベ
ルをかなり超えている必要がある。
専門性は高く、しかし、専門用語は『禁句』。
向上させるべきスキルとは、失敗しないスキル
=相手の立場を想定できるというスキルである 2
リスコミが難しい理由
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正反対の目的をもった人間と人間がコミュ
ニケーションをすることだから
合意を目指すことはもともと不可能
知識のレベル・量ともに大きく異る両者が
目指すものは何か(=到達点)が不明確だ
と、そもそも成立しない
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リスク・コミュニケーションの到達点
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リスク・コミュニケーションは、『レベル2を
到達可能な最高レベルとして行う双方向
のプロセス』と定義する
到達点は以下のように色々ある
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レベル0:相互理解の(若干の)向上・改善
レベル1:不完全な納得感の実現
レベル2:異なった意見を受け入れる状況の
実現=受容性の実現
レベル3:補償を含めた合意を形成する
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出し手側が準備すべき手法と情報
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手法としては、一部山岸俊男流「安心」を採用
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「安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方」 (中公新書)
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http://www.yasuienv.net/RiskCom2Kinds.htm
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日蝕型:現代人がなぜ日蝕を恐れないか
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お化け屋敷型:イベントの深刻さとタイミング
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歴史的経験 日蝕から戻らないことはない
予測可能性 正確に開始時間が分かるから終わる時
間も分かっているだろう
どのようなイベントがどのようなタイミングで起きるか
が分かっている
悟り獲得型:全体リスク把握と生命の不確実性
安全係数型:
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コミュニケーション課題の選定
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コミュニケーション課題は、例えば
チーム『紅』の課題:
「低線量被曝はどこまで安全か」
チーム『白』の課題:
「バイオレメディエーション技術はどこまで
安全か」
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チーム構成
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チーム『紅』、チーム『白』を作る それぞれ5~6名
それぞれのチームに、キャプテン、記録係が必要
キャプテンの持つべき特性=他人を観察する能力
の高い人という観点から、チーム構成員が自分達
で選定。キャプテンが記録係を依頼する。
それぞれのチーム内は、「出し手」と「受け手」に分
ける。出し手の作業の方が多いので、多めの人数
を要する。
課題についての専門性が高い順に「出し手」を選
択、「受け手」は市民感覚の高い順に選択する。
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紅白両チームの編成
『紅』
『白』
3~4名
コミュニケータ
=出し手担当
3~4名
コミュニケータ
=出し手担当
2~3名
コミュニケーション
の受け手担当
2~3名
コミュニケーション
の受け手担当
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時間割 1日半のコース
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初日は 午後から開催
二日目は 朝から開始し、夕刻に終了
初日
13:30スタート
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道場主からチーム分けの発表
プログラム全体の簡単な説明
チームに分かれて、キャプテン、記録係の選
任
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14:00~17:00 別室に分かれチーム作業開始
(1)市民からの想定質問作り(全員)
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(2)「出し手」グループ
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各人が30個程度を付箋紙に書き出す。記録係が整理、
キャプテンがそれを選択すると同時に、メンバーに解答を
もとめ、それを判定材料として、出し手、受け手を決める
出し手=テーマの専門性が高い人 3~4名
受け手=市民感覚に優れている人 2~3名
全員で、想定質問リストを作成
想定質問リストに対する回答案を作成する
(3)「受け手」グループ
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相手チームの課題について、想定質問リストを作成する
と同時に、できれば、想定解答リストを作成し、その弱点
を突く質問を追加。
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17:00~18:00 チーム全員で実施
(4)想定質問とその回答のチェック
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回答案の最終チェック 以下の項目が適正か?
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出し手の回答案の最終まとめ
受け手の質問案の最終まとめ
(5) 『リスコミ進行表』の作成
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歴史的経緯の把握
予測可能性の理解
不都合なイベントへの対処法などの情報
以上を反映させた時間割を作成し、それに基づく進行状
況を簡単にシミュレーションする。
これで解散だが、時間がかなり延長されることが想
定されるので、場所の確保が必要かもしれない。
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二日目 実践と反省・評価会
9:30 集合 道場主による再確認
10:00 先攻チーム『紅』の実践開始
12:15 終了して昼食休憩 反省と次への準備
13:30 後攻チーム『白』の実践開始
15:45 終了して休憩
16:00~18:00 反省・評価会開催
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優良チーム、優良プラクティス、個人賞、努力賞などを
決定して終了
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