LLC制度で産業生態系づくりを

LLC制度で産業構造をRestructure。
民間非営利産業セクターを導入し、
“死の谷”を克服。
ここでは“非営利”を、「有利子負債が無い」「手形払いをし
ない」「製品価格に利益をのせない」と定義します。
齋藤 旬
[email protected]
http://members.jcom.home.ne.jp/junsaito
20030416
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LLC (有限責任会社 Limited Liability Company)
• 米国で既に約100万社のLLC。日本には有限
会社、株式会社併せて250万社。米国では顕著
な産業構造改革が既に進行中。
• 米国50州間の企業誘致合戦の結果、産業経済
にとって好ましい環境、つまり安定で頑丈な生態
系が自然発生した。それがLLC制度。
• 「税のパス・スルー」「非営利産業も含む」等のト
レンドを持つ。現在も進化進行中。
• 親会社・子会社で、子会社の売り上げは親会社
の損金だから、子会社の収益に税をかけると「税
の2重取り」になってしまう。それを防ぐのが税の
パス・スルー制度。連結納税制度の発展形。
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“死の谷“とは?
• 現代文明を支える科学技術は大変に高度化した。
• 高度化した科学技術はR&Dに膨大な時間と
ヒト・モノ・カネ・チエを必要とするようになった。
• 多くのR&Dが頓挫したり、或いは科学技術として
は完成しながらも実用化されることなく、すなわち
最終製品を生むことなく、潰えることとなった。
• R&D死屍累々。これを死の谷;Death Valleyと
呼ぶ。
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欧米はどう克服しているか?
• B to B ネットワークの制度設計、再構築。
• B to B = サプライ・チェーン
= Supply Chain Ecosystem = 産業生態系
= Partnership Network
= LLC Network
= モジュール化
= Modularity モジュール方式
ゼロ金利時代。もはや、「在庫は企業の墓場」ではない。在庫期
間が長引いても、ゼロ金利なのだから負債は増えない様に出来
る。逆に在庫期間中、つまりサプライ・チェーンの中に各モジュー
ルがある間は、各モジュールに「絶え間ない改善」を施す絶好の
チャンスとなり得る。「在庫は産業発展の推進エンジン」と言える。
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一つのLLCが一つのモジュールに対応
LLC F
LLC A
トヨタはカン
バン方式で
LLC B LLCのメリッ
LLC E
ト1(次ペー
ジ)を享受し
ていた。し
かし閉じた
LLC D
LLC C
生態系だっ
B to B
必要モジュール たためにメ
ヒト・モノ・カネ・チエ
リット2(次
a,b,c,d,e,f
次ページ)の
Holding Company
恩恵には与
(㈱トヨタ自動車のようなもの)
れなかった。
最終製品
Consumer
お金
例えば“車”
B to C
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メリット1;Responsiveness 感応力、責任能力
目的の共有化 (目的≠利益追求 目的=モジュール技術、モジュールパーツのサプライ)
• 融資でなく出資でLLCは動く。手形払いは避ける。従って
利息を払う必要がない。Supplieeには原価調達できるメ
リットが、Supplierには需要予測リスクが無いメリットがある。
• 資本を一般公募しない、内部規定の任意法規性のある非
公開非営利有限会社。従ってヒト資本・チエ資本を集約し
当該モジュールの専門家。利益計上の
やすいメリットがある。
専門家ではない。
• 「利益を計上する義務」を廃し、「依頼された付加価値づく
り義務」に特化。「責任」の明確化。
• 依頼主と直接に一体となって、変化する要求にリアルタイ
ムに即応し、当該付加価値をつくり出す責任。Partnership
デメリット?
「利益による急激な拡大再生産はない。しか
も成果現物渡しだから、生産金額は発生しな
い。GDPは減る?」「従って、税収も減る?」
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メリット2;多種の最終製品に結実
半導体露光装置
ASML
Zeiss
各モジュールを独立し
たLLCに委託する
ことにより、多種の
最終製品に結実。
「一貫生産」
と対照的。
各モジュールがひ
とつのHolding
Companyに占
有されると、そ
の会社に扱え
る分野への応
用に限定され
てしまう。
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EUVリソ技術にとっての死の谷;
新たな適用分野を見出せない限り、2005年以降、
微細化はコストメリットがなくなる
Cost トレンド
乖離
300mmウェ
ハ導入
NGL
Cost高
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EUVL技術の死の谷をどう克服するか
例えば
ユビキタス用SoC、 Holding Company B
ITS用SoC
EUVL
1.新たな実用分野
ターゲットを決める。
2.そのターゲットに必要
なモジュールをサプライ
できる産業生態系
を再構築する。
(資本の組替)
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日本のLLC制度法制化のスケジュール
0) 平野嘉秋氏 (日本大学 商法)が座長となって、経済産業省
産業組織課と、財団法人企業活力研究所が主催して、
通称;LLC研究会 (正式名;有限責任組織に関する研究会)
が02年12月から03年5月にかけて、現在、開催されている。
1) 来月、即ち今年4月1日より、現行法の組み合わせの範囲で
LLCに出来るだけ近い組織作りを開始して良いとの、関連省庁
法務省、経済省の通達だ出た。鉄鋼業がまず動き出す。
川崎製鉄・NKKの合併に続く、大小様々な規模の
合従連衡が始まる予定。(齋藤付記;現在の日本版LLC法案は
重厚長大産業の縮小均衡用。科学技術産業には不向き。)
2) 平成17年度までに、日本版LLC法制度の議論・審議を終える。
3) 平成18年度4月1日より、日本版LLC法制度施行開始の予定。
本格的に、種々の業界再編成が開始する予定。
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EUV-LLCとASMLから教訓を学んで。
• 米国のEUV-LLCは技術開発には成功した。し
かし装置作りにはLLC制度整備が不足だった。
• LLC制度先進地欧州のASMLに、米国は油揚
げをさらわれた。米国は司令塔としてのHolding
Companyの準備が出来ていなかった。最終製
品作りの準備が出来ていなかった。
• 日本はこれらから教訓を学んで、最適化した
LLC法制度をスタートし、EUVL開発に取り組め
る好位置にある。
LLC制度セミナーの第一回講師;都立大の大杉謙一先生が、
新しい事業組織形態(日本版LLC)の構想
- 国際競争力を持つ企業法制の模索として -
を書きました。ご希望の方は齋藤まで。
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LLCはPublic Domain
Private Domain
各個人の全体。Consumer全体。
トレンド
1. 無税
2. 非営利目的
(=パブリック目的)
Holding Company Domain
(最終製品への仲介者)
Public
Domain
3. 間接公開
(資本の一般公募はしない
資本(ヒト・モノ・カネ・チエ)は、
Holding Companyから調達。
Holding Companyの資本は、
一般(Private Domain)から
集められる。非公開でなく
間接公開と呼んだ方が誤解が
無いかもしれない。)
4. Open Source
(LLCの生み出すモジュールを
誰もが利用可能。但し、
自主的な“相応の分担”が
望まれる。Fair Tradeが望まれる)
5. 常に複数種の
応用先を想定12
1.
日本の現状民間非営利産業が無い
Private Domain
各個人の全体集合。Consumer全体。
Holding Company Domain
(最終製品への仲介者)
公共事業
2.
各個の
が閉じた生態系
・ 各モジュールの応用範囲が限られる。
・ ひとたび属している最終製品が亡
くなれば、モジュールも廃れる。
各
も営利性を要求される
・ 新規技術開発がうまくいって立ち
がるまでの赤字に耐える体力が
足りない。親会社の体力が上限。
3.
公共事業で新技術開発する
場合、受託団体がない。
・ 国のお金を使って私企業の利益
になることをしてはいけない。
・ 最終製品実現までの連続した流
れがない。(“死の谷”問題)
各系列子会社
又は各部門
営利株式会社
最終製品
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欧米では、非営利=Public。「Public」の意味が広い。
組織
特性
営利組織
非営利組織
行政組織
融資/出資 受ける/受ける 受けない/受 受けない/
ける
受ける
原因
手形払い
する
しない
しない
お金として
利益を あげる
結果
あげない
受託テーマ
両立の義務
付加価値を 生む
生む に特化
公共性
進んでいないけれども。)
受託
テーマ
に関して
付加価値
づくりに特
化できる
分、チャレ
ンジ性を
強くするこ
とができ
る。
欧米では、ある 欧米では、
(とされるものも有る。資本を一
無税も
般公募した場合、Publicとす
る。)
目的
生む
欧米では、ある ある(日本では認知が ある
(とされるものも有る。)
税制優遇
あげない
営利目的
特定目的
利益の実現と受託テーマ実現を
両立させなければいけない分、 受託テーマ
テーマの難易度を下げざるを得ない。 に関して
チャレンジ性 強い
課税
されない 結果
原因
公共目的
新規でチャレンジ性の強い
テーマよりも“手堅い”
テーマに合意形成されがち
大変強い 弱い
日経記事030317
(“死の谷”克服のコスト)
•
•
背景に、「リスクの高
いテーマつまりチャレ
ンジ性の高いテーマ
が、うまく“利益”に繋
がらない。」という日
本の現状がある。
“死の谷”を克服する
仕組みが無い現状で
は、“死の谷”克服に
膨大なコストがかかっ
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てしまうからである。
提案;最小限の法律改変でLLC制度を
実現するなら。(二つの案)
1. 有限会社法において、
・税のパススルー制度を導入する。
・有限会社法第一条「目的は営利」をやめて、
「営利・非営利を問わず特定任意目的」とする。
(日本の有限会社法と米国のLLC法の元となった独国のGmbH法では、目的を営利に限定していない。
ゲゼルシャフトは「営利目的等の特定目的で集まった集団」であって、決して目的を営利に限っていない。)
2. NPO法において、
・税のパススルー制度を導入する。
・概ね20人以上のサポーターがいることを想定してい
る「パブリック・サポート・テスト」を、米国並みの「2人
(乃至1人)以上のサポーターで設立可」、に改める。
つまり「公」の意味を拡張し、Publicの意味と同じにする。
・業務分野17種に更に、「非営利産業経済」を加える。
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・設立は“許認可制”でなく、“届け出制”にする。