公共図書館はインターネットを どう活用できるの か? -ゆうき図書館の事例紹介を中心に- 平成21年度図書館ネットワーク研修会 日時:2009年10月9日(金) 会場:千葉県立西部図書館 ゆうき図書館 笹沼 崇 <[email protected]> <http://d.hatena.ne.jp/t_rabi/> 自己紹介 笹沼 崇(ささぬま たかし) ゆうき図書館副館長 兼サービス第1係長(庶務)兼 サービス第2係長(図書館)兼 雑誌業務リーダー兼 利用者サービス班サブリーダー 大学卒業後、民間企業で信託銀行オンラインシステム開発に従事。 1993年~2002年、私立大学図書館に司書として勤務。 システム、雑誌、参考業務を兼務。 2002年、結城市図書館準備室着任。 2004年5月、ゆうき図書館オープン。 2006年度より現職。 本日の構成 1.Webサービス導入の考え方 目標:約30分 2.ゆうき図書館の事例紹介 目標:約45分 3.デジタル資料普及による変化 目標:約15分 1.Webサービス導入の考え方 図書館サイトとGoogleやAmazonを比べると? 検索システムの不備 個人向けサービスの不備 利用者が参加できる仕組みの不備 地域の情報拠点として頼りない印象 1-1. どうすればいいのか? • 新しいシステムを導入する すぐに導入できなくても・・・ ・大学図書館、出版界の情報を収集 ・最新のWebサービスの情報を収集 応用すれば、費用ゼロでも発展は可能 Project Next-L まちづくり 三鷹 1-1-1. 国立国会図書館の事例 NDL-OPACのリンクリゾルバー リンクリゾルバー導入による新サービス。(2009.9.1開始) OPAC検索結果から、外部の全文情報に直接アクセスできる仕組み。 1-1-2. 大学図書館の事例 千葉大学附属図書館 新入生などを対象とした、Podcastによる館内案内及び利用者教育。 【鈴木宏子ほか(2009).「ポッドキャスト@千葉大図書館の構築-ポッ ドキャストによる図書館セルフガイドの作成-」.『情報の科学と技 術』.59巻1号,p.34-40,情報科学技術協会】(Ciniiで全文公開) 1-1-3. 出版界の事例 版元ドットコム<http://www.hanmoto.com> 中小出版社148社(2009.9末現在)が参加。 出版流通について様々な取り組みを行っている団体 。 出版流通業界から見ると、ストック を扱う図書館の存在意義は大きい。 無料貸本屋だと敵視している人ば かりではない。 読者に本を届けるという役目を共 に担っているので、相互補完の関 係と考える人も少なくない。 版元ドットコム大全2009 出版社営 業ノウハウと版元ドットコム活用術 版元ドットコム 編 定価600+税 ISBN978-4-7808-0130-9 C0000 A5判 / 80ページ / 並製 [2009年07月 刊行] 印刷・製本●シナノ印刷株式会社 1-1-3-2. 図書館のMARC費を資料費に回してもらおう! 納本から約1か月後にMARC登録 納本 出版社 情報提供 仮MARCとして 納本時にデータ提供 国立国会図書館 (JAPAN MARC) 登録のタイムラグを カバーできる JAPAN MARCで上書き返送 MARC費が減る分、資料発注が増える 日本書籍出版協会 (books.or.jp) 精度の高いMARCを利用できる 公共図書館のJP MARC利用 1-1-4. Webサービスを始めるときに 意識していること 普段来館している人たちばかりをターゲットと考える必要はない。 利用したいという人に対し、どれだけ質の高いサービスが提供できるかを 考える。 館の特長を活かしたサービスを考える。 Webサービスの応用方法を考える。 普段から個人で、いろいろなWebサービスを試してみる。 2.ゆうき図書館の事例紹介 Web2.0を意識したシステム構想(2007) ・個人向けサービスの強化 ・集合知の活用 財政悪化により頓挫 費用ゼロでできることをやろう! •【笹沼崇(2008).「利用者サービス向上計画 (ゆうき図書館のインターネット構 想)」,『ず・ぼん14』,p.26-41,ポット出版】 •【笹沼崇,石田好一,日高崇ほか(2008).「座談会 図書館はインターネットをどう 活用できるのか? (ゆうき図書館のインターネット構想)」, 『ず・ぼん14』,p.26-41, ポット出版】 2-1. ゆうき図書館のWebサービスの特徴 ・サービスの継続性を重視 ・個人技に依存しないよう、多くのスタッフを参加させる。 ・ノウハウだけでなく、姿勢や意識を共有する。 ・決裁手続きなし ・資料情報の発信は司書の仕事。 ・レファレンスの回答に決裁が要らないのと同じこと。 2-2. 資料紹介ブログ(2007.6~) ・はてなダイアリーを使用。 ・郷土資料と参考図書を紹介。 ・毎週更新。 ・資料評価を含めた紹介には至っていない。 ・担当者は現状1名。この点は要改善。 ・定期的に印刷し館内配布。 2-3. イベント棚(2007.2~) ・毎月展示換えをしているイベント棚を、ブクログ <http://booklog.jp/>で紹介。 ・担当者は毎月交代。 ・書影が表示される。 ・他のブクログユーザーの棚と相互リンク。 2-4. 雑誌記事紹介ブログ(2005.8~) ・図書と比べ雑誌記事を紹介するメディアは少ない。 ・利用促進のため、更新頻度を上げて多数紹介。 ・スタッフ全員が記事を投稿。 ・地元の記事は漏らさない。 ・古い記事も意図的に紹介。 ・体験学習の生徒にも投稿してもらう。 ・毎週受入れた新着雑誌すべての特集名を掲載。 2-5. (旧)新着雑誌記事速報(2009.3~ 7) ・国立国会図書館雑誌記事索引が配信するRSSを利用。 (2008.12.17配信開始) ・はてなRSSを利用。 ・当館受入雑誌のうち114誌をカバー。 2-5-2. RSSとは? RSSリーダー ホームページ 購読登録 更新情報配信 ホームページ閲覧 更新情報を表示 RSSリーダーを公開 図書館利用者に提供 配信するデータの書式=RSS 追加・更新 (旧)新着雑誌記事速報へ 2-5-3. (新)新着雑誌記事速報(2009.7~) ・Google AJAX Feed APIを利用し、タイトルごとに 目次を表示。 ・国立国会図書館雑誌記事索引に加え、富士山 マガジンサービスの目次RSSも利用。 ・当館受入雑誌のうち272誌をカバー。 Google AJAX Feed APIとは JavaScriptにより、比較的簡単にRSSフィードをダウンロードして表示 する仕組みが作れるサービス。Googleが提供。 詳しくはこちら→http://code.google.com/intl/ja/apis/ajaxfeeds/ 2-5-4. Google AJAX feed APIとは? Google AJAX feed APIの場合 はてなRSSの場合 RSSリーダー Google はてなRSS 配信 配信 NDL リンク 図書館HP NDL Googleが処理 結果を受け取る 図書館 RSSリーダー RSSリーダー 図書館が持つリーダーを作らなければならない。 (好評につき、作り方マニュアル公開予定) 2-6. Webパスファインダー(2009.3~) ・はてなブックマークというソーシャルブックマーク サービスを利用。 ・Web上の情報源に案内するセルフレファレンスツール。 ・調べものに役立つサイトを図書館員が選んで登録。 ・登録基準の明確化が課題。 ・他の「はてブ」ユーザーのブックマークリスト(1,600万エン トリー以上)にリンク。 2-7. 雑誌記事サーチ(2009.6~) ・Googleカスタム検索を利用し、購読雑誌の出版社 サイト内を横断検索。 ・図書館がコントロールできない外部の情報源に依存し たサービスなので、利用には注意が必要。 ・受入雑誌の約7割をカバー。目次が画像で公開されて いるなど、検索できない雑誌もある。 ・不完全だが、機能を理解すれば有効に使える。 ・今後は利用者のリテラシー教育が課題。 2-7-2. Googleカスタム検索とは? http://www.lib.jp http://www.lib.jp/* トップページ http://www.lib.jp/dayori http://www.lib.jp/dayori /* 図書館だより 蔵書検索 おしらせ 2008年度 2009年度 2月 3月 http://www.lib.jp/dayori/2007 http://www.lib.jp/dayori /2007/* 2007年度 http://www.lib.jp/dayori/2007/1.html 1月 2-8. iGoogleガジェット(2009.6~) ・検索されるのを待つだけではなく、人通りの 多い場所に入り口を設けよう。 ガジェットをつくるツールが公開さ れている 「Library Gadget Generator」 http://d.hatena.ne.jp/myrmecoleo n/20071004/1191511731 Firefoxというブラウザに greasemonkeyというプラグイン ソフトを入れて、Amazonの検索 結果画面上に「○×図書館に 蔵書があります」と表示させる 事例もある。 2-8-2. iGoogleガジェットに関する文献 •【角家永,木下和彦(2008).「iGoogleガジェットを活用した図書館サービス の提供」,『情報の科学と技術』58巻5号,p237-241,情報科学技術協会】 •【林賢紀(2008)「Firefox検索バー用のOPAC検索プラグインを自作する」, 『情報の科学と技術』58巻5号,p242-247,情報科学技術協会】 (いずれもCiniiで全文公開) 2-9.郷土調査ツール(準備中) ・レファレンス担当が日常更新するので、更新の 容易さを重視。 ・ブログの日付をカテゴリーに流用している。 【その他、検討中のサービス】 ・調べ学習用パスファインダー(HTML)とブクログを連携させた仕組み。 ・情報リテラシー教育用のクイズ(他館と協力して問題作成) ・郷土調査、調べ学習支援ツール構築に学校関係者・ボランティアが 参加する仕組み ・外部データベースと連携した情報サービス 2-10.公共図書館Webサービス勉強会(仮称) (2009.5~) ・「ず・ぼん14」構想頓挫後、ゆうき図書館スタッフ有志が 立ち上げたWebサービスの勉強会。 ・Googleグループを利用。 ・他館の方も歓迎。 ・サービス資源の共有化。 3.デジタル資料普及による変化 ~Googleブック検索、NDL資料デジタル化で公共図書館はどう変わるのか?~ 作家・出版社 許諾 国立国会図書館の構想 使用料 著作権管理の団体 許諾 使用料 電子出版物流通センター(仮称) 公開 アクセス料 利用者 8/25朝日新聞掲載部分 し デ ー 無タ 料を 貸 し 出 国 立 国 会 図 書 館 し デ ー 無タ 料を 貸 し 出 公共図書館 施設内に限り無料公開 利用者 3-1. デジタル資料の普及で何が起き る? デジタル資料により、情報要求は増える。 Web上でデジタル資料を目にする機会が増える。 そこから最寄の図書館への導線を考えたい。 図書館機能を知ってもらう好機。 デジタル化により扱える資料の幅が広がる。 所蔵していない学術情報なども積極的に活用できるのだから、いま以上に幅広い情報源 に繋がる場としてアピールできる。 これまで来館しなかった人が来るようになる可能性がある。そうした人々に情報アクセス支 援・利用者参加型サービスを通した情報発信のサポートなどを知ってもらう好機。 図書館は多様化する。 本も司書もナシで、PCを並べただけの図書館ができてしまうかも? 逆に、一次資料のストックを大量に保存しているという図書館ならではの特性を考え、様々 な工夫をする図書館も現われる。. http://d.hatena.ne.jp/t_rabi/20090915にて詳述。 3-2. 地域の図書館にしかできないことを 外部情報源の有効活用 市民参加型サービス 未所蔵資料へのリンク GoogleやNDLの資料を ホームページで利用者に 提供できる。 市民の情報サー バー 「しまPasha」などを参考 に何かできないか? 図書館総合展フォーラムのご案内 11/10(火)13:00~14:30@パシフィコ横浜 『Googleブックサーチ・国会図書館所蔵書デジタル 化!! 電子資料時代到来で図書館はどう変わるべきか?』 主催 (株)ネットアドバンス 司会進行 植村 八潮(東京電機大学出版局局長) パネラー 柳 与志夫(国立国会図書館資料提供部電子資料課長) 沢辺 均(ポット出版 /スタジオ・ポット代表取締役) 笹沼 崇(ゆうき図書館副館長)
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