ゲートキーパーとは • Gatekeeper = 門番 「自殺の危険を示すサインに気づき、適切な 対応を図ることが期待される人」 ・自殺予防について理解し、身の回りの人が 悩みを抱えていたり、体調が悪い様子に気が ついたら、話を聞き、適切な相談機関につな ぐことができる人。 ゲートキーパーの役割と機能 ゲートキーパーとして 身近な友人や家族・同僚の様子に 気がついたとき 気づく 声をかける つなげる 共に見守る 何か悩みがありそう・・・ 体調が悪そう・・・ 健康に不安を感じている人がいた時 悩みを打ち明けられた時 自殺をほのめかす言葉が聞かれた時 気になるサインだ・・・ 体調のことを切り口に一言声をかけてみる 「身体の調子で気になるところはありますか?」 「眠れていますか?」 ゲートキーパーとして まずは話を聴き、受け止める 必要な情報を伝える 専門の相談機関などにつなぐ ゲートキーパーの三層 ゲートキーパー指導者 ゲートキーパーを育成・支援することができ、地域の自殺対策の 牽引役としての役割が期待できる人 ゲートキーパー 地域や職場での活動、役職等でゲートキーパーとしての役割が 期待できる人 身近なゲートキーパー 家族、友人、同僚、近所の人等、身近な存在の人 ゲートキーパー指導者とは <目的> ①ゲートキーパーを養成する。 ②自殺対策の牽引役 <対象> 行政、職域、学校、広域の団体等の自殺に関する 相談を受ける立場になりうる従事者等 <主な役割> • ゲートキーパー養成講座を企画・運営し、ゲート キーパーを養成する。 • 養成したゲートキーパーの活動をサポートする ゲートキーパー養成講座の企画 ★ゲートキーパー指導者のための手引の活用を! <目次> 第一部 ゲートキーパーに伝えたいこと ○自殺に対する正しい知識 ○相談機関ネットワーク ○自死遺族支援に対する知識 第二部 教材編 第三部 研修必要書式 第四部 参考資料 ゲートキーパー養成の流れ ゲートキーパー養成講座の計画(手引P16,96) 都(保健所)に計画書を送付し、ゲートキーパー手帳等を請求する (手引P108,114) ゲートキーパー養成講座の実施 ゲートキーパー手帳、リーフレットの配布 東京都ホームページ「ゲートキーパーコーナー」の紹介 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/tokyokaigi/gatekeeper/index.html 都(保健所)に実績報告を送付する。(手引P110,114) “いのち”を支えるネットワーク ゲートキーパー指導者として、 ゲートキーパーに伝えて欲しいこと 自殺者企図者の多くが持っている特徴 ○把握可能な危険因子をもつこと ○サインを発していること ○うつ病等精神障害者と生活上の問題が悪循環となっていること 自殺や精神障害に対する誤解・偏見が多いこと →正しい知識を普及し、活用する必要性がある。 自殺は、危険因子等を早期に発見し、医療や生活 支援、環境対策等を総合的に行うことで、十分予防 可能であること ゲートキーパーの養成について 所属している団体や関係者一人ひとりに 働きかけて、ゲートキーパーを養成する場合 ゲートキーパー手帳などを活用して、 「ゲートキーパー指導者養成研修」の内容を伝える。 ゲートキーパー養成時のポイント① (1) 自死遺族の話から、 その思いと自死者のサインについて (2) 全国と東京都の現状 自死者と年代・原因・対策 (特に早期発見・早期対応の中のゲートキー パーの役割の意義について) (3) うつ病について ・症状の確認 ・自分でできる「うつチェック」リストについて ゲートキーパー養成時のポイント② (4)「死にたい」と思う気持ちや危険性の サインに気づいたときは・・・ ・相談機関につなぐために、近しい友人や同僚、 上司から一声を。 ・どんな言葉を伝えれば良いか考える。 ~研修で学んだことを元に、自分の言葉で、 どのように伝えるかを考える~ ゲートキーパー養成時のポイント③ (5)専門相談機関の紹介 ・健康問題に関する相談機関 ・経済問題に関する機関 ・法律問題に関する機関 ・民間相談機関 etc・・・ <参考>ゲートキーパー手帳P9~ 講義方法の工夫 1 関心を引き出す 導入として、「小クイズ」などを行うと効果的です。 2 具体的に理解できるように。 参考図書の事例を読み上げるのでもよいでしょう。 3 業務の範囲でまず、できることを考えてもらう。 身近なところから、できることを考えてもらいましょう。 4 総合的・連携型対応の意義を理解してもらう。 一人で・一機関で対応するのではなく、協力、連携がポイントです。 5 各自の健康管理に結びつける 自分自身や職場でのメンタルヘルスにも役立つ内容です。 6 ゲートキーパーへの支援体制や継続研修を紹介する。 国及び東京都の自殺対策の流れ 18年6月 19年6月 19年7月 自殺対策基本法 自殺総合対策 大綱 自殺総合対策 東京会議 ( 地方公共団体の責務 ) ・対策の基本的考え方 ・施策の策定及び実施 ・人材の確保 ・世代別対策の方向 ・医療供給体制の整備 ・当面の重点施策 ・発生回避対策の整備 ・残された者等への支援 ・社会全体による 取組を推進 ・多様な主体の 連携の強化 ・自殺対策のあり方 の検討 自殺総合対策大綱の基本的考え方 政府による自殺総合対策大綱(平成19年6月) • 社会的要因も踏まえ総合的に取り組む • 国民一人ひとりが自殺予防の主役となるよう 取り組む 目標 • 自殺の事前予防、危機対応に加え、未遂者 や遺族等への事後対応に取り組む 平成28年までに自殺率を20%引き下げる • 関係者が連携して包括的に支える • 実態解明を進める 当面、これまでの知見に基づき施策を展開 • 中長期的視点に立って、継続的に進める 東京都の自殺対策の具体的な取組 事前予防~適切な理解の促進~ ・自殺防止!東京キャンペーンの実施 危機対応~防止に向けた専門的な対応力の強化 ・ゲートキーパーの養成 ・こころといのちの相談・支援東京ネットワークの構築 ・かかりつけ医へのうつ診療充実強化研修事業 事後対応~遺族に対する支援策の検討 ・遺族への適切な情報提供・精神的ケアなど 実態把握 ・大都市における自殺の実態把握(救急現場、地域など) 自殺者の推移 東京都/平成21年 3,500 人 3,000 2,740 2,827 2,780 2,743 2,567 2,500 2,679 2,669 2,000 1,500 1,906 1,895 1,884 1,985 1,933 1,860 1,864 1,933 2,014 2,776 2,510 2,563 2,026 1,991 1,787 1,818 780 745 1,679 1,389 1,361 1,000 665 2,862 2,826 625 834 836 847 500 810 819 805 831 931 892 877 合計 男性 女性 0 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年(平成) 資料:人口動態統計 自殺死亡率(年齢階層別・性別) 東京都/平成21年 都・男 都・女 自殺死亡率(人口10万対) 60.0 48.5 50.0 41.5 49.5 50.5 46.6 40.1 40.0 30.0 26.4 17.1 31.9 27.7 16.4 17.6 14.9 14.6 1.2 17.5 16.9 17.1 20.0 14.9 15.4 9.6 11.7 7.3 10.0 10.3 5.6 85 ~ 89 80 ~ 84 75 ~ 79 70 ~ 74 65 ~ 69 60 ~ 64 55 ~ 59 50 ~ 54 45 ~ 49 40 ~ 44 35 ~ 39 30 ~ 34 25 ~ 29 20 ~ 24 0.8 15 ~ 19 10 ~ 14 30.9 27.0 20.0 0.0 29.0 37.9 31.4 資料:人口動態統計 才 年齢階層別にみた死因 東京都/平成21年 10代 20代 30代 40代 50代 60代 1位 自殺 自殺 自殺 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 2位 不慮の事故 不慮の事故 悪性新生物 自殺 心疾患 心疾患 3位 悪性新生物 悪性新生物 不慮の事故 心疾患 脳血管疾患 脳血管疾患 4位 心疾患 心疾患 心疾患 脳血管疾患 自殺 自殺 5位 肺炎 脳血管疾患 脳血管疾患 肝疾患 肝疾患 肺炎 資料:人口動態統計 自殺者数と交通事故死者との比較 (東京都) 自殺者 交通事故死亡者 人 3000 2826 2679 2862 2776 2667 2510 2500 2000 1500 1000 500 303 289 263 269 218 205 0 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 出典:人口動態統計、警視庁の統計 自殺の現状 (原因・動機、平成21年・東京都) 警視庁統計 原因・動機が複合する場合には、3つまで計上 原因・動機特定者(2,989人中1,894人)の状況 単位:人 (1)原因・動機の状況 家庭問 題 280 健康問題 経済・ 生活問題 勤務問題 男女問題 学校問題 1,313 468 178 100 35 その他 77 (2)年代別の状況 1 2 3 19歳以下 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳以上 健康問題 健康問題 健康問題 健康問題 健康問題 健康問題 15 家庭問題 9 学校問題 8 153 男女問題 42 経済・生活問 題 34 231 経済・生活問題 219 経済・生活問題 69 家庭問題 62 91 家庭問題 206 経済・生活問題 123 家庭問題 50 489 経済・生活問題 147 家庭問題 47 83 自殺対策の考え方 自殺対策 目 的 自殺未遂者や 残された人のケア 自殺者の減少 自殺者 自殺予備群 ( 三次予防 ) 事後対応 ( 二次予防 ) うつ病の早期発見・対応 ゲートキーパー養成 ストレス暴露者 軽度うつ病予備群 こころの 健康増進 良好な健康状態 ( 一次予防 ) こころの健康づくり 鹿児島県伊集院保健所作成冊子から引用(一部変更) 一人の自殺者の背景には・・・ 自殺死亡者 1人 未遂者10人 10倍 自殺10大要因 ①うつ病 ②家族の不和(親子間+夫婦間+その他+離婚の悩み) ③負債(多重債務+連帯保証債務+住宅ローン+その 他) この10大要因が、連鎖しながら ④身体疾患 「自殺の危機経路」を形成していく ⑤生活苦(+将来の不安) ⑥職場の人間関係(+職場のいじめ) ⑦職場環境の変化(配置転換+昇進+降格+転職) ⑧失業(+就職失敗) ⑨事業不振(+倒産) ⑩過労 自殺実態白書2008 自殺の背景を知るために・・・ 「危機複合度」という考え方 「危機複合度」とは、それぞれの危機要因が平均して含 有している危機要因の数 ↓ 問題の出発点を1 ↓ 新たに一つ要因を抱え込んでいくごとに2,3と増していく ↓ 自殺時に抱えていた「危機要因」数は平均は4 (危機要因が連鎖した末に自殺に追い込まれる) 自殺実態白書2008 危機複合度 過労(1.9) 事業不振(1.7) 第一段階 身体疾患(2.2) 第二段階 職場環境の変化(1.8) 職場の人間関係 (2.5) 失業(2.8) 負債(2.9) 第三段階 家庭の不和(3.0) 生活苦(3.6) うつ病(3.9) 自殺(5.0) 自殺実態白書2008 「危機の進行度」の3つの段階とその対策 1 第一段階:自殺のきっかけとなる最初の危機 要因が発生した段階 比較的シンプルな対策ですむ。 要因にターゲットを絞り、集中的に対策を講じて、 この段階で危険の目を摘む! 危機要因は1つ 「事業不振」「職場環境の変化」「過労」 自殺実態白書2008 「危機の進行度」の3つの段階とその対策 2 第二段階:最初の危機要因か問題が連鎖を 起こし始めた段階 危機の連鎖を食い止めながら、 多分野の専門家が連携して 問題解決にあたることが重要。 危機複合度が2点台 「身体疾患」「職場の人間関係」「失業」「負債」 最初の危機要因から問題が深刻化し始めている。 自殺実態白書2008 「危機の進行度」の3つの段階とその対策 3 第三段階:危機要因の連鎖が複合的に起こり 自体が深刻化した段階 表出している問題に対する 危機介入的な対策と その背景にある危機要因 に対する重層的な対策が重要。 危機複合度が3点台 「家族の不和」「生活苦」「うつ病」 危機要因が複合化して問題が深刻化の度合い を強めている。 当事者で問題を抱え込み、自殺のリスクが高 まっている恐れ。 自殺実態白書2008 うつ病 • 危険連鎖度が最も高いのが「うつ病→自殺」の 経路 • 自殺の「危機複合度」が最も高いのも「うつ病」 (背景にある問題が複合し、複雑化している 場合が少なくないために、治療が必ずしも容易 ではない・・・) 自殺者の要因の平均は4 自殺実態白書2008 うつ病の症状に気をつけましょう この3つの症状があったら 要注意! からだの症状 ・便秘、下痢 ・身体がだるい ・疲れやすい ・頭痛、肩こり、胃痛 ・動悸、息苦しい 1 眠れない (途中で目が覚める、朝早くに目覚める) 2 食欲がない 3 気分が落ち込む (朝がひどく、夕方になると少し楽になる) 周りの人が気づく症状 ・反応が遅い、表情が暗い、人との交流 を避ける ・体調が悪いと訴えることが多くなる ・飲酒量が増える ・遅刻、早退、欠勤が増える こころの症状 ・気分が落ち込む、悲しい ・イライラする、おっくう ・集中力がなくなる ・好きなこともやりたくない ・自分を責める ・決断が下せない ・死にたくなる 東京都西多摩保健所作成リーフレット「生きることをあきらめない」より うつの症状に気づいて! 早めに気づき、治療することが大切です! うつ病は 「心身の休養」と「服薬」が治療の基本です。 ゆっくりと休み、主治医の指示どおりにしっかりと薬をのむことで 回復します。うつ病が回復すれば、からだの症状やこころの症状 がなくなり、「死にたい」気持ちもなくなります。問題に対処してい けるようになります。 ※ 自分では病気と気づかないことが多く、 周りの人が変化に気づくことが大切です。 ※ あなたの周りの方が落ち込んで、 いつもと違う様子の時は、よく話を聴きましょう。 東京都西多摩保健所作成リーフレット「生きることをあきらめない」より引用 うつ病とは? 原因:不明 ストレス・環境変化等は悪化要因 主症状(感情障害)抑うつ気分、焦燥 (意欲)意欲減退、思考・行動・注意力の抑制 (思考)自罰的・悲観的思考 自殺念慮 (身体)不眠 食欲不振 倦怠感 頭痛 しびれ 日内変動(朝悪く、夕改善) ・・・2週間以上、社会生活上の障害 有病率:3-4% 生涯罹患危険率:10-15% 発症危険年齢 ①20代 ②40-50代 ③65-74歳 治療:①薬物療法 ②精神療法 ③休養確保 ④環境調整 ⑤自殺防止の取組 6ヶ月程度で治る場合が多いが、再発率高い 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 熊谷直樹氏作成資料より うつ病の人への接し方のポイント ①十分に休養するように勧める。休める環境づくりをする ②本人の話をよく聴く ③なおる病気だと伝える ④がんばれと励まさない ⑤無理に気晴らしに誘わない ⑥重要な決定はひとまず延期し、回復してから決めるよう にアドバイスする ⑦自殺に注意する ⑧受診や服薬を続けられるようにサポートしていく 東京都西多摩保健所発行リーフレット 「ちょっと心が疲れたら」 東京都立中部総合精神保健福祉センター発行リーフレット「うつ病」 より 簡単な一次スクリーニング質問 以下の回答があれば二次スクリーニングへ A項目(抑うつ症状) 2つ以上 • 毎日の生活が充実していますか。いいえ • これまで楽しんでやれていた事を,今も楽しんでできていますか。いいえ • 以前は楽にできていたことが,今ではおっくうに感じられますか。はい • 自分は役に立つ人間だと考えることができますか。いいえ • わけもなく疲れたような感じがしますか。はい B項目(自殺念慮) 1つ以上 • 死について何度も考えることがありますか。 • 気分がひどく落ち込んで,自殺について考えることがありますか。 C項目(ライフイベンツ) 1つ以上 • 最近ひどく困ったことや,つらいと思ったことがありますか。 参考資料:厚生労働省 地域におけるうつ対策検討会 「うつ対応マニュアル –保健医療従事者のために- 」 自殺にいたるプロセス 自殺準備プロセス 高ストレスな状態 (例) 失業 事業の失敗 多重債務 身近な人の死 家庭内不和 病気 うつ状態等 自 自責 焦燥 絶望 視野狭窄 生活上の問題は 持続 殺 念 慮 自 殺 の 計 画 自 殺 手 段 確 保 自 殺 企 図 生きたい 強い葛藤 死ぬしかない 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 熊谷直樹氏作成資料より一部改変 取り入れよう! 日常の活動に自殺対策の視点を・・・ 例えば・・・ 妊産婦・新生児訪問指導員 産科医師・助産師 産後うつなど 保健師 子ども家庭支援センター 取り入れよう! 日常の活動に自殺対策の視点を・・・ 市町村職員 訪問看護ステーション 地域包括支援センター 一人暮らし 高齢者 ケアマネージャー サービス提供事業者 地域主治医 民生委員 取り入れよう! 日常の活動に自殺対策の視点を・・・ 区市町村窓口担当者 保健師 社会福祉施設職員 医師・看護職など 障害者 への対応 サービス提供事業者 取り入れよう! 日常の活動に自殺対策の視点を・・・ • 働く世代→職域での対応、家庭の気づき • 児童思春期→学校保健、家庭、学童クラブ、 民生児童委員 • 病気療養中の方→主治医、看護師 • 経済的に追いつめられた方→生活保護の窓口担当 者、多重債務問題等の相談担当者 • 広く「心の健康づくり」の立場から→保健所、保健セ ンター等保健師、健康づくり推進員 など 大切な人のために あなたもゲートキーパー ・ 身近な人に関心をもちましょう。 ・ 身近な人の変化に気づいてください。 ・ 恐がらないで、逃げないで、本人の気 持ちを受け止めてください。 ・ 専門家に相談しましょう。 ・ あなたもゲートキーパーです!
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