一分子で出来た回転モーター、F1-ATPaseの動作機構

一分子で出来た回転モーター、
F1-ATPaseの動作機構
ーたんぱく質の物理ー
安田 涼平
コールドスプリングハーバー研究所
(アメリカ合衆国ニューヨーク州)
たんぱく質=分子機械
• 直径10nm(10万分の一ミリメーター)
• アミノ酸が連なってでできたひもが、立体
構造をとることによって機能をもつ
• 種類によって個別の、複雑な働きをする
– 例:物質運搬(モーター、チャンネル) 生合成
分解
たんぱく質が働く環境
水分子が時速1000kmくらいでぶつかってくる。
今日のたんぱく質
• ATP合成酵素とF1-ATPase
• 電位依存性カルシウムチャンネル
ATPは、生体エネルギーの通貨
モーターたんぱく質
イオン輸送
生合成(DNA,たんぱく質などの合成)
ミトコンドリアのATP合成
ATP合成酵素の働き
ATP合成酵 (ADP→ATP)
呼吸鎖たんぱく
質複合体
ATP合成酵素はどう働く?
外側
膜
内側
(F1-ATPase)
F1-ATPaseは回転モー
ター?
アクチンフィラメント
ビオチン
F1-ATPase
アビジン
ヒスチジンタグ
ガラス面
F1-ATPaseは回転モー
ター!
(アクチンフィラメントの長さ=1.3μm)
Noji,H., Yasuda, R., Yoshida, M. Kinosita, K. (1997) Nature
F1-ATPaseは回転モー
ター!
(アクチンフィラメントの長さ=2μm)
1個のATPで120度回転する
Yasuda, R. et al. (1998) Cell
エネルギー変換効率を求める
120度回転で水の粘性に対してする仕事
エネルギー変換効率=
ATPを分解するときのエネルギー
エネルギー変換効率を求める
3μm
2μm
1μm
エネルギー変換効率を求める
3μm
2μm
1μm
エネルギー変換効率を求める
3μm
2μm
1μm
エネルギー変換効率を求める
120度回転で水の粘性に対してする仕事
エネルギー変換効率=
ATPを分解するときのエネルギー
=
Yasuda, R. et al. (1998) Cell
最高速度は?
最高速度=毎分1万回転
レーザー暗視野顕微鏡
高速カメラ(毎秒8000フレーム)
高ATPでも120度ステップ
267倍スロー
Yasuda, R. et al. (2001) Nature
もっとよくステップを見る
(1000倍スロー)
120度ステップは、90度ステップ+30度ステップ
回転のメカニズム
ADP解離
ATP結合
120度
90度
0度
ATP待ち
ATP分解
時間
ATP待ち
時間
Yasuda, R. et al. (2001) Nature
神経の電位動作性
2+
Ca チャンネルの制御
外側:高カルシウム
1. 膜の電位の変化で開く
2. カルシウムのみを通す
3. 脳の学習、記憶に重要
内側:低カルシウム
シナプスにあるCa2+チャンネル
の機能を測る
電気刺激
神経細胞
カルシウム
感受性蛍光色素
シナプス
1分子レベルでの
2+
Ca チャンネルの機能の可視化
高神経活動による
2+
Ca チャンネルの抑制
シナプスのカルシウム濃度
活動電位
Ca2+チャンネルの共同的抑制
Ca2+
CaMKII
抑制
Ca2+チャンネルの抑制は
シナプスの可塑性を阻害する
神経の電位
増強後
Ca2+チャンネルの抑制がある場合
増強前
シナプスの刺激
働きすぎると、記憶力が低下す
る?