大学での講義中の スマートフォンの私的使用 ―その頻度と内容- 寺尾敦・伊藤一成 青山学院大学 • 多くの学生がスマートフォンを所持. – 男子学生の所持率72.0% – 女子学生の所持率81.7% (2013年8月.ビデオリサーチインタラクティブによ る調査) • 授業中に携帯端末を操作している光景がよく 見られる. – SNSの普及もこうした行為を増加させているかもし れない. 調査の目的 • 大学での授業中に,学生がどれほどの頻度 でスマートフォンを操作しているのか? • スマートフォンで何をしているのか? • 受講者が100人を超える,大教室での講義形 式の授業で,4回にわたって調査を行った. なんとなく操作? • 学生が授業中にスマートフォンを使用するの は,明確な意図があるというよりも,なんとな く操作しているのかもしれない. • そこで,4回実施した調査のうち後半の2回は, スマートフォンの不用意な利用を抑制するこ とを試みた. GOSEICHO http://goseicho.com • ピクトグラムを用いたウェブアプリケーション. • スマートフォンのブラウザでGOSEICHOにアク セス. • スマートフォンを裏返しにして机上に置くよう 指示される. • 表を向けようとすると,「ご清聴ありがとうござ います」という,使用を抑制するメッセージが 流れる. 方法 • 調査実施日:青山学院大学社会情報学部の いて,2年時以降の選択科目として開講され ている「学習心理学」の,第5回からの連続し た4回. – 2013年10月24日 – 10月31日 – 11月7日(GOSEICHO使用) – 11月14日(GOSEICHO使用) • 調査対象者:履修者127名のうち,調査を実 施した講義に出席しており,調査への協力依 頼に同意した学生. – 2013年10月24日:出席110名,協力99名 – 10月31日:出席106名,協力97名 – 11月7日:出席106名,協力93名 – 11月14日:出席104名,協力45名 • 調査項目(4回の調査に共通): – スマートフォンの所持 – 遅刻の有無 – スマートフォンを使用した回数 • • • • 一度もしていない 1回から3回 4回から6回 7回以上 – 使用の用途 • 調査項目(後半2回):前半2回の項目に加え, – GOSEICHO へのアクセスの有無 – アクセスしなかった(できなかった)場合の理由 – このウェブアプリについての感想あるいは意見 • 調査手続き: – 無記名調査. – 講義の最後に調査票を配布し,回答を依頼.調 査への協力依頼があることは予告されなかった. – 4回の調査のうち後半の2回では,GOSEICHO へ のアクセスを講義の最初に依頼. – 3回目調査ではアクセス後はアプリの指示に従う ようにとだけ教示. – 4回目の調査ではアプリの目的と動作について 説明. 結果と考察 • 遅刻者と,スマートフォンを所持していなかっ た学生を分析から除外.分析対象者は, – 第1回:82名(出席110名,協力99名) – 第2回:84名(出席106名,協力97名) – 第3回:75名(出席106名,協力93名) – 第4回:38名(出席104名,協力45名) スマートフォンの使用頻度(%) 第1回調査(2013年10月24日) 6.1 29.3 32.9 31.7 使用せず 1~3回 4~6回 7回以上 スマートフォンの使用頻度(%) 第2回調査(10月31日) 6 29.8 41.7 22.6 使用せず 1~3回 4~6回 7回以上 スマートフォンの使用頻度(%) 第3回調査(11月7日) 13.3 26.7 21.3 38.7 使用せず 1~3回 4~6回 7回以上 スマートフォンの使用頻度(%) 第4回調査(11月14日) 7.9 23.7 26.3 42.1 使用せず 1~3回 4~6回 7回以上 スマートフォンの使用頻度(%) 第1回 6.1 第2回 6 32.9 31.7 41.7 29.3 22.6 29.8 使用せず 1~3回 第3回 13.3 第4回 38.7 23.7 0% 21.3 42.1 20% 40% 26.3 60% 4~6回 26.7 80% 7回以上 7.9 100% スマートフォンの使用頻度 • 授業中に,ほとんどの学生は,少なくとも1回 はスマートフォンを使用している. • 第4回の調査を除き,授業中に7回以上ス マートフォンを使用したと回答した学生は,お よそ30%にもなる. • 第4回調査は,調査に応じなかった学生の割 合が高かった.スマートフォンを頻繁に使用 する学生が,使用を抑制されることに反発? スマートフォンの使用目的 第1回調査(2013年10月24日) 5% 2% 2% SNS 7% メール 43% 10% ゲーム 時間 検索 アプリ 21% 動画・音楽 21% 5% 掲示板 その他 スマートフォンの使用目的 第2回調査(2013年10月24日) 1% 4% 1% 11% 6% SNS メール ゲーム 61% 20% 時間 検索 アプリ 動画・音楽 1% 24% 掲示板 その他 スマートフォンの使用目的 第3回調査(11月7日) 1% 1% 3% 0% 9% 3% SNS 6% メール ゲーム 43% 時間 検索 アプリ 動画・音楽 22% 掲示板 その他 スマートフォンの使用目的 第4回調査(11月14日) 3% 3% 5% 3% 0% SNS メール ゲーム 39% 13% 時間 検索 アプリ 0% 動画・音楽 18% 掲示板 その他 スマートフォンの使用目的 • スマートフォンの使途の多くは SNS あるいは メールでのメッセージのやり取りだった. • 時計代わりに使用している学生も比較的多い (10~20%). 不用意な使用への介入効果 • GOSEICHO システムを使用しても,スマート フォンの使用はほとんど抑制されなかった. – スマートフォンを使用しなかった学生はわずかに 増加(5%程度)しただけ. • 授業中にスマートフォンを使用する学生の多 くは,不用意に使用しているのではない. • 授業中は使用を控えようという意識はあまり なさそう. • ただし,非常に少数だが,GOSEICHO による 使用抑制が効果を持つ学生は存在するかも しれない. – 「スマートフォンを使用しなくなるので,授業などで 使うのは効率がよいと思いました」(第3回調査で の,GOSEICHO についての意見) まとめ • 授業中に,ほとんどの学生は,少なくとも1回 はスマートフォンを使用している. • かなり頻繁に操作している学生も30%ほどい る. • スマートフォンの使途の多くは SNS あるいは メールでのメッセージのやり取り. • 不用意に使用しているのではなく,明確な意 図と目的がある. 今後の課題 • 授業中のスマートフォン使用を規定する要因 を,詳細に検討する必要がある. – 授業形態 – 授業への興味 – 情報モラル – 友人関係 • 他大学での調査により,知見の一般性を高め る必要がある.
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