栄養療法の基礎

栄養療法の基礎
栄養アセスメント
データの収集、評価、解釈
 身体組成
 生化学的検査値
 臨床所見
栄養アセスメント
身体組成パラメーター
栄養アセスメント
血液生化学的パラメーター






血清アルブミン
総リンパ球数
血清トランスフェリン
血清プレアルブミン
TIBC
血清コレステロール
栄養アセスメント
臨床所見





体重の変化
食物摂取の変化
消化器症状
理学所見
疾患と栄養必要量の関係
SGA
食物摂取


変化なし
変化あり
変化の期間(週)
食事内容の変化
•固形食
•完全液体食
•低カロリー食
•飢餓
SGA
消化器症状




悪心
嘔吐
下痢
食欲不振
SGA
理学所見









口、歯、歯肉の病変
咀嚼、嚥下の障害
骨折
舌炎
皮膚の変化
皮下脂肪の喪失
筋肉消耗
くるぶし、仙骨部の浮腫
腹水
SGA
疾患と栄養必要量の関係





重症外傷・多発外傷
手術後
重症感染症
重症熱傷
COPD
SGA
身体組成
生化学的検査値
臨床所見
以上の項目について総合的に判定



栄養状態良好
中等度の栄養不良またはその疑い
高度の栄養不良
生命を維持するために必要な栄養素






炭水化物
蛋白質
脂肪
ビタミン
ミネラル(微量元素)
水分
生命を維持するために必要な栄養素
栄養素
 炭水化物
 蛋白質
 脂肪
 ビタミン
 ミネラル
 水分
供給カロリー
4kcal/g
4kcal/g
9kcal/g
-
-
総エネルギー必要量の判定
健常者の場合
 年齢
 性
 体格
 活動レベル
総エネルギー必要量の判定
活動レベル女性
超軽度
軽度
中等度
高度
男性
30
35
37
44
31
38
41
50
座位での作業
足を使う
早足で動く
ラクビー
ジョギンク
総エネルギー必要量の判定
基礎エネルギー消費量の計算
Harris-Benedictの式
男性:
66.47+(13.75×体重)+(5×身長)-(6.76×年齢)
女性:
655.1+(9.56×体重)+(1.85×身長)-(4.67×年齢)
栄養素の内訳
脂肪として摂取
されるカロリー
(25~30%)
炭水化物
蛋白質
脂肪
蛋白質として摂取 さ
れるカロリー
(15~20%)
炭水化物として摂取さ
れるカロリー
(50~60%)
ビタミンとミネラル必要量
脂溶性ビタミン
 ビタミンA
 ビタミンD
 ビタミンE
 ビタミンK
水溶性ビタミン
 ビタミンC
 葉酸
 チアミン
 リボフラビン
 ビタミンB6
 ビタミンB12
 ナイアシン
などなど
ミネラル
 カルシウム
 リン
 マグネシウム
 銅、鉄、亜鉛
 マンガン
 セレン
 モリブデン
などなど
条件付必要栄養素

カルチニン

タウリン

アルギニン
グルタミン

リジン・メチオニンから合成
生体の侵襲下で合成
生理学的に必要な栄養素
材料がなくなったときに補給が必要
エネルギー必要量の計算
飢餓および侵襲に対する代謝反応
代謝率
飢餓
侵襲/疾患
生体燃料
↓
↑↑
体蛋白質
保存
損失
尿中窒素
↓
↑↑
体重減少
緩徐
急速
エネルギー必要量の計算
飢餓に対する代謝反応




ケトン体の産出と利用
遊離脂肪酸の放出と消費
代謝率を低下させる
内臓蛋白質を保持する
エネルギー必要量の計算
疾患/侵襲に対する代謝反応



カテコールアミン↑
グルカゴン↑
炎症反応性のメディエーター↑
貯蔵脂肪
⇒ 脂肪酸/グリセロール
貯蔵グリコーゲン(肝・筋肉) ⇒ グルコース
貯蔵蛋白質・アミノ酸(筋肉) ⇒ グルコース
エネルギー必要量の計算
飢餓および侵襲に対する代謝反応
体重の減少

体蛋白質の喪失

生体機能の障害

低栄養
エネルギー必要量の計算
ストレス下における主要栄養素
炭水化物



ケトーシスを予防するために100g/日以上摂取する
必要がある
ストレス下では非蛋白カロリーの60~70%を炭水
化物で供給する
糖尿病・高血糖・COPD・高炭酸ガス患者
では、炭水化物を過剰に投与するとCO2の産出が
増える
エネルギー必要量の計算
ストレス下における主要栄養素
脂肪

総カロリー数の約20~55%を脂肪で供給する
静脈内脂肪注入量は1.0~1.5g/kg/日以内
(20%イントラファット 4,5時間かけて)

血清TGの値をモニターしながら投与する

エネルギー必要量の計算
ストレス下における主要栄養素
蛋白質
 ストレス下における蛋白質必要量は
1.1~2.0g/kg/日

ストレス下においては総カロリー数の約20%を投
与する
エネルギー必要量の計算
エネルギー必要量
(必要カロリー数)
基礎エネルギー量
×ストレス係数
×活動レベル
によって求める。
エネルギー必要量の計算
基礎エネルギー量×ストレス係数×活動レベル
侵襲/疾患
小手術
癌
腹膜炎/敗血症
重症感染症/外傷
多臓器不全
熱傷
ストレス係数
1.0-1.1
1.1-1.3
1.1-1.3
1.2-1.4
1.2-1.4
1.2-2.0
エネルギー必要量の計算
基礎エネルギー量×ストレス係数×活動レベル
活動レベル
寝たきり
1.2
ベッド以外での活動
1.3
エネルギー必要量の計算
エネルギー必要量
(必要カロリー数)
基礎エネルギー量
×ストレス係数
×活動レベル
によって求める。
エネルギー必要量の計算
蛋白質必要量
一般的には0.6~0.8g/kg/dayの蛋白質を補給すれば
必要量をまかなうことができる。代謝ストレスが亢進
するような病態の場合はストレス係数を設定する。
ストレスレベル
蛋白質必要量g/kg/day
正常(ストレスなし) 0.6~1.0
軽度
1.0~1.2
中等度
1.2~1.5
高度
1.5~2.0
ストレスレベルは主治医の判断で決める。
エネルギー必要量の計算
以上より
必要カロリー数
蛋白質必要量
を求めた。
蛋白必要量×4kcal=蛋白カロリー数 であるので
必要カロリー数-蛋白カロリー数
から、残りの脂質と炭水化物のカロリー数を
病態に応じて決める。
(脂質は基本的には30%を越えないようにする)
栄養の投与ルート



静脈内投与
経腸栄養
経口摂取
栄養の投与ルート
腸管が使える人ならば
できる限り、腸管を使う
栄養の投与ルート
早期に腸管を使うメリット
①腸管の萎縮を防ぐことができる
消化管の形態(正常な絨毛)の維持
腸管における免疫能の維持
bacterial translocationの抑制
敗血症の予防
メタアナライシスで経腸栄養群と
静脈栄養群で比較した場合に
敗血症性合併症発生率の低下が
示された(18%vs35%)
栄養の投与ルート
早期に腸管を使うメリット
②静脈栄養よりもコストが安価
③患者自身の精神的苦痛が少ない
④ライン確保時の合併症
血行動態が安定していて、禁忌無ければ
入院・受傷36時間以内に経腸・経口栄養
投与を開始する。
症例
68歳男性
COPDのため数年間治療を受けていた。
4ヶ月前が最後の受診。HOT使用中
極度の息切れ・呼吸困難を訴え、過去3回の
COPD増悪はURIと関連していた。
本日は呼吸困難感、膿痰の増加、体温上昇あり
患者の体重はこの半年間で減少傾向あり、
歩行もきつい消耗状態
処方は、フルタイド、テルシガン等
症例
バイタル BP147/88 HR76 RR27
BT37.6℃
身長176cm体重60kg(前回65kg)
BMI 19.5
理想体重75kg
呼吸は補助呼吸筋使用
以前は体格良かったが筋肉の減少と低下
左下肺野にcrackle
症例
血液・生化学データ
TP
alb
BUN
Cr
GOT
GPT
ALP
Glu
t-chol
TG
5.5g/dl
2.8g/dl
5.0mg/dl
0.4mg/dl
43IU/l
45IU/l
191IU/l
88mg/dl
80mg/dl
102mg/dl
WBC
Hb
PLT
9100/μl
14g/dl
350000/μl
PaCO2
PaO2
HCO3
50mmHg
50mmHg
32mEq/l
症例
栄養記録
食欲の低下と継続的な体重減少を訴えていた。
患者の食事は妹が世話していた。
最近の食事摂取状況は半分がやっとの状態
炭水化物が相対的に多かった。