当施設における 尿路感染の現状報告 介護老人保健施設 恵仁荘 看護師 木下 孝一 はじめに 介護保険改定(H24.4) 「肺炎・尿路感染・帯状疱疹が発症した利用 者へ投薬、検査、注射、処置等を行った場 合」所定疾患施設療養費(300単位/日)が 算定出来るようになった。 算定基準 ① 同一利用者について1カ月に1回 ② 1回につき連続する7日間を限度として 当施設において 毎月【10名前後】 尿路感染症として治療し加算請求している。 しかし、くり返し尿路感染を起す利用者が多い。 今回 ○無症状高齢者の尿の状態を把握する目的 H25.5~H26.5の入所利用者の尿検査を実施。 ○尿路感染の発症を減らす目的で陰部洗浄の 徹底。 対象・方法 検尿の実施 対象: H25.5~H26.5 利用者175名(男性55名・女性120名) 当施設での尿検査基準 ○白血球10個/1視野以上 ○細菌(±)以上 細菌尿 発熱を伴う細菌尿の利用者を尿路感染者とした。 陰部洗浄 ○毎朝おむつ交換時に洗浄ボトルを用いて実施。 ○洗浄液は微温湯・消毒液(オスバン5%)の使用。 ○逆性石鹸による洗浄。 結果 検尿による尿検査 126名/175名 120 細菌尿(あり) 100 細菌尿(なし) 80 28% 60 男女別 40 20 72% 尿路感染と診断 治療実施者 その後 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 総数 尿路感染 81% 0 53% 細菌尿(なし) 男性 26 女性 23 細菌尿(あり) 29 97 全体 175 男性 55 女性 120 42 10 32 24% 18% 27% ○尿路感染と診断された 男性7名・女性28名が 初回の尿検査で細菌尿 尿路感染 ~再燃回数~ 18 16 14 12 男 10 8 女 6 4 2 0 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 男性 7名 1名 0 1名 1名 0 0 0 女性 16名 6名 3名 2名 2名 1名 1名 1名 男性3名・女性16名(計19名)再燃を繰り返す。 *女性では特に終日おむつ使用者が再燃を繰り返していた。 尿路感染者の 排泄状況 尿路感染者数 男性 夜間おむつ バルーンカテーテル留置 18名中 4名中 女性 リハビリパンツ 夜間オムツ 終日おむつ バルーンカテーテル留置 49名中 9名 37名中 9名 34名中 12名 2名中 2名 医療機関への入院 入院数(48名) (H25.5月 ~ H26.5月) 20 15 10 0 5 0 UTI 12 肺炎疑い 20 7 心不全 7 食欲低下 2 骨折 *尿路感染の重篤化による入院数は‘0’名 その他 9名 1名 治療について 内服薬(セフカペン・アモキシシリン・ファロム) 抗生剤 点滴(タイペラシリン・セフェピム・メロペネム) *高熱を伴う時は適宜輸液を実施。 尿路感染の治療後 細菌尿改善 12% 5名 無症候性 細菌尿 88% 37名 ケアについて ○排泄誘導・おむつ交換時に微温湯での陰部洗浄 ○消毒薬(オスバン5%)使用 ○陰洗ボトルの変更 ○逆性石けんによる洗浄等の取り組みを実施 調査期間中 月別の患者発症数の 減少は見られなかった。 考察・まとめ 入所時 尿検査 細菌検査(同定、感受性検査など) 実施していない 細菌尿 (判別) 細菌尿(+) 発熱なし 細菌尿(+) 発熱あり 無症候性細菌尿 (治療対象としていない) 治療対象(抗生剤) 入所者の72%が初回検査時にすでに細菌尿であり、 そのうち28%(入所者全員の25%)に尿路感染症の 治療を実施した。 バルーンカテーテル挿入者 オムツ使用者 尿路感染の再燃者(↑) 現状では ○おむつの定時交換がシステム化 ○訴えがない方に対して、人手不足を理由として 濡れおむつを放置 介護現場では ○おむつかぶれを予防しケアするために陰部洗浄 と保清が必要とされている。 当施設では ○尿路感染予防を目的として、 朝の排泄誘導とおむつ交換時の陰部洗浄を重点的に実施 尿路感染を減少させることはできなかった。 今後の尿路感染ケアについて ○おむつによる尿路感染リスクの再認識 ○適切なおむつ着用、洗浄手技の周知徹底 ○利用者個人に合った排泄方法の検討が重要 現在 ○メーカーによるオムツサイズの選び方と着用研修の実施 ○おむつ指導者担当を配置 ○おむつの選定や着用の指導 今後 ○必要のない、おむつは外す ○トイレに座って排泄できるようになる 尿路感染発症者を減少させる努力をして行く。
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