プロジェクト立案過程への 戦略的フレームワーク適用の 指導方法 1 静岡大学大学院 情報学研究科 湯浦克彦研究室所属 南 徹 情報学専攻 目次 研究の背景と目的 達成方針 「プロジェクトマネジメント」の説明 ロジックツリー 今までのロジックツリーの問題点と解決するフレームワーク 問題点の説明 問題点を解決するフレームワーク フレームワーク適用法の評価方法 実験結果 結論と今後の展望 研究の背景と目的 プロジェクトマネジメント プロジェクトの立案 (本研究で強化する過程) プロジェクトの計画 プロジェクトの実行・評価 研究の背景と目的 プロジェクト立案 プロジェクト立案 背景となる企業戦略の確認 プロジェクトの目的と達成方針の立案 →プロジェクトを決定づける重要な作業 静岡大学情報学部にはプロジェクト立案演習授業があるが、 成果物の出来にはばらつきが生じている。 プロジェクト立案演習での考察方法の 教育方法改善が必要。 4 研究の背景と目的② 戦略的フレームワークの説明 戦略的フレームワーク・・・物事を認知、整理するために体系化 された思考の枠組み(以下フレームワーク) MECEである 考える範囲を適切に狭めることが出来る グループ内で共通認識を持つための道具になる 適したタイミングで使えば、的確な考察を行うことができ、よりよい成 果物を作成することができる。 5 研究の背景と目的② フレームワークの利用の困難さ 50種類以上存在しそれぞれ利用方法や利用するタイミングが 異なる フレームワークの効果に対する誤解を持たれる可能性がある 当てはめてしまえば分析できるという「万能論」 流動的な情報を判断することはできないという「無用論」 6 プロジェクト立案向けのフレームワーク適用法を開発 達成方針 演習授業「プロジェクトマネジメント」の説明 静岡大学の情報システム(IS)プログラム2年生向けの必修授業 3~4人程度のグループで行う。 演習の間に進捗状況の評価としてプレゼンが行われる。 プロジェクトの立案 (本研究で強化する過程) プロジェクトの計画 授業の演習範囲 7 プロジェクトの実行・評価 ロジックツリー 背景 現在抱える問題点 目的 達成方針 背景を踏まえ、 何を達成させたいか どのようにして 目的を達成するか ノード アーク 要素に当てはまる案を記入する 関連するノードを結ぶ線 市への来訪者が 減っている 浜松映画祭の 入場者増加 若者向けの 娯楽が少ない 大学構内に まったり空間を レッドカーペット 自主映画製作 8 ロジックツリーの問題点の説明① 一つのノードに複数の要素を混在させている。 背景 先生、先輩と交 流したい、ゼミの 情報が欲しい 目的 交流企画支援システム を活用してもらう 達成方針 It’s classを拡張 JoyPortを利用 複数の背景が同じノードに 混在している 食事会に参加してもら う 学務情報システム を拡張 大学祭でイベントの開 催 新しくサイトを設営 この問題を解決するフレームワークの選択 1.ロジックツリーと同様に対象を分割・整理できる 2.内容に絞った視点で分類できるもの 3.学生に身近な表現を使って分類しているもの 6W2H 5F AIDM A 3C分析 アロー ダイアグラム フィッシュボーン・ チャート ポジショニング マップ PEST分析 購買行動の 四要因 オズボーンの チェックリスト PDCAサイクル マーケティングの 4C 10 バリューチェーン 問題点を解決するフレームワーク 6W2Hの適用法 背景 Why なぜ Whom 誰に 達成方針 目的 対象の状況 Why 誰のために? なぜ は? 何を達成させ る? どんな問題が Whom ある? 誰に どういう方法 で? 何を特徴に して? Who 誰が Who 誰が What 何を What 何を How どうやって How どうやって How Much いくらで How Much いくらで When いつ When いつ Where どこで 11 Where どこで 11 問題点を解決するフレームワーク 6W2Hの適用法 企画内容: Whom 誰に? Who 誰が? What 何を? When いつ? Where どこで? Why なぜやるの? How Much いくらで? How どうやってやるのか? 問題点を解決するフレームワーク 6W2Hの適用法 企画内容: 交流企画支援システム Whom 誰に? ・対面式コミュニケーションが苦手な学生。 ・先輩や先生との交流が少ない学生 Who 誰が? ・情報基盤センターや学生(企画立案者)が What 何を? ・サークルや授業にとらわれない教師学生間の交流を支 援するシステム。 When いつ? ・来年四月から実施 Where どこで? Why なぜやるの? How Much いくらで? ・It’s classに追加機能として、新システムを導入する ・自分に合った学生生活を送ってほしいから ・オープンゼミ、イベントの告知ができる掲示板 How どうやってやるのか? ・チャットルームで日対面の交流を支援 今までのロジックツリーの問題点の説明② 背景と達成方針の関連が希薄である 目的 背景 達成方針 相談できる場所 静大生の大 学生活支援 が不備 学生の 生活をよ り快適に する(有 用な情 報を簡 単に手 に入れ る) サークル 掲載内容 各種申し込み 掲示板 利用方法 PC 携帯電話 Webシス テム 管理者 作成 対応していない 情報の提供 宣伝方法 情報基盤センター 企業 学生 学生 企業 ガイダンス Readme・冊紙 この問題を解決するフレームワークの選択 1.問題を特定の側面に絞って分類することができる 2.背景の問題はユーザのデメリットである →ユーザの視点からメリットを分析できるもの 6W2H 5F AIDM A 3C分析 アロー ダイアグラム フィッシュボーン・ チャート ポジショニング マップ PEST分析 購買行動の 四要因 オズボーンの チェックリスト PDCAサイクル マーケティング の4C 15 バリューチェーン 問題を 抱えている人: (ターゲット) プロジェクトが 解決したい問題 対応する不満 解決案 対応する不満 解決案 価値 コスト 対応する不満 解決案 利便性 対応する不満 顧客との会話 解決案 問題を 抱えている人: (ターゲット) プロジェクトが 解決したい問題 ・静大生の大 学生活支援が 不備 ・有用な情報を 簡単に手に入 れたい 静岡大学の学生 対応する不満 解決案 対応する不満 解決案 価値 コスト 対応する不満 解決案 利便性 対応する不満 顧客との会話 解決案 問題を 抱えている人: (ターゲット) 静岡大学の学生 対応する不満 プロジェクトが 解決したい問題 ・静大生の大 学生活支援が 不備 ・有用な情報を 簡単に手に入 れたい 価値 コスト ・他の学生の意見が 学生同士の知恵袋 欲しい 対応する不満 解決案 ・奨学金の 取得方法 金銭にかかわる情 報 対応する不満 利便性 解決案 方法が分からない 各種手続き方法の一 手続き 覧 対応する不満 顧客との会話 解決案 解決案 大学に相談や質問 学務へのメール フォーム ができない 今までのロジックツリーの問題点③ プロジェクト固有の問題の分析が不十分 各ケースに特化した考察が出来るフレームワークを適用 ①利用者の拡大を目指すプロジェクトなのに非利用者の分析 ができていない. →非顧客の三分類 ②プロジェクトの実行には,規制等の外部圧力がかかることが 考えられるが,それに対する考慮ができていない. →PEST分析 ③競合サービスが多いプロジェクトにおいて,オリジナリティを出 せていない. →ポジショニングマップ 19 フレームワーク適用法の指導方法 全体の流れ 学生 構想発表を行う ①学生による フレームワーク適用 中間発表で適用する 指導者 フレームワーク適用法を 作成する フレームワーク適用法を 解説する 改善案を作成する ① 改善案を評価する ②指導者による改善案 ② 評価する 20 フレームワーク適用法の評価方法 学生の使用状況、理解に関する評価 ①授業の進行に沿って学生に指導し、適用法の使用状況を見る ②成果物に対してフレームワーク適用法を用いた改善案を作成し、 適用法に対する意見を聞く フレームワーク適用の効果に関する評価 報告者が授業の成果物に対して適用法を利用した 適用法が授業の成果物に与える効果の可能性を評価する。 21 フレームワーク適用法の評価方法 ①学生によるフレームワーク適用 構想発表 中間発表(適用法指導後) 22 フレームワーク適用法の評価方法 学生の使用状況、理解に関する評価 ①授業の進行に沿って学生に指導し、適用法の使用状況を見る ②成果物に対してフレームワーク適用法を用いた改善案を作成し、 適用法に対する意見を聞く フレームワーク適用の効果に関する評価 報告者が授業の成果物に対して適用法を利用した 適用法が授業の成果物に与える効果の可能性を評価する。 23 フレームワーク適用法の評価方法 ②指導者による改善案の評価 24 フレームワーク適用法の評価方法 ②指導者による改善案の評価 25 フレームワーク適用法の評価方法 学生の使用状況、理解に関する評価 ①授業の進行に沿って学生に指導し、適用法の使用状況を見る ②成果物に対してフレームワーク適用法を用いた改善案を作成し、 適用法に対する意見を聞く フレームワーク適用の効果に関する評価 報告者が授業の成果物に対して適用法を利用した 適用法が授業の成果物に与える効果の可能性を評価する。 26 実験結果 ①学生によるフレームワーク適用 ロジックツリーの項目数が増加したグループは19グループ中3 グループだった。 →学生がロジックツリーの強化に向かうことの 困難さがうかがわれる。 項目数が増加したグループのフレームワーク適用によって得ら れる強化はそれぞれ異なった。 Aグループ 実際の運営を想定した細部の情報が記入された Bグループ ロジックツリーの達成方針の部分が強化された Cグループ 背景部分のノードが 強化された →フレームワーク適用法によって得られるロジックツリー強化に 多様性が見られる。 実験結果 ②指導者による改善案の評価 ⅰ肯定的な意見 ターゲットを個別に分けそれぞれにたいして詳細に不満や 解決案を提示しているところがかなり勉強になった。 4人中3人はフレームワークを理解し効果を実感したと回答。 学生に一例ずつ改善案を示せば、 適用法やフレームワークが理解されるチャンスがある。 ⅱ否定的な意見 フレームワークによって必要のないアイデアまで発想してしま う可能性があるのではないか。 利用目的に応じて使い分けるフレームワークを改善案として 提示されたので意味があるように思えなかった。 フレームワークは利用させるだけではなく、 ロジックツリーの最適化につなげる必要がある。 28 実験結果 フレームワーク適用の可能性の評価 各フレームワークの効果が出たプロジェクト数(全19チーム) フレームワーク プロジェクト数 6W2H 5 マーケティングの4C 14 非顧客の三分類 15 PEST分析 4 ポジショニングマップ 7 平均増加ノード数 4.5 3.8 5.5 4.5 5.5 各FWの効果 利用によって効果が出る余地が大きい。 フレームワークによって効果があるプロジェクトの特徴が異な る ⇒学生の成果物を改善するために、プロジェクトの特徴に よって提示するフレームワークを変える必要がある 29 結論と今後の展望 結論 ・学生が自分でロジックツリーを改良したケースは少なかったが、適用 されたケースでは効果が明快かつ多様であった。 ・指導者による改善案は1つの例の説明で理解し、フレームワークに 関心を持つ学生も存在し、例を用いて丁寧に教えれば理解させる チャンスがあることが分かった。 ・フレームワーク適用法による効果の可能性は大きいが,プロジェクト の特徴によって提示するフレームワークを変える必要がある事が分 かった. 30 結論と今後の展望 今後の展望 ・指導者による改善案の適用によって理解することが出来た学生がいたの で、今後も続けていく。 ・フレームワーク適用はプロジェクトマネジメント以外での効果も期待される。 今回を研究の第一歩としてとらえ、対象授業以外においても成果を活かし ていきたい。 31 ご清聴ありがとうございました 32
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