慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研

2013年10月6日13時~16時
慶應義塾大学日吉キャンパス協生館CDF教室
小林 正弥
前野 隆司
千葉大学大学院
慶應義塾大学SDM研究
慶應義塾大学
SDM研究科
小林正弥
 独立館:独立自尊(福沢諭吉)
 協生館
 リベラリズム:個人、自由、自律、独立
 コミュニタリアニズム:共通、共同、協力、
友愛、連帯
 問題をシステムとして俯瞰的にとらえ全体として
整合性のある解をデザインする方法(=システム
デザイン・マネジメント学)
 リベラリズム・リバタリアニズム:個人、原
子論
 全体論→普遍的・俯瞰的全体性
 全体論的自己・視点
 要素還元主義:すべてを最小の要素(原子)
に還元して、その合計として考える。
 西洋近代 物理学・化学 デカルトーニュー
トン的世界観 原子論→西洋近代主義・啓蒙
主義
 個人を起点とする、社会契約論、功利主義
 自由、選択:リベラリズム、リバタリアニズ
ム(自由原理主義)
 全体には、部分(要素)の合計以上のものが
存在すると想定。
 西洋古典的 ギリシャ哲学(プラトン、アリ
ストテレス) コミュニティ(ポリス)にお
ける正義 全体論的
 東洋思想:ヒンズー教(梵我一如)、道教
(道)などに全体論的発想
 生物学 生命論、有機体論
 近代:システム論(社会システム、政治シス
テムなど)→自己組織化
 「古典的(東洋的)全体論+近代的(西洋
的)原子論」の統合化
 コミュニティとともに、個人も尊重:リベラ
ル・コミュニタリアニズム
 国家(=公)と個人(=私)との媒介としての
「公共」→公共善
 理想:全体論的個人
 正義:福利型(結果の幸福)、自由型(義
務・権利論)→美徳型(目的としての善)
 1.福利型:利己主義、功利主義
 2.自由型:①リバタリアニズム(市場原理
主義、自由原理主義) 自己所有権、自己責
任
 ②リベラリズム 正義の2原理(基本的自
由・格差原理)、福祉国家
 3.美徳型:コミュニタリアニズム 善き生+
共通性=共通善
 正義:個人の自由ーー義務・権利論ーー主意
主義
 ロック:社会契約論(ホッブス、ルソー)、自
然権(生命、自由、財産property)、議会制
 カント倫理学:動機、善意思、義務
 権利ー基底的理論に展開
 ロールズ『正義論』による社会契約論の再構
成
 ①リバタリアニズム(市場原理主義、自由原
理主義) 自己所有権、自己決定、自己責任
ネオ・リベラリズム、ミルトン・フリードマ
ンら。エゴイズム(利己主義)を肯定する場合
も多い。
 ②リベラリズム ロールズ、無知のヴェール、
他者への無関心、合理的選択、正義の2原理
(基本的自由・格差原理)、福祉国家
 義務論:善なき正義(正義の善に対する優先
性)
 道徳的主体:負荷なき自己→負荷ある自己:
文脈、状況
 善=価値観の多様性→正義
 善ある正義:善と正義の相関性→倫理的正義
論
 コミュニタリアニズム:善(倫理性、精神
性)と共(共通性):共通善
 アリストテレス:目的論、美徳
 テイラー(多文化主義)、マッキンタイア
(美徳倫理学)、ウォルツァー(複合的正義、
正戦論)
 宗教的背景
 美徳論:義務論的道徳とは違って、内発的・
応答的行為
 アリストテレス:幸福=美徳に則しての魂の
活動、中庸、友愛
 トマス:人間の習慣づけによって得られる善
き習性 4枢要徳 正義(共通善のため)・
賢慮(目的実践のための手段選択)・節制・
剛毅+キリスト教的美徳 愛・希望・信仰
 儒教:知・仁・勇、仁義礼智信
 ロールズ正義論→サンデル「負荷なき自己」批判。善
+共
 コミュニタリアニズム:共通善の政治学
 ロールズの「転向」:政治的リベラリズム 重合的合
意 敗北?
 修正リベラリズム:美徳や対話・省察などを摂取して
接近
 特定の共同体の多数派主義ではなく、特定の共同体を
超えた、共通善の探求
 最近のサンデルの普遍的・グローバルな方向性
 コミュニタリアニズム:「善+共」の復権
 エツィオーニ:新黄金律(自律と秩序とのバランス)
) 中国に対しては、自律の必要性
 保守主義・権威主義との相違
 リベラル・コミュニタリアニズム=リベラル+コ
ミュナル
 美徳:リベラルな美徳(自由・自律)+コミュナ
ルな美徳(共通・友愛)
 西洋的原子論+東洋的全体論
 原子論的リベラリズム+全体論的コミュニタリ
アニズム=リベラル・コミュニタリアニズム
 対話法→新対理法的統合化
 論理:形式論理(アリストテレス)、分ける
発想。原子論的
 弁証法(プラトン→ヘーゲル) 対立→まと
める 統合的 三元論的
 論理+感性→弁証法・対理法
 対話:原子論的個人同士の対話→共通善に。
 実際には、共通善に到達する可能性があるの
は、その間に共通性・普遍性が存在するから
。全体論的側面の存在。
 新対理法的対話:(準)全体論的個人と原子
論的個人との対話 共通善に到達する可能性
が高まる。
 哲学を生きる。生きた哲学のために必要。
 対理法:原子→全体、全体≒国家(ヘーゲル
)
 メタ対理法:原子(多)+全体(一)
 新対理法=総合的対理法 双方の対理法を用
いる。
 全体論的個人:全体的視点・思考と個人的思
考、普遍性と特殊性の双方を持つ。
 統合化:永久革命・運動
 私/公共/公(≒国家、官):原子論/公共
/全体論
 公共:三元論的媒介概念=新対理法的概念
 新対理法的認識・判断:強靭な精神への発展
 永遠の共通善=対話により、公共善への接近
を目指す永久の運動
 普遍的全体性に基づく、グローカルで多層
的・生成的なリベラル・コミュニタリアニズ
ム
 東西の統合的公共哲学=統合化論的公共哲学
 【西洋的展開】
公共哲学の起点
 明治~戦前:福沢諭吉 文明開化・議会政、
独立自尊=公ではない、民の公共
 戦中・戦後:南原繁ー丸山眞男 近代主義・
自由主義・民主主義
 【東洋的展開】
「公」哲学
 明治~戦前:神道・儒教・仏教 国家主義
 戦後・戦後:京都学派 共同体主義
 戦前:共和主義
横井小楠(公共之政)、中
江兆民ら
 南原:先駆的・先進的コミュニタリアン
 丸山:その影響+永久革命としての民主主義
 福沢ー丸山:一般的には西洋近代主義と思わ
れているが、さらに深い弁証法的思考
 新公共主義:リベラル・コミュニタリアニズ
ムにおける永久革命としての公共善の追求
 一般的イメージ:近代主義者、進歩主義者
 個人(内的自立)と社会性(国家)、二極分
化の批判
 弁証法的思考:不可分の対立・異質な要素と
のアンチノミー(二律背反)の自覚→認識を
深化→(安易な弁証法的統一ではなく)主体
的選択→実践の質を高める。
 バランス感覚:どちらからも距離を取り(距
離の習慣)、一方を絶対化せずに、全体の中
に位置づけて相互に交渉させつつ共存させる
、醒めたバランスのとれた精神、動的・機能
的論的な考え方
 一般的イメージ:西洋近代主義、進歩主義
 福沢賛美(個人主義)/福沢批判(国家主義
)
 「一身独立して一国独立す」個人主義者たる
ことにおいて国家主義者
 「自由は不自由の際に生ず」価値の多元性、
自由の弁証法
 あまのじゃく根性、「両眼主義的」
 人間蛆虫論:宇宙における人間存在の矮小性
→精神の主体性の深化、戯れの自覚・ユーモ
ア→まじめ、双方で真の独立自尊の精神
 福沢の「実学」における哲学(実践哲学):
単純な合理主義・功利主義ではない。
 独特の「プラグマティズム」:実用主義では
なく、価値判断を固定したものとせずに、具
体的状況の中で流動化・相対化して、目標か
ら考える強靭な主体的精神(⇔惑溺)
 弁証法:矛盾を媒介した主体的認識・選択
 福沢はバランス思考型、丸山は弁証法に力点
 福沢ー丸山の「プラグマティック」な主体的
弁証法→新対理法へ。
 日本思想の弱点
 思想の断片化、雑居性
 安易な東西融合論を批判
 歴史意識・政治意識・倫理意識の古層
 固有の伝統主義と外来の普遍主義との循環
 強靭な機軸の確立の必要性:構造化→新対理
法的哲学へ
 小林正弥・菊池理夫編『コミュニタリアニズ
ムのフロンティア』(勁草書房、2012年)
 菊池理夫・小林正弥編『コミュニタリアニズ
ムの世界』(勁草書房、2013年、近刊)
 笹倉秀夫『丸山眞男の思想世界』(みすず書
房、2003年)
 小林正弥編『丸山眞男論』(東京大学出版会
、2003年)