肺炎高リスク者へのケアの重要性と技術向上を目指して

肺炎高リスク者への口腔ケアの重要性と
技術向上を目指して
~細菌カウンタを使用した取り組み~
長崎県
介護老人保健施設恵仁荘
介護福祉士
澤村 洋平
はじめに
当施設の口腔ケア (H19年以前)
食後うがいが中心、夕食後のみ自歯・義歯の洗浄を行う。
問題点
対策
H19年
●口腔内評価が未実施
●ケア方法も徹底されていない
●スタッフ個々の判断でケアを実施していた
●口腔ケアチームを設立し、歯科衛生士の指導の下
取り組み強化を行なった。
■ 改善点と課題が把握でき、結果として肺炎による退所者
の減少、職員の意識向上等の成果を得る事ができた。
新たな取り組み
肺炎者数
40
30
■ 細菌カウンタの使用
20
10
0
口腔内評価対象者
歯科衛生士による口腔内評価(128名)
(日本歯科衛生士会認定、摂食・嚥下リハビリテーション分野)
アセスメントシートに基づき
歯科衛生士がトータル的にリスク評価
① 口腔内の環境が不衛生
② 嚥下や咀嚼に問題あり
③ 定期的に微熱が出る
11名9%
高
低
高リスク⇒①②③に該当する者
中リスク⇒①②③の1つないし2つに
該当する者
45名35%
中
72名
低リスク⇒①②③全てに該当しない者
誤嚥性肺炎高リスク者 6名を選定し取り組みを行った
(実施期間H26.4月~10月)
取り組み内容
Ⅰ 高リスク者への個別ケア
●歯科衛生士が高リスク者を選定
●個別口腔ケアプランの作成・実施
●月一回、細菌カウンタによる評価
Ⅱ 職員の口腔ケアのスキルアップ
●月一回、歯科衛生士による評価、指導。
●介護職員23名中、実地指導を受けた20名を対象にアンケートを実施。
※取り組み、Ⅰ・Ⅱ共に細菌カウンタを使用
「細菌カウンタ」 とは?
①総細菌数を約1分で定量測定
②測定結果は培養法と同等レベル
③簡単操作、持ち運びができる小型サイズ
採取方法として
・自歯の磨き残しが多い部分
・舌苔の付着が著明な部分
「定量数値」と「レベル値」で測定結果が表示されます
【レベル値】
【定量数値】
定量数値の見方(単位:cfu/mL)
Log10
9.07×10^06=9,070,000
=6.96Log10
1mL 中の細菌数の意味
ディスポーザブルカップ(5mL)
中の1mLあたりの細菌総数
取り組みⅠ 高リスク者への個別ケア (個別口腔ケアプラン)
口腔アセスメント表 ( 解決すべき課題の把握)
個別口腔ケアプラン
<評価>記入日 平成 年 月 日 <評価>記入日 平成 年 月 日 No,1
必要物品
(ふりがな)
氏名
男性 □
女性 □
様
歯ブラシ・ハミングッド・ガーグルベス・コップ
(ふりがな) 名前
様
男
□
女
□
①口腔前提部
⑥軟口蓋
②歯間部
⑤口蓋
必要な
ケア
口腔内の問題点・課題
既
障
往
害
歴
名
・
・歯肉に発赤、出血が見られる。
肺炎の既往歴 □
質問項目
1
口
腔
内
状
況
衛
生
2
評価項目
上顎
義歯の状態
評価
評価
1 総義歯 2 部分床義歯 3 義歯なし
・自力でのブラッシング可能であるが、磨き残しがある為、仕上げ磨き
の介助必要。
高
手技・手順
下顎 1 総義歯 2 部分床義歯 3 義歯なし
臼
歯
部
で
の
咬
合
義歯なしの状態で
義歯ありの状態で
1 なし 2 あり №1
(「2」の方) 1 片側 2 両側
(「2」の方) 1 片側 2 両側
上顎
本
本
下顎
本
本
残歯の本数 4
8 7 6 5 4 3 2 1
歯式 8 7 6 5 4 3 2 1
1 2 3 4 5 6 7 8
×:欠損歯
1 2 3 4 5 6 7 8
△:残痕歯 1
義歯が外せますか
2
ぶくぶくうがいができますか
1 できる 2 指導があればできる
3
ブラッシングが出来ますか
1 できる 2 指導があればできる 3 できない
③歯の表面
口腔内写真
①口腔前提部・・歯ブラシ使用し、歯肉部分に歯ブラシをあてマッサー
ジも含めてブラッシング行う。
②歯間部 ③歯の表面・・歯ブラシ使用し、歯の周囲全部に歯ブラシ
があたるようで角度を変えながらブラッシング行う。(ブラッシングの際
は、本人様へ説明行い、自力でのブラッシングの方も促してください。)
1 なし 2 あり
3
④舌
④舌・・歯ブラシ使用し、50g程度の強さで2~3回ブラッシングを行う。
⑤口蓋 ⑥軟口蓋・・スポンジブラシ使用し、清拭行う。
1 外せる 2 指導があればできる 3 できない
3 できない
4 水を飲み込む 4
プラークの付着状況
1 ほとんどない 2 中程度 3 著しい
5
義歯のプラーク付着状況
1 ほとんどない 2 中程度 3 著しい
6
食 渣 の 残 留
1 ない 2 中程度 3 著しい
7
舌苔
8
口腔乾燥
9
口臭
10
口腔疾患 1
食事形態
2
食事中や食後のむせ
1 ない 2 あまりない 3 ある 食事中や食後の痰のからみ
1 ない 2 あまりない 3 ある 歯肉部分に発赤及び出血が見られる為、歯肉部分にしっかり歯
ブラシをあて、マッサージもしながらブラッシングお願いします。
※自力でのブラッシング可能なので、最初に声かけ行い、ケアの注意
点等を説明しながらブラッシング行って頂いてください。
※左下奥歯 舌のあたる部分に注意。
1 ない 2 薄い 3 厚い
1 ない 2 わずか 3 著しい
1 ない 2 弱い 3 強い
1 歯が痛む 2 歯がグラグラする 3 歯ぐきに炎症がある
食
事
3
4 義歯が合わない 5 その他
主食: 副食: トロミ:
頸部聴診(3ccの水嚥下後、聴診)
1 清聴 2 残留音・複数回嚥下 3 むせ・呼吸切迫あり
☆水嚥下禁止の場合は呼吸音聴診
4 清聴(☆) 5 弱い雑音あり(☆) 6 激しい雑音あり(☆)
4
残歯の裏側・境目(黄色線部)部分に残渣物が付着している為、
しっかり確認しながらブラッシング行う。下残歯の歯並び悪い為、
角度を変えながら、ブラッシング行う。(青色)
個別口腔ケアプラン
個別口腔ケアプラン
必要物品
歯ブラシ・ハミングッド・ガーグルベス・コップ
(ふりがな) 名前
様
男
□
女
□
①口腔前提部
⑥軟口蓋
②歯間部
⑤口蓋
口腔内の問題点・課題
・歯肉に発赤、出血が見られる。
・自力でのブラッシング可能であるが、磨き残しがある
為、仕上げ磨きの介助必要。
高
④舌
③歯の表面
手技・手順
№1
口腔内写真
①口腔前提部・・歯ブラシ使用し、歯肉部分に歯ブラシ
をあてマッサージも含めてブラッシング行う。
②歯間部 ③歯の表面・・歯ブラシ使用し、歯の周囲全部に歯ブラシ
があたるようで角度を変えながらブラッシング行う。(ブラッシングの際
は、本人様へ説明行い、自力でのブラッシングの方も促してください。)
④舌・・歯ブラシ使用し、50g程度の強さで2~3回ブラッ
シングを行う。
⑤口蓋 ⑥軟口蓋・・スポンジブラシ使用し、清拭行う。
歯肉部分に発赤及び出血が見られる為、歯肉部分にしっかり歯
ブラシをあて、マッサージもしながらブラッシングお願いします。
※自力でのブラッシング可能なので、最初に声かけ行い、ケアの
注意点等を説明しながらブラッシング行って頂いてください。
※左下奥歯 舌のあたる部分に注意。
残歯の裏側・境目(黄色線部)部分に残渣物が付着している為、
しっかり確認しながらブラッシング行う。下残歯の歯並び悪い為、
角度を変えながら、ブラッシング行う。(青色)
取り組みⅠ 結果 (細菌カウンタによる細菌数)
11000
不
衛
生
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
良
1000
0
細菌数(万個
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
取り組みⅡ
個別指導の写真
歯科衛生士からの指導内容
① 高齢者の口腔内の状態
② ケア物品の取り扱い
③ 義歯の取り扱い、洗浄方法
④ 口腔内のケアの手技・手順
個別指導
スタッフの意識が高まった事で
技術力が向上
取り組みⅡ 結果
アンケート内容
1.個別指導を受けケアの意識、技術向上に繋がったか。
2.口腔ケアの重要性を再認識できたか。
※回答【そう思う・少し思う・思わない】
3.個別指導を受けてからの感想
結果
◆1.2に関しての回答はどちらとも、【そう思う】が20名であった。
そう思う
介護職員
100%
20/20名
◆3.の個別指導を受けての感想
○「指導を受けた事で以前より口腔内を観察する様になった」
○「指導を受けながらケアする事で歯ブラシの当て方や注意点等
が明確に分かり良かった」
考察
細菌カウンタを使用
前
●口腔ケアの評価は歯科衛生士による評価のみであった。
●口腔内の環境を見た目でしか判断できなかった。
後
●実際に細菌数を確認出来る為、専門職以外でも評価が出来るようになった。
●ケア前後で比較ができ、目に見えて効果が分かる為、自身の技術力が把握できた。
●歯科衛生士からの個別指導を受けた事でより技術面での向上が図れた。
●利用者側より、ケアの大切さ等を理解される発言もきかれ職員だけでなく
利用者も口腔ケアに対する意識が高まったのではないかと考える。
まとめ
高リスク者への口腔ケア、職員の技術向上が課題
●歯科衛生士による評価、個別指導
●個別ケアプランの作成・実施
●細菌カウンタの導入
結果として、一定の成果をあげられた
■ 口腔ケアの充実(技術・意識向上)
■ 高リスク者のリスク軽減
(6名中3名が中リスクへ)
■ 肺炎による医療機関退所なし
今後の課題
□ 現在の取り組みを継続し統一したケアを図る
□ 介護職員の口腔ケアに対する意識、技術のさらなる向上
・口腔ケア誘発性肺炎の予防
※バイオフィルム(細菌叢)の破壊(清掃)と回収(除去)
□ 高リスク者だけでなく、中・低リスク者へのアプローチを図る
御清聴ありがとうございました