スライド 1

第11章
バブルは現実に起こるか?
『天体の動きならば私には計算できるが、
人間の狂気にまでは責任が持てない。』
サー・アイザック・ニュートン
実験室でバブルを見つける①
• 「バブル(bubble)」という名称が生まれたのは、
18世紀初めのイギリスにおいて「南海商会」
の増資を契機とした投資ブームが起きた時の
こと。
• 南海会社の成功につられて、数多くの怪しい
事業をうたった企業が設立されたが、どの株
式も売れて、株価が値上がりしていった。
• 株価が膨張することをバブルと表現した。
実験室でバブルを見つける②
• 第10章の結果では、経済理論は、取引相手
が無限でない限り、合理的な予想のもとでは
バブルは起きないことになる。
• ところが、会員の無限の連鎖がないと合理的
には起きないねずみ講は人口わずか300万
人のアルバニアでも起きている。
• バブルはどうなのか?
• バブルは頻繁に起こるのか?
実験室でバブルを見つける③
• 資産価格にバブルを見つけるのは難しい。
• というのは、ファンダメンタルズ価格を知るこ
とが難しいため。
• そこで、バブル(=ファンダメンタルズ価格と
市場価格の乖離)が起きているかを知ること
も難しい。
• 「将来の配当」と「将来の利子率」という二つ
のデータを入手することは不可能。
実験室でバブルを見つける④
• 一つの抜け道
• 「実験経済学」の方法を用いること。
• つまり、投資を実験室の環境の中で行
わせて、バブルがどの程度ひんぱんに
発生するかを確かめればよい。
• スミス=サチャネック=ウィリアムズ(1998)の
研究はその一例。
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)①
•
•
•
•
•
9人の実験参加者
資産と現金が与えられている
コンピュータの使用
売りと買いのオッファー(申し出)をだす
「売り」と「買い」のオッファーの中から、安い
価格で買ったり、高い価格で売ったりする。
• 資産には取引期間の終わりに現金の「配当」
がもらえることになっている。
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)②
• 参加者は「株式(=資産)」を持ち続けて、配
当だけを受け取ってもよいし、キャピタル・ゲ
インをねらって、売買に参加してもよい。
• 最終期間(1期間4分で15回)後に手持ちの
「現金」は実際に渡される。
• すると、参加者は手持ちの「現金」を最大化す
るように行動するはずである。
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)③
• 4分の世界では、利子率はゼロ。
• 配当についての情報は全員に等しく与えられ
ている。すなわち、情報は各自に等しくなるよ
うにコントロールされている。
• 配当はランダムに発生させられている。
• ファンダメンタルズ価格の計算には、①配当
の取りうる値、②その値のでる確率の情報、
が必要になる。
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)④
• ファンダメンタルズ価格の計算には、①配当
の取りうる値、②その値のでる確率の情報、
が必要になる。
• 上記の情報があると、15期間を通した配当の
合計について、①期待値(=平均)、②上限
値、③下限値が正しく計算できる。
• めんどうな参加者のために、期待値・上限値・
下限値は教えることにする。
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)⑤
• 配当合計の期待値は期間が進むにつれて小
さくなっていく。
• ファンダメンタルズ価格(F価格)は、実験参加
者のリスク性向に影響を受ける。
– リスク中立的なら、配当合計期待値=F価格
– リスク回避的なら、配当合計期待値>F価格
– リスク愛好的なら、配当合計期待値<F価格
スミス=サチャネック=ウィリアムズ
(1998)⑥
• 取引価格についての予測
– みんなが同じ情報を持っているから、リスク性向
(=危険回避度)が同じなら、F価格は全員一致
する。この場合、みんなが同じ価格を正当と考え
るので、取引は存在しないはずである。
– 取引者の数も、取引回数も有限なので、合理的
な期待を持っていれば、バブルは起らないはずで
ある。
• ところが、、、
実験結果①
①株式の取引は活発に行われている。
⇒理由は、情報の使い方が違うか、リスク性向
が違うかである。リスクの違いにしては取引
が大きすぎる。
②バブル(=取引価格が配当合計の期待値と
外れて膨張する)がきわめてひんぱんに起き
る。バブルの崩壊も起きる。
実験結果②
③取引価格のピークは第4期目である。
④バブルの崩壊が起きると(第4期目→第5期
目)、取引量が急減した。
• 他の実験でも、バブルの発生と崩壊がひんぱ
んに観察されている。
• バブルは現実に、ひんぱんに起こる。
プラザ合意と超低金利政策①
• 我々にとって身近なバブル=1986年頃から
の株価や地価の高騰。
• バブルだったのか?
• 「定説」: 緩和的な金融政策→株価・地価の
上昇→真正なバブルに変化→金融政策が引
き締め→バブルが崩壊。
• なぜ緩和的な金融政策(1987年~88年の
日本銀行による超低金利政策)がとられた
か?
Money Market Rate (percent)
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
19
60
19
62
19
64
19
66
19
68
19
70
19
72
19
74
19
76
19
78
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
0.0
Source: IMF, International Financial Statistics.
プラザ合意と超低金利政策②
• 85年9月、ニューヨー
クのプラザ・ホテルでG
5(アメリカ、日本、イギ
リス、西ドイツ、フラン
ス)の大蔵大臣と中央
銀行の総裁の会議。
• 国際金融問題を討議。
• 政策協調=「プラザ合
意」
映画の中の『プラザ・ホテル』
クロコダイル・ダンディー
ホーム・アローン2
プラザ合意と超低金利政策③
• プラザ合意: アメリカと「日本・ヨーロッパ」の
金利差を小さくしよう!
• 金利差縮小→為替レートは円高ドル安へ
• 円高進行のしすぎ!
• 「ルーブル合意」(1987年):アメリカと日本
の金利差を拡大しよう
• 日本は低金利、アメリカは金利を上げた
プラザ合意と超低金利政策④
• 1987年、低金利すぎる?金利上げ?
• ところが、1987年10月19日に株価暴落=
ブラック・マンデー(つまり、アメリカの株式市
場からお金が逃げ出した)
• 株価暴落を避けるために、日米の金利差を
維持せざるを得なくなり、そこで、日本は低金
利を続けることになった。
• 歴史的な超低金利政策!
Japan:Share P rices
2000=100
180
166.1
160
140
120
100
72.3
80
60
40
20
0
1950
1955
1960
1965
1970
1975
出所: IMF, International Financial Statistics.
1980
1985
1990
1995
2000
プラザ合意と超低金利政策⑤
• 景気が回復しているにも関わらず、日本銀行
は為替レートへの影響(更なる円高)を恐れ
て、低金利政策を継続した。
• そこで、「永久低金利の神話」が根付くことに
なった。
– 市場(参加者)は、円ドルレートを考えれば、今後
は金利の引き上げはないだろうと考えるように
なった。
– 将来の利子率の低下⇒F価格の上昇!
バブル期に何が起こったか?
• 「バブル」は日本銀行の金利引き上げによっ
て終わる。
• 鈴木の整理:
– 第1期=1986~87年:金融緩和時期
• 金利の引き下げ⇒F価格の上昇
– 第2期=1988~90年3月:バブル期
• 金利は一定⇒バブル
• 第2期に何が起きたのか?
第2期に何が起きたのか?
• 「自己増殖」的な価格上昇のメカニズム
• その裏には変な理論が横行していた
– 公有地処分が地価の高騰をあおる
– 「含み益の理論」
• 資産の値上がりが、更なる資産の値上がりを生む
– 金余り説
• 理論の欠陥:投資家はすぐに儲けようとする
であろうから、急激な資産価格の上昇しか説
明できない。起きたのは持続的上昇。
第2期に何が起きたのか?
• 重要なのは、いろいろな理論がどれだけ筋が
通っているかではなく、どれだけ投資家が信
じているかである。(ビル・エモット)
• 今日から見ると、バブル時代にキャピタル・ゲ
インを狙って株式や土地に大金を投ずるのは、
ねずみ講をするようなものだった。
• バブルへの怒り!
これからの展開
• ねずみ講的な性格を持つ経済の仕組みを見
ていく。社会にとって有益な面を考え、危険性
もはっきりさせる。
– 信用貨幣
– 銀行制度
– 社会保険制度