自己点検ノートの裏話

国際医療福祉大学大学院
公開講座
(26.12.3 19:45~21:15)
(大熊由紀子シリーズNO11)
アルチューハイマーが語る認知症への備え
○本日の当事者
・ アルコールのコントロール不得手による記憶障害者
・ “介護され上手“をめざす認知症予備軍
石黒秀喜
(財)長寿社会開発センター([email protected])
1/44
≪自己紹介≫
時々、「老い支度」講座に
招かれ、“介護され上手”の
準備を提唱して、楽しんで
います。
• アルコールの自己コントロールに
難が有り記憶・見当識障害に陥る。
•厚労省在職中に、介護保険制度施
行準備に携わっている頃、札幌の
義母が認知症になり、最後は胃ろ
う・寝たきり生活3年半を経て88歳で
ゴールへ辿り着く。
• 義父は「はからずも長生きし過ぎ
た」が口癖で、96歳でガンにてゴー
ルに辿り着く。
• 二人の姿を間接的にみているな
かで、自分の老い、認知症、ゴール
への辿り着き方を考えるに至り、
「上手に老いるための自己点検ノー
ト」をNPO法人CLCと共同作成する。
2/44
アルチューハイマーとアルツハイマーの比較
アルチューハイマー
(石黒35歳頃:夜間・深夜のみ)
アルツハイマー
(石黒70代後半:昼夜問わず)
症状
電車を乗り越し、場所不明で混乱。 記憶障害、見当識障害、時に興奮、
翌朝、前夜のことを覚えてない。
大声等の行動・心理症状が出現。
症状の原因
アルコールをコントロールできない 脳の変性疾患×体調×個性×周
ため過剰摂取する。
囲との関係性により、波がある。
家族の苛立ち
再三の注意も効果なくストレス増
大/家族関係悪化。
とまどい・否定/怒り・拒絶・混乱
段階にとどまり、受容に進めず。
家族からの注意
等への反応
初めは注意を聞いて、「また失敗
したか」と反省した態度であるが、
小言が3分を過ぎると逆切れ。
何故、注意・叱責を受けるのか、そ
の理由が分からず、行動・心理症
状に発展する。
病識を持つきっか
け
AAにて体験談を聞く機会があり、 物忘れを自覚。物忘れ外来にて告
自分も同じ道を歩いていると実感。 知を受けて、“やっぱり“かと落胆。
治療法
アルコールを断つ。「アルコールをコン 非薬物療法、周囲の人の“顔を立
トロールできない病気」と自覚するのが困難。 てる”対応が基本となる。
病気の特徴
飲み過ぎの原因・理由を他人のせ 孤独、不安、時間軸のズレに起因
いにするので、病識は持てない。 して、霞が関をぐるぐる歩いている。
病気を公言する意 周囲の受容性を高めて、多少の
義
失敗は笑顔で許してもらう作戦。
認識・理解・判断力の低下を理解し
責めないで欲しいというメッセージ。
3/44
認知症は誰でもなり得る病気です!
年齢階層別の認知症有病率(厚労省研究班の報告書などから)
平成25年6月1日朝日新聞朝刊より
認知症高齢者462万人、予備軍400万人
100
79.5%
80
60
40
認知症:「脳の器質的な変化により
日常生活に支障が生じる程度まで
に記憶機能及びその他の認知機能
が低下した状態」(介護保険法第5
条の2)
21.8%
20
0
13.6%
・
65
歳
~
69
4.1%
・
70
~
74
61.0%
・
41.4%
・
・
・
75
~
79
80
~
84
85
~
89
90
~
94
95
~
4/44
東京都の年齢階級別 将来推計
要支援・介
護認定率
(石黒の年齢)
0~19歳
20~74歳
65~2.4%
70~6.3%
2015年
2020年
2025年
2030年
2035年
2040年
(65歳)
(70歳)
(75歳)
(80歳)
(85歳)
(90歳)
2,029
1,945
1,844
1,714
1,577
1,476
9,848
9,658
9,357
9,209
9,058
8,692
75~79歳
13.7%
597
663
753
613
591
721
80~84歳
26.9%
458
502
565
650
530
515
85~89歳
45.9%
267
338
378
431
504
413
少子・多死社会の労働力・ベッド不足が心配
90歳以上
68.0%
210
281
339
403
490
13,349 13,315 13,179 12,957 12,663 12,308
合計
再掲
75歳以上
150
(28.5%)
1,473
1,712
1,977
2,033
2,028
資料:「日本の将来推計人口(平成25年3月推計)」(社会保障・人口問題研究所)
2,139
5/44
石黒の90歳生存率32%(女性57%)とその時の暮らし
(2040年)
急性期医療
認知症予防&悪
化防止
亜急性期医療
回復期リハ
精神病院
療養型病床/
老人保健施設
かかりつけ医
在宅医療・看護
棺桶
見守り・生活支援
・サロン
石黒・単独世帯
サ/ 隣
ーイ 近
ビン 所
スフ の
ォ人
ーた
マち
ル
妻
・
娘
・
孫
ケ
ア
マ
ネ
ジ
ャ
ー
訪問看護・リハ
ン地 荒
タ域 川
ー包 区
括役
支所
援
セ
自宅で要支援2。何とか身辺処理が可能
だが、この先、要介護が進めば・・・・。お
迎え待機ベッドは不足。尊厳ある人生の
最終段階は、どこで、どのように過ごす?
自宅(自分の城)
サービス付
高齢者住宅
訪問介護
グループ
ホーム
24時間定期・随時
訪問サービス
通所リハ
通所介護
短期入所
小規模多機能型居
宅介護
6/44
特養ホーム
/特定施設
長生きをするかも知れない
⇒ 認知症になるかも知れない
⇒ 「介護され上手」の準備をしておこう
⇒認知症になっても 「上手に老いる」
■「介護され上手」のポイントは次の3点
① 周りの人に、「認知症の人の気持ち」に関する知識を
教えておく(後述:パーソン・センタード・ケアの考え方)
※自分の支援者を自ら養成しておく、という趣旨です。
② 周りの人に自分をよく知って貰うためのメモ、を書いて
おく(効果:会話に役立てて貰う。プライドに配慮して貰う。)
※後述:「人生申告書」「もっと私のことを知ってください」
③ 周りの人に、「ありがとう」「助かるわ」「悪いわね」と感
謝の言葉を返すクセを身につけておく
※感謝の言葉をかければ、介護者は癒され、親切になる。7/44
“介護され上手”を提唱する背景
~もし、自分が認知症になったら~
8/44
「認知」という言葉の意味のとらえ方
状況
時 間 軸
物的環境
過去
現在
未来
自然環境、建物、道路、街並み、住まい
人的環境 挨拶を交わす人、近隣、仲間・友人、家族
認
識
理
解
判
断
今日は1945か
ら公開講座の
話を聴く日だ!
ユキさんとの約
束なので、欠席
してはまずい!
出かける時間
だ。地下鉄で
行こう!
今この状
況に、普通
に遭遇して
いる。
聞く、話す、実際の行
動に移すという、総
合的な精神活動
参考:「認知症のケア」(竹内孝仁)
9
9/44
義母から学んだ認知症ケアの視点
~生い立ちメモ、性格・趣味嗜好メモの効用の理解~
10/44
自己点検ノートの出発点
家族状況
母が認知症
になった。
父
父
次
女
夫
三
女
石
黒
長
女
妻
長
男
遠距離
息
子
同一市内
配
偶
者
配
偶
者
娘
遠距離
ひ
孫
義母が■グループと一緒のときは、
リラックスして自己表現する。
配
偶
者
息
子
ひ
孫
配
偶
者
娘
ひ
孫
義母が■グループと一緒のときは、
緊張して自分の殻に閉じこもる。
人と人との相性が大きく影響すると実感した。認知の構造、認知症と言
われる人の気持ちを理解して、付き合うことが重要と学んだ。
11/44
義母の行動と時間軸を考える
朝、3時でも4時でも目覚めたらカーテンを開けて、暗いうちから行動を開始する義母
過去の連続
義母は厳しい
義父に仕え、4
人の子供を育
て上げ、その後
は長年にわた
り、ビル清掃会
社に勤めて早
朝から働きに
出かける暮らし
をしてきた勤勉
な人です。
空
白
今
過去の経験が頭をよぎると
状況の認識:目が覚めた。
今日も仕事に行かなければ、
同僚・お客に迷惑をかける
状況の理解:さぁ~、起きて
一日の行動開始だ
状況の判断:電気をつけて、
ソファーの後ろのカーテンを
開けよう
未来
このような辛い思
いをさせない居場
所と出番が必要
何でこうなってし
まったのだろう。
自分はこの先どう
なってしまうのだ
ろう。不安と混乱
義母の思うように
状況は流れない
■義母にとっては当たり前のことだが、周りは迷惑に思う。
12/44
義母との会話の一例
■ 朝、3時でも4時でも目覚めたらカーテンを開けて、
暗いうちから行動を開始する義母にどう接するか?
自
分 ▲パターン①:「うるさいなぁ!こんな時間に何やってるの!
、
まだ寝てなさい!」 ⇒直球を投げてはダメ!
義
母
⇒義母の心境を無視した周りの人の気持ちを言語化
、
ど ※怒られた理由は理解できないが、「扁桃体」が作動し、不愉快な
ち
ら 感情が溜まっていく。⇒地雷を踏む。マイナスの連鎖の始まり。
の ◎パターン②:「おばあちゃん、仕事に行く用意をしてるのかい」
立
⇒自分の気持ちは横に置いておき、一呼吸してから
場
で
義母の頭の中の思いを推測して、声をかける。
?
⇒今日は日曜日ですよ。
※瞬時の会話は成り立ち、この時に感情が芽生えると感じた。
★石黒は、義母が朝早くから仕事に出かける働き者という人生歴
を知っていて、かつ、義母の頭に潜入して、義母の状況認識がど
のようなことであるか、と推測するのでパターン②が可能となる。
多くの認知症の人は、パターン①の対応をされ負の連鎖に突入
13/44
家族の心理と心構え
■ 身近な肉親はなかなか身内のとんちんかんな行
動を受け入れることが難しいというはよく聞く。
心理的な距離が近いと、理屈より感情が優先する
ので、その感情が態度に表れる。
■ 家族の立場の方には厳しい言い方になるが、親
や配偶者の病気・障害を理解し受け入れなければ、
本人はどうなる?身の置き所がなく混乱が深まる。
■ 「状況の認識・理解・判断」が上手くいかず、戸惑って
いる本人の心境に気づくかどうか?そのための知識を
あらかじめ知っているかどうか?
■ 本人の心境を汲んで、プライドを傷つけない関わり方
をするためには、「知識、感性、忍耐、演技」と「余裕」が
必要。
14/44
介護され上手の準備
その1
15/44
『パーソン・センタード・ケア』を周囲に教える
・ イギリスの心理学者トム・キッドウッド教授(1937~1998)が提唱し
た考え方です。
・ 『認知症になった人々の行動や状態は、認知症の原因となった
疾患のみに影響されているのではなく、その他の要因との相互
作用である。』
出典:映画「毎日がアルツ
・ 重要とされる基本的な要因は次の5つです。
ハイマー2」関口祐加監督
1
2
3
4
5
脳の認知障害(アルツハイマー、脳血管障害など)
健康状態、感覚機能(既往歴、現在の体調、視力・聴力など)
個人史(成育歴、職歴、趣味など)
性格(性格傾向、対処スタイルなど)
社会心理(周囲の人の認識、環境など人間関係のパターン)
プライドの構成要素
1は医師の診断、2の現在の体調と
3~5のプライドが満たされているか
の確認・調整は、看護・介護の役割
相互作用のイメージは次頁を参照ください。
16/44
認知の構造 【6因子の相乗】
【①脳神経の働き】
【状況】
②普段の体調 自
時間
(過去・今・未来)
物・場所
遭遇
理解
認識
影響
判断
⑤周囲の人
認知症の理解
と感性が重要
【影響要因】
⑥その時の気持ち・感
情
己
脱水、栄養不足、便 点
秘、運動不足だと認検
知機能が低下する。ノ
ー
ト
プライド
③生活歴、④性格
(これまでに培われ
た知識・経験)と周
囲の対応との関係
中で影響される。
(安定/不愉快、怒りなど)
安定時の言動・行動
不愉快時の言動・行動
17/44
「認知症はこわくない」(NHK出版)
エスポワール出雲クリニック院長 高橋幸男 編著
■行動・心理症状は、脳の器質的症状として捉えがちだが、長年の経
験からすると、ほとんどは周囲との兼ね合い、関係性でおこる症状
⇒行動・心理症状の構造、「からくり」を理解する必要がある。
〇 本人は自分の思うようにならず失敗も増えイライラしてくる。家族は
「最近、何かちょっと言っても怒りっぽい」と感じる。(負の連鎖始まり
)
〇 この「何かちょっと」が、実は、負の心境にある本人を傷つけている
。しかし、周囲はこのことに気がつかない。 (負の連鎖が深まる。)
〇 だんだん、周りから認められなくなり、話しかけられることが減る
〇 一方、妻からちょっとした失敗に「しっかりして」と励ます。ところが、
本人は「叱られている」と受け取る。励ましている妻の顔は、実は怖
い表情になっている。
〇 本人は、「(あの優しい)妻はどこに行ったのか、目の前にいる怖い
人はどこの人だ、と思う。(人物誤認) 一方、一人になると不安であ
り、外から帰って来た妻に「男が出来たのだろう」となじり、暴力に及
18/44
ぶ。(嫉妬妄想)
介護され上手の準備
その2
19/44
石黒が認知症になったら
支援してくれる人たちに、石黒の人生歴や性格・趣味
嗜好を知ったうえで、石黒のクセをつかんで、おだてて
顔を立てる関わり方をしていただきたい。
そのためには、認知症になる前に、石黒の個人情報を
整理したメモを作り、認知症になった場合に介護者に
渡るように仕組んでおくことが必要であると考えた。
そして、介護され上手になるための自己点検をするこ
とにした。
20/44
自己点検記入要領
「私の人生を申告します」
◆自分の光り輝いていた誇りに思うことを書いてみましょう。詳細は別添資料参照
時代
家族構成など
人物像、印象に残る出来事
就学前まで
おどおどした暗い子ども
小学校時代
内弁慶で、外ではしゃべることが少ない子ども
中学校時代
バレー部所属、少ししゃべるようになる。家業の養鶏、養豚の
手伝いをする大人しい中学生
10歳代後半
高校へ汽車通。ブロイラーを飲食店に納品、代金回収。高卒
後福祉施設へ就職。生家を離れ社宅に転居。
20歳代前半
23歳で結婚
20歳代後半
30歳代
二十歳の時に東京に転勤。夜学に通い卒業後本省に転勤
毎日残業に日々。 たまに時間が空くと同僚と赤ちょうちんへ
長女誕生
娘の保育園の送りを毎日担当。一人2交代制勤務が多々。
軽度のアルコール依存症であることを自覚する。
40歳代
課長補佐になり上と下との板挟み。 50手前で介護準備室。
50歳代
介護保険関係の仕事一筋。59歳で天下り。降圧剤服薬開始
60歳代
70歳代
(見込)
孫誕生
法人運営が赤字続きで、うつ状態の日々。
独り暮らし
時々「老い支度講座」の講演を楽しんでいる。普段は荒
川区社協の認知症カフェで傾聴役をして時間を消費。21/44
「もっと私のことを知ってください」
◆介護者へのお願い;私のクセを紹介しますので、私の顔を立てる演技にご活用ください。
思 住まい(実家)
い
出 旧姓・愛称
自律度(自分に対する
厳しさ、甘さなど)
生家はなく、今の家は8軒目。現住居に愛着。
妻からは「ヒデくん」と呼ばれている。
自分に甘く、人にも甘い。病的に気が弱いのが難点で
ある。
性 他人に対しての対応
相手の顔色をtuma 発言、断れない、板挟みに悩む。
格
行動(積極性、活動性、 積極性、リーダーシップに欠ける。協調性には自
慎重性など)
信がある。身の丈人生をモットー。
逝
き
方
・
暮
ら
し
方
終末期の対応
葬儀、墓、遺言
意思能力がないのに人工的延命は拒否。クダは付けて
欲しくない。蘇生不要、気管切開無用、尊厳死協会員。
本人意思確認の代理人は①妻、②娘
趣味嗜好、生きがい
誇れる特技なし。グループホーム入居の際のCD
は娘に指示済み。サスペンス番組は嫌い。
好みの音楽、歌手、役者
着る物
食べるもの、住まい方
こだわりがない、センスがない。
その他
介護負担の軽減のため、朝食簡単、日中シャワ
ー浴で可。
22/44
参考情報:イギリスでも!
「This is me」
(2010.2.23発表)
イギリスのアルツハイマー病協会と看護師協会が共同作成したもので、認知症になった
患者が病院に入院する際に、以下の項目に関して記入したリーフレットに写真を添えて
病院の職員に渡し、ケアの参考に役立てて欲しいという取り組みが行われている。
(Leaflet launched to help hospital staff improve care people with dementia)
①名前
②現在住んでいるところ
③介護者の名前
⑨リラックスできるもの
⑩聴力と視力
⑪コミュニケーションスタイル
(自分を最もよく知る人の名前) ⑫動けるかどうか
④知っておいて欲しいこと
⑬睡眠
⑤家庭環境や重要事項
⑭日常生活のケア
⑥これまでの人生
⑮食事のスタイル
⑦趣味、興味
⑯服用している薬
⑧心配事、いらいらすること
パーソン・センタード・ケア ⇒ 婆さん・センター度・ケア
23/44
テレビニュースで紹介された自己点検ノ-ト
TV東京 ニュ-スアンサ-での放映
http://www.tvtokyo.co.jp/mv/newsanswer/lives/post_30847/?fb_action_ids=250880188373580%2C250768558384743%2C250723
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%5B%5D
【番組の概要:シリーズ「私が認知症になっても」】
第1回 どうすれば早期発見?(福井県若狭町の取り組み)
第2回 認知症でも働きたい(若年性認知症の就労支援)
第3回 “自分らしさ”実現の秘訣(上手に老いるための自己点検ノート:発行「
CLC 電話022-727-8730 定価823円)
(※ You Tubeで録画を観ることができます。)
24/44
私のことをよく知ってもらって“顔を立ててくれたら”
認知症は “重度化予防できる”
“改善できる” 場合もある!
~認知症とみなされても穏やかな老い方をするため~
25/44
「認知症重度化予防実践塾」の取り組み紹介
■島根県浜田市、大田市、飯南町、高知市、四万十市、岩手県陸
前高田市の地域包括支援センター、鳥取県GH協会が開催して
いる事例検討会のこと。
• 講師が認知症ケアの理論・知識を講義し、講師が参加者が担当
している事例を分析・評価して、宿題⇒報告⇒助言・宿題⇒報告と
いう循環型の研修会。
(※基礎理論は、国際医療福祉大学大学院竹内孝仁教授の著書に依拠)
• 講師と受講者が毎月一緒に事例の変化を分析して、症状の軽減
を目指す4~6ヶ月継続の研修である。
• 参加者は、家族、ケアマネジャー、グループホーム、小規模多機
能、通所介護、特養、老健施設職員など20人程度。
• 「普段の体調」を整えつつ、自己点検ノートを参考に人生歴・人
柄などを探ることが、「顔を立てる」関わり方をする工夫のヒントと
なり、症状の軽減につながった例は多数ある。
• 住民向けの成果発表会を実施。
(26.1.23発行の介護漫画「ヘルプマン25」でも紹介されております。)
26/44
実践塾の基本
理論は2本柱
2階部分
役割がある
辛い心境を
くみとる
調子を合わせる
「認知力低下
や行動障害の
誘因は不健康
であること」に
着目
1階部分
原因疾患別ケア、薬物療法、
非薬物療法(●●法)など
プライドを大切にした関
わり
プライドが満たされて
いない原因を探る!
抑制しない・恥をかか
せない、不愉快にしな
い、孤独にさせない
認める、褒める、顔を
立てる、共感する
トラウマの有無を探る
、ア
聞イ
くコ
、ン
スタ
キク
ント
シ、
ッ話
プす
普段の体調を整える
水(1500)・食事
便秘・運動
3階部分は、その道
のプロに委ねる。
その人をよく知る
その人を中心とした関わり
パ-ソン・センタ-ド・ケア
心理的安定
(平穏な状態)
注意力・意欲
関心を高め
「認知」機能をUP
当たり前すぎて誰
も教えてくれない。27/44
1回目の宿題①:水分摂取と排便に関する記録シート
記入例
●月● ●曜日1
通所介護利用日
日課・特記
水及び日課
便
午前 12:00
午後12:00
昼食
水及び日課
100お茶
1:00
1:00
2:00
2:00
3:00
3:00おやつ コーヒー100
4:00
4:00
便
通所送り
5:00
5:00
6:00起床
6:00
夕食
7:00朝食
200お茶
7:00
○(トイレ)
8:00
100お茶
8:00
通所迎え
9:00
9:00
10:00入浴
10:00就寝
200お茶
11:00
水分計
11:00
700
CC
28/44
1回目の宿題②:食事に関する記録シート
記入例
氏名
(事例 観子 )さんの身長と体重を測定しましょう
身長
150cm 体重
●月
●日
の食事
事例 観子
53
23.6
食事の形態
常食
きざみ ペースト
歯の状態
自歯
部分義歯
義歯 歯なし
※ この日の食事を写真に撮って、提出していただけば、詳細の記入は必要ありまん。 管理栄養士が整理します。
時間
食事
食事以外
朝食
名前・量
肉 魚
卵
豆・豆製品 乳製品 野菜・海藻 いも 果物 油脂
アルコー
主食
副食
ル
健康飲
7:00
ごはん 1 みそ汁
○
○
料
~
サプリメ
7:30
パン
2 卵焼き
○
ント
めん
3 煮豆
○
菓子 ○ せんべい3枚
4 牛乳
○
その他
【栄養士からのコメント】
昼食
肉 魚
卵
豆・豆製品 乳製品 野菜海藻 いも 果物 油脂
管理栄養士が記載します
主食
副食
12:00
~
12:40
ごはん
パン
めん
野菜炒
○
め
2 煮豆
3 漬物
4
1
夕食
18:00
~
18:45
主食
ごはん
パン
めん
副食
1 刺身
2 味噌汁
3 酢の物
4 おひたし
食品の○の合計
kg
BMI
粥食
○
○
○
○
肉 魚
卵
豆・豆製品
乳製品
野菜海藻 いも 果物 油脂
○
○
○
1
2
1
4
1
○
○
○
6
0
0
1
29/44
事例検討整理票 (第2回目) 【26.●●.●●】
性別
基 家族構成
本
情 疾患名
報
内服
女
年齢
長男夫婦、孫と4人
81
サービス
事例番号
●●
要介護度
塾生:家族(息子)
4
長谷川式
未実施
通所介護2回、訪問介護2回、訪問看護とリハ1回
ショートスティ2回/週
多系統委縮症、狭心症、高血圧症、骨粗鬆症、認知症
パーキストン、メネシット、セレジネスト、アムロジピン、ノルバスク、フロセミド、ラシックス、ブロブレス、カレフィーナ
ワンアルファ、L-アスパラギン、アスパラーCA、アレンドロン酸 等
身体・体重・BMI
身長
157
体重
58
BMI
23.5
水分・食事・運動の制限
水分制限
なし
食事制限
なし
運動制限
なし
水分量、下剤、食形態
当初水分量
700
当初下剤使用
あり
当初食形態
常食
当
初 日常生活動作
の
状
況
精神面・行動/プライド
取 取組み内容
組
対応に困っていること
報
告 講師への質問
排泄:介助でPトイレ使用および尿漏れ防止パンツ使用
食事:自立 更衣:介助 入浴:介助 歩行:車イス使用
会話:つじつまが合わないことがある 服薬:介助
立ったり、座ったりを介助している。右手は普通に使えるが、左手が
上がらなくなった。最近半分ぐらいの時間は認知症ではないかと思
われる。⇒同じことを何度も言う。表情が乏しくなった。テレ
ビのリモコンが使えない。排泄終了のピンポンが使えない。
水分摂取の不足に気づかされたので、当面1,000ccを目指した。
何でこんなに飲まなければいけないのか、いらないと言われる
水分摂取を拒否されるが、何か良い方法のヒントは?
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認知症重度化予防実践塾事例(その人の行動と時間軸を考える)
(例)グループホーム入居者(92歳・男性):興奮、暴言、拒否、早朝から外に出ようと
して処遇困難。赤ちゃんの人形を抱いて「死んでいる」と号泣することもある。
過去の連続
実践塾の宿題で、
人生歴、病気に
なる前の性格・趣
味嗜好に関する
情報収集が課さ
れた。
空
白
今
未来
過去の経験が頭をよぎると
状況の認識:市民のために
働かなければならないのに、
何でこんな所にいるのだ?
プライドが満たさ
れ自分の居場所
だと認識する。
人生歴をヒントに、そ
の人の世界に合わせ
たら、穏やかに!
背広、ネクタイ着用。
市会議員の名刺を用
意。声掛けは、先生、
議長、今日の資料で
す、とプライドを刺
激。孫喪失に共感。
市会議員を20
状況の理解:こんなところに
数年、議長経
いたのでは選挙に落ちる。
験あり。いつも
状況の判断:早く家に帰って、
支持者の面倒
支持者回りをしなければ、大 周りは、帰宅願望、徘
をみていた。
徊が始まったと捉える
孫を2人も事故 変なことになる。玄関へ!
で失っていた。 ■本人にとっては当たり前のことなので、制止されると抵抗 31/44
「恍惚の人」“認知症観”が与える
マイナス影響は大きいのでは?
認知症の定義は、脳の器質的障害に起因して「生活に支障
が生ずる」ことであり、「徘徊や興奮・暴言などの行動・心理
症状」の有無が認知症の診断基準ではないと思います。
認知症=全員が「行動・心理症状」が出現するのではない。
ので、「行動・心理症状」出現の「からくり」を理解することが
認知症サポーターに求められる視点だと感じています。
※後ほど、皆さんで、意見交換するための素材の提供です。
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“認知症になった人”と「家族・周囲の人たち」の関係性を考える
「恍惚の人」の認知症観:認知症になったらおしまい
①認知症について全く知
識がない人が認知症に
なる
双方、事情が分からないま
ま、本人の混乱と家族、看
護・介護職等の混乱とがぶ
つかりあって、悪循環に陥
り、事態が悪化。
A:認知症について全く知
識がない家族、看護・介
護職等による対応
②認知症について少し知
B:認知症について少し知
(家族)
識のある人が認知症に (本人)
識がある家族、看護・介
なる。
※認知症=徘徊、興奮の恐怖 護職等による対応
③認知症についてよく理
解している人が認知症
になる。
※行動・心理症状が必ず出
現するわけではない、という
ことを理解している人。
認知症の告知を、本人およ
C:認知症についてよく理
び家族とも受け入れること
解している家族、看護・
ができて、専門家のサポー
介護職等による対応
トを受けながら、本人のプ
ライド損なわないような関 ※認知症の人の行動や状態
わり方をされるならば、行 は、「脳×体調×個性×周
動・心理症状は減るか?
囲」の相互作用であることを
理解。
「パーソン・センタード・ケア」の認知症観
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よく知っている
■多職種協働の必要性
不
得
手
で
あ
る
状況に応じたチームの形成と
対応により、状況の悪化防止
対象者
家 族
望む暮らしを知る
プライドに配慮
生活支援の実践
縦糸と横糸で
諸制度への橋渡
ネットワーク作り
社会資源創造
得
意
で
あ
る
布を作り支え
る
など
脳
内
臓
器
筋 看 薬
骨 護 剤
格
口腔ケア、栄養など
対象者
家 族
課題不明確、その場しのぎの対
応になり、対象者は不幸である
あまり知らない
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認知症になっても何とか暮らし続けられる地域
【要件1】 認知症は高齢になるほど誰でもなり得る病気であることを、
多くの市民が知っていること。【みんな認知症予備軍】
★40歳からの介護保険料は「認知症予備軍友の会」会費
【要件2】 認知症になった人のことを理解するための基礎知識を
知っている人が世帯に1~2名いること。
自分だけが勉強して知っていても、自分が先に認知症に
なったら、未勉強な家族から追い込まれることになる。
【要件3】 その知っている知識を、言葉で周りに説明できる人がたく
さんまちに存在していること。
【要件4】 認知症になった人の混乱、苦悩を知り、悪循環を促進さ
せない関わり方を知って、本人の話の傾聴、家族のグチ
聞き・労いに役立つ人がまちにたくさん存在していること。
【認知症カフェ手伝い⇒互助・生きがい⇒自助⇒予防】
【要件5】 公的・準公的な立場で、本人と家族の顔を立てながら適
切に支援する、真の実践家がいること。
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“自助”の取り組み紹介
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■参考情報;介護予防に関する法律の紹介
【介護保険法】
(国民の努力及び義務)
第四条 国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、
加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持
増進に努めるとともに、要介護状態になった場合においても、
進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス
及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の
維持向上に努めるものとする。
【老人福祉法】
(基本的理念)
第3条 老人は、老齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して、
常に心身の健康を保持し、又は、その知識と経験を活用し
て、社会的活動に参加するように努めるものとする。
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健康寿命日記の記録項目
月日
生活リズム
月日
前夜の
快眠度
起床時刻 昼食内容
曜日
前夜の
飲酒量
◎
12/3
最終飲食
時刻
水分量
排便時刻
朝食時刻 夕食の量 帰宅時刻
夜の歯磨
レベル
体操
運動
就寝時刻
5:20
不明
月 記憶喪失
間食
弁当
-
食べ過ぎ
不明
7:10
1500
◎
7:30
△
不明
アルチューハイマー
測って記録
当日の出来事
総歩行
数
最高
血圧
体重測
定時刻
肥満度
(BMI)
体脂肪
率
喫煙量
血圧測
定時刻
最低
血圧
体重
(kg)
対前日
増減
内臓
脂肪率
服薬管
理
10,935
6:00
125
6:10
81
65.70
23.6
-0.55
17.9
主な出来事、ストレス
の負荷/発散、心身
状況
ゆき公開講座/あま
り反応なし、一人反省
◎-◎ 会で落ち込む
-
12
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人生のゴールから逆算して今を考えてみませんか?
~「老病死」は他人事だと思っている方に~
【持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進
に関する法律】(通称「社会保障プログラム法」)平成25年12月
第四条(医療制度)
5 政府は、前項の医療提供体制及び地域包括ケアシステム
の構築に当たっては、個人の尊厳が重んじられ、患者の意
思がより尊重され、人生の最終段階を穏やかに過ごすこ
とができる環境の整備を行うよう努めるものする。
4 (略)地域包括ケアシステム(地域の実情に応じて、高齢者が、可能
な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を
営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要
支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減
若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が
包括的に確保される体制をいう。) (略)
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石黒の老・病・死 【人生のゴールへの幸運な辿り着き方】
■脊柱管狭窄症を患っているが、自己努力で悪化・再発の防止努力
生
重度化予防
石黒A
活
プロの支援も活用
機
旅立ち・寿
能
命
要介護1
困老 記保
難衰 載険
証
にに 。
今の生き方+運・不運=
(
臓 の
よ
な
器 裏
人生のゴールへの逝き方ライン
りり 移 に
植
経
衰
欄 事
この段階になったら
弱口 は 前
無理やりの食事介護
不 指
摂
要 示
は止めてください。
取 )を
加齢
「死後翌日発見ネットワーク」により腐る前に発見! 40/44
人
自生
然の
の最
摂終
理段
で階
!
棺桶
石黒の老・病・死 【人生のゴールへの不運な辿り着き方】
■ 脊柱管狭窄症のせいにして閉じこもり、認知機能低下
生
活
機
能
石黒B
今の生き方+運・不運=
人生のゴールへの逝き方ライン
要介護1
ケアマネジメント、医療、介
護サービス使っているもの
の、慢性的な脱水・低栄
養・低活動・便秘を放置さ
れたまま、心身機能低下の
一途をたどる。
誤
嚥
性
肺
炎
十口
分腔
でケ
ア
も
不
意思能力
喪失
老衰期に入っているのに、胃
ろうを造成され、意思疎通も
※ここで医療関
ないまま長期の寝たきり
係者が頑張る
加齢
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棺桶
ある朝、「目まい・ふらつき、吐き気、複視、歩け
ない」状態になった妻の緊急入院を経験して!
■ 知り合いの医者の紹介で緊急入院した病院の医師から、最初
の病状説明時に、「脳幹部に炎症がおきていると思われるので、
万が一の最悪の場合に備え、人工呼吸器の装着などもあり得る
。延命治療・措置の考え方をお聞きしておきたい。」と質問され、
“もう寿命がきたか”?とびっくりした。
(「フィッシャー症候群」という初めて聞く病名でした。)
■ 日頃から、終末期の時の意向は話し会っていたので、回復の
可能性がない“延命措置”は不要というお互いの意思は分かっ
ていたので、躊躇することなく妻の意思を代弁することができた。
■ 一方、このまますぐに逝ってしまうのでは、ゴミ屋敷状態にある
自宅の片付けする余裕がないので、親戚がきたらどうするかと、
こっちの方が最も心配になった。日頃の整理整頓を怠っていたこ
とを深く後悔した。
■ リビングウイルを話し合っておくことは、重要というエピソード。 42/44
手前味噌
「地域包括ケア」と自己点検ノート
国は「地域包括ケアシステム」の構築を提唱しているが、市民の一
人ひとりにとっての“地域包括ケア”とは、可能な限り元気に暮らし
、例え要介護状態になったとしても、たらい回しにされずに、住み
慣れた地域で平穏に人生のゴールを迎えることだと思います。
これからの支え手人口激減と85歳以上人口の増大を考えると、
①自助:老・病・死は我が身に必ず起こることであるという覚悟⇒
健康寿命日記による自己管理、閉じこもらない(今日用・
今日行)⇒自己紹介メモ・リビングウイルの作成⇒尊厳ある
人生の最終段階を経てゴールに到達
②互助:明日は我が身のお互い様⇒支え手として活動⇒閉じこも
「100歳になっても脳を元気に動かす習
らない(きょうよう・きょういく)
慣術 」(多胡輝:日文新書)
という市民が増えることが、地域社会の維持に必要不可欠である。
このたびの介護保険法改正による「介護予防・日常生活支援総合事業」は、元気高
齢者の社会活動参加による自助・互助の場・機会として制度設計したが、・・・・・・・・。
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おわりに
良き人生のゴールに向けて明日から実践
“介護され上手”に向けて、“備えあれば憂いなし”
“健康寿命日記”
申告 表”
“人生 申告
深刻
~身辺処理ができる90歳をめざしましょう~
ご清聴ありがとうございました!
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