地域保健活動のこれからの方向

地域保健対策検討会の経過と
新たな基本指針について
2012.10.24
日本公衆衛生学会自由集会「全国いきいき公衆衛生の会」
廣田洋子(北海道立心身障害者総合相談所長・前岩見沢保健所長)
(地域保健対策検討会構成員)
本日の報告内容
地域保健法基本指針改定に向けた全国保健
所長会の調査と「提言(見直しの視点)」
 検討会の経過
東日本大震災への対応の教訓
保健・医療・福祉の連携と公衆衛生
ソーシャル・キャピタルの活用
 新たな基本指針の特徴

地域保健法施行以降の地域保健
を取り巻く状況変化
保健分野では

少子高齢化の進展




地方分権の進行
財政の逼迫
市町村合併
自治体職員数の減少
保健所数の減少
市町村保健師増
担当業務が多様化
市町村栄養士増
合併による組織変容
共同実施業務の減少
保健所数の変化
平成6年から24年までに約4割減少
年度
県型
政令指
定都市
平成6年
625
124
中核市
0
保健所
政令市
45
特別区
計
53
847
平成12年
460
70
27
11
26
594
平成18年
396
73
36
7
23
535
平成24年
372
51
41
8
23
495
タイプ別 保健所数の変化
→県型、指定都市、特別区で減少
中核市保健所の増加
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
H6年
H12年
H18年
H24年
県型
指定都市
中核市
政令市
保健師・自治体職員数変化




常勤保健師数1.2倍に増加
伸び率 保健所設置市(2倍)
>市町村>特別区>都道府県(減少)
自治体職員数は15%減少
平成6年(地方公共団体総職員数)
328万2千人
平成24年
278万9千人
平成の大合併の影響

市町村数の変化
平成11年
47%減
3232
人口1万人未満
1537
平成22年
1727
70%減
457
(減少率は都道府県で格差)
 7割以上の保健所管内で合併あり
 保健所の組織改編にも影響
平成21年3月【全国保健所長会】
基本指針見直しに関する提言
提言の背景

健康危機管理の拠点としての保健所の役割の増大

地域医療連携、医師不足対策、救急医療の確保など、
医療計画推進役としての保健所の役割増大

地域ケア整備、精神障害者の地域移行など、医療と保
健福祉の連携を要する健康福祉課題が急増
地域保健の基盤となる組織体制の変容
(地方分権と行財政改革、市町村合併の進行)
保健所医師など公衆衛生を担う人材の不足


(平成21年3月全国保健所長会提案)
基本指針見直しの視点
1.
2.
3.
4.
5.
6.
公衆衛生を基本に、国民の視点で将来ビジョンを
市町村と連携協働した健康なまちづくりの推進
市町村と保健所が重層的に連携し、切れ目のない
総合的な保健医療福祉システムを構築する
住民とサービス提供者の間に立った「安心・安
全」を作る役割(リスクコミュニケーション)
健康危機管理の拠点としての一層の機能強化
公衆衛生の専門性を担う人材不足への対応

地域保健法基本指針改定に向けた全国
保健所長会の調査と「見直しの視点」に
ついて
平成21年度保健所機能調査
(地域保健総合推進事業)の結果から
目的:基本指針の見直しに向けて、現在の保健所の
組織、有している機能、市町村との関係等を把握し、
問題点を抽出する
対象:①全保健所(地域保健)
回答率 86.7%
②都道府県(本庁)
回答率 100.0%
③市町村600カ所(無作為抽出、
保健所政令市を除く)回答率 68.0%
④全保健所(精神保健業務) 回答率 80.8%
調査時期:平成22年1月
保健所の位置付け
3割強が県の地方組織に組み込まれて
いた
8%
本庁の出先
本庁の一部署
24%
58%
10%
地方振興局の
内部組織
地方振興局の
出先機関
保健所の形態
6割が福祉や環境部門と統合されていた
3%
24%
38%
保健所単独
保健福祉型
保健環境型
保健福祉環境型
4%
その他
31%
圏域医療連携推進協議会
2割の保健所が圏域連携の会議に参加していない
10%
単独設置
18%
43%
共同設置
会議に参加
参加なし
11%
その他
18%
医療計画(圏域版)の策定
圏域版の医療計画策定をした保健所は他保健所へ
の協力も含めて54%であった
15%
38%
31%
16%
自保健所策定
他保健所策定
圏域策定なし
その他
保健所機能発揮にあたっての問題
半数の保健所で「職員の減少や集中配置
により業務に支障が出ている」と回答
0%
職員の減少等
広域すぎる
組織上の上司
環境行政処分
その他
10%
20%
30%
40%
50%
60%
保健所業務の位置づけ
医療安全や地域医療連携には多くの保健所が関与
「保健所主体で実施」「支援的かかわり」「関与なし」
地域医療連携推進
医療安全・相談
介護予防の推進
特定健診等体制
健康日本21推進
精神地域移行促進
精神の危機介入
児童虐待防止
小児救急医療確保
0%
20%
40%
60%
80%
100%
保健所調査のまとめ
保健所組織形態の変化が大きい
 県型保健所と政令市保健所で異なる問題
を抱えている
 医療計画・医療連携に関わっていない政
令市保健所が多い
 保健所の統廃合や人員削減、保健所長権
限の不透明化により保健所機能を発揮し
にくい
 県型保健所と市町村の関係に課題~保健
所の専門性に対する誤解があり役割分担
が固定化

市町村に対する調査
市町村と保健所の連携について

600市町村抽出調査で68%の回答率であった
保健所との関係では39%が「保健所と密接な関
係がある」と回答、「市町村から支援を求める」
「主に保健所の方から連絡」が共に3割であった
人口が5千人未満の市町村で連携が密接

中国四国では「密接な連携がある」が49%

保健所の管轄市町村数が少ないほど、連携が密接
な傾向があった
保健所の市町村担当窓口が決まっている場合
42%が「連携が密接」と回答(決まっていない
場合は30%)



基本指針に基づく業務

基本指針を「知っている」と回答した市町村は
59%であった
(知っていると回答した内)

基本指針に基づく業務をしている
50%
していない
5%
どちらともいえない42%
人口5万人以上10万人未満の市町村ではしているが59%と
最も高く、1万人以上2万人未満が29%と最も低かった
市町村が保健所の役割として期待するもの
(複数回答)
情報提供、調整、専門的立場からの支援・
助言を求めている
項
目
割
合
情報提供
90%
関係団体や他市町村との調整
89%
専門的立場からの支援・助言
86%
健康危機管理
80%
人材育成・研修
78%
調査・研究
61%
市町村調査まとめ
市町村主体の業務と保健所主体の業務は
「縦割りの業務分担」が目立つが、健康
づくりや新しい課題には双方が取り組ん
でいた
 保健所への期待は高いが必ずしもうまく
連携できていない
 権限委譲や保健所の組織改編による問題
では「人材確保・資質の向上」「実習受
け入れ」「健康危機への迅速な対応」で
2~3割の市町村が「問題があり解決が難
しい」としていた

100
市
町
村
が
主
で
あ
る
と
市
町
村
が
回
答
し
た
割
合
90
介護予防
介護保険計画
次世代育成
特定健診等
認知症
食育
どちらも自分が主体
であると考えている
業務
児童虐待
自立支援
健康日本21
すこやか親子
80
市町村課題の抽出
70
喫煙対策
心の健康づくり
60
小児救急
50
自殺対策
疾病対策
どちらも保健所
が主体であると
考えている業務
医療情報提供
40
地域移行促進
地域・職域連携
精神危機介入
30
調査研究
20
どちらも自分以外
(市町村の場合は保
健所)が主体である
と考えている業務
10
医療安全
医療連携
地域医療計画
精神医療
精神保健相談
難病在宅支援
難病地域連携
0
0
10
20
30
40
50
60
70
保健所が主と管轄保健所が回答した割合
80
90
100
事業実施の棲み分けとミスマッチ
次世代育成の他、高齢者対策、健康日本21は市町村が主体
で、精神保健相談は保健所主体で実施されていた
• 市町村課題の抽出の6割はお互いに自分が主体と認識
•
•
圏域連携推進会議は6割の保健所で設置しているが政令市保健
所の半数が参加も関与もしていない
ある程度棲み分けがで
きている→
縦割りの業務分担
話し合いの
欠如?
専門性
の誤解
圏域内での
政令市の位置?
健康課題への重層的な取り組みが必要!
 公衆衛生的視点での地域の広域的調整は保健所の重要な役割

(全国所長会基本指針見直し提言資料:田上)
重層的な関係の正しい理解
重層的な関係
縦割り思考
保健所
市町村
保健所
業務
福 祉
医 療
市町村
支援
健
康
づ
く
り
母
子
・
老
人
保
健
身近なサービス
支市
援町
村
結
核
・
感
染
症
精
神
保
健
福
祉
難
病
対
策
・
そ
の
他
保 健
健
康
づ
く
り
母子
保健
職域
保健
老人
保健
結
核
・
感
染
症
精
神
保
健
福
祉
難
病
対
策
・
そ
の
他
専門技術的なサービス
年齢別
疾病別
基本指針改定(H24)に向けた
地域保健対策検討会再開の背景と経過
H21年3月 全国保健所長会で「見直し提言」
 この年は新型インフルエンザ発生で厚労省の動きなし、
 秋から保健所長会で保健所と市町村の調査スタート
 H22年3月 調査報告書

H22年7月 第1回検討会で基本指針改定予定と説明
 市町村合併の進展や健康危機管理事案の発生など、近年の
地域保健を取り巻く状況の変化に対応し、地域住民の健康
の保持増進並びに地域住民が安心して暮らせる地域保健の
確保を図る検討を行う(開催要項)
 厚労省内の検討で5ヶ月間中断
 H23年2月再開直後に東日本大震災~中断~10月再開


H24年3月
報告書
東日本大震災で問われたこと
○健康危機管理体制
○地域保健のあり方
検討会の経過
 東日本大震災への保健所の対応と今後
の課題について
 保健医療福祉の連携について
地域保健対策検討会
五十里
明
大井田
大場
岡
隆
エミ
紳爾
構成員
◎座長策(敬称略:五十音順)
愛知県健康福祉部健康担当局長
(平成23年10月16日まで)
日本大学医学部教授
横浜市南福祉保健センター長
山口県健康福祉部審議監
地域保健における対物保健サービス検討
ワーキンググループ構成員
(
岡部
信彦
国立感染症研究所感染症情報センター長
尾形
裕也
九州大学大学院医学研究院医療経営・管理
学講座教授
青山
亨
小澤
邦壽
群馬県衛生環境研究所長
安達
幸男
曽根
智史
国立保健医療科学院国際協力研究部長
榎戸
勝敏
大澤
元毅
加藤
隆
岸本
泰子
北原
良一
国立保健医療科学院長
田崎
達明
北海道空知総合振興局技監(北海道岩見沢
保健所長)
千葉県市川市保健スポーツ部保健センター
健康支援課長
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部研究
員
谷本
義広
豊福
肇
○ 名越
究
三木
朗
中
名越
由美
大阪府藤井寺保健所地域保健課主査
究
栃木県保健福祉部保健医療監
(平成23年10月17日~)
羽佐田
秦
◎ 林
武
榮子
謙治
廣田
洋子
松﨑
順子
山本
都
吉田
和仁
静岡県駿東郡小山町住民福祉部健康課長
愛媛県食生活改善推進連絡協議会会長
愛知県尾張旭市健康福祉部健康課長
○:対物ワーキンググループ長
)
(敬称略:五十音順)
全国クリーニング生活衛生同業組
合連合会会長
全国生活衛生営業指導センター指
導調査部
神奈川県足柄上保健福祉事務所生
活衛生課長
国立保健医療科学院統括研究官
全国飲食業生活衛生同業組合連合
会会長
島根県松江保健所長
新潟県福祉保健部生活衛生課長
東京都福祉保健局健康安全部食品
監視課食品危機管理担当課長
(財)滋賀県生活衛生営業指導セ
ンター専務理事
国立保健医療科学院国際協力研究
部上席主任研究官
栃木県保健福祉部保健医療監
さいたま市保健福祉局保健部食品
安全推進課長
地域保健対策検討会での検討課題











(市町村と保健所の連携について)
(地域における医療計画との関わりについて)
地域の自立に基づいた地域保健対策の推進について
健康危機管理のあり方について
市町村における質の高い保健福祉サービス提供体制について
社会福祉などの関連施策との連携などについて
快適で安心できる生活環境の確保について
地域保健に係わる人材確保・育成及び資質の向上等について
地域保健に関する調査研究について
評価及び優先度に基づいた地域保健計画等の策定と推進について
住民ニーズの多様化・高度化に対応した地域資源との
かかわりについて
(下線部分が当初の課題、赤字は最終段階で追加)
<第5回検討会でのプレゼンテーションより>
東日本大震災で市町村や保健所の災害対応上、
何が問題だったのか
想定外の大災害に、既存の防災計画に基づく
危機管理システムが機能不全に陥った
(被災した保健所の半数以上がマニュアルが
活用できなかったとしている)


地域保健法施行後の組織体制上の諸問題が、
市町村と保健所の災害対応のハンデになった
想定外の災害に既存の防災計画に基づく
危機管理システムが機能不全に陥った





行政自らの被災に通信・交通の遮断が重なり、
情報共有・指揮命令の混乱が続いた
市町村や保健所の被災を想定した防災計画や
支援の仕組みがなかった
本庁が機能不全になった時を想定した防災計
画や支援の仕組みがなかった
受援側の指揮命令を前提とした保健師派遣は
あったが、司令塔を支援する仕組みがなかっ
た
健康危機管理ガイドラインが大規模自然災害
に対応できるものになっていなかった
釜石・大船渡保健所の取組み
○ 発災後の初動体制における大きな問題点
通信手段の遮断(頼みの綱
衛星携帯×)
交通手段の遮断
災害拠点機関の施設及び職員の被災
ライフラインの被害
地域防災計画の機能不全
保健所(地域)が自らの意思決定により行動
住民の生命の維持及び健康水準の低下を最小限にするため
岩手県釜石・大船渡保健所
鈴木所長作成資料を一部改変
地域保健法施行後の組織体制上の諸問題が
市町村や保健所の災害対応のハンデになった

保健所
◦ 保健所再編統合により所管区域が広域化
◦ 人員不足:保健所長兼務、保健師等の人員削減
◦ 福祉事務所との統合により、平素から保健所長の
権限が弱体化していた
◦ 仙台市では、市町村保健センターと福祉事務所と
保健所が統合された組織であり、保健所業務より
市町村、福祉事務所業務が優先された

市町村
◦ 市町村内の縦割り・業務分担が進み、全体を見て
地域の資源調整したり、行政内部の横の連携を取
る機能が弱まっていた
津波被害を受けた沿岸部を所管する保健
所の保健師数は平均以下
(保健師1人当たり受け持ち人口の比較)
保健師1人当たり人口
35000
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
保健所長も充足されていなかった
(被災3県の保健所長充足率)
平成23年3月時点
岩手県
保健所数(ヶ所)
保健所長数(名)
(充足率)
10
(内 市型1)
8
(80%)
(再掲)沿岸部保
健所
4
保健所長数
3
宮城県
(仙台市除く)
7
仙台市
福島県
5
5
(71%)
3
3
(兼務1)
5
(100%)
2
2
8
(内市型2)
8
(100%)
2
(内市型1)
2
平時と災害保健活動時の組織体制
東部保健福祉事務所
災害時保健活動組織体制
平時組織体制
事務所長
事務所長
保健医療監
兼保健所長
保健所長
副所長
企画総務
地域保健
福祉部
統括保健師
環境衛生
部
保健G
栄養G
リハG
保健所の職員は保健所長1人であり、保
健所の業務は保健福祉事務所の職員が
行うことになっている。
宮城県石巻・登米保健所 大久保所長作成資料を一部改
釜石保健所に求められた活動
○
医療救護活動及び医療提供体制の確保
医療救護活動:県内の活動チーム数
128(約1,200)
統括・調整:DMAT⇒災害拠点病院
医療救護チーム⇒保健医療圏ごと
(保健所、医師会、災害対策本部)
支援の形:避難所滞在型・巡廻診療型・後方支援型
★課題:統括・調整機能の確保
救護所運営の調整
災害拠点病院を拠点とした医療体制再構築
(岩手県釜石・大船渡保健所
鈴木所長作成資料を一部改編)
H19年から釜石医療圏の病院、県の保健所、消防、海上保安庁が協力して震
度6強相当の地震で大津波が来たという想定で訓練を行ってきた
(県立釜石病院 遠藤院長:月刊地域医学)
今後のあり方提言(危機管理と組織体制)
◦ 県、市町村の防災計画に保健所の役割を明記して関係者で共有。
(平時から合同訓練を実施)
◦ 健康危機管理ガイドラインの見直し(大規模自然災害版も含めて)
◦ 被災地の災害時受援システムと公衆衛生版DMATのシステムづくり
◦ 被災保健所への支援の仕組みづくり
◦ 受援側、支援側の人材育成(研修、訓練)
◦ 地域毎(保健所管内単位)の災害保健医療システムを検討する場の設置
と訓練の実施
保健所の組織体制のあり方と健康危機管理に関する検
証を行うべきである
◦ 健康危機管理に関する保健所長権限
◦ 想定外の健康危機に対応できる組織と機能が必要!
◦ 保健所長兼務による危機対応上の問題
◦ 同時多発災害に対応できる保健所の所管区域の広さ
◦ 平時の保健医療福祉のシステム構築(顔の見える関係性)と有事の危機
対応の関係
◦ 上記と人口当たりの保健所職員数(保健師数)の関係の検証
今後のあり方提言(平時対応)
平時にできないことは有事にはできない!
平時からの顔の見える関係づくりが重要!
◦ 市町村との重層的な連携協働

 市町村の求めに応じてではなく、地域住民の求め
を把握する段階から市町村と保健所が重層的に連
携協働する中で市町村の求めを確認する仕組み
◦ 圏域単位の保健医療福祉の連携システム
 圏域単位の保健と医療、医療と介護・福祉の連携
調整の要としての保健所の役割強化
 平時の医療計画に基づく圏域協議会と災害医療対
策会議(仮称)を表裏一体で機能させること
圏域協議会と災害医療対策会議(仮称)は表裏一体
○地域保健の推進に関する基本的な指針
・2次医療圏においては、保健、医療、福祉のシステムの構築に必要な社会資源が概ね確
保されていることから、保健所等は、これらを有効に活用したシステムの構築を図るた
めの検討協議会を設置すること
○H19.7.20健康局総務課長通知(医療計画の作成及び推進に関する保健所の役割について)
・地域の保健、医療、福祉のシステムの構築、医療機関の機能分担と連携、地域におけ
る健康危機管理の拠点としての機能の強化等について企画及び調整を推進すること
・医療計画の作成指針において、・・・・「保健所は、地域医師会等と連携して圏域協
議会を主催し、医療機関相互または介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割
を果たすものとする」と記載されており、この点に留意すること
・従来通り、保健所は、EMISが未整備又は機能していない場合においては、電話、F
AX若しくは自転車・バイク等を利用して直接医療機関に出向いて情報把握又は当該医療
機関におけるEMISでの情報発信の支援を行うこと。
・災害時に保健所・市町村等の行政担当者と、地域の医師会、災害拠点病院の医療関係者、
医療チーム等が定期的に情報交換する場(地域災害医療対策会議(仮称))を設ける計画
を、事前に策定しておくこと。
・地域災害医療対策会議(仮称)は保健所管轄区域や市町村単位等に設置することとし、災
害時に地域の医療ニーズを的確に把握し、救護班等の派遣・調整を行うコーディネート機
能が十分に発揮されるような体制を備えておくこと。
第3回災害医療等のあり方に関する検討会資料より抜粋
望ましい保健医療福祉連携の
あり方
(第6回検討会「社会福祉施策などとの連携につ
いて」でのプレゼンテーション)

保健所が保健医療福祉連携のコーディナーター
となっている事例の紹介

高知県中央東福祉保健所
7市町村、人口12万6千人

島根県松江保健所
2市、人口25万人
高知県中央東福祉保健所における
保健医療福祉連携の取り組み(1)
生活習慣病予防(高血圧対策)
市町村が重点的に取り組むターゲット(脳卒中対策)を明確化
(死亡統計や医療費、介護給付費などのデータ分析)
 高血圧対策における効果的な介入方法の情報提供と助言
 市町村内の組織横断的な体制整備を支援
(市長に助言、国保や介護保険の担当課を推進組織に加える)
 脳卒中予防対策に関する行動計画策定の支援
 地元医師会を巻き込んだ対策の推進
(個別健診導入へ地元医師会協力を依頼、医師会代表、専門医
を含む健康づくり推進委員会専門部会に保健所長が参加)

高知県中央東福祉保健所における
保健医療福祉連携の取り組み(2)
地域包括ケア体制の整備・推進

保健所管内の市町村を地域特性から2つに分けて「保健医療福祉推
進会議」を設置

医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会・福祉事務所・ケアマネ
協議会・市の高齢者担当課などの組織と住民代表により、各組織の
取り組みと今後の行動計画を情報共有
※保健所の側面的支援でケアマネ協議会を設立
訪問看護ステーション、在宅介護支援事業所、医療機関の在宅機能
調査などを行い情報提供


医師会に対し県の地域包括体制整備の補助金の活用を働きかけ、多
職種連携のための研修会を開催
島根県の保健所活動
圏域計画を立て、圏域ごとに検討組織をおき、
保健所が計画推進の役割を担っているのが特徴
<松江保健所における検討の場>
◎は圏域計画あり
◎保健医療対策会議
◎健康長寿しまね推進会議(心、たばこ、食、運動、歯科部会)
◎地域リハビリテーション松江圏域会議、脳卒中予防検討会
○松江圏域がん対策推進協議会(普及啓発、がん診療連携、緩和ケア)
○精神障がい者地域生活移行支援圏域会議
○精神科救急医療体制整備圏域連絡調整会議
◎松江圏域自殺総合対策連絡会
○松江圏域周産期医療連絡協議会
◎母子保健推進検討会議
○難病患者在宅療養支援事業検討会
◎働きざかりの健康づくり推進連絡会
◎歯科保健連絡調整会議
市町村との連携
(松江保健所管内:松江市、安来市)
1.地域全体の課題を解決するための検討の場を設置し、
取り組みを推進
2.市との協議の場等の設定
(1)事業検討の場の設定
市の担当課長を含めた年度当初の事業検討会
事業ごとのスタッフ会、検討会
(2)健康課題や取り組みの進め方についての検討会開催
(3)個別事例検討会の開催
(4)会議や検討会への積極的参画
(5)研修会の開催
保健師や栄養士のタイムリーな研修
地域リーダーの研修
保健医療福祉連携のための
保健所の役割(共通点)




保健事業や地域包括ケアのため必要な情報の収集と提供
市町村などでの活用を促進
調査研究の推進(データ活用や市町村との共同研究含む)
企画調整機能
関係機関、特に医療機関・医師会とのパイプ
「医療」と「福祉」をつなぐ役割
県(本庁)との補助金などの調整
複数の市町村の横断組織、圏域内調整、
連携会議などの設置(広域の機能)
人材育成機能
専門職・地域保健関係職員・ヘルパー研修会
市町村と連携して地区組織のリーダーを育成
高知県や島根県では、保健所と市町村の友好関係の継続、丁寧な意見交
換や役割分担の確認により、「重層的な連携」ができている
地域保健対策検討会で紹介された
保健福祉連携や地域医療連携、まちづくり事例
医療連携における「普及啓発」について
(東京都南多摩保健所)<第2回>
総合的な保健事業の取り組み
(静岡県駿河郡小山町)<第6回>
高知県中央東福祉保健所における保健医療福祉連携の取り組み
<第6回>
「協働」をテーマにした地域活動について
(愛知県尾張旭市)<第8回>
住民(地域コミュニティ)主体の健康なまちづくり事例
(島根県安来市)
<第8回>
災害時要援護者支援プラン策定に向けた地区組織との協同の事例
(北海道A市)
赤字は構成員のプレゼンテーション
<第8回>
最終報告に向けての議論

ソーシャル・キャピタル活用の意義はわかるが、言葉と
してなじみが薄い。具体的な例を挙げるなど、工夫が
必要。

ソーシャル・キャピタルが担う自助、共助の役割と、そ
れを育成する自治体の責務を指針に位置づけるべき。
ポピュレーションアプローチの必要性を入れるべきで
ある。
 医療連携における保健所の役割を入れてほしい
 災害時の保健所の役割の明確化を。


「重層的な連携強化」の所で「保健所は市町村の求め
に応じて」とあるが、求めがなくても支援すべきでは
ないか?
地域保健対策検討会報告書の概要(厚生労働省)
【地域保健を取り巻く社会的背景】
○ 人口構造の急激な変化
○ NCD(非感染性疾患)の拡大
○ 住民生活スタイルの多様化
○ 科学技術の進歩、経済活動の広域化等の
一層の進展に伴う健康リスクの増大
○ 健康危機管理事案の変容
○ 関連する制度改正等の動き
・食育基本法
・がん対策基本法
・高齢者医療確保法
・自殺対策基本法
等
地域保健対策の方向性
平成6年
地域保健
の役割
保健サービスと福祉サービスとの
一体的提供
個人を対象とした公助
方向性実現のための手段
政策課題
○ 国民ニーズの質的変化(多様化及び高度化)
への対応
○ 保険者による保健施策や医療・介護福祉施策
との一体的な展開
○ 健康危機管理事案への対応
○ 健康に関する地域格差の縮小に向けた対応
○ 地域保健対策の新たな課題に対応できる人材
の育成
平成24年
ソーシャル・キャピ
タルの活用
学校や企業等との積極的連携
自助及び共助支援としての公助
【地域保健対策業務全般】
○ 地域資本(公的・民間/人的・物的・社会的(ソーシャル・キャピタル等))の
ベストミックスによる国民ニーズへの対応
【個別事業活用のあり方】
○ 医療・介護福祉等関連領域の事業等を含めた施策の総合的推進
【組織間連携のあり方】
○ 事案の緊急性や重篤性に応じた国・都道府県・市町村連携の強化
(役割分担型 → 重層連携型)
【情報の取扱い】
○ 地域保健情報の標準化及び評価・公表による可視化、目標や
改善策の共有等を通じた地域でのPDCAサイクルの構築及び推進
【地域保健人材のあり方】
○ 目標達成のために必要な資質の向上及び能力の育成
(事業こなし型・活動目的型 →
目標達成型)
検討会報告書の内容
1.住民主体の健康なまちづくりに向けた
地域保健対策の構築
○地域保健担当部門は、地域のソーシャル・キャピタルに立脚した
活動を展開し、多様化・高度化する住民ニーズに即した取組みを
推進する
○特に、ソーシャル・キャピタル形成の場である学校・企業等と
積極的に連携するとともに、その「核」となる人材を発掘し、育
成する
○保健所・市町村保健センターは学校保健委員会への参加等を通
じて、学校との連携を推進するとともに、国における企業活動の
評価のあり方の検討等を踏まえ、企業活動の評価を実践するとと
もに、その活動内容の住民への周知を推進する。
2.医療や介護福祉等の関連施策連携を推進
するための体制の強化
地域保健担当部門は、保健・医療・介護福祉の施
策連携を通じ、住民ニーズに即した実効的な取組
みを推進する。
 保健所は、地域の医療連携体制の構築に公平・公
正な立場から積極的に関与する。
 保健所は、管内を俯瞰し地域の健康課題等に関す
る評価・分析を進めるとともに、市町村及び住民
への分かりやすい情報を提供する。
 市町村は、縦割りに陥らず総合的に推進する組織
体制を構築するなどして、地方自治体内での情報
共有を進めるとともに、保健所と連携して、住民
の健康課題に即した取組みを推進する。

3.健康危機管理体制の強化
対物保健に係る健康危機管理については、情報共有体制
の強化や監視員等の資質向上等を通じた行政監視体制を
強化するとともに、同業組合等の取組みやリスク・コ
ミュニケーションによる住民理解の促進も併せて強化す
る。
 災害に備えた体制強化としては、災害時の保健活動が効
果的・効率的に行えるよう国と地方自治体の連携及び地
方自治体間の連携の強化による先遣的な情報収集体制の
構築や具体的な健康支援活動のあり方の共有等を推進す
る。
 同時に、都道府県・保健所と市町村との平時からの連携
体制の強化を通じて、保健所を中心とした災害時保健調
整機能を確保するとともに、危機事案発生時における重
層的・分野横断的な対応が可能となる体制を構築する。

4.地域保健対策におけるPDCAサイクルの確
立

国は、地域保健情報の標準化及び評価・公表のあり方を定め、地方自
治体に周知する。

地域保健担当部門は、地域の特性を踏まえた地域保健に関する評価・
公表を推進するとともに、住民等からの反応を踏まえた施策改善のプ
ロセスを構築する。
5.これからの地域保健基盤のあり方

住民主体の地域保健対策を進めるため、地域保健人材としてソーシャ
ル・キャピタルの「核」となる人材を位置づける。

人材育成に当たって、国は、育成指導者の養成のみならず、地域にお
ける当該指導者の支援を行うとともに、都道府県・保健所と市町村
は、互いに連携を深め計画を立て、体系的に人材育成に取組む。

国、都道府県・保健所、市町村は、特定の分野に限らず、分野横断的
かつ重層的な連携を図る。特に保健所は、常に管内の健康課題の把握
に努め、市町村との密接なコミュニケーションを通じた支援を行う。
参考:第3回地域保健対策検討
会 資料7より抜粋
1.ソーシャル・キャピタルとは
○ 人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることの
できる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴
○ 物的資本 (Physical Capital) や人的資本 (Human Capital) などと並ぶ
新しい概念
(参考) 人的資本は、教育によってもたらされるスキル・資質・知識のストックを表す個人の属性
〈アメリカの政治学者、ロバート・パットナムの定義〉
2.ソーシャル・キャピタルと市民活動との関係
● 市民活動の活性化を通じて、
ソーシャル・キャピタルが培養
される可能性
ソーシャル・キャピタル
の各要素と市民活動
量とは正の相関関係
● ソーシャル・キャピタルが豊か
ならば、市民活動への参加が
促進される可能性
*出典:コミュニティ機能再生とソーシャル・キャピタルに関する研究調査
報告書
(内閣府経済社会総合研究所編 平成17年8月)
(第8回検討会資料)人と人との信頼関係を基盤にした社会(イメージ)
住民共通の課題である「健康」をキーワードに基盤を形成することに
より、日常生活を通じた健康作りが可能に
社会的責任
(CSR)
親類縁者
企業(職場)
・職員とその家族の健康
・地域の一員としての位置づ
け
志縁
学校
児童生徒・PTA等
NPO、ボランティア、
組合組織など
地縁
自治会
老人クラ
ブ
ニーズに応じた活動の活発化
青年会
血縁
商店街
子供会
親類
家族・友人
各住民
積極的な
連携
行政
地域の絆の強まり
生活衛生分野の取組の方向性と方策
~快適で安心できる生活環境の確保~
保健所等の行政機関
事業者団体・市民団体等の
ソーシャルキャピタル
各事業者
住民
【方向性】
○規制・監視体制の強化
【方策】
○指導・監視の地域間格差を分析・評価 → 結果
を自治体に周知
○監視指導状況が特に高い自治体と低い自治体の取
り組みの分析
○環境衛生監視員講習制度創設(H.24年度予算で対
応保健医療科学院と連携) → 内容を協議
○
【方向性】
○ソーシャルキャピタルである生活衛生同業
組合等の機能強化と活用
【方策】
○自治体による新規営業者等の組合への加入
促進(H23.7 通知発出済)
○保健所等から営業者への伝達機能促進
○全国指導センターの大規模チェーン店等と
の連携を図り、公衆衛生情報提供機能強化
【方向性】
○営業者の自主的な衛生努力の支援と消費者へ
の情報関与の促進
【方策】
○自主管理点検表の普及・公表(店舗への掲示、
組合・指導センターからの指導促進)
地域保健対策の推進に関する基本的な指針の
改正の概要(7月31日厚生労働省告示)
1 ソーシャルキャピタルを活用した自助および共
助の支援の推進
2 地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまち
づくりの推進
3 医療、介護および福祉などの関連施策のとの
連携強化
4 地域における健康危機管理体制の確保
5 学校保健との連携
6 科学的本拠に基づいた地域保健の推進
7 保健所の運営及び人材確保に関する事項
8 地方衛生研究所の機能強化
9 快適で安心できる生活環境の確保
10 国民の健康増進およびがん対策等の推進
新たな基本指針の特徴①
ソーシャルキャピタルの重視

新指針は住民主体の健康なまちづくりとソーシャル
キャピタルの育成の重要性を強調

地域のあらゆる資源(古くからの地域活動、
NGO、学校や企業活動も含む)の活用
~状況によってはすべてを住民に任せる。
~整理・調整が必要な場合もある
地区の健康課題の把握と計画評価を共に行う
地域包括ケア・保健福祉医療連携にもソー
シャルキャピタルの活用は不可欠


公的責任:保健福祉行政の役割と分担
現状 国は制度化、指針やガイドラインを作成
予算化は、政策的に重要な部分
都道府県は広域行政(規制を伴うもの)
医療体制の整備
市町村は住民生活に身近な福祉サービス
権限委譲、縦割り分担
これからの地域保健活動
保健所と市町村は連携協働が必要
住民にも役割・社会資源の活用
丸抱え、丸投げ
禁止!
[保健所の運営]地域保健対策に関する専門的な業務について機能を
強化するとともに、常に地域保健対策に対する地域ニーズの把握
に努めた上で…市町村への積極的な支援に努めること。
新たな基本指針の特徴②
健康なまちづくりを基本に!

「地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまちづく
り」を地域保健対策の基本的方向とする

「都道府県の設置する保健所の運営」のトップに、健康
なまちづくりがあげられている
市町村による保健サービス・福祉サービス
の一体的提供
地域の健康課題の把握・医療機関の連携調整
市町村や関係機関との重層的連携

地域医療連携・地域包括ケアシステム構築にも言及
新たな基本指針の特徴③
「健康危機管理体制の確保」に向けた重層構造
1
健康危機管理体制の確保
 健康危機管理体制の管理責任者への迅速かつ適切な情報伝達
と一元的管理
 他の地方公共団体を含む関係機関、関係団体との連携調整を
はかる必要
2
大規模災害への備え(新設)
大規模災害時に十分に保健活動を実施できない状況を想定し、
情報収集、医療機関との連携を含む保健活動の全体調整、支
援受け入れ体制の構築
3
地域住民への情報提供(新設)
地域住民が状況を的確に認識した上で行動できるようにリス
クコミュニケーションを実施する
☆(都道府県は)健康危機事案発生時
に、市町村と有機的に連携した対応が
できるよう、市町村と密接な連携体制
を整えること
☆地域住民との連携協力(新設)
健康危機が生じた時の住民の支え
あいのため、ソーシャルキャピタルを
醸成していく取組を推進する
「健康なまちづくり」を目指した市町村と保健所の連携協働のイメージ
近接(特定利用)
←
サービス提供機関
用)
・地域密着型の介護保険事業所
・地域包括支援センター
・保育所・小中学校・子育て支援セ
ンター
・社会福祉協議会
・消防署
・一廃ゴミ処理施設、水道施設
環境
環
境
改
善
連
携
調
整
住
民
参
加
→
広域(不特定利
・病院、診療所、歯科診療所、薬
局
・飲食店、理容・美容所、ホテル
旅館
・動物取扱業
・介護保険施設、事業所
・高校、専門学校、大学等
・警察、児童相談所
・地区組織
・サークル
・ボランティ
ア
・NPO
・広域的な住
民組織、患者
団体
母子、老人、精神、難病、結核感染症等
住
民
参
加
許
認
可
・
監
督
指
導
、
連
携
調
整
環境
環
境
監
視
・
改
善
保健所
市町村
(2010地域保健総合推進事業「健康なまちづくり班」)
連携協働
ご清聴ありがとうございました