児童生徒の健康関連行動から 沖縄県の長寿を考える。 琉球大学医学部 高倉 実 琉球大学教育学部 小林 稔 沖縄の健康の未来を考えるゆんたく会 平成18年7月27日 University of the Ryukyus 子ども時代の 身体活動 子ども時代の 健康 大人になってから の身体活動 大人になってから の健康 子どもと大人における身体活動と健康の関 係 (Boreham & Riddoch,University 2001) of the Ryukyus Matton L, et al. Tracking of Physical Fitness and Physical Activity from Youth to Adulthood in Females. Med Sci Sports Exerc 2006;38:1114-20. Figure 2. Shift in active and less active categories from adolescence to adulthood in Flemish females. Less active is defined as sports participation < 3 h/wk in adolescence and < 1.5 h/wk in adulthood. 138名の女子(平均年齢16.6歳)を 平均40.5歳まで追跡した。 University of the Ryukyus 子ども時代の活動的(健康的)な 習慣作りと,生涯を通じて習慣の 継続が重要となる。 • 持ち越し効果 ヘルスプロモーションのすすめ方 • 下流アプローチ(個人,個人内) • 中流アプローチ(学校,地域,対人 ) • 上流アプローチ(政策,規則,環境 ) University of the Ryukyus 沖縄県の若年層,生産年齢層の 健康状態は? University of the Ryukyus 沖縄県がワースト5にランクされる主な疾患 ▲ワースト5内,△有意に全国平均より高い死亡率 (男性 10-14歳 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 心疾患 脳血管疾患 不慮の事故 ▲ ▲ △ △ ▲ △ ▲ ▲ △ ▲ △ 自殺 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ △ (健康おきなわ2010) University of the Ryukyus 沖縄県の長寿悪化の主な要因 男性 • 10代~20代の交通事故死 • 20代~60代の自殺 • 30代~60代の循環器疾患による死亡 女性 • 30代~50代の脳血管疾患による死亡 • 若年層出産や低体重児出生率が高位 • 若者の性感染症の割合が多い (健康おきなわ2010,健やか親子おきなわ2010) University of the Ryukyus 青少年の健康に関連する危険行動 (Health Risk Behaviors, CDC) 喫煙 不健康な食行動 不適当な身体活動 アルコールや薬物使用 HIVやSTD感染,望まない妊娠が起こり うる性行動 故意(暴力や自殺)あるいは過失(交 通事故)による傷害が生じうる行動 University of the Ryukyus 沖縄県の高校生のヘルスリスク 行動の実態は? 2002年と2005年の比較 University of the Ryukyus • 2002年調査 – 対象 • 沖縄県全域から割当抽出された25全日制県立高等学校(普通科 17校,専門学科8校) の各学年1クラスに在籍している生徒 2,852名。 – 調査方法:自記式無記名質問紙法(密封して提出) – 調査期間:2002年11月~12月 • 2005年調査 – 対象 • 沖縄県全域から割当抽出された25全日制県立高等学校(普通科 17校,専門学科8校) の各学年1クラスに在籍している生徒 2,892名。2002年調査との重複校は19校。 – 調査方法:自記式無記名質問紙法(密封して提出) – 調査期間:2005年9月~11月 University of the Ryukyus 調査内容 • ヘルスリスク行動 – 米国CDCのYouth Risk Behavior Survey (YRBS)日本語修正版 • 傷害関連行動(交通安全行動含む) 7 項 目 • 喫煙 6 項目 • 飲酒・薬物使用 6 項目 • 性行動 5 項目 • 食行動(減量行動含む)6 項目 • 身体活動 2 項目 • 関連要因(属性,学校生活など) University of the Ryukyus 分析対象 2002 n 学年 性別 学校種 地域 2005 % n % 1年生 903 35.5 874 35.4 2年生 887 35.0 819 33.1 3年生 750 29.5 779 31.5 男子 1219 48.0 1057 42.8 女子 1321 52.0 1415 57.2 普通科 1729 68.1 1709 69.1 専門学科 811 31.9 763 30.9 郡部 789 31.1 706 28.6 1751 68.9 1766 71.4 都市部 University of the Ryukyus 2002年から2005年にかけて変 化がみられたヘルスリスク行動 • 交通安全行動 – シートベルト非着用 – ヘルメット非着用 • 喫煙行動 • 飲酒行動 • 性行動 – コンドーム使用 • 危険なダイエット行動(女子) University of the Ryukyus (%) 80 70 60 50 45.6 40 42.3 32.0 35.6 30 20 10 21.8 n.s. 13.2 11.9 12.3 0 '02 '05 ♂ '02 '05 ♀ ヘルメット非着用(年) '02 '05 ♂ '02 '05 ♀ シートベルト非着用 交通安全行動の出現割合と98%信頼区間 University of the Ryukyus (%) 80 70 60 50 52.9 41.4 40 32.9 30 23.6 20 24.9 17.4 10 10.5 5.4 0 '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 生涯喫煙 '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 現在喫煙(月) 喫煙行動の出現割合と98%信頼区間 University of the Ryukyus (%) 80 70 70.8 71.6 60 60.6 59.5 50 n.s. 40 41.8 39.7 32.3 33.8 30 20 10 0 '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 生涯飲酒 '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 現在飲酒(月) 飲酒行動の出現割合と98%信頼区間 University of the Ryukyus (%) 90 82.5 80 73.5 70 63.0 60 58.4 50 40 n.s. 30 20 27.8 n.s. 18.9 24.0 17.0 10 0 '02 '05 ♂ '02 '05 ♀ 性交経験(生涯) '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 最近の性交時のコンドーム使用 (性交経験者) 性行動の出現割合と98%信頼区間 University of the Ryukyus (%) 10 9 8 7 6 5.9 5.1 5 4 3 2.4 2 1 0 1.9 n.s. 0.5 '02 1.0 '05 ♂ n.s. 0.8 0.6 '02 '05 ♀ ダイエット薬品使用(月) '02 '05 '02 ♂ '05 ♀ 吐く・下剤使用(月) 減量行動の出現割合と98%信頼区間 University of the Ryukyus いくつかの行動に選択的に経年変 化がみられた原因(推測)① • 交通安全行動 – 道路交通法改正に伴う啓発,取締の直接的・間接的効 果 • 2002年 悪質・危険な運転に対する罰則引き上げ • 2004年 暴走族対策の強化,携帯電話等の使用に関する罰則見 直 • 喫煙行動 – 健康日本21,健康おきなわ2010の策定・推進 – 2003年 健康増進法施行(受動喫煙防止規定) • 学校敷地内禁煙,公共空間の禁煙・分煙 – 2003年 たばこ小売価格値上げ University of the Ryukyus いくつかの行動に選択的に経年変 化がみられた原因(推測)② • 飲酒行動 – 未成年者飲酒禁止法の改正 • 2000年 酒類の提供・販売禁止違反についての罰則強化 • 2001年 年齢の確認義務 – 酒税法改正 • 2000年 未成年者飲酒禁止法に違反した酒類販売業者の酒類販 売業免許の取り消し。 – 酒類業組合法の表示基準の一部改正 • 2003年 酒類の陳列場所の見やすい箇所に「酒類の売り場であ る」「酒類の陳列場所である」「未成年者の飲酒は法律で禁止 されている」旨を表示することとされた。 – WHOの報告では,健康政策,広告,経済状況が寄与。 University of the Ryukyus いくつかの行動に選択的に経年変 化がみられた原因(推測)③ • コンドーム使用 – 2002年から実施されている中学校学習指導要 領保健体育(保健分野)の内容に,AIDSおよ び性感染症について取り扱い,その予防にコン ドームが有効であることが追加された。 • ダイエット行動 – 2002年以降に中国製ダイエット用健康食品 な どの「いわゆる健康食品」による健康被害事例 が多く報告されてきた 。 University of the Ryukyus 3年間で高校生のライフスタイルが大きく 変わることは現実的ではない。しかし,い くつかの行動が選択的に変化したことは, 個人の態度や価値観,認知が変化したとい うよりも,制度上あるいは外的環境上の変 化が寄与したものと考えられる。 ヘルスプロモーションのすすめ方 • 下流アプローチ(個人,個人内) • 中流アプローチ(学校,地域,対人) • 上流アプローチ(政策,規則,環境) University of the Ryukyus
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