閉鎖性水域における鉛直方向の 栄養塩輸送過程 井上徹教 九州大学大学院工学研究院環境都市部門 第11回九州地区海岸工学者の集い 2001年7月28日(土) 1 背景 -その1- 1.ダム湖での淡水赤潮の原因種として Peridinium bipesが挙げられる。 2. P. bipesは増殖生理特性からみると有利とは言 えない。 3.ダム湖特有の流動が関係していると考えられ ている。 2 潜入点 栄養塩の摂取 赤潮の集積 ダム 湖水の流れ 上昇運動( 昼間) 流入河川水の流れ 淡水赤潮集積機構概念図 3 背景 -その1- 1.ダム湖での淡水赤潮の原因種として Peridinium bipesが挙げられる。 2. P. bipesは増殖生理特性からみると有利とは言 えない。 3.ダム湖特有の流動が関係していると考えられ ている。 4.ダム湖のような流動が見られない小規模な貯 水池においてもP. bipesが優占することを確認した。 4 背景 -その2- 5.プランクトンの移動に伴う物質循環に関する 研究の代表例として、海洋におけるマリンスノー (生物ポンプ)が挙げられる。 6.活性のあるプランクトンの能動的な移動に伴 う物質循環についてはあまり考察されていない。 5 目的 1. P. bipesが優占する小規模な貯水池における 水質鉛直分布の時系列を測定。 2.観測結果を元に P. bipesの鉛直移動の様子 を推定。 3. P. bipesの鉛直移動に伴う物質循環過程を見 積もる。 6 Imuta Reservoir . Stn.O 0 20 40(m) 観測地点概略図 7 0 DO concentration(mg/l) 5 10 35 Chl.a concentration(g/l) 15 0 0 0 1 1 2 2 DO concentration 3 4 depth(m) depth(m) 20 water temperature(℃) 25 30 10 20 30 40 ←表層(1.0m) 12:06 3:36 ←中層(2.4m) 3 4 ←底層(3.5m) water temperature 5 5 予備調査結果 8 本調査の内容 採水深度: 表層から1.0m(表層)、2.4m(中層)、3.5m(底層) 採水時刻: 1999年9月9日6:00~10日3:00 3時間毎 測定項目: 植物プランクトン個体数 栄養塩濃度 9 Anabena macrospora (N/ml) 1800 1500 表層 1200 900 600 中層 300 底層 0 Peridinium bipes (cells/ml) 6:00 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 3:00 time 800 600 表層 中層 400 200 底層 0 6:00 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 3:00 time 植物プランクトン個体数の時系列変化 10 P. bipes (cells/ml) 800 surface layer middle layer 600 400 200 0 0 50 100 Chl.a(g/l) 150 表層及び中層における Chl.a濃度とP. bipes個体数との関係 11 15:00から21 :00にかけて濃度が減少 NH4+-N濃度の経時変化 12 15:00から21 :00にかけて濃度が減少 NO3--N濃度の経時変化 13 15:00から21 :00にかけて濃度が減少 PO43--P濃度の経時変化 14 0.403×10-3 gN/cell 0.028×10-3 gN/cell P.bipes個体数とNH4+-N濃度との関係 15 0.085×10-3 gN/cell 0.026×10-3 gN/cell P.bipes個体数とNO3--N濃度との関係 16 0.063×10-3 gP/cell 0.011×10-3 gP/cell P.bipes個体数とPO43--P濃度との関係 17 中層における栄養塩摂取量 NH4+-N 時間帯 15:00-18:00 18:00-21:00 NO3--N -3 PO43--P (×10 g/cell) 0.403 0.085 0.063 0.028 0.026 0.011 N:P (モル比) 17:1 11:1 18 Chl.aの沈降速度 =0.31m/hr Stokesの沈降 速度=0.18m/hr pheophytinの沈降 速度=0.16m/hr 色素濃度の時系列変化 19 6:00 Surface layer 1.5m 52 A 74 55 Middle layer 1.5m Bottom layer 2.0m 12:00 143 (mg/m2) 0:00 126 B 76 50 C 82 63 41 98 D 8 69 48 78 E 16 TP収支概念図 20 結論 1.成層化した貯水池において、P. bipesの日周 的な鉛直移動の様子、それに伴う栄養塩濃度の変 動に関する観測を行った。 2.ダム湖のような流動が無い場においても、P. bipesは躍層付近まで沈降する事によって中層に 含まれる栄養塩を摂取し増殖が可能。 3.中層に十分な栄養塩が含まれない場合には、 より早く沈降してきた個体の方が栄養塩の摂取に 関しては有利であり、沈降速度の見積もりからP. bipesは能動的に沈降する可能性も示唆された。 4.成層の発達した貯水池においてはP. bipesの 鉛直移動が栄養塩の鉛直循環に大きく関与してい る。 21
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