プラズマ工学

プラズマ工学
九州工業大学電気工学科
趙孟佑
No.7
〜荷電粒子の輸送〜
連続の式
拡散
1
連続の式
枠だけの箱
流れ場
z
y
x
2
連続の式
流れ場における箱の位置は固定
流れ場
z
y
x
枠だけの箱を流れ場に入れて、箱の中の
粒子の個数を数える
3
連続の式
表面 A
表面 B
z
y
密度 n
x
x
x+x
体積中の粒子数
Number of particles inside the volume V: N = nV
Aから入る粒子数
incoming flux from the surface A: - nvx x x
Bから入る粒子数
vx,vy,vz
流速
incoming flux from the surface B: nvx x
体積中の粒子数の増加
(nV)
n
Increase of particle number in the volume:

xyz
t x , y, z t x , y, z
4
連続の式
(粒子数の保存)
n
xyz  nvx x x yz  nvx x yz x方向からの粒子
t x , y, z
nvy y y xz  nvy y xz y方向からの粒子
nvz z z xy  nvz z xy z方向からの粒子
書き直して
nvx
n

t x , y, z
極限をとって
or
ここでは、箱の中での電離や付着による増減は無視
x x
 nvx
x
n
nvx

t x , y, z
x
n
t
x

nv y y y  nvy

t, y, z
y
nvy
y
t, x , z
r
   nv   0
x, y,z
y

nvz
 nvz z
0
z
z z
nvz

0
z t, x, y
連続の式
5
連続の式
(電離や再結合を考える時)
n
t
r
   nv   S  L
x, y,z
S:Source Term 電離等による粒子数の増加
L:Loss Term 再結合や付着による粒子数の減少
電子の場合、例えば
ne
t
r
3
   nev   nenn  i ve   ei ne
x, y,z
電離衝突
3体再結合
注意: v 電子の平均速度。移動速度vdに相当
6
平均移動速度
連続の式にでてくる速度vは、粒子の平均速度





1  
vx       u x f (x, y, z,u x ,u y ,uz )du x  du y  du z
n     







1  
vy       u y f (x, y, z,u x ,u y ,u z )du x  du y  du z
n     







1  
vz       uz f (x, y, z,u x ,u y ,uz )du x  du y  duz
n     


Maxwell分布をしている時はこれらはゼロ。
つまり、流れがあるということは、粒子の速度分布はMaxwell分布ではない。
7
平均移動速度
外部から電界を印加して、電子・イオンが移動速度を持つとき
e
E
vd 
me  ve nn
この時は、電子・イオンの分布はMaxwell分布ではない。
しかし、<σve>の導出などで、Maxwell分布と仮定した
平均スピード等を使っている。
厳密には正しくないが、それなりに良い近似である。
8
運動量の式
表面 A
表面 B
z
y
密度 n
x
x
x+x
各粒子は質量 mをもつ
Momentum of each particle: mv x
各粒子の運動量
The total x direction momentum in the volume mv xnV
体積中のx方向運動量の総和
表面Bから単位時間あたりに体積中に流入するx方向運動量
mv x nvx x yz
表面Aから単位時間あたりに体積中に流入するx方向運動量 mv x (nvx
x x
9
)yz
運動量の式
表面 A
表面 B
z
y
密度 n
x
x
x+x
箱の中の粒子に外力が働かない時
mnv x vy
mnvx
mnv xv x
mnvx vz



t x, y, z
x t, y, z
y t, x ,z
z
連続の式のnがmnvで置き換えられる
質量mは一定なので,
nvx vy
nvx
nvx vx
nvxvz



t x , y, z
x t, y, z
y t, x ,z
z
0
t, x , y
0
t, x, y
10
運動量の式
z
表面 A
ローレンツ力
表面 B
y
密度 n
圧力 p
x
x
圧力 p
x+x
プラズマ中では、圧力とローレンツ力がかかる
圧力:外部表面で粒子を内側に押す
ローレンツ力: 粒子各々を加速する
r v r
q(E  v  B)
q = -e 電子, q>0 正イオン
11
運動量の式
z
表面 A
ローレンツ力
表面 B
y
密度 n
圧力 p
x
圧力 p
x+x
x
d(momentum)
 force
体積中のx方向運動量の変化
dt
 mnvxV 
  mnv v yz  mnv v
yz
t
x x x
x x
 mnvx vy xz  mnvx vy
y
 mnvx vz z xy  mnvx vz
r r
nVq Ex  v  B x
 

 p x yz  p x  x yz
xx
xz
yy
xy
zz
12
運動量の式
x方向の運動量の式は以下のように書ける
nvx
t
x, y, z
nvx vx

x

nvx vy
y
t , y,z
t , x, z
nvx vz

z
t , x, y
y方向の運動量の式
nvx
t

x, y, z
nvy vx
x

nvy vy
t , y, z
y

t , x, z
nvy vz
z
t , x, y
 



qn
r r

Ex  v  B
m
qn
r r

Ey  v  B
m

x
y
1 

p
m x

1 
p
m y
ベクトル形式で
r
nv
qn r r r
1
rr
   nvv  
E  v  B  p
t
m
m

テンソル

13
運動量の式(衝突のある時)
ローレンツ力
表面 A
表面 B
z
y
圧力 p
x
密度 n
圧力 p
x
x+x
衝突による抗力
抗力=衝突により失う運動量の時間変化
 c mvx nV
単位時間の運動量
を失う衝突の数
衝突により失う運動量
粒子の数
14
運動量の式(衝突のある時)
衝突を考慮すると、運動量の式は以下のようにかける
r
nv
qn r r r
1
rr
r
   nvv  
E  v  B  p   c nmv
t
m
m


衝突による摩擦
15
拡散
• 粒子(電子、イオンに限らず中性でもよい)に密度の違
いがあったとき
– 密度の濃いところから、薄いところに粒子は移動する
時間経過
16
拡散と熱伝導
• 拡散と熱伝導は同じ物理現象
– モノは多いところから少ないところへ移動する
– 熱は温度の高いところから低いところへ移動する
– 単位時間の移動量は、各場所の勾配に比例
密度
勾配が急
移動量大
勾配が緩やか
移動量小
距離
17
拡散と熱伝導
• 拡散によってx方向に移動する粒子の流束(単位面積・
単位時間あたりの面を横切る粒子の数)

  D n
x
(m-2s-1)
• 熱伝導によってx方向に移動するエネルギーの流束
(単位面積・単位時間あたりに面を横切るエネル
ギーの量)

Q   T
x
(Wm-2)
18
拡散と熱伝導

  D n
x
(m-2s-1)

Q   T
x
(Wm-2)
• Dを拡散係数、κを熱伝導率という
• 勾配の負に比例になっているのは、高いところか
ら低いところに流れるため
n

n0
x
拡散による流束はx方向に正
x
19
拡散係数の導出
A
B
高密度
低密度
A,Bで共にマクスウェル分布を
していると仮定
AからBにxoの面を横切って移動する流束
nA
4
平均自由行程l mfp
xo
l mfp
移動する間に衝突はない
8kT
m
BからAにxoの面を横切って移動する流束
nB
4
8kT
m
20
拡散係数の導出
両側の領域からの流束の差が全体としての流束になる。
x方向を正とすると
nA

4
8kT nB

m 4
8kT 1 8kT

nA  nB 
m 4 m
Aでの密度nAをxoでの密度を使って、テイラー展開する

nA  n xo  lmfp
n
 n xo 
x
2 n
lmfp  2
x
xo
n
 n xo 
x
2 n
lmfp  2
x
xo

lmfp 2
xo
同様に

nB  n xo  lmfp
両者の差をとると、

n
nA  nB  2
x
lmfp
xo
1  3n

3 x 3
2
lmfp 2
xo
2
3
lmfp
L
xo
L
L
小さいので無視
21
拡散係数の導出
拡散による流束は
1 8kT n

lmfp
2  m x
とかける。よって
1 8kT
D
lmfp
2 m
拡散係数≈熱速度×平均自由行程
温度が高い程、拡散しやすい。
衝突が少ない程、拡散しやすい。
軽い程、拡散しやすい。
22
拡散方程式の解
n
t
r
   nv   0
x, y,z
粒子の動きが主に拡散によるものであるとき(電界・重力等の外
力が働いていないような時)連続の式で、流束nvが拡散による流
束Γで置き換えられる
r r
nv    Dn
を連続の式に代入すると、
n
t
時間の一階微分
 D2 n  0
x, y,z
n
2 n
2 n
2 n
D 2 D 2 D 2
t
x
y
z
拡散方程式
空間の二階微分
23
拡散方程式の解
簡単化のため、一次元で考える。(y,z方向は一様)
n
2 n
D 2
t
x
t=0で密度nがN01(x)で与えられる時、
N
n(x,t)  01
2

 x2 
exp  
Dt
 4Dt 
(証明は教科書のp.80)
(x)はデルタ関数(x=0で無限大で積分すると1)
24
拡散方程式の解
N
n(x,t)  01
2

 x2 
exp  
Dt
 4Dt 
-3
density (m )
3
t=0.01s
t=0.1s
t=1s
t=5s
2
1
0
-5
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
x (m)
N01=1
(m-2),D=1m2/sの時の拡散の様子
25
拡散方程式の解
N01
n(x,t) 
2

 x2 
exp  
Dt
 4Dt 
粒子密度の分布は、exp項の値でほぼ決まる
x2
4 Dt
が同じところは、密度もほぼ同じ
密度の拡がる領域は
x  Dt
時間の1/2乗で拡散により密度がひろがっていく
26
アインシュタインの関係
• 荷電粒子(電子、イオン)の移動度
e
e 
me c
• 拡散係数
1 8kT
D
lmfp
2 m
両者から
D
kT

e
e
アインシュタインの関係
拡散係数と移動度を測ることで
温度を知ることができる 27
両極性拡散
• 拡散現象は、中性粒子でも起きる。
• 両極性拡散はプラズマ中でのみ起きる
+
+
- +
+
+
+ 準中性
-
-
-
-
+
+
+
+
+
-
+
-
+
-
+
+
+
+
時間
+
- 荷電粒子が発する電界を無視した場合
1 8kT
D
lmfp
2 m
軽い粒子の方が速く拡散する
28
両極性拡散
• 拡散現象は、中性粒子でも起きる。
• 両極性拡散はプラズマ中でのみ起きる
+
-
+
+
+
+
+ -
-
-
- Es -
+
+
+
+
-
+
-
+
Es
-
-
+
+
-
電子:ゆっくり
+ イオン:速く
時間
+
-
+
+
-
-
電荷が分離すると、電界が発生して、お互いを引っ張り合う
29
両極性拡散
電界があるので、粒子の流束は
電界によるドリフト+拡散
になる
e
i
準中性なので
ne
 ne  e E  De
x
ni
 ni i E  Di
x
ne  ni  np
とおく
e
 n p e E  De
i
 n p i E  Di
電子の流束
イオンの流束
プラズマ密度
n p
x
n p
x
30
両極性拡散
e
 n p e E  De
i
 n p i E  Di
n p
x
n p
x
代入
電子とイオンは一緒に拡散していくので、
n p
 p  De
x
E
n p e
 e  i   p
電場Eを消去すると、
p  
i De  e Di n
i  e x
両極性拡散係数
Da 
i De  e Di
i  e
31
両極性拡散
両極性拡散係数
i De  e Di
Da 
i  e
De
i De
i
 e
1
 Te

Di
e Di
Da  Di
 Di
 Di   1

i   e
 Ti

i
1
e
電子とイオンの温度が等しい時、Da=2Di
De 
1 8kTe
lmfp より、単独であれば、電子はイオンより100倍程度速く
2  me
拡散するはずだが、両極性拡散によってイオンを引っ張らないといけ
32
ないために、イオンと同程度の拡散係数しかもてない