星の明るさと等級 - PAOFITS WG

星の明るさと等級
PAOFITS WG 開発教材 <解説教材>
<使い方>
①「実習の方法」についての説明に使う
②実習はせずに、スライドで説明する
製作: PaofitsWG
1.地学の教科書には
・星の明るさは「等級」で表す
・全天で、特に目立つ明るい星を1等星
・肉眼で見える最も暗い星を6等星
・5等級差の明るさの(光度)比が
100倍になるように定義されている
・1等級差あたりの比、約2.5倍になる
2
2.等級はどのように決められて来たのか?
①星の明るさを表す「等級」の考案

紀元前2世紀ころ、ギリシャのヒッパルコス
★肉眼で見える、最も明るい20個の恒星を1等星
☆次に明るい星を2等星・・・・・・
●肉眼で見える限界の星を6等星

6段階にグループ分けをした
3
2.等級はどのように決められて来たのか?
②星の明るさを測定

天王星を発見したイギリスの天文学者
ウィリアム・ハーシェルの息子、
ジョン・ハーシェル(1792年-1871年)
<日本ハーシェル協会HPより>



1等星の明るさは6等星の100倍であることを
発見した
大きい望遠鏡で暗い星を小さい望遠鏡で明るい星を見て、同
じ明るさに見えたとき、2つの星の明るさは望遠鏡の口径の
比の2乗倍だけ違う
1等星と2等星の明るさの比(光比)は
約2.5倍
4
2.等級はどのように決められて来たのか?
③等級を式で表す

観測技術が進歩し、星の明るさを精密な数値で表すことが必要

1853年、イギリスのポグソン( 1829年-1891年)

ハーシェルの観測結果を基に、等級を数式で表すことを考えた



1等星と6等星の等級差は5等で、100倍明るい
1等級差あたりでは100の5乗根で
約2.51倍明るい
5
2.等級はどのように決められて来たのか?
・二つの星の等級をm1、m2(m1<m2)
・明るさをL1、L2 (L1>L2)とすると、
m1等
m2等
(明るさL1)
(明るさL2)
1/5(m2-m1 )
L1/L2 = 100


常用対数を用いて表すと、
log( L1/L2)=2/5(m2 - m1)
または、
m2 - m1=5/2log( L1/L2)
現代でも、この定義を用いて、等級の決定をしている
6
2.等級はどのように決められて来たのか?
④等級の基準

ポグソンの元々の定義では、等級の基準値として北
極星を2.0等として定義
(北極星が変光星であることがわかり)

こと座のベガを0.0等と定めた

現在では決められた色フィルターで複数の基準星を
撮影して、得られた光度を基準にして等級が決めら
れている
7
3.「5等級差の明るさの(光度)比が100倍」
を実際の星でたしかめてみよう
確かめる方法(実習の内容)
①さじアストロパーク天文台の、10.5cm屈折(F6.7)に冷却 CCD
カメラ(apogee製Ap-7p) +Vフィルター
②M45(プレアデス星団「すばる」)のFITS画像を撮像
③「マカリ」で測光する
④それぞれの星の明るさに相当するカウント値を得る
⑤同時にその星の等級を、星表から調べる
⑥明るさを表すカウント値と等級の関係を調べる
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<望遠鏡とCCD撮像装置>
さじアストロパーク天文台
ペンタックス10.5cm屈折(F6.7)
に冷却CCDカメラ(apogee製
Ap-7p)+Vフィルター
(広視野の撮影用に、103cm反射望遠鏡
に同架)
冷却CCDカメラ
9
<M45プレアデス星団(すばる)>
CCD画像
10
<CCD画像>
さじアストロパーク天文台、宮本 敦 撮影
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<等級を入れた画像>
・測光する星の
実視等級(V
等級)
・星表から調べ
たものを資料
として提供
12
3.実習の流れ
(1)実習の趣旨、 データ、「マカリ」の説明
(2)測光作業

指定された星を測光して
カウント値を記録
<測光画面>
13
(3)測光結果の入力
測光結果入力(対数計算)表

片対数グラフ用紙またはExcel計算表を用いる

番号
X
Y
V等級
カウント値と等級をExcelの表に入力
1
288
444
5.76
カウント値
log(カウント)
7616
3.88
2
272
430
6.43
4095
3.61
3
370
401
4.30
29213
4.47
4
300
349
3.87
43958
4.64
5
323
333
7.22
1964
3.29
6
419
312
5.46
10606
4.03
7
108
305
6.83
2837
3.45
8
228
290
7.40
1664
3.22
9
413
222
3.70
50829
4.71
10
125
217
6.32
4613
3.66
11
110
211
2.87
109599
5.04
12
246
134
4.18
33411
4.52
13
348
181
8.05
910
2.96
14
206
212
9.29
301
2.48
15
159
156
8.36
686
2.84
A
299
181
?
1136
B
328
398
?
506
14
3.06
2.70
(4)カウント値とV等級の相関関係をグラフに
<できた相関図>
V等級-カウント値の相関
1000000
カウント値
100000
10000
1000
100
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
V等級
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(5)カウント値-V等級相関グラフから、
等級差と明るさの関係を確かめる
① 相関グラフから、M45の星のV等級と星の明るさを示
すカウント値はどのような関係(相関関係)になっているか?
対数目盛で表したカウント値とV等級は、ほぼ1本の直線上に
乗っていて、カウント値の対数はV等級に比例している。
②グラフ(相関図)で、V等級(横軸)が3等級と8等級の5等
級差で、カウント値はおよそ何倍になっているか?
100倍
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(5)カウント値-V等級相関グラフから、等級差と明るさ
の関係を確かめる
③グラフ(相関図)にできた直線の傾きはいくらになっているか?
分数で示せ。
ただし、カウント値(縦軸)は常用対数の値で測ること。
約 -2/5になっている
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(6)考察
①等級がわからない星のカウント値から等級を求める
②相関グラフから、等級と明るさの関係式を導く
<考察の内容について発問>
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①等級がわからない星のカウント値から等級を求める
等級が不明なA、Bの
星のカウント値から 、
グラフでV等級を求め
ると何等級になるか。
V等級-カウント値の相関
1000000
A 星
(カウント値=1136)
カウント値
100000
10000
1000
7.8 等
B 星
(カウント値=506)
100
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
V等級
8.7等
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②相関グラフから、
等級と明るさの
関係式を導く
グラフで二つの星の
等級を m1 、m2
( m1 <m2 )
明るさを L1 、 L2
(L1 > L2 )
とすると、
a=[( m2- m1 )]・・・・・・・・①
b=[(log L1- logL2)]・・・・②
直線の傾きは、
-b/a=[ -2/5 ]
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②相関グラフから、
等級と明るさの関係式を導く
式を変形して
b=[ 2/5 a ]
上式に式①、②を代入すると
(log L1- logL2)=[ 2/5( m2- m1 )]
log( L1/L2)=[2/5( m2- m1 )]
の式ができる。
また、
m2- m1 =[ 5/2 log( L1/L2) ]
の式ができる。
この式は ポグソン が、 星の明るさと等級 の
関係を定義した式である。
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星の明るさと等級
さあ、“マカリ”を使って
実際に確かめてよう
<解説教材セットは>
http://paofits.dc.nao.ac.jp/Materials/
にあります
製作: PaofitsWG
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