第2日目第1時限の学習目標 順列、組み合わせ、確率の入門的知識を学ぶ。 (1)順列とは? (2)組み合わせとは? (3)確率とは? 確率分布とその期待値・分散の定義を知る。 (1)度数分布と確率分布の違い (2)標本の平均・分散と確率分布の期待 値・分散 の違い 順列・組み合わせと確率-1 順列とは(1) 有限個の対象をある順序で並べた時、これ はそれらの順列 (permutation) と呼ばれる。 順列や組み合わせで扱う対象は、一般に 元 (element)と呼ばれる。 とりわけ、相異なる n 個の元から r 個取 り出して並べた時の総数を nPr と表記す るとすれば、 n! n pr n( n 1) ( n r 1) (n r )! 順列・組み合わせと確率-1 順列とは(2) ここで、1 から n までの n 個の自然数の積は、n の 階乗 (n factorial) と呼ばれ、n! と表記される。すなわち、 n! n (n 1) 3 2 1 なお、0!=1と定義される。 また、nPr の定義から、nPn 、すなわち相異なる n 個の対象を並べるすべての順列の総数は、n! である。 順列・組み合わせと確率-1 組合とは(1) 有限個の元の中から、幾つか (r 個)を取り出す取り 出し方の総数は、組合(くみあわせ)と呼ばれ、 nCr と表記される。 このようにして取り出された r 個を並べて順列を作 ると、その総数は、定義より nPr に等しいので、 nCr・r! =nPr、すなわち、 n! n Cr (n r )!r! 演習(5) (1)3つのアルファベット a, b, c を並べる時、順 列の総数は幾つになるか、またそれらをすべて書き 下せ。 (2)4つの数字 1、2、3、4 の中から3つを取 り出す組合の総数は幾つになるか。また、それらを すべて書き下せ。 (3)テストの信頼性の下限値を与えるといわれる、 教育や心理の分野でよく利用されるクロンバックの アルファ係数では、2k個の下位テストから成るテ ストを、それぞれがk個から成る2つのテストに折 半し、2対のテスト得点間の相関係数の平均を考え る。ここで、このような2対のテストは全部で何通 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(1) これまで、我々は観測により得られたデータをも とに、データの特徴を表す幾つかの指標、すなわ ち、統計量について考えてきた。 ここでは、個々のデータが観測される可能性(確 からしさ、或いは確率)についての理論について 簡単に紹介し、確率分布とその期待値・分散、母 集団と標本、推定の問題などの以降の議論に備え る。 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(2) 歴史的には、数学的な確率論の起こりは、17世 紀のパスカル (Pascal, 1623-1662) に遡ると言われ ている(例えば、丸山、1956)。 これまで多くの研究者が確率について論じてきて いるが、それらのうち代表的なものは、19世紀 のラプラス(Laplace, P. S., 1812) による経験的確率 論と、20世紀のコルモゴロフ (Kolmogorov, A. N., 1933) による公理論的確率論である(例えば、 東洋経済、統計学辞典, 1989)。 ここでは、後者の立場での確率の定義についての み述べる。 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(3) 第1日目に紹介したデータやそれによる統計量は、 何らかの仮説をもとに、われわれが実験や調査等に より観測して得たものであるが、これらの観測や実 験は、統計学では試行 (trial) と呼ばれ、試行により 得られた種々の結果の集合は、事象 (event) と呼ば れる。 確率の定義に先立ち、つぎに事象に関する幾つかの 概念の定義をおこなっておく。それらは、和事象 (sum event)、積事象 (product event)、全事象 (whole event)、余事象 (complementary event)、排反事象 (exclusive events) である。 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(4) 和事象ー A か B のいずれかが起こる事 象: 積事象ー A と B が共に起こる事象: 全事象ー 試行のすべての結果を含む事 象: 空事象ー試行の結果を全く含まない事 A B A B A c 象: A B 余事象ー A をある事象とするとき、A が なる Aと B 起こらない事象: 排反事象ー 事象 A と B の積事象が空事 象であるような事象: 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(5) ある試行に対する任意の事象 A に対して、事象 A の 関数 P(A) が対応し、以下の条件を満足する時、P (A) を事象 A の確率という: (1) 0 P ( A) 1 ( 2) A P () 1 A P ( ) 0 (3) A1 , A2 , が排反事象系なら ば i 1 i 1 P ( Ai ) p ( Ai ) 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(6) 例1 一般に X を試行の結果を表す値とし、XЄA を試 行の結果「事象 A が起こる」ということを表すも のとする。この時、例えば、サイコロをふる実験 における1の目の出る確率は、つぎのように書け る: 1 P(1) P({ X 1}) 6 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(7) より一般的には、 1 P( X x) P({ X x}) , x 1,2,,6 6 サイコロの例に限らず、X=x となる確率を一般的に p(x) と書けば、x がサイコロの場合のように飛び飛び の値を取るような場合、P(X=x) は次のように書ける: P({X x}) p( x), x x1, x2 ,, xn , 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(8) うえのような関数 p(x) は、一般に確率関数 (probability function) と呼ばれる。 p(x) は、定義内のxのそれぞれに対応する確率の分 布の状況を指し示すので、確率分布 (probability distri- bution) の1つとも言える。 次の図は、サイコロの目の出る確率に関する確率分 布を図示したものである。横軸は、サイコロの目を 示し、飛びとびの値しか取らないことに注意が必要 である。 順列・組み合わせと確率-1 確率とは(9) この例のような確 率分布は、第1日目 に紹介した心理検査 等の観測値の度数 分布とは、基本的に 異なり、あくまでも理 論的な分布である点 に注意せよ。 確 率 1 6 ● ● ● ● ● ● 1 2 3 4 5 6 x 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(1) 第1日目には、N 個のデータを手にしたとき、デー タの分布の特徴を平均や分散等の指標(統計量)で もって、簡潔に表現することを考えた。 これに対して、理論分布としての確率分布の場合に も、 分布の特徴を平均や分散等の言葉で表現でき るのであろうか。 答えは、Yes である。ただし、それらの定義には少 し異なる部分が生じる。まず、うえのような確率関 数の場合について述べると、つぎのようになる: 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(2) 確率関数、すなわち確率変数がサイコロの目のよ うに飛び飛びの値を取る場合(離散的変数の場合 )、確率分布の平均は、期待値 (expectation) と呼 ばれる。 離散的変数の場合の期待値は、つぎのように定義 される: 期待値 確率変数 I 確率関数 E ( X ) xi p( xi ) i 1 離散変数の期待値の例 サイコロの目(1から6)の期待値 サイコロは、どの目の出る確率も 1/6 である ので、うえの定義から、その期待値は、 1 1 1 E ( X ) 1 2 6 , 6 6 6 3.5 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(3) 確率変数が、サイコロの目の場合のように飛 び飛びの値を取らず、連続的な値を取る場合 もある。 つまり、連続変数の場合、離散変数の場合の 確率関数にあたるものは(確率)密度関数 (density function) と呼ばれる。 その代表的な例が、正規分布 (normal distribution) である。正規分布の密度関数を f(x) と書けば、f(x) はつぎのように表される: 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(4) 平均μ、分散 σ2 の正規分布の密度関数は f ( x) 1 e 2 1 2 2 ( x ) 2 平均μ、分散σ2 の 正規分布の分布の特徴 2.15% 34.13 % 34.13% 13.59 % μ-2σ, μ-σ, 2.15% 13.59% μ, μ+ σ, μ+2σ 約70% 約95% 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(5) 連続変数の場合の確率変数の期待値は、つぎ のように定義される: 期待値 確率変数 密度関数 E ( X ) x f ( x)dx 確率変数の期待値と分散-1 確率変数の期待値とは(6) 期待値は、定義より 1 E ( X ) x e 2 この積分を行うと、 1 2 2 ( x ) 2 dx
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