research.kek.jp

宇宙創成の探査
小玉英雄
宇宙物理理論グループ
素粒子原子核研究所,KEK
KEK・素核研 サマーチャレンジ講義
宇宙の一様性の謎
宇宙ゆらぎの起源
天体の起源
宇宙構造の起源
イ
ン
フ
レ
ー
シ
ョ
ン
熱いビッグバン宇宙
暗
黒
時
代
現
在
の
宇
宙
の
加
速
膨
張
元素の起源
ダークマター
の実体
通常物質
ダークマター
ダークエネルギー
宇宙膨張の謎
宇宙創成の謎
物質の起源
構成プラン

宇宙膨張と宇宙地図



Hubbleの法則
GRSによる宇宙地図
宇宙音波とCMB




一様等方宇宙モデル







宇宙論の基本方程式
Friedmannモデル
宇宙パラメータ
宇宙膨張による赤方偏移
光度距離・赤方偏移関係
SNIa観測
ダークエネルギー問題




ビッグバン宇宙
Jeans長
宇宙音波とCMB
WMAP観測
Doppler peaks
宇宙のdark pie
宇宙創成の謎






フリードマンモデルの諸問題
インフレーション
量子ゆらぎから銀河へ
CMBによるインフレーションの
検証
インフレーション問題
宇宙誕生を観測する
宇宙膨張と宇宙地図
銀河の運動とDoppler効果

銀河の後退運動
[Vesto Melvin Slipher (1912)]

Andromeda銀河を除く多くの銀河からの光
が赤方偏移.
z´¢¸/¸ =v/c >0
[O++]
[O+]
Hg
[O++]
Hb
KISS (Kitt Peak National Observatory)
Cepheid型変光星の距離決定

δ-Cepheid型変光星に対する光度周期関係
[Henrietta Swan Leavitt (1916)]
絶対等級 M = - a log(P) + b
現在の公式は
<MV> = -3.53 log P + 2.13 (<B0> - <V0>) + f
f ~ -2.25: a zero point. P in days

適用範囲: 7Mpc (M101) on Ground; 25Mpc by HST
Cepheidは超巨星であるため,遠方まで観測可能.
Pop I 型星なので,楕円銀河(や球状星団)には含まれない.
1Mpc=106 pc 1pc= 3.26光年
Mathewson, Ford and Visvanathan (1986) ApJ 301: 664
Hubbleの法則 by Hubble & Humanson

=
赤方偏移: z = 
v
c
遠方の銀河は距離に比例す
る速度で我々から遠ざかる運
動をしている.
E. Hubble: PNAS 15: 168 (1929)
1Mpc=106 pc 1pc= 3.26光年
Hubbleの法則の意味
Q1-1 Hubbleの法則 v=Hd が我々から見て厳密
に成り立つとすると,我々から距離 a の銀
河にいる観測者にとって他の銀河はどのよ
うに運動して見えるか?
Q1-2 銀河の運動速度が一定とする.このとき,
過去に時間をさかのぼると銀河の分布はど
のように変化するか?また,その変化の特
徴的な時間はいくらか.(宇宙年齢)
(解答)
(解答)
v = H0 r
) v’ = v- v(a)= H0 r – H0 a
= H0(r-a)
) v’ = H0 r’
すなわち,どの銀河から見ても同じHubble
の法則が成立(宇宙の一様等方性)
t –t0= - 1/H0 で一点に集まる.
時間は,
1/H0= 23億年
x(560km/s/Mpc /H_0)
Cf. 地球の年齢は約46億年
宇宙の距離はしご
方法
適用距離
年周視差測定
0~100pc
Hippparucos
星団視差法
100pc~10kpc
散開星団主系列星
100pc ~ 50kpc
Cepheid型変光星
Tully-Fisher法
SN Ia
JASMINE
10kpc~25Mpc
10Mpc~200Mpc
60Mpc~4000Mpc
HST
Hubble定数 by HST
H0の観測値
H0= 71 +/- 7 km/s/Mpc
) 1/H0 = 140 億年
H0= 100 h km/s/Mpc
= 70 h70 km/s/Mpc
Q1-3 Hubbleの法則が大きな距離でもそのま
ま成り立つとすると,銀河の後退速度が
光速に達する距離は?(ホライズン)
(解答)
z=1 , c / H0 = 4,300 Mpc
1Mpc= 106 pc
1pc=3.26 光年 = 3£ 1018cm
CfA Survey
CfA1 1977-1982
CfA2 1985-1995




PI: John Huchra, Margaret Geller
Sky coverage: ' 40%
Redshift of 18,000 bright galaxies
v < 15,000km/s (z<0.05)
CfA Huchra
Great Wall & Southern Wall


Geller MJ 1997 Rev. Mod. Astron. 10: 159
Ramella, Geller and Huchra ApJ 384, 404, 1992
2dF(two degree fields) GRS
1996-2003
南北銀極付近
220,000銀河
銀河分布のフィラメント・ボイド構造
Sloan Digital Sky Survey
2000 - 2008
主に北天
約80万個の銀河
SDSS/DR6
Astrophys.J.674:768-783,2008.
e-Print: arXiv:0708.0030 [astro-ph]
Galaxy Correlation Function
<n(s)n(0)>= n2 (1+»(s))
SDSS Collaboration: ApJ 633: 560 (2005)
ダークマター
一様等方宇宙モデル
問題
Q2-1 半径 Rの質量Mの一様なガス球を考え
る.このガス球が一様性を保って膨張す
るとき,半径と密度の時間変化を決める
方程式を求めよ.ただし,ガスの圧力は
重力に比べて無視できるとする.さらに,
時間t無限大で,膨張速度 dR/dtがゼロに
近づく解を求めよ.
(解答)
d2 R/dt2 = -GM/R2
) (dR/dt)2 – 2GM/R= -k.
M= 4¼ ¹ R3/3 ) ¹ = 3M/(4¼ R3).
無限遠で dR/dt=0とすると,k=0.
よって,
R=(GM/2)1/3 (3t)2/3 ) R=R0 (t/tf)2/3;
tf=1/(6¼ G ¹0 )1/2
¹ = ¹ 0 (tf/t)2
Q2-2 Q2-1で求めた R(t)に対する方程式
の一般解を求めよ.
(解答)
k>0のとき:
k=2GM/Rm, x=R/Rm ,
¿ = t/(Rm3/(2GM))1/2
d¿ = x dx/(x(1-x))1/2
x=(1-cosµ)/2
) ¿=(µ-sinµ)/2
(0· µ · 2¼)
k<0のとき:
k= - 2GM/Rm, x=R/Rm ,
¿ = t/(Rm3/(2GM))1/2
d¿ = x dx/(x(1+x))1/2
x=(coshµ-1)/2
) ¿=(sinhµ -µ)/2
(0· µ )
宇宙論の基本方程式

宇宙膨張の方程式

エネルギー方程式
宇宙膨張による赤方偏移

Robertson-Walker計量

宇宙膨張とハッブル則

光線の伝播

赤方偏移
特に,d= c(t_0-t) が小さいとき,
一様等方膨張宇宙モデル
Hubbleの法則(1929)
銀河の後退速度 / 距離
v= H0 r
K=0
宇宙の膨張と一様等方性
Robertson-Walker宇宙モデル
• 空間は一様等方で,一様な曲率 K をもつ
• 空間のサイズ a(t)が時間 t 共に増大
重力は引力 ⇒ 宇宙膨張は減速型
⇒ 有限な宇宙年齢
⇒ Big-bangモデル
K>0
K<0
宇宙パラメーター

宇宙膨張の方程式
ハッブル定数
密度パラメーター

エネルギー方程式
wパラメーター

物質組成
宇宙における天体までの距離測定

光度距離
固有光度 L,見かけの明るさ Fobs
) L=4 dL2 Fobs ) 光度距離 dL

角径距離
固有径 D, 見込み角  ) D =  dD ) 角径距離 dD:

一般に
固有量 + 見かけの量 ⇒ 天体までの(様々な)距離
光度距離ー赤方偏移関係

赤方偏移 z と宇宙サイズ a の関係

距離と面積の関係

dL – z関係
Hubble Diagramの拡張
Flat ΛCDM models
Curved CDM models
Degeneracy
SNIa で宇宙を計測する
Ia型超新星までの距離
 光度曲線が、ピーク時の
色指数と光度減衰時間に
より良い精度で分類され
ることを用いて,絶対光
度を推定.
これまでの観測
(High z) Supernova Search Team
1998 Riess AG et al
16 SNe Ia (z=0.16-0.62) + 34 nearbys
2004 Riess AG et al
16 SNe Ia (z>1.25 by HST) + 170 SNe
Supernova Cosmology Project
1997 Perlmutter S et a:
適用距離: >60Mpc
7 SNe Ia (z=0.35-0.46)
1998 Perlmutter S et al
42 SNe Ia (z=0.18-0.83)
2003 Knop RA et al:
11 SNe Ia (z=0.36-0.86, HST)
Supernova Legacy Survey 1st yr
2005 Astier P
71 SNe Ia (0.249<z<1.01) + 44 nearbys
Supernova Legacy Survey
SNLS collaboration: A&A 447:31 ( 2006)
問題:何を意味するのか?
Q3-1. 宇宙膨張の基本方程式を用いて,現在の宇宙膨
張の加速度(d2 a/dt2)を密度パラメータで表せ.ま
た,密度パラメーター (M,K,¤) =(0.26,0,0.74)
に対して,加速度の値をを計算せよ.
宇宙は現在,加速膨
張している!!
(解答)
重力が引力 ⇔ 宇宙膨張が減速
Q3-2. 宇宙膨張の基本方程式を用いて,宇宙膨張の加
速度(d2 a/dt2)をエネルギー密度½と圧力Pで表せ.
宇宙膨張が加速 ⇒ 重力が斥力
(解答)
重力が斥力 ⇔ 圧力 P < - /3
Q3-3. ダークエネルギーの密度をPlanck単位(G=1, c=1,
~=1)で表すといくらか?(tpl=(G~ /c5)1/2 =5.4£ 10-44
s, 1yr=3£ 107 s)
(解答)
Riess A et al: ApJ659(2007)98
Reacceleration of the Universe
1998 Discovery by SNIa (SNCP, HzST)
2003 WMAP 1st year
宇
宙
の
膨
張
速
度
2005
イ BAO (SDSS)
ン
2006
フ
レ
2007
ー
シ
ョ
2008
ン
熱いビッグバン宇宙
WMAP 3rd year
Chandra X observation (fgas
method)
WMAP 5 year data
宇宙時間
暗
黒
時
代
現
在
の
宇
宙
の
加
速
膨
張
ダークエネルギー問題
一般相対性理論が宇宙のスケールで正しいとすると,
量子エネルギーを含めて,真空のエネルギーが


正である (加速問題),
素粒子物理の特徴的なエネルギースケールと比べて異常に小
さい (階層性問題),
Cf. 真空の構造が変化する特徴的なエネルギースケール
EPlanck=1028eV, EGUT=1025eV, EEW=1011eV, EQCD=108eV

ちょうど現在の物質密度と同程度である(一致問題).
様々な理論的試み

特別の場を導入



Quintessence, K-essence, phantom field, dilatonic ghost
condensate, tachyon field(¾ Chaplygin gas),
量子重力
ダークエネルギー問題は、21世紀に残され
 Spacetime foams, EPI, baby universe
た最大の難問。その解決には,真空のエネル
重力理論の変更
ギーを完全にコントロール出来る基礎理論(
 ミクロでの変更: 弦理論・M理論
重力を含む統一理論)の構築が不可欠!
 長距離での変更: Lorentz不変性の自発的破れ, f(R,,r) モ
デル, TeVeS理論, DGPモデル

人間原理
Ref: Copeland, Sami, Tsujikawa: IJMPD15, 1753(2006)
宇宙音波とCMB
Cosmic Microwave Background

1950年代



Heの起源を熱い膨張宇宙モデルにおける
初期宇宙での核融合反応により説明
(BBN).
数度Kに相当する熱的背景放射を予言.
1964年 A.A. Penzias, R.W.Wilson


George Gamov
宇宙から等方的にやってくる約3Kに相
当する熱雑音電波を発見(1978年ノーベ
ル賞)
1990年代 COBE実験(John R. Mather
& George Smoot; 2006年ノーベル賞)

CMBのスペクトルが非常に高い精度で
Planck分布に従うことを確立し,温度を
精密に決定:
TCMB=2.728+/-0.004K

CMB温度の異方性を発見.
ピーク振動数: 160GHz
ピーク波長: 1.87 mm
COBE FIRAS
FIRAS= Far InfraRed Absolute Spectrometer
問題:ビッグバン宇宙
Q4-1. 現在の宇宙は,約2.74KのPlanck
分布をする熱放射により満たされて
いることが知られている(CMB).光
子ガスのエントロピー密度がT3に比
例することを利用して,宇宙のエン
トロピーが一定とした場合のCMBの
温度Tとスケール因子aの関係を求め
よ.また,T=3000K, 3800Kとなる時
期の赤方偏移の値と時刻を求めよ.
(解答)
T3 a3=一定 ) T/ 1/a
zdec= 1,100, tdec= 3.8£ 105 yr
zrec= 1,400, trec= 2.1£ 105 yr
Q4-2. 現在のCMBの密度パラメーは
h2CMB=2.39£ 10-5 T2.74で与えられる.
これより,熱輻射のエネルギー密度と
ダークマターのエネルギー密度が等し
くなるときのzと温度,時間を求めよ.
(解答)
zeq=DM/CMB=5,000, Teq=15,000K,
teq= 4£ 104 yr
Q4-3. 輻射のエネルギーが支配的な時期
において,スケール因子の時間依存性
を求めよ.
(解答)
½ / T4 / 1/a4 より,
(da/dt)2/a2= Heq2 (aeq/a)4
) a =aeq (t/teq)1/2
宇宙プラズマの中性化

宇宙プラズマの電
離率の時間変化
宇宙の熱史(概要)

エントロピー密度
Cf. 太陽

温度の変化
Jeans Length

半径Lのガス雲(領域)において,

ガスの圧力勾配
P/L » cs2 m/L

重力
圧力
単位体積当たりの重力
Gm M/L2 » Gm m L
L
両者が等しい長さ
) Jeans長 LJ= cs/(Gm)1/2 = cs tff



L < LJ のガス雲は膨張し密度勾配が減少
L > LJ のガス雲は重力収縮し,さらに密度
が上昇.
一様なガス雲のゆらぎに対して,


波長  < LJ のとき,音波として伝播
波長  > LJ のとき,重力収縮によりゆらぎ
は成長
Jeans長とホライズン
Q5-1. 宇宙物質を輻射 (r)と物質
(b)(電子,陽子プラズマ)の混
合気体と見たとき,両者の圧力
の比 Pb/Prをもとめよ.ただし,
輻射と物質は同じ温度とする.
Q5-2. 同じ仮定の下で,宇宙物質の
エネルギー密度½と圧力Pをス
ケール因子の関数として求めよ.
さらに,これを用いて,このガス
の音速
(解答)
をスケール因子の関数として求め
よ.また,原子物質が中性化して
以降の音速を求めよ.
(解答)
P=Pb ) cs は 3.7£ 10-5-倍
CMB=4.8£ 10-5, b=0.046, kB TCMB=2.4£ 10-4 eV. mp=940 MeV/c2
Q5-3. 物質優勢な宇宙および輻射優
勢な宇宙において,宇宙誕生時を
頂点とする光円錐の宇宙時間tにお
ける半径lH(t)を時間の関数として
求めよ.この値と 1/Hを比較せよ.
(解答)
現在
時間
光波面の方程式は,cdt=a d より,
宇宙晴上り
初期面
物質優勢とすると: lH(t) = 3c t = 2/H
輻射優勢とすると: lH(t) = 2c t =1/H
Sounds of CMB
宇
宙
の
晴
上
り
現
在

膨張宇宙におけるJeans長
熱い膨張宇宙
H2= 8 G /3 ) LJ ¼ cs /H
長
さ
Cf. ホライズン長 LH ¼ c/H
c /H
cs /H
CMB

LJは宇宙の晴れ上がり直前で
最大となる.

時間 t

晴れ上がり前: LJ ¼ LH
晴れ上がり後: LJ < 10-5 LH
宇宙音波の振舞い
Q6-1 水素再結合時tdec以前のCDM
優勢な時期では,電磁輻射と
物質の混合気体を伝播する波
数k/aの音波の方程式は,
(解答)
WKB解は次のように書き換え
られる:
ここで,
となる.このWKB解
よって,
に対して,t=tdecでの振幅|¢r|2
は離散的な波数knでピークを
もつ.kn/(a(tdec) H(tdec))を求め
よ.
宇宙音波の観測
Q6-2. CMBの最終散乱面t=tdecで我々
が観測できる領域の半径(t=tdec時
での固有長rplc(tdec)と対応する現在
の長さ(共動長)Âplc(tdec))を求
めよ.それとlH(tdec)の比を求めよ.
ただし,宇宙膨張はK=0の物質優
勢FRWモデルで近似できるとする.
Q6-3. CMBの最終散乱面t=tdecでのホ
ライズンを見込む角度を求めよ.た
だし,宇宙膨張は平坦な物質優勢
FRWモデルで近似できるとする.
(解答)
(解答)
Q6-4. Q6-1の結果を用いて,第
1Dopper peakの波長を¸1として,
l=2¼ rplc(tdec)/¸1を求めよ.
(解答)
CMB Temperature Map by WMAP
Doppler Peak

WMAP観測

1st Doppler peak
l ¼ 200 , K¼ 0
WMAP 5yr: arXiv:0803.0593
Cosmometry by CMB

Dopplerピークの位置は空間曲率を決め
る.



Dopplerピーク波長はほぼ物理で決まり,
宇宙物質組成に敏感でない.
晴れ上がり時でのDopplerピークの波長
Lp とそれを見込む角度pの対応は,主に
空間曲率に依存:
Komatsu E et al 2009: ApJ Supple180:330
WMAP観測


1st Doppler peak l ¼ 200 , K¼
0
観測値: |K| < 0.1
宇宙のDark Pie
通常物質
ダークマター
ダークエネルギー
Allen SW, Rapetti DA, Schmidt
RW, Ebeling H, Morris G, Fabian
AC: MNRAS383:879(2008)
WMAP 5yr data:
arXiv:0863.0547
SDSS Collaboration: ApJ 633: 560
(2005)
宇宙創成の謎
平坦性問題
Planck時での空間曲率
Q7-1. 現在の宇宙でK=0.1とすると,
Planck時(t=tpl)での½K/½mの値はいく
らになるか?
(解答)


(古典的な)宇宙の始まり
Planck定数 h, 光速 c, 重力定数 G
Planck時間
tpl ¼ 10-43s
Planck長
Lpl ¼ 10-33cm
Planckエネルギー Epl¼ 1019GeV ¼ 1032 K
平坦性問題は,宇宙初期にエネル
ギー密度 m が曲率 K/a2より緩やか
に減少する(i.e. 宇宙の加速膨張)時
期が十分長く続けば解消される.
Planck時の曲率半径 > 1030 Lpl
ホライズン問題

Friedmannモデルを仮定すると
我々がCMBで観測する領域のサイズ
は,宇宙晴上りの時点で,ホライズン
サイズの33倍程度
現在
時間
観測領域で,CMB温
度ゆらぎは 10-5 程度
宇宙晴上り
初期面
宇宙の一様等方性は,宇宙誕生時の
初期条件.量子論と整合しない.

ホライズン問題も,宇宙初期に宇宙膨張が加速する時期が十分長く
続くと解消される.
宇宙膨張の起源
なぜ宇宙は膨張を
始めたのか?
宇
宙
の
膨
張
速
度
イ
ン
フ
レ
ー
シ
ョ
ン
熱いビッグバン宇宙
宇宙時間
暗
黒
時
代
現
在
の
宇
宙
の
加
速
膨
張
宇宙構造の起源
Q7-2. 同じサイズの各々の領域でエネルギーがδEだけラン
ダムに変動するとき,N個の領域の全体でのエネルギー
は N1/2 δEだけ変動する.また,サイズLの領域で重力ポ
テンシャルのゆらぎは δE/Epl /(L/Lpl)で与えられる.こ
のことを用いて,Planck時でホライズンサイズの領域で
エネルギーがランダムに比率 ² で変動するとき,t=tdecで
ホライズンサイズの領域での重力ポテンシャルのゆらぎ
はいくらになるか?ただし,Friedmannモデルを仮定し,
ホライズンより大きなゆらぎのポテンシャルゆらぎがほ
ぼ定数となることを用いよ.
L
(解答)
宇宙誕生時のゆらぎのスペクトルは
lH(tdec)に対応するPlanck時でのサイズとLplの比は
観測は 「曲率ゆらぎはすべ
てのスケールで一定で10-5程
度」を支持 (HarrisonZeldovichスペクトル)。
宇宙のインフレーション
宇
宙
の
膨
張
速
度
イ
ン
フ
レ
ー
シ
ョ
ン
熱いビッグバン宇宙
• ビッグバンの起源
宇宙初期での
加速膨張
• 平坦性問題
解
決
• ホライズン問題
• モノポール問題
• 宇宙構造の起源
宇宙時間
問題:インフレーション宇宙
Q7-3. インフレーション時の宇宙膨
張率Hが一定で,時刻t=tfにイン
フレーションが終了し直ちに輻
射優勢LFRWモデルに移行する
とする.LFRW宇宙に移行した
直後の宇宙の温度Trが1016 GeV
となるとすると,Hはいくらか?
ただし,この時点での物質のエ
ネルギー密度は0.165 g (Tr/Epl)4
Epl/Lpl3, g=100とする.
(解答)
Tr=5 ¢10-4 Tpl , g=100
)
Htpl=3 ¢ 10 - 6
Q7-4. Q7-3と同じ設定で,現在サイズL
の領域は,t=tfにおいて,そのとき
のHubbleホライズンサイズ1/Hの何
倍か?
(解答)
NL=L (T0/Tr) H
= (L/Lpl) (T0/Tpl) (1.38g)1/2 (Tr/Epl )2
30
= 1.7 £ 10
(L/4000Mpc) (Tr/Epl )2
Q7-5. 同じ設定で,ホライズン問題が解決
される,すなわちインフレーションの
始まりに現在の観測領域が1/H以下の
サイズであるためには,インフレー
ションが続く時間¢ tがいくら以上必要
か?H¢ tの値で答えよ.
(解答)
H¢ t >> ln(NL)
¼ 69+0.5ln(Tr/Epl )
Q7-6. 同じ設定で,平坦性問題が解決され
るには,H¢ tがいくら以上である必要
があるか?
(解答)
N=exp(H¢ t)とおくと,
Q7-7. 計量のゆらぎを± gとおくと,重力場の
サイズLの領域での量子ゆらぎの大きさ
は,h=κ-1± gを用いて,h= 1/Lで与えられ
る.インフレーション時の量子ゆらぎが
Hubbleホライズンより引き延ばされると
一定に保たれることも示される.このこ
とから,インフレーション時に生成され
る重力波の振幅を宇宙の再加熱温度で表
せ.
(解答)
インフレーションは起こせるか?
インフラトン =重力が斥力となる物質
宇宙加熱(graceful exit)問題
新インフレーションモデル
カオティックインフレーションモデル
量子ゆらぎから銀河へ

インフレーション時.
インフラトンの量子ゆらぎはスケール不
変な宇宙ゆらぎを生成する.
同様に,インフレーションによりスケー
ル不変な重力波背景放射が生成され
る.

宇
宙
の
加
熱
宇
宙
の
晴
上
り
熱い膨張宇宙
長
さ
インフレーション後


インフラトンのゆらぎは再加熱により通
常の物質密度のゆらぎに変化し,CMB
のスカラ型ゆらぎを生み出す.
重力波背景放射は宇宙晴れ上がり後,
CMBにテンソル型ゆらぎを誘起する.
量子ゆらぎ
時間 t
現
在
CMBによるインフレーションの検証
WMAP(+others)

温度非等方性のスケール依存性は,CDM+インフレーション
の予言とよく一致.
スカラ型スペクトル指数: ns = 0.95 » 0.97
WMAP 5yr: arXiv:0803.0593
インフレーション問題

適当にポテンシャルを手で与えれば,スカラインフラトンを用いて(現在の)
観測と整合的なインフレーションモデルを作ることは容易である.
そのようなモデルは,インフレーションの背後に重力を含む統一理論が隠
れていることを示唆する.



インフレーションがPlanck時に始まることが要求される.
インフラトンと他の場の相互作用は,重力相互作用程度となる.
現在,超弦理論・M理論は整合的な重力を含む統一理論の唯一の候補で
あるが,未だにそれに基づくインフレーションモデルは存在しない.特に,
次のNo-Go定理は大きな障害となっている.
10次元ないし11次元の超重力理論の余剰次元を定常,コンパクト
で滑らかな空間によりコンパクト化することにより得られる4次元理
論では宇宙の加速膨張は起こらない. [Gibbons GW 1984]
宇宙誕生を観測する

CMB非等方性


より精密な観測.特に,ゆらぎの非ガ
ウス性の測定
⇒ 非線形効果を通して,インフレーショ
ンの情報を得る.
Planck (今年5月に打ち上げ)
偏光(特にBモード)観測
⇒ インフレーションで生成された重力
波の観測
⇒ インフレーションの終了時期など新
たな情報
QUITE, PolarBear, ….
LiteBIRD (KEK CMB group, 10年後)
NASA EPIC(Einstein Probe of
Inflationary Cosmology, 15年後?)
WMA 5yr data: arXiv: 0803.0593
宇宙誕生を観測する
文科省科学研究費補助金 新学術領域研究 領域代表:羽澄昌史 (KEK)
平成21年度~平成25年度
宇宙誕生を観測する

CMB非等方性
より精密な観測.特に,ゆらぎの非ガ
ウス性の測定
⇒ 非線形効果を通して,インフレーショ
ンの情報を得る.
Planck (今年5月に打ち上げ)

偏光(特にBモード)観測
⇒ インフレーションで生成された重力
波の観測
⇒ インフレーションの終了時期など新
たな情報
QUITE, PolarBear, ….

LiteBIRD(KEK CMB group, 10年後)
NASA EPIC(Einstein Probe of
Inflationary Cosmology, 10年後)

原始重力波

スペースレーザー干渉計
Lpl at inflation ⇒ L >10 RE
LISA, DECIGO (20年後)
LISA (of Great Observatories), The Structure and
Evolution of the Universe 2003 roadmap, "Beyond
Einstein: From the Big Bang to Black Holes.“ (NASA)
まとめ
宇宙の誕生,進化の全過程を直接観測する
時代が始まる!!

可視:SUBARU HSC, EELT(42m光学望遠鏡,2018?-),…


赤外・サブミリ:ALMA (12m級アンテナ80基,2010?-), SPICA(2017?-)


21cm HI線によるダークエージ探査, ダークマター
CMB偏光Bモード: LiteBIRD (2020?) , EPIC (2025?)


第1世代星,初期銀河,系外惑星探査
電波:500m 固定望遠鏡, SKA (km2 array)


ダークマター,ダークエネルギー,第1世代銀河・星の探査,系外惑星探査
インフレーション起源重力波,ダークマター,銀河形成
原始重力波:LISA (2030?), DECIGO (2030?)

インフレーション起源重力波,巨大ブラックホール

ダークマター・ダークエネルギーの実体の解明

インフレーション機構の解明,背後にある究極理論への手がかり