分数への情意的傾向と 式の読みとの関連 正 田 良

分数への情意的傾向と
式の読みとの関連
正 田
良
(国士舘大学文学部初等教育専攻)
日本数学教育学会
第39回数学教育論文発表会
K203 (広島大学) 2006.10.08
13:10~13:40
C6
PISAやTIMSSで提起されていること/生きる力と現実世界
 経験・環境
 分数に対する感じ方
25の質問項目
 分数に関する行動
作問などのパフォーマンス
分数に対する感じ方



感じ方8種類
1.興味性
3.普段不必要
5.やだなぁ
7.間違え多い
25の質問項目
2.総合評価
4.問題解決に役立つ
6.計算面倒
8.職業不必要
数の対象: 分数 ・ 正負の数 ・ 小数
+(1項目):計算を面倒だと思うか?
表1:はじめの25問の2次元的解題
(因子数を2としたときの因子分析)
興味性
分数
【
1】
▼
正負の数 【
9】
▼
小数
【
17】
▼
対象\感覚
総合評価
【
2】
【
10】
【
18】
普段不使用
【
3】
【
11】
【
19】
問題解決
【
4】
▼
【
12】
▼
【
20】
▼
やだなぁ
【
5】
【
13】
【
21】
【
25】
計算面倒
【
6】
【
14】
【
22】
間違え多い 職業不必要
【
7】
【
15】
【
23】
【
8】
【
16】
【
24】
行動に関する質問(1)

Q26:量分数と割合分数
【26】
1
3
(
下図は,長さ2mのテープを表わしています。
テープの左端から1/3 mのところに,しるしを付けます。
そのしるしを付けるだいたいの位置を「(1)」から「(7)」まで
の選択肢からひとつ選んで答えて下さい。
行動に関する質問(2)
Q27:
2kgのコーヒー牛乳の中に,1/6kgの
砂糖が入っています。このコーヒー牛乳
の砂糖の濃度を表わす式を下の(1)~(5)
の選択肢から選んで下さい。

行動に関する質問(3)
4人分のお菓子のレシピに「クリームチーズを
(2/3) カップ」と書いてありました。これ
から3人分のこのお菓子を作ろうとしています。
(1)心持ちレシピより少なめにチーズを入れる。

(2)クリームチーズをはかりとって,4等分して3
つ分を使う。
(3) ・・の計算をする。(4)・・ の計算をする
(5)1人分の分量を考えて,それを3倍して作る。
行動に関する質問(4)

分数係数の方程式 を解くときに,一番
最初に行なう方程式の変形はどれでしょ
う。
(1)両辺を6倍する。
(2)カッコをはずす。
(3)右辺のxを左辺に移項する
(4)適当に数値を入れてみる。
(5)その他。
行動に関する質問(5)ー作問





・・・という式を立てることになる文章
題を作って下さい。
Q30:分数の加法。
Q31:分数の乗法。
Q32:分数の除法。
Q33:小数の除法。
行動に関する質問(6)
時速5kmの速さで,5/7 時間歩いた
ときの,歩いた道のりを答えて下さい。

・ やや普通の速さに関する問題(第2用法)
表4:行動の差異による感じ方因子得点の差
因子1(計算負担)
0の平均
因子2(非実用)
1の平均
差の検定
0の平均
1の平均
差の検定
問 26
量分数
0.018
-0.064
0.272
0.044
-0.153
0.055
問 27
濃度立式
0.013
-0.028
0.365
0.012
-0.027
0.369
問 28
料理のレシピ
0.172
-0.106
0.008
0.118
-0.073
0.041
問 29
分数係数
0.039
-0.034
0.256
0.012
-0.011
0.415
問 30
加法作問
-0.084
0.043
0.117
0.118
-0.060
0.055
問 31
乗法作問
0.050
-0.051
0.180
0.088
-0.089
0.051
問 32
除法作問
分数
0.042
-0.105
0.123
0.064
-0.160
0.029
問 33
除法作問
小数
0.117
-0.110
0.019
0.004
-0.004
0.468
問 34
速度立式
0.035
-0.005
0.412
0.355
-0.050
0.008
行動各問に関するχ自乗検定
振り返り(1/2)


分数作問やや困難である。特に除法から
の立式は,数に対する非実用感因子が遂
行を低め,逆に小数に関する式からの作
問は,計算に対する負担感因子が,遂行
を阻害していた。
数学的リテラシーは前述の2つの因子の
両方に影響を受けるが,作問の行動には
関連が見られなかった。
振り返り(2/2)


作問や立式,並びに,量分数の概念理解
は相互に関連するものであった。
分数係数の方程式でまず分母を払う行動
に関しては,他の問や因子との関連が見
られなかった。
まとめ



分数に関する数学的リテラシーを高めるために
は,分数に関する実用感を持たせる。
実用感の育成には,現在の学校での「応用」を
超えた,現実的な活動が必要。
中学以降での分数の扱いは,分母を払うなどし
て分数から離れる。解を得てからの振り返りな
どで,分数に関する状況に戻って,味わえるよ
うな扱いも必要。
このプレゼンの最後です。


ご静聴ありがとうございました。
よろしく,ご指導下さい。