磯部直樹 (理化学研究所) 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 1 恒星質量BH(M < 10 M◎) 巨大BH(M = 106 – 109 M◎) 中質量BH(候補 ?) (ULXを含む) (M = 数10 – 1000 M◎) 合体 中質量BH (Ebisuzaki et al. 2001) 合体 (Ebisuzaki et al. 2001) M82のX線画像 合体の過程で、必ず(巨大)バイナリBHになる 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 2 画像によるもの 二つの compact core をもつ AGN (eg, NGC6240; Komossa et al, 2003) 2本のJetを持つAGN (eg, 3C 75; Owen et al, 1985) X-Shaped Radio Galaxies (eg, 3C 315; Merritt & Ekers 2002) 運動を検出するもの Jet core の 軌道運動 (eg, 3C 66B; Sudou et al. 2003) Jetの歳差運動 スペクトルのよるのも Double-peaked broad emission line 光度曲線によるもの 周期的な光度変動 (eg, OJ 287; Sillanpaa et al 1988) 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 3 過去100年にわたるOJ 287 の 可視光光度曲線(Vバンド) 1900 1994-1997年の活動期の OJ 287の可視光光度曲線(Vバンド) 2000 12年周期 1st フレア (Valtonen et al. 2006) 2nd フレア (Sillanpaa et al. 1996) 2005-2008年に活動期なると予言 多波長キャンペーン実行中 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 4 周期12年 離心率 0.66 歳差 39°/orbit 視線方向 M2 = 1.0 x 108 M◎ ジェット 2007年 降着円盤 2005年フレア M1 = 1.8 x 1010 M◎ 相対論的な 歳差と重力波放出の検証 が出来たと主張している(Valtonen et al. 2008) 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 5 歳差バイナリBH説では、 可視光以外のふるまいを説明できない 1st フレア st nd 可視光 電波 偏光度 偏光角 活動期間 1 フレア 2 フレア 増光 増光なし 減少 変化なし 数か月 増光 増光 増加 変化 半年 secondary BHがprimary BHの降着円盤を通過 降着円盤で熱的なフレア 2nd フレア 1st フレアに伴う降着率の 変化でジェットが噴出 必ずしも 観測なし ジェットによる非熱的な X線 フレア 増光しない (Idesawa et al. 1997) (Valtaoja et al. 2000) 多波長スペクトル(特にX線, γ線)で区別できるはず 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 6 中西 康一郎, 濤崎 智佳 (国立天文台), 河野 孝太郎, 島尻 芳人, 福原 将之(東京大学) 笹田 真人、植村 誠、新井 彰 (広島大学) 磯部 直樹 (理研), 瀬田 裕美, 矢治 裕一, 田代 信 (埼玉大) 林田 将明 (SLAC), 手嶋 政廣 (Max-Plank-Institut fur Physik), 他MAGIC team 電波 可視光X線 γ線 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 7 野辺山ミリ波干渉計(NMA) 電波(n = 86, 98 GHz) かなた望遠鏡@広島大学 可視,赤外 (J, V , Ksバンド) 「すざく」衛星 X線(hn = 0.3 – 60 keV) MAGIC望遠鏡 超高エネルギーγ線 (hn > 100 GeV) 2009/1/21 瀬田(埼玉大M2) et al. 巨大ブラックホール天文学 8 野辺山NMA 電波(100GH帯) かなた@広大 可視(Vバンド) 静穏時 (2007/4/10-12) 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 フレア (2007/11/7-9) 2nd 「すざく」 X線 9 2nd フレア 光子指数 G = 1.50±0.01 X線強度 S1keV = 404+6-5 nJy XIS HXD 静穏時 光子指数 G = 1.65±0.02 X線強度 S1keV = 215±5 nJy 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 •12-27 keVの硬 X線シグナル を検出(OJ 287 では初めて) •折れ曲がりの 気配がある。 10 シンクロトロン 2007年の観測逆コンプトン 静穏期 2nd フレア (過去の観測, Isobe et al. 2001) スペクトルがシフトした気配はない。 各帯域で、単純に増光したように見える。 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 11 シンクロトロン 自己コンプトンモデル 電子スペクトル : Broken PL N(g)∝ g–p (g < gb) g–(p+1) (g > gb) 静穏時 都合よく解釈すると、 ジェットが噴出して電子が増えた 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 ビーミングd p gmin gb gmax Ue (erg/cm3) B (G) R (cm) 10 2.3 110 800 5500 5.2x10-4 0.48 2.3x1017 2nd フレア 10 2.0 110 800 6000 1.1x10-3 0.48 2.3x1017 12 過去の1st フレアの観測 (Isobe et al. 2001) 2007年の2nd フレア (This work) 2nd フレア 静穏期 高エネルギーにシフト 全体的に明るくなる 2 nSync ∝ge B δ 1st フレアと2nd フレアは、多波長スペクトルが異なる 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 13 巨大バイナリBH候補OJ 287が2005-2007年に12年ぶりに 活動期なった。 2007年に起きた2nd フレアおよびその直前の静穏期を、 多波長同時観測した。 1st フレアと 2ndフレアは、スペクトルの振る舞いが違う 本当に歳差バイナリBHなのか? 巨大バイナリBHモデルへの要請 周期(フレアの起こるタイミング)の予想 光度曲線の形 多波長スペクトルの解釈 降着円盤とジェットの関係 ?? 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 14 私の希望 数年以内に巨大 バイナリBHを 探査/発見したい (Hayasaki et al. 2008) 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 15 OJ 287 のような、周期的な光度変動に注目 周期 : T = 0.9年 (M/107Mo) (r/1000rS)3/2 (1+q)-1/2 (Schwarzschild半径 rS = 2GM/c2, 質量比 q = m/M) どの波長が良いか? これまでは、可視光・電波が主流 (eg, OJ287) BH, AGN, 降着円盤, ジェットといえば X線観測が重要 多数のAGNのX線光度を監視したい 高感度の全天X線監視が欲しい 既存の装置(RXTE ASMなど)は、感度が不十分 MAXIの登場 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 16 国際宇宙ステーション(ISS) 日本実験棟「きぼう」に搭 載の全天X線観測装置 2009年5にスペースシャトル で打ち上げ予定 二つの検出器 Gas Slit Camera (GSC) Solid-state Slit Camera (SSC) ISSの進行方向 これまでの全天X線監視装 置の感度を一桁凌ぐ。 SSC GSC : 1 mCrab/week RXTE ASM : 10 mCrab 1000を超えるX線天体のX線 強度を監視できる。 GSC 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 17 スリット + コリメータ + 1次元位置検出型のX線検出器 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 進行方向と天頂方向に視野 ISSの進行で全天をスキャン 18 Gas Slit Camera (GSC) 検出器 帯域 視野 位置分解能 感度 2009/1/21 Solid-state Slit Camera (GSC) GSC 大面積比例計数管 2 - 30 keV 1.5 x 160 degree 0.1 degree 1 mCrab / week 巨大ブラックホール天文学 SSC X線CCD(国産) 0.5 - 10 keV 1.5 x 80 degree 0.1 degree 2 mCrab / week 19 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 20 Cen A NGC 4388 NGC 4507 3C 273 Cyg X-1 Crab LMC GRS 1915+105 NGC 6814 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 21 X線強度 (mCrab) 1 mCrab = 2.2 x 10-11 erg s-1 cm2 (2 - 10 keV) 従来の装置の感度 1軌道(90分) AGN OJ 287 1日 1週間 半年 (混入限界) 距離 [光年] 詳しくは、広井ポスターを参照 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 22 巨大バイナリBHの最有力候補 OJ 287 は、観測対象にはならない。 周期 12 年 > 運用期間 2 年 (5年?) 暗い 0.1 – 0.5 mCrab MAXIで探査できるパラメタ ① 2周期は押さえたい ⇒ 周期 < 1 年 (2.5年 ?) ② 周期 < 重力波放出による合体 のタイムスケール ③ 多くのAGNの光度を考えると、 周期 < 1週間 は無理だろう 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 OJ 287 ① ここの領域 ③ ② (早崎氏のMAXIチームへの講演から拝借) 23 MAXIで得られる観測データを予想してみる。 必要な情報 AGNの何割が巨大バイナリ BHか ? 巨大バイナリBHのX線光度 曲線は ? Hayasaki et al. 2008など の理論計算はある。 発展途上と思われる。 OJ 287 M1 / M◎ 1.8 x 1010 周期 P 12年 活動期 ~1年 増光 5倍 1/50 OJ 287 3.6 x 108 90日 1週間 5倍 ⇒ とにかく観測で決めよう P ∝ M r 3/2 (1+q)-1/2 OJ 287 からスケールして、 MAXIによる光度曲線を計 OJ 287 の1/50程度の系なら、 算してみる MAXIで周期性が探査できる 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 24 予想X線光度曲線 1/50 OJ 287, 5 mCrab MAXIの重要な特徴 感度が高い。 光度曲線を隙間なく測 定できる。 ⇒周期性が探査できる。 巨大バイナリBHを発見で きる可能性がある(と信じ ている) (1.1 x 10-10 erg s-1 cm2 in 2 – 10 keV) 3 日積分 従来の装置の感度 90日 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 25 MAXIで実際に行うこと 多数のAGNのX線光度を監視 ライトカーブから周期性を探査する どのくらいの数のAGNを、監視可能か ? 観測時間 1軌道 1週間 0.5 年 感度 20 mCrab 1 mCrab 0.2 mCrab AGN数 4* ~50 ~1300 * NGC4388 Centaurs A NGC4507 NGC 6814 (M87) (Integral Reference Catalog, 広井ポスター など) Hayasaki et al. 2008 によると、10倍の変動をする可能性も 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 26 巨大BHの質量推定 time scale ∝ M (Hayashida et al. 1998) BH transient の発見と速報 BHの状態遷移 QPO ジェット天体の長期モニタ etc. 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 27 2008年 8月末 完成 2008年 9月 輸送前試験 2008年 10月3日 JAXA筑波から発送 2008年 10月23日 成田発 2008年 10月30日 Kennedy Space Center(KSC)到着 2008年 11月 KSC射場試験 2008年 12月 MAXI 最終組み立て 2009年 1月9日 打ち上げ用パレットへ取り付け 2009年 1日21日現在 打ち上げを待つ 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 28 2009年1-5月 ソフトウェアなどの 整備 2009年5月打ち上げ予定 初期運用/Calibration +3か月 データ公開開始 約1000天体のライトカーブ/ス ペクトル 全天X線画像(1日/1週間/1か月) +1年 on-demandデータ公開 +2年 巨大バイナリBH発見 ? 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 (http://maxi.riken.jp ; 未公開) 29 MAXIは、巨大バイナリBH探査に威力を発揮す る可能性が高い。 ”周期性=巨大バイナリBH”とは限らない(候補) 多波長でのフォローアップ観測 巨大バイナリBHの理論との連携 数年のうちに、日本から巨大バイナリBHの発見 を世界に発信したい。 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 30 二つの compact core 二本のジェット X-shaped radio galaxies 25 kpc 900 pc NGC 6240のX線画像 (Komossa et al, 2003) 電波銀河3C 75の電波画像 (Owen et al. 1985) 電波銀河3C 315の電波画像 (Leahy et al. 1986) ポスター講演 P9 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 31 Jet Coreの軌道運動 ? 3C66B (Sudo et al. 2003) Jet の歳差/うねり 4C73.18 (Roos et al. 1987) ? 周期 1.05±0.05年 距離 < 0.05 pc 質量 < 5 x 1010 M◎ 2009/1/21 巨大ブラックホール天文学 (ポスター講演 P) 32
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