可視光・近赤外線と X線の相関から 探るブラックホール X線連星(+α) 植村誠 広島大学 宇宙科学センター 目的 • 「すざく」時代の 新しい可視光観測のトピックスを紹介 • 「すざく」時代の 新しい観測体制を宣伝 東広島天文台 「かなた望遠鏡」 (1.5m光学反射望遠鏡) 可視光・近赤外線とX線の相関から探る ブラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 可視光・近赤外線とX線の相関から探るブ ラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 Historical overview (pre-RXTE era) 1960’s 1970’s 1980’s 1990’s Sco X-1 (Giacconi 1962) Neutron star X-ray binary Stellar-mass black hole in Cyg X-1 (Webstar&Murdin 1972; Bolton 1972) Black hole X-ray nova, A0620-00 (Elvis et al. 1975) “Ginga transients” GS 2000+25 (1988) GS2023+338 (1989) GRS 1124-683 (1991) Book: “X-ray Binaries” (1995) The Rossi X-ray Timing Explorer (RXTE) was launched. 伴星→連星系パラメータ→BH質量 もっとも新しいブラックホール M33 X-7 Chandraが撮った M33 X-7の食の光度曲線 • MBH > 6.9 Mo – f(M) = 0.46 +/- 0.08 Mo – O-type giant or supergiant (>20 Mo) – P_orb = 3.45 days Orosz et al. 2007 Pietsch et al. 2006 食からBH周辺の幾何に迫れるか!? 可視光・近赤外線とX線の相関から探るブ ラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 Introduction: Accretion onto black holes • Standard accretion disk model – Shakura & Sunyaev (1973) multi-temperature black body spectrum 3/ 4 • Teff r (T ~ 10 K at rg ; L m ) • thermal emission in the high/soft state 7 Optical X-ray 標準降着円盤のSEDの模式図 – thermal instability → outburst • similar to dwarf nova outbursts • heating of an outer accretion disk by X-ray irradiation • can explain their rising time-scale, exponential decay, outburst frequency, amplitude, etc….. – The hard tail (low/hard state) cannot be explained by the standard model. 可視光は円盤外縁からの熱放射 降着円盤起源の変動 ~X線新星の第2極大と再増光~ X線新星の光度曲線 (上)典型的なパターン (下、右)実際の観測例 Chen et al., 1997 両現象とも機構は理解されていない 古典的な描像 まとめ 可視域での伴星と円盤の光度の比較 Optical luminosity HMXB LMXB LMXB (quisc. (outb. 伴星 1036-38 1031-32 円盤 <<1035 <1031 1034• 可視光源は伴星か円盤外縁で、共に熱的。 • 第2極大はX線による照射効果が原因か。 – X線との光度曲線の相関が重要 • Dynarmical massの決定、光度曲線解析 などなど、従来からのテーマもまだまだ 継続した研究が必要。 可視光・近赤外線とX線の相関から探るブ ラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 Jet dominated state XTE J1118+480の電波ー可視SEDの時間変化 (?) XTE J1118+480のSEDモデル Fender (2001) Markoff et al. 2001 可視ー近赤外線でもシンクロトロン放射 (ジェット?)が 見えている可能性 •でも、近赤外線での突発現象観測は(可視光ほどには)多くない • 近赤外での突発現象観測の好例 XTE J1720-318 BHXB XTE J1720-318の光度曲線 • 近赤外線で対応天体 をフォローアップ • 複数のフレア Nagata et al. 2003 星間吸収がきついが受かる、赤外ならでは 近赤外線観測の これから BHXB GRS1915+105 の光度曲線 ~ GRS 1915+105 with TRISPEC/かな た~ 可視ではまず見えない(Av~26) 以前から知られていた30分の •近赤外フレアを確認 1シーズンべったりのモニター観測を予定 短時間変動する天体の可視・近赤外同時観測 GRB061121の場合 GRB061121の近赤外ーX線SEDの時間変化 TRISPECの光学系レイアウト 名古屋大Z研のサイトより 可視ー近赤外同時観測でSEDの変化も 可視光・近赤外線とX線の相関から探るブ ラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 可視光で短時間変動! BHXB V4641 Sgrの可視光短時間変動 V4641 Sgr BHXB XTE J1118+480の可視光短時間変 KV UMa Kanbach et al. 2002, Nature Spruit et al. 2002 BHXB GX 339-4の可視光短時間変動 Motch et al. 1983 X線高度が低い時(low/hard state=Jet state)のみ? 静穏時でも短時間変動 BHXB XTE J1118+480の静穏時の光度曲線 BHXB XTE J1118+480のPDS Shahbaz et al. 2005 X線短時間変動と起源が同じ? 京大高速カメラ/かなた • 京都大学の嶺重・野上氏 ら作成 – 可能な積分時間 • 最短 0.03 sec • 最長 10 sec – フィルターなし – 撮像モードのみ • 突発現象と長期モニター 観測に強い、高速測光シ ステム 高速カメラ&TRISPECの観測例 ~ 矮新星 GK Perの場合 ~ GK Perの光度曲線 短時間変動とPDS SEDーPDSの時間進化を追うことができる 可視光・近赤外線とX線の相関から探る ブラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 偏光観測例 ~ブレーザーOJ287 with TRISPEC/かなた ~ 光度曲線&偏光度の時間変化 偏光度と等級の相関関係 BHXBのアウトバースト時にこれをやりたい HOWPol/かなた • 広島大学が作成中 – 広視野可視偏光撮像装置 – Double wedged wollaston prism – 完全空乏型CCD 7.5分角四方 15分角視野 • 今春ファーストライト 偏光の短時間変動が撮れる! 7.5分角×4が 同時に結像 可視光・近赤外線とX線の相関から探るブ ラックホールX線連星 目次 • 古典的な描像 – 伴星からの熱放射 – 降着円盤外縁からの熱放射 • 最近のトピックス ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – – – – 近赤外線観測 高速観測 偏光 異常に明るい輝線 V4641 Sgrの極大で見えた謎の輝線 BHXB V4641 Sgrの2004年アウトバースト • 1999年 – RXTEが極大付近の観測に成功 (12Crab) – 電波観測でsuperluminalジェット • Uemura et al. 2005 Lindstrom et al. 2005 アウトバースト極大でのHα輝線 2002年 – 電波観測からsuper-Eddingtonを示唆 する報告がある(Ishwara-Chandra, C.H., 2005) • 2005年 – HETE-2がフレアを検出し、その光 度がsuper-Eddingtonを超えていたこ とが明らかに(Shimokawabe, et al., 2005) 円盤にしては大きすぎる→ disk wind? SS433 で似た観測例がある SS433のHα輝線の時間変化 Gies et al. 2002 両天体共に super-Eddington光度を記録 最近のトピックス まとめ • ~ジェット(非熱的)か円盤(熱的)か~ – 近赤外線観測 • 可視光との同時観測でSEDの短時間変動 • 星間吸収の強い系で有効(ex. GRS 1915+105) – 高速観測 • SEDの変化に伴うPDS、QPOの変化 • 突発現象、長期モニターで独自性 – 偏光 • Blazarのモニター • SEDの変化に伴う偏光の変化 – 異常に明るい輝線 • super-Eddingtonに特有? • 普通のBHXNでも見たい ブラックホールX線連星からの可視光 まとめ • 従来の描像=伴星・円盤外縁からの熱放射 – 光度曲線の再現(第2極大、再増光)など、ま だまだ未解明な点も多い。 • 最近話題の非熱的放射 – シンクロトロンはどこ起源か。 – 短時間変動の放射源とメカニズム – 可視光ー近赤外同時観測や偏光観測が有効 • アジアの地理的優位性を活かして、突発現象 の即時観測から迫りたい。 多波長連携研究会@広島大学 • 3月1,2日 – 2月28日には「かなた」で観望会 • 参加・発表の申込締切 – 旅費補助希望の場合: – その他: 2月16日 1月19日 • 詳しくは [tennet:5015] をご覧ください 「かなた」と激変星 植村 Sub-groups of CVs Nova Dwarf nova SS Cyg Z Cam SU UMa WZ Sge Nova-like variables RW Tri UX UMa SW Sex VY Scl Magnetic CVs Polar Intermediate polar Dwarf nova U Gem 1yr “Outburst” 6mag (VSNET) Dwarf nova Z Cam 3mon “Standstill” 3ma g (VSNET) Dwarf nova SU UMa 1mon “Superoutburst” Normal outburst 3ma g (VSNET) Superhumps in SU UMa stars (VSNET) Nova-like variable UX UMa 1yr 2mag (VSNET) Characteristics of sub-classes SS Cyg : (normal) outburst Z Cam : standstill SU UMa : superoutburst + superhumps Nova-like variables : quasi-steady Artist’s view of CVs (Credit: K. Smale) Porb – Mv relation Novalike Z Cam SU UMa SS Cyg Dwarf nova (Warner 1987) Unification model of CVs : 1. Thermal instability of accretion disk High temperature “Outburst” Low temperature “Quiescence” Unification model of CVs : 2. Tidal instability model Psuperhump ~ 1.03 Porbital (SPH simulation by Murray) Porb – Mv relation Novalike Tidal instability Z Cam Thermal instability SU UMa SS Cyg Dwarf nova (Osaki 1996) 激変星とは • 定義:白色矮星と通常の星からなる半分離型の近接連星系 矮新星とは • 定義:激変星の一種で、降着円盤が増光するタイプのアウト バーストを繰り返す 激変星の想像図 X線連星の想像図 似てる 降着円盤研究の「天然の実験場」 矮新星の基本的な問題 • なぜアウトバーストするのか? – 円盤不安定性モデルの一応の成功 – 伴星からの質量降着不安定性モデル • XBの場合は? • 粘性の正体と性質 – MRI(磁気回転不安定性)が最有力 – 矮新星の静穏時を説明するには低すぎる? – そもそも「粘性」はあるのか? 矮新星のトピックス その1 ~再増光現象~ 矮新星 WZ Sgeの光度曲線 矮新星 AL Comの光度曲線 Nogami et al. 1997 円盤外縁での粘性の挙動に関係? (Osaki et al., 2001) 矮新星のトピックス その2 ~スーパーハンプの周期変化~ • スーパーハンプ周期は円盤半径と円盤温度に依存 KS UmaのスーパーハンプのO-C図 Olech et al. 2003 ER UmaのスーパーハンプのO-C図 Kato et al. 2001 円盤不安定モデルだけでは理解しがたい 降着円盤最外縁の重要性 • 円盤外縁は – スーパーハンプ光源 – アウトバースト&再増光が始まる場所 – 伴星からの潮汐効果を最も強く受ける所 → 様々な活動、時間変動が期待 降着円盤は外側ほど低温 → 近赤外の観測が有効 (近赤外線観測は突発現象ではあまりこれまで例がな い) 「かなた」での矮新星観測 その1 ~放射領域の特定~ 矮新星 IY Umaの食の光度曲線 矮新星 OY Car の食の光度曲線 Naylor et al. 1987 近赤外線の放射領域は可視のものより外側 「かなた」での矮新星観測 その2 ~早期スーパーハンプ~ 矮新星 KS Umaのスーパー アウトバースト初日のスーパーハンプ 矮新星 J0557のスーパー アウトバースト早期のスーパーハンプ • スーパーハンプは高温(~8000Kくらい?) 「かなた」での矮新星観測 その3 ~再増光中のスーパーハンプ~ 矮新星 J1021の光度曲線 再増光中のスーパーハンプ • スーパーハンプ光源が低温度領域に移動した? 矮新星観測の今後 • 近赤外線でこれほど活動的なのは予想外 – 高温円盤は8000K以上と思われていた – 標準円盤ではないのかもしれない – これまで見えていなかった角運動量の貯蔵庫? • 早期から密な観測 – WZ Sge型:再増光中の挙動を系統的に – ER Uma型:位相シフト前後の観測 – SU Uma型:「近赤外線スーパーハンプ」の典型 的な描像を構築 矮新星以外の激変星観測例 • 中間ポーラー GK Per • 古典新星 V2362 Cyg 高速カメラ&TRISPECの観測例 ~ 矮新星 GK Perの場合 ~ GK Perの光度曲線 短時間変動とPDS SEDーPDSの時間進化を追うことができる 古典新星の再増光現象 • 極大数ヶ月後に 再増光 • V1493 Aql と V2362 Cyg • もう一回水素に 火がついた?? 「かなた」によるV2362 Cygの観測 まとめ • XB – GRS 1915+105は来シーズン定期モニター(1 hour/night)。 →論文化 (PI?) – V4641 Sgrは毎晩モニター (1点/night)。静穏時の可視ー近赤外SEDから伴 星の正体を探る →論文化? (PI?) – LMXBのアウトバースト時は可視近赤外同時&偏光&高速測光→数年に一 回 – HMXBの高速測光サーベイ??? • Blazar – OJ287の可視近赤外同時偏光観測を継続 →共同研究? – 明るいブレーザーの偏光分光 →修論(PI:北川@Z研) – GLAST前にブレーザーの系統的な観測(短時間&長時間変動) →カタログ 作成? • GRB – GRB061121 →07春年会&論文化 (PI:植村 ) – 数ヶ月に1つ有意に検出&年に一回連続観測、という感じ? まとめ • CV – Dwarf nova: J0557は特異な進化経路上の天体か →07秋年会&論文化 (PI:植村) J1021、KS Uma、IY Umaの可視近赤外線同時観測 →07春年会&論文化 (PI:植村) FO Andの「活動的な」静穏時と潮汐不安定性について →07春年会&論文化 (PI:新井) EG Aqrの12年ぶりのアウトバースト →論文化(PI:今田@京大) – Nova: V2362 Cygの再増光 →07秋年会&レターで論文化(PI:新井) – IP: GK Perのアウトバースト中の短時間変動とSEDの変化 →07秋年会&論文化(PI:植村) – Nova-likes: フリッカリングの系統的な研究 →07春年会&修論(PI:杉保@京大) • SN – SN2006jc:特異なスペクトル。プレカーサーあり? →論文化(PI:川端) • その他 – GSC 3656-1328 : 特異変光天体。系内のマイクロレンジングか? →論文化(PI:川端)
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