1 民間研究費獲得の実際 ー作業療法ジャーナル研究助成の場合ー 日本保健医療社会学会定例研究会 2011年3月19日(土) 15:10-15:50 於:龍谷大学大阪梅田キャンパス研修室 田島明子(吉備国際大学保健科学部作業療法学科/ 立命館大学大学院先端総合学術研究科院生) 2011/3/19 2 2011/3/19 「作業療法ジャーナル研究助成」について • 三輪書店が出版している「作業療法ジャーナ ル」という雑誌内で行われている企画 ・月刊誌 ・作業療法に関わる特集を組み、 主に依頼原稿で成り立っている ・「作業療法ジャーナル研究助 成」はこの雑誌のなかで募集が 行われる ・作業療法士はみんな読んでい る。 3 三輪書店について 2011/3/19 ・事業内容:医学・看護およびその周辺領域における書籍・雑誌・ビデオ・DVDの出版 ・設立:1991年9月19日 ・資本金:3000万円 ・従業員数:18名 ・社長:青山智 【雑誌】 ・脊椎脊髄ジャーナル ・地域リハビリテーション ・脳神経外科ジャーナル ・心身医学 ・ターミナルケア 【書籍】 ・「在宅医療チームスタッフのための必携薬剤手帳!」 ・「研修病院選びかた御法度」 ・「最速!聖路加診断術」 ・「楽楽研修術―即戦・臨床力を高める名言・迷言・記憶術」 ・「知ってるつもりの内科レジデントの常識非常識 第2版」 (HPからの情報、平成23年3月9日現在) 4 募集要項 • • • • • • • • • 2011/3/19 対象研究:作業療法の発展に寄与する研究 助成額:賞金30万円 給付の時期:年1回、4、5月頃(募集締め切り1月末) 申請者の資格:作業療法士の国家資格所有者、代表研究者が 有資格者なら、他職種との協同研究も可 研究の期間:3年を上限 助成の要件:科学研究費補助等公的研究助成および他民間団 体・企業からの研究助成を受けていない 助成対象者の義務:最終の研究結果を「作業療法ジャーナ ル」で報告すること(ただし、原著論文としての投稿先は規 制しない。その際、当研究助成を受けた旨は論文に明記する こと) 選考方法:「作業療法ジャーナル編集委員会」が審査を行い、 助成対象として1研究を選出 応募方法:申請書をWebからダウンロードして、メールで申 請 5 2011/3/19 編集委員の構成(2008年当時) • • • • • • • • 江藤文夫(医師) 香山明美(OT):現日本作業療法士協会常務理事 澤 俊二(OT) 長尾哲男(OT):現日本作業療法士協会監事 中村春基(OT):現日本作業療法士協会会長 野中 猛(医師) 宮崎明美(OT) 山本伸一(OT) :現日本作業療法士協会常務理事 6 2011/3/19 申請書に記入する内容(資料1) 1.申請者について 氏名、年齢、略歴(国家資格取得後の職歴)、所属 機関、役職、所属機関所在地、自宅住所、連絡先 2.共同研究者について 氏名・所属機関 3.研究の大要(研究テーマ、目的等、400字以 内) 4.研究計画(800字以内) 達成目標、研究の流れ、所要時間、倫理的な配慮 5.研究の準備(研究の進捗状況、準備状況、40 0字以内) 6.国内外における類似研究の有無 7 選考基準 2011/3/19 • 「作業療法ジャーナル」編集委員が審査員 ①オリジナリティ ②臨床的にみて意義があるかどうか ---------- ③若い人の方が有利(とはいえ、研究をまとめる 力は審査対象) ④その他 8 これまでの受賞者 2011/3/19 第1回 (2006 年) 高島千敬 大阪大学医学部付属病院 リハビリテーション部 パーキンソン病におけるADL /IADL トレーニングの有 効性に関する研究 第2回 (2007 年) 田島明子 東京都板橋ナーシング ホーム 介護老人保健施設入所認知症 高齢者のQOLに関する文献 的考察 第3回 (2008 年) 梶直美 株式会社アドバンテッジ キャリア部コーディネー タ 就労支援作業療法モデルの開 発-就労準備訓練と作業分析 第4回 (2009 年) 近藤智 目白大学保健医療学部 復職準備期にあるうつ病休職 者のプログラム開発およびプ ログラム介入による有効性の 検討 第5回 (2010 年) 大寺亜由美 北里大学東病院リハビリ テーション部 筋委縮性側索硬化症患者にお ける福祉用具導入の実態調査 及び介入効果の検討 9 2011/3/19 「メリットはない」 →投資と同じでリターンがあるか考えると「ない」 では一体なぜ、このような研究助成を始めたか? 10 2011/3/19 いきさつ① 1967年創刊-1988まで 『理学療法と作業療法』(医学書院) 『作業療法ジャーナル』 (三輪書店) 『理学療法ジャーナル』 (医学書院) 11 2011/3/19 いきさつ② 1967年創刊-1988年まで 『理学療法と作業療法』(医学書院) PTとOTジャーナル賞 『作業療法ジャーナル』 (三輪書店) OTジャーナル賞(~2005年) OTジャーナル研究助成(2006年~) 『理学療法ジャーナル』 (医学書院) PTジャーナル賞 12 2011/3/19 『OTジャーナル賞』から『OTジャーナル研究助成』へ --時代的影響 1.大学院教育の開始 →1996年に広島大学にて開始したのが最初 2.2000年代中半頃まで、科研費に「作業療法学」がなかった (系)総合新領域系-(分野)総合領域分野-(分科)人間医工学 -(細目)リハビリテーション科学・福祉工学 〔リハビリテーション科学〕 (A)リハビリテーション医学、(B)障害学、(C)理学療法学 (D)作業療法学、(E)言語聴覚療法学、(F)医療社会福祉学 (G)人工感覚器、(H)老年学、(J)臨床心理療法学 〔福祉工学〕 (K)健康・福祉工学、(L)生活支援技術、(M)介護予防・支援技術 (N)社 13 募集要項 • • • • • • • • • 2011/3/19 対象研究:作業療法の発展に寄与する研究 助成額:賞金30万円 給付の時期:年1回、4、5月頃(募集締め切り1月末) 申請者の資格:作業療法士の国家資格所有者、代表研究者が 有資格者なら、他職種との協同研究も可 研究の期間:3年を上限 助成の要件:科学研究費補助等公的研究助成および他民間団 体・企業からの研究助成を受けていない 助成対象者の義務:最終の研究結果を「作業療法ジャーナル」で 報告すること(ただし、原著論文としての投稿先は規制しない。その 際、当研究助成を受けた旨は論文に明記すること) 選考方法:「作業療法ジャーナル編集委員会」が審査を行い、 助成対象として1研究を選出 応募方法:申請書をWebからダウンロードして、メールで申 請 14 これまでの応募数 • 6~8件/1回応募につき 2011/3/19 15 受賞者の感想 2011/3/19 • 受賞者4名にメールで質問紙を送付し、メールにて回 答いただいた。 • 質問項目 1. 応募理由 2. 30万円の使途 3. 受賞したことのメリット、デメリット 4. 原著論文の投稿先に規制がないことについて 5. 年1度の経過報告について 6. 研究助成を受け研究を進めることの意義・大変さ等 について感じたこと 梶 直美氏(第3回) 大寺亜由美氏(第5回) 16 2011/3/19 応募理由 企業における障害者雇用に、OT として関われることは何かを明確 にしたいが、コストが必要だった。 30万円の 使途 目標としたような具体的な研究は、 文献費20%、物品購入費(研究用のコ 会社の方針が変更となり、新たに ミュニケーション関連用具)30%、学 できなかった。 会出張費50% (使用予定内容含) メリット/ デメリット 特にない 海外学会へ自己負担少なく参加が出 来たこと 投稿先に規 制がない 未記入 作業療法ジャーナルの助成金である ので、作業療法ジャーナルに投稿す る必要性はある 経過報告 未記入 研究の質向上のために、年一度の経 過報告よりも、作業療法ジャーナル に論文として投稿を規定する方が良 い 意義・大変 さ 未記入 研究を進めるにあたり、作業療法 ジャーナルの読者(作業療法士、作業 療法学生)が有効に活用出来るような 結果をまとめる必要性を強く感じな がら研究を行うことが出来た 大学院(修士課程)の研究を進めるに あたり,研究資金を獲得したかった 17 田島の場合 2011/3/19 応募理由 臨床に働きながら研究を進めてきたので、これま で取材にいくにもお金がかかっていたので、とに かく研究のための資金がほしかった 30万円の使途 研究テーマが文献考察だったので、文献の取り寄 せ、書籍購入、文献のある図書館等への移動旅費 等で使用 メリット/デメ リット 次に説明 投稿先に規制がな い 作業療法ジャーナルへの投稿が望ましいとは思っ ていたが、助成を受けたことを明記して、大学院 紀要、大学紀要に投稿した。 経過報告 これだけも作業療法士に自分の研究内容を知って もらう機会になるので、有効に活用しようと思い、 投稿先の出典を書き入れたりした。 意義・大変さ 最初の受賞報告で顔写真付きで大きく取り上げて いただいたので、それがプレッシャーになって、 やらなければと強く思った。 18 最大のメリット 2011/3/19 立命館大学大学院先端総合学術研究科 における博士予備論文(修士論文)を 『地域リハビリテーション』で連載 (13回;2007年7月~2008年7月) 単行本化 19 まとめ 2011/3/19 • 出版社側 作業療法という職域とコミットし、その価値や 意義を見出す出版社が、「出版社の見識」とし て専門性の発展のために行ってきた取り組み • 受賞者側 研究の進捗状況もそれぞれであり、受け止め方 もそれぞれ。研究意欲をかきたててくれる良い 機会になっていることは共通。
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