2010年の夏期の高温による 水田土壌窒素発現への影響 ○横山克至・齋藤寛*・中川文彦**・熊谷勝巳 (山形農総研セ・*同水田農試・**山形県村山総合支庁) 背景および目的 2010年は水稲生育期間が記録的な異常高温 となり、特に玄米品質や食味特性への影響 が大きかった。 穂肥の時期である7月に葉色が濃くなり、施 肥対応が難しかった。 異常高温年次における水田の土壌窒素発現 の特徴を明らかにし、対応技術構築の資とす る。 2010年の水稲作柄の概要 乾土効果はやや小さい 茎数は少なく、穂数は平年並~少、 1穂籾数は平年並~やや多 ㎡当籾数は平年並~やや少 作況指数:100(山形県) 高温登熟となり品質は不良 (県1等米比率74.7%:2011年1月末現在) 粗玄米中タンパク質含有率は高 (県作況圃はえぬき7.6%:過去13年間で 3番目に高い) 2010年の気温 地点 (観測期間) 山形 (1889.7~) 酒田 (1937.1~) 新庄 (1958.6~) 2010年の平均気温(℃)および観測史上順位 6 月 7 月 8 月 6~8月 21.7 (4位) 20.8 (6位) 20.6 (2位) 25.5 (8位) 25.5 (2位) 24.7 (2位) 27.7 (1位) 27.9 (1位) 26.7 (1位) 25.0 (1位) 24.8 (1位) 24.0 (1位) 方法(稲体窒素吸収量の年次間比較) 調査場所:山形県農業総合研究センター (灰色低地土、山形市) 調査期間:1994~2010年 供試品種:はえぬき 耕種概要:【標準区】基肥60kgN ha-1 +幼形期追肥20kgN ha-1 【N-0区】N無施用 調査項目:稲体窒素吸収量 稲体風乾物重(g/㎡) 結 果 1,500 2010 2009 平年 1,000 500 0 6 / 2 0 6 / 3 0 7 / 1 0 7 / 2 0 穂揃期成熟期 図1 稲体風乾物重の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 結 果 稲体窒素吸収量(g/㎡) 14 2010 2009 平年 12 10 8 6 4 2 0 6/20 6/30 7/10 7 / 2 0 穂揃期 成熟期 図2 稲体窒素吸収量の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 結 果 稲体窒素吸収量(g/㎡) 16 2010 1999 1994 14 12 10 8 6 4 2 0 6/20 6/30 7/10 7 / 2 0 穂揃期 成熟期 図3 高温年次の稲体窒素吸収量の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 稲体風乾物重(g/㎡) 結 果 1,500 2010 2009 平年 1,000 500 0 6 / 2 0 6 / 3 0 7 / 1 0 7 / 2 0 穂揃期成熟期 図4 稲体風乾物重の推移 (はえぬきN-0区、山形農総研セ) 結 果 稲体窒素吸収量(g/㎡) 7 2010 2009 平年 6 5 4 3 2 1 0 6/20 6/30 7/10 7 / 2 0 穂揃期 成熟期 図5 稲体窒素吸収量の推移 (はえぬきN-0区、山形農総研セ) 方法(土壌窒素発現量の推定) 上野ら(1990)による「速度論的解析法による 土壌窒素発現予測システム」により、土壌窒 素発現量を推定 対象地点:山形県内5地点 (山形、鶴岡、酒田、新庄、南陽) 対象期間:山形:2008~2010年 その他の地点:2010年 方法(土壌窒素発現量の推定) 表1 土壌窒素発現推定地点の土壌型とCEC 地点名 土壌型 CEC(cmol kg-1) 山形 細粒灰色低地土 16.5 鶴岡 中粗粒強グライ土 17.7 酒田 細粒強グライ土 33.5 新庄 表層腐植質多湿 黒ボク土 32.9 南陽 細粒強グライ土 22.3 2.5 土壌窒素発現量(mg/100g) 土壌窒素発現量(mg/100g) 結 果 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 5下 6中 7上 7下 8中 9上 9下 乾土効果画分 4.0 2010 2009 2008 平年 3.0 2.0 1.0 0.0 5下 6中 7上 7下 8中 地温上昇効果画分 図6 土壌窒素発現量の推定値(地点:山形) 9上 9下 結 果 山形 鶴岡 酒田 新庄 4.0 南陽 土壌窒素発現量(mg/100g) 土壌窒素発現量(mg/100g) 5.0 3.0 2.0 1.0 14.0 山形 鶴岡 12.0 新庄 南陽 酒田 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 5下 6中 7上 7下 8中 乾土効果画分 9上 9下 0.0 5下 6中 7上 7下 8中 9上 地温上昇効果画分 図7 地点別の土壌窒素発現量の推定値(2010年) 9下 結 果 土壌窒素発現量の平年差 (mgN/100g) 1.5 山形 鶴岡 酒田 新庄 南陽 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5 6月中旬 まで 6月下旬 ~7月中旬 7月下旬 以降 合計 図8 地点別・時期別の土壌窒素発現量 推定値(総量)の平年差(2010年) まとめ 2010年の稲体窒素吸収量は7月10日から 20日にかけて大幅な増加がみられた。 速度論的解析による地温上昇効果画分の の土壌窒素発現量を推定したところ、2010 年はCECが高い地点での発現量の増加が 大きいことが推察された。 高温年次は7月中下旬の地温上昇効果を ふまえた施肥対応が必要であることが考 えられた。
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