401(k)プランの実態

「 ILO/ISSA原則から見た
日本の21世紀公私年金政策の問題点:
日本の常識は、世界の非常識!」
講師: 渡部記安
「第10回国際年金セミナー:21世紀の公私年金政策指針」
2005.11.22
主催:ISSA(社会保障担当官庁国際研究機構)準会員
「国際年金比較研究所」
(理事長:渡部記安 立正大学大学院教授)
活動目標:世界における公私年金政策の総合的比較研究と、
関連学術情報の日本社会への迅速かつ正確な提供
1.象徴的な5つの基本的問題点
の提起
次の5つの基本的問題点の提起:
深刻な超少子・超高齢の21世紀日本社会
に対する年金政策として、初歩的な課題ば
かり。なぜ、このような「初歩的問題が多
数発生」し、しかも「未解決のまま放置」
されているのか。
国際比較研究の観点からは、
わが国公私年金政策の異常性の象徴!
国際化・情報化時代にもかかわらず、国
際動向に全く鈍感なわが国の公私年金政策。
2.象徴的問題点: A
5年毎の年金制度改革において、重要な前
提となる「合計特殊出生率の推計」が、毎
回毎回大きく狂うのは、なぜか?
無責任かつ安易な年金政策と推計作業の
実態。
経済予測などとは異なり、他の先進諸国
における「合計特殊出生率の推計」の誤差
は非常に小さい。
5
3.象徴的問題点: B
「5年分以上の巨額年金積立金を保有」という、「賦課主
義財政の重要性を忘却した世界的に異常な年金政策」。
金融市場と行政事務費で貴重な国民の巨額年金積立金を
浪費しながら、国民には更なる保険料増額を要求する!
正式の国際会議においてドイツ代表は、
「日本の年金政策は、教科書的な初歩的失敗を犯している。
日本政府は重要な賦課主義財政を徹底せず、5年分以上の
巨額年金積立金を保有し、金融市場で安易な投資を行ない
巨額の投資運用損失を計上し、国民負担をさらに増大させ
ている。われわれは賦課主義財政を徹底しており、数ヶ月
分の年金積立金の保有で十分対処可能」と厳しく批判。
米国:賦課主義財政を徹底し、年金資金は年金給付支給の
みに限定し、金融市場運用と行政事務費への使用を厳禁。
余裕資金発生すれば、連邦債にのみ投資可能。
日本:年金官僚の金融業界等との癒着と天下りの増大。
■ 厚生年金及び国民年金の財政見通し
厚生年金の財政見通し -平成16年財政再計算最終保険料率 18.3%
国庫負担:平成21(2009)年度2分の1完成
平成17(2005)~20(2008)年度は3分の1に加え、1000分の11を国庫負担
(平成16(2004)年度は3分の1に加え、272億円を国庫負担)
調整期間
(終了年度) 2023年度
保険料率
所得代替率(終了年度時点) 50.2%
収入合計
支出合計
年度
保険料収入
平成(西暦)
収支差引残
年度末積立金
基礎年金
拠出金
運用収入
年度末積
立金
積立度合
(16年度価
格)
%
兆円
兆円
兆円
兆円
兆円
兆円
兆円
兆円
17(2005)
14.288
28.3
20.8
3
31.9
11.1
-3.6
163.9
163.9
5.2
18(2006)
14.642
29.8
21.6
3.5
32.9
11.3
-3.1
160.8
161.1
5
19(2007)
14.996
31.2
22.6
4
33.8
11.5
-2.5
158.3
157.8
4.8
20(2008)
15.35
33
23.5
4.7
34.9
12
-1.9
156.4
153.1
4.5
21(2009)
15.704
36.1
24.5
4.9
36.5
12.6
-0.4
156
149.2
4.3
22(2010)
16.058
37.6
25.5
4.9
37.5
13
0
156
145.3
4.2
27(2015)
17.828
44
30.8
5.1
41.4
15.1
2.6
162.5
137.3
3.9
32(2020)
18.3
49.2
34.8
5.8
43.3
16.5
5.9
186.3
141.8
4.2
37(2025)
18.3
53.7
37.7
6.9
45.5
17.7
8.2
223.1
153.1
4.7
42(2030)
18.3
58.2
40
8.3
49.5
19.4
8.7
266.6
164.9
5.2
52(2040)
18.3
66.2
43.1
10.3
62.9
25.4
3.3
330.1
165.8
5.2
62(2050)
18.3
73.5
47.2
10.6
74.8
31.4
-1.3
335
136.7
4.5
72(2060)
18.3
80.6
52.8
9.9
82.9
35.5
-2.4
314.4
104.2
3.8
82(2070)
18.3
87
58.4
9
90.8
39.3
-3.7
284.4
76.6
3.2
92(2080)
18.3
94.2
65
7.6
99.6
43.4
-5.4
237.9
52.1
2.4
102(2090)
18.3
103.6
73.9
5.7
109.8
48
-6.2
178.4
31.7
1.7
112(2100)
18.3
115.1
84.8
3.7
121.5
53.3
-6.4
115.1
16.6
1
5
4.象徴的問題点: C
「被用者年金制度一元化」は、公的年金制
度への国民的信頼性確保の基盤。
被用者年金一元化に無関心で、「官民格差
増大を放置」したわが国の年金政策。
年金制度設計における「公平性・平等性・
透明性・効率性の重要性」に全く無関心。
図表 年金制度の体系(平成14年度末)
5
5.象徴的問題点: D
増大する保険料負担と、
削減される年金給付額。
時代遅れの「標準世帯」概念を継続使用。
このため、「所得代替率」は急速に低下し、
わが国の年金制度は実質的に「ILO102号条
約違反」の危機的状態に。
■平成16年年金制度改正における給付と負担の見直し
5
■厚生年金及び国民年金の保険料(率)の引上げ
【保険料(率)の引上げ幅】
厚生年金 : 平成16年10月より毎年0.354%(本人0.177%、事業主0.177%)引上げ
国民年金 : 平成17年 4月より毎年280円(平成16年度価格)引上げ
5
■保険料水準固定方式によるマクロ経済スライド
-厚生年金(夫婦2人の基礎年金含む)-
5
■基礎年金国庫負担の見通し-平成16年財政再計算-
5
■年金積立金の将来見通し
年金積立金(16年度価格)の将来見通し
-平成16年財政再計算(最終保険料率18.3%)-
年金改正案では、今後、おおむね100年間にわたり財政が均衡するまで給付水準を自動調整する
こととしており、 おおむね100年後(2100年度)に、支払準備金程度の保有(給付費の1年分程度)
となるように積立金水準の目標を設定することとなる。
5
■所得代替率の見通 し
年金制度改正に基づく所得代替率と完全賦課方式の場合の所得代替率
-平成16年財政再計算-
5
6. 象徴的問題点: E
「年金所管大臣さえ、国民年金に未加入」とは、「年金制度
に関する国民への情報提供欠如」の象徴的事件。
A.日本の反応:政治家不信の象徴として、辞任や国会議員互
助年金制度廃止など政治家批判のみに終始し、年金政策の
世界的劣悪さへの批判を忘却。
マスコミのみならず、年金学者まで感情論的反応に終始し、
「年金官僚への責任追及論は、皆無」の世界的異常事態。
B.世界の反応:「ペンション・ガバナンス(年金制度におけ
る民主性・公平性・効率性・透明性)の未確立」の象徴的
事件として深刻に認識。
「重要なペンション・ガバナンス確立に長年無関心だった
年金政策や官僚の責任は、どのように追及されたのか」と、
筆者に鋭く質問。
図表3主要国の中央議会議員年金制度比較表(2004年)
財政方式
米国
英国
ドイツ
フランス
日本
賦課主義
積立主義
全額国庫負担
賦課主義
賦課主義
(実質賦課主義)
財源
議員拠出
1.3%(FERS)
10.0%
無
24.0%
国庫
15.8%(実質9割)
受給資格
在職5年62歳
100%
65歳
在職8年65歳
下院7.85%
歳費月額10%
上院6.0%
期末手当0.5%
不足財源補填
不足財源補填
60歳
在職10年65歳
3.0%
在籍10年 5/150
在職20年50歳
在職25年以上
給付発生率
在籍20年1.7%
2.5%
2.25%
21年以上1.0%
$158,100
11年以上 1/150
£57,485
€ 84,108
€80,829
1,723万円
1,132万円
1,144万円
1,099万円
($26,225)
(£14,371)
(€ 25,232)
(€ 18,187)
年金給付額
286万円
283万円
343万円
247万円
412万円
所得代替率
17%
25%
30%
22%
20%
議員年収
5
(在籍10年)
2,077万円
在籍12年答申案288円万
14%
長期債務/GDP
(2003年)
54.2%
39.1%
34.4%
33.7%
109.4%
(2004年度見込み)
(出典:各国公式資料・筆者の各国議会幹部等とのヒヤリング等から、筆者作成。2005年4月1日為替レート)。$=ドル、£=ポンド、ε=ユーロ
7. 象徴的問題点の総括
複雑で難解な問題であるならばともかく、このような初歩的で基本的
な課題に対して、なぜわが国は全く不十分な対応しか実施できないの
か?
深刻な超少子・超高齢の21世紀日本社会に対する年金政策としては、
あまりにも初歩的な政策的ミスが多すぎる。
年金政策当局の政策能力の低さと
倫理観の欠如!
脚
下
照
顧
ILO/ISSAの基本原則に帰れ!
8. ILO原則:年金政策に奇策なし:A
1. C.ギリオン元社会保障局長が、下記のように適確に強調
2.ILOの重視原則:年金制度の長期的安定性と国民的信頼性確保の大前提。
これを忘却した年金政策は、無意味だ!
わが国の設計能力と運営管理能力の低さの実態。
(A)人口構成のピラミッド化促進が急務:
(a) 合計特殊出生率の向上策
(b) 女性・高齢者の労働力率の向上策
(B)社会的連帯性機能・所得再配分機能を重視
した年金政策の確立が急務。
(C)「ペンション・ガバナンンス(年金制度における
民主性・効率性・透明性)の確立」が急務。
「年金制度改革論」だけではなく、
「制度運営管理論の重要性を再認識」せよ
3.日本の常識は、世界の非常識!
脚下照顧!
初歩的で基本的な年金政策を忘却した日本。「ILO原則」に帰れ!
9.ILO原則:年金政策に奇策なし:B
(A) 人口構成のピラミッド化促進が急務:これを忘却したわが国年金政策の愚かさ。
(a) 合計特殊出生率の向上策が急務
(b) 女性・高齢者の労働力率の向上策が急務。
女性が、教育を受け、就労し、結婚し、育児のしやすい、
「男女行動参画社会の早期構築・整備」:
とくに、就労条件、出産育児環境の整備が、税制も含め急務
元気な高齢者の存在:生きがい、収入、健康維持のチャンスを提供
就労意欲を阻害する年金政策の愚
移民導入による文化的・社会的・政治的軋轢も、回避可能
10.ILO原則:年金政策に奇策なし:C
(B) 社会的連帯性機能と所得再配分機能を重視した年金政策の確立が急務。
(a) 国民年金(基礎年金):
「富者も貧者も同一負担・同一給付」という、
「社会的連帯性機能」も「所得再配分機能」もほとんど機能しない
世界的に異常な年金制度!
これが、未加入・未納の主因!
(b) 被用者年金一元化の未実施:
20年前の閣議決定も無視し、官民格差増大を放任。
(c)
年金制度設計における公平性・平等性・透明性・効率性の欠如:
年金政策能力の低さ
11.ILO原則:年金政策に奇策なし:D
(C)「ペンション・ガバナンンス(年金制度の運営管理における民主性・平等
性・効率性・透明性)の確立」が急務:これを欠如したわが国の年金政策の低
劣さ!
ILO:「年金制度改革論」も重要だが、
「ペンション・ガバナンスの確立は更に重要」
と、「制度運営管理論の重要性」を大変強調。
わが国公的年金制度の運営管理における民主性・
平等性・効率性・透明性の欠如の主因
「ペンション・ガバナンスの未確立」
これこそが、国民への正確かつ迅速な情報提供の不備の主因
国民年金の未加入・未納の主因
社会保険庁の機能不全の主因
しかし、 「ペンション・ガバナンス確立の重要性」を忘却した
瑣末な改革案ばかり。
12.公的年金政策:ILOの基本方針
1.引退後所得保障制度:
公的年金制度、職域年金制度、個人貯畜制度の3本柱制度
で、引退後所得保障制度を総合的に構築
2. 公的年金制度:「社会的連帯性機能」と
「所得再分配機能」が、必要不可欠。
公的年金制度とは「社会保険制度」であり、
「貯畜手段」ではない。貯畜手段は、他に多数あり。
3.公的年金制度の2大機能
A. 「貧困防止の基礎年金制度」
B.「国家しか提供不可能」な「低リスクで
持続可能な所得比例年金制度」
13.公的年金制度の2大機能(A)
1.貧困防止型年金の機能:「資力調査型」基礎年金の導入と
「所得捕捉率の改善」が、急務。
基礎年金誕生の真実:年金政策の拙劣さと「ペンション・ガバナンス
確立への無関心」の証明
国民年金の実態:未加入・未納急増で、実質的に「皆年金制度の崩壊」
2.財 源 方 式:保険料方式ではなく、
社会的連帯性・所得再分配の機能を重視した
「租税負担方式」の早期導入が急務
「保険料」か「租税」か?:国民負担に変わりなし
「朝三暮四の愚」を止めよ!
米:保険料ではなく、社会保障年金「税」と呼ぶ。
3.基礎年金番号の本質的不備:財務省と協調し納税者番号制度導入へ。
他の国が早期に導入した制度が、なぜわが国で実現不可能なのか。
4.年金給付額:最低生活費用を社会的連帯性・所得再分配機能から決定
14.公的年金制度の2大機能(B)
1. 低リスク・持続可能な「所得比例型」年金制度
財政方式:社会保険制度で「賦課主義」の徹底!
ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)排除
ILO: 官僚に年金資金運用は不可能と喝破
市場運用と行政事務費による年金資金浪費と官僚利権化の徹底排除
国際的に検討しても、異常な日本制度。しかし、無関心な年金学者
2.公的年金制度とは、貯畜制度ではない。
国家しか提供不可能な低リスク・持続可能な引退後所得保障制度
社会保険年金制度の原則を厳守せよ。貯蓄制度は、他に多数存在。
3.確定拠出型:米の401(k)プランやスエーデンのPPの不安定性な実態
を直視せよ。
年金政策とは、金融機関への利益提供政策なのか、それとも
国民への引退後所得保障提供政策なのか?
15.公的年金資金 - 再考
1. わが国の公的年金資金とは、官僚利権の源泉に堕落!
賦課主義財政の徹底に基づき、ポリティカル・リスク(含、
官僚リスク)を厳格に排除せよ。
「市場運用と行政事務費による年金資金浪費と官僚利権化
に基づく国民負担の不合理な増大を徹底的に排除」せよ。
2.官僚の金融業界・不動産業界などへの天下り禁止の厳格化
3.国民は、年金制度の設計だけではなく、年金資金の使途に
対しても、強い関心を持て!
すなわち、
「ペンション・ガバナンス(年金制度の運営管理における民
主性・公平性・効率性・透明性)の確立」と
「ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)の排除」が
最大の急務
16.職域年金制度の重要性
1. 引退後所得保障制度における職域年金制度・個人年金制度の重要性
2.職域年金制度:
受給権保護、年金会計、年金税制、金融市場規制、年金資産運用規制などの制度的環境整備が急務
国際比較的には、非常に遅れているのが実態。
確定給付型プランの重要性:
年金給付支払保障制度の整備充実:モラル・リスクと社会的連帯性の調整
「業界ベースの職域年金制度の導入」も検討
「強制加入方式の職域年金制度の導入」も検討
3.年金理論の重要性:
欲で生まれ、欲に滅する「代行制」の実態
4.確定拠出型プラン:「隣の芝生は本当に青いのか!」
米の401(k)プランやスエーデンのPPの不安定な実態を直視せよ。
D.ウレイ米401(k)プラン協会理事長:401(k)プランとは、貯蓄率の低い米国市民を対象に、金融市
場が透明で、受託金融機関の収益力が高く、受給権保護・会計・税制・投資教育体制が充実している
ことが導入の前提。日本はすべて該当しないのに、なぜ導入するのか?
わが国の確定拠出型法制:加入者の引退後所得保障充実よりも、受託金融機関への安定収益源の提供を
優先した愚劣さ。
職域年金制度普及率の急減と被用者引退後所得保障制度の空洞化が急進
17.ポリティカル・リスク対策
1.社会保険制度財政: ILO/ISSAが唱導する「賦課主義財政」へ回帰せよ!
他の先進諸国:非効率不透明な資産運用のニガイ歴史から、「年金資金の年金給付支給以
外への使用を厳禁」し、数ヶ月分のみ保有。
米も「余剰資金が発生すれば連邦債への投資のみ許容」し、「金融市場での運用を厳禁」
2.日本はISSA会議でも、厳しく批判された。
他国は数ヶ月分のみだが、日本は5年分以上の年金資金を保有し、貴重な年金資金を
「ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)」に晒し、「非効率な金融市場運用と不透明
な行政事務費への使用」による不合理な国民負担増大と政治家・官僚の利権化を助長。
他の先進諸国には見られない年金官僚の強い利権意識と倫理観の欠如:
国際比較研究上からも全く異常な現象
3.「年金資金の使途は、年金給付支給のみ限定」し、「非効率な金融市場運用と不透明な行
政事務費への使用を厳禁」し、不合理な国民負担増大の防止が急務。
年金官僚による金融業界・不動産業界への利権化と天下りの厳禁を、緊急に法制化すべし。
4.ILO/ISSA:「ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)の排除」を重視し、
「官僚に効率的資金運用は不可能」と、明確に喝破。
「ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)排除」こそが、「国民の信頼回復への急務」
18.ペンション・ガバナンンス
の確立が急務:
A 総論
1.
ILO/ISSAが重視する「ペンション・ガバナンンス(年金制度の運営管理に
おける民主性・平等性・透明性・効率性)の確立」こそが緊急課題であり、
国民の公的年金制度に対する信頼性回復の重要政策
ペンション・ガバナンンス確立なき公的年金政策は、年金資金の浪費・国
民負担増の源泉であり、国民の年金不信の根源となっている。
残念ながら、わが国の年金学者は、この重要性に全く無関心。
19.ペンション・ガバナンンス
の確立が急務:
B 社会保険庁の解体的改革
1.社会保険庁の解体的改革:社会保障制度の総合的運営管理機構へ!
資力調査型国民年金制度や一元化された被用者年金制度のみならず、医療保険
制度や介護保険制度も含め「社会保障制度全体を総合的に運営管理する機関」
に抜本改革せよ。
国民年金未加入・未納者も国民健康保険には加入・納付。
社会保障制度の総合的運営管理機構の構築が急務
民主的で効率的な社会保障制度の運営管理が可能となり、国民負担軽減も可能。
経営会議に労使・学者の代表を!
2.保険料の徴収:税務当局による税金と連動した徴収体制に抜本改革が急務。
米国・スエーデンなども同様。
20.ペンション・ガバナンンス
の確立が急務:
B 独立エージェンシー制度導入
1.社会保障制度に関する「政策的業務」と「客観的・調査的業務」を明確に分類し、後者は
人事的・財政的に政策的業務所管機関からの独立性を確保せよ!
英エージェンシー制:年金政策官庁から、「年金数理庁」(C.Daykin長官)を人事的財
政的に独立させ、業務の客観性と中立性を確保し、健全な年金制度構築に大いに寄与
2.
「年金局数理課」と「社会保障・人口問題研究所の人口推計部門」を、人事的にも財務
的にも年金政策当局から至急分離独立させよ。
3.ILO/ISSAの提唱する「賦課主義の徹底、ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)の排
除、ペンション・ガバナンスの確立」により、
国民負担は大幅に軽減され、超少子・超高齢の21世紀日本社会における民主的かつ持続可
能な引退後所得保障制度の構築が抜本的に容易化する。
21. 年金制度の危機か、
年金政策の危機なのか?
1.わが国の実態:「年金制度の危機」ではなく、「年金政策の危機」!
政策能力が低く、利権追求にのみ走る、世界的にも類を見ない悪質な年金官僚の存
在!
不要・非効率な特殊法人の累増。さらに、育児・高齢者医療制度等で新
規創設の動きさえ多発
2.抜本対策
1.賦課主義財政の徹底、
2.「ポリティカル・リスク(含、官僚リスク)」の排除
3.「ペンション・ガバナンス(年金制度の運営管理における民主性・公平性・効率性・
透明性)の早期確立」
2.他国と比較し、年金官僚の政策能力の低さと年金資金利権化が顕著。
年金制度改革論も、「年金給付額の削減」か「保険料の引上げか」という
「理念なき近視眼的改革論の愚!」
政府方針への批判能力なき年金学会、行政の隠れ蓑化する審議会
わが国は人類史上初の超高齢社会に遭遇:
「誰のための年金制度」か? 国民よ、怒れ!
22.国際比較研究の重要性
1.国際化・情報化時代にもかかわらず、ILOや諸外国に関する正確な情報は、ほとんど伝
わっていない。
国際比較研究による客観的で広い視野に基づき、公正妥当な制度改革が
効率的に実施可能となる。
2.社会保険庁の抜本的改革:「総合的社会保障制度の運営管理機構」へ!
経営会議に労使・学者の代表を参加させよ。
3.客観的・統計調査的業務は、政策機関からの人事的・財政的な独立性確保が急務。
中立的で信頼可能な調査・統計業務の確保こそが、正確で妥当な制度改革と
国民の信頼性回復への基盤。
4.国民負担率の相対的低さ:経営者団体は負担増大を理由に、公的年金を含む社会保障制度
の削減を主張し、政府も同調。
しかし、わが国の国民負担率は、スエーデンの7割強、フランス の6割強、ドイツの5割
強と比較しても、幸いにも未だ4割弱と非常に低い。
抜本的改善への道は、未だ閉ざされてはいない。
合計特殊出生率の引き上げ策や公私年金制度設計と運営管理の民主化・効率化策などを積
極的に断行すれば、21世紀日本社会の将来はけっして暗くはない。
現在こそが、抜本的社会保障制度改革への最後のチャンス!
国民負担率の内訳の国際比較(日米英独仏瑞)
(注) 1 .日本は平成17年度(2005年度)予算ベース、諸外国は、OECD ''Revenue Statistics 1965-2003''及び同 ''National Accounts 1991-2002''等による。
2 .租税負担率は国税及び地方税合計の数値である。また所得課税には資産性所得に対する課税を含む。
3 .財政赤字については、日本及びアメリカは一般政府から社会保障基金を除いたベース、その他の国は一般政府ベースである。
4 .四捨五入の関係上、各項目の計数の和が合計値と一致しないことがある。
5 .老年人口比率については、日本は2005年の推計値(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成14年(2002年)1月推計)による)、
諸外国は2000年の数値(国際連合 ''World Population Prospects: The 2004 Revision Population Database''による)である。
23. 結論:ILO/ISSA原則へ回帰せよ!
1.米国やスエーデン:
「ペンション・ガバナンンスを確立し、ポリティカル・リスク
(含、官僚リスク)を排除した上での改革論」
形式だけの猿真似は止めよ。
2.瑣末な技術論を放棄し、わが国はまず基本に帰れ!
ILO原則へ回帰せよ!
3.ILO/ISSAの提唱する「賦課主義の徹底、ポリティカル・リスク(含、官僚リ
スク)の排除、ペンション・ガバナンスの確立」に基づき、
より民主的で効率的で透明な年金制度設計と運営管理の抜本的改革が
容易に可能となる。国民負担率も未だ相対的に低い現在こそ、公平で長
期安定的な引退後所得保障制度確立の最後のチャンス。
直ちに実行すれば、21世紀日本の将来は、けっして暗くはない!
(ただし、「相続税の抜本改革」なども急務)