国際技術協力論事始 宇宙から南太平洋まで 小菅敏夫 2005.2.22. 最終講義 1 1.はじめに ライデン大学(オランダ国立大学)で、航 空、宇宙、海洋等地球を取り巻くスペース の開発利用に関する問題の研究 1971年10月 電気通信大学に着任 電 通大では、電気通信法制度等に関連する 研究教育に 2005.2.22. 最終講義 2 2.研究(1) 宇宙探査開発利用に関連 1957年10月4日 スプートニク打ち上げ 国際地球観測年(IGY) 国際共同研究 新たな法秩序への動き 宇宙法秩序形成と平和的利用への合 意形成へ 2005.2.22. 最終講義 3 宇宙探査開発利用分野 冷戦構造から、平和共存への動きの中で 国連における宇宙空間平和利用委員会 の設立(1958年) 宇宙探査 1956年のIGY(国際地球観測 年)科学者間の国際協力組織IAF(国際 宇宙航行連盟)、IISL(国際宇宙法学会) などの設立(1960年) 人類共有の概念(Common Heritage of Mankind) と国際社会の新たな課題、天 体、資源、空間等 2005.2.22. 最終講義 4 研究(2) 第二次世界大戦後の東西対立の構図から 平和共存、新たな新興独立国との南北問 題 1960年代 新国際経済秩序(国連資源特別総会)1974 新海洋法秩序の形成(国連海洋法会議 1980年代 排他的経済水域、大陸棚、深海海底等 資源の囲い込み 2005.2.22. 最終講義 5 新国際情報秩序 途上国との情報流通及 び通信インフラ格差の問題 情報流通への規制、通信主権の主張 電気通信資源としての周波数及び衛星軌 道への有限な天然資源化(国際電気通信 連合憲章等) トフラーの「未来の衝撃」1970、「第三の波」 1980、「パワーシフト」1990 情報通信イン パクトと国際社会 2005.2.22. 最終講義 6 研究(3) 1981年国連総会「全ての国において経済 的社会的発展のための必須条件として通 信インフラが最も重要である」 ITU(国際電気通信連合)全権委員会議で 独立委員会設置、1985年「失われた輪」 (勧告のための報告書)2000年までに全て の人々が電話にアクセスできるようにする 2005.2.22. 最終講義 7 情報通信技術のアナログからデイジタル への急速な進歩 格差の拡大の問題 この課題へ向けて、ミレニアムを機にさま ざまな国際会議が開催されてきている。 バレッタ世界電気通信開発会議(1998) 国連ミレニアムサミット(2000) 沖縄サミット(2000) アジア太平洋電気通信共同体サミット (2000) 世界情報社会サミット(2003) 太平洋島嶼国サミット(2004) 2005.2.22. 最終講義 8 3. デイジタル・デイバイドからデ イジタル・オポチュニテイへ 研究分野のそれぞれの課題から格差解消 への取り組みを 特に途上国へのインフラ整備技術としての 宇宙通信 1963年11月23日 国際衛星通信機構(インテルサット)等の衛 星通信組織の設立 島嶼地域、ルーラル地域等への利用の試 み(PEACESATとの出会い) 2005.2.22. 最終講義 9 太平洋島嶼地域における情報通信に関す る調査研究プロジェクト、1987年以来数次 にわたり行う。ミクロネシア、メラネシア、ポ リネシア地域への調査。南太平洋大学の 遠隔教育調査 総務省(旧郵政省)の研究会(太平洋島嶼 地域の電気通信)現地調査への参加 ハワイ大学PEACESATネットワークの調査 研究 2005.2.22. 最終講義 10 国際宇宙年(1992)における日本のパート ナーズ計画への参加、ETS-V衛星を利用 して、バンドン、キング・モンクット、ラエの 工科大学及びハワイ、南太平洋大学 (USP)との衛星通信実験の実施、通信総 合研究所との協力 ポスト・パートナーズ計画(1996)による衛星 通信実験(商用衛星を利用)、その後の新 ポスト・パートナーズ計画実験への参加、 NIME及びNICTとの協力で遠隔教育実験 を実施、現在も使用中 2005.2.22. 最終講義 11 4.南太平洋大学の事例 地理的に不利な12の国と地域にまたがる 島嶼のデイジタル・デイバイド解消にICTを 利用 東西8千キロ南北4千キロの広大な島嶼に おけるコミュニケーション手段は、宇宙通 信以外に現実にない状況 人的資源の開発が不可欠 2005.2.22. 最終講義 12 南太平洋大学(USP)の概要 1968年に12の国と地域の国際機関として 設立、各国の財政支援及び外国からの 援助 人材開発が主要な課題 学生数 17000人 60%の学生が遠隔教育 学生数 7%の増加率 3箇所のキャンパス、18のセンター 2005.2.22. 最終講義 13 USPは1972年から遠隔教育を開始 2004年度238のコースを遠隔で 2007年までに全てのコースを遠隔モードへ コンピュータ科学・情報システムコースへの 登録者が5000名 全学生数の10%がコンピュータ科学科 南太平洋地域における人材を各分野に輩 出している 政府、産業界、市民社会、援助機関、学校 等との緊密な関係を維持 2005.2.22. 最終講義 14 USPNet 1972年にATS-1によるPEACESATの利 用で音声のみのネットワーク 1985年以降通信事業者の回線を利用 し、 音声、データ等遠隔教育 2000年4月 日本、オーストラリア、ニュー ジーランドによる国際協力で衛星回線に よる専用のUSPNetを構築、ビデオ、音声、 データ等に利用 全ての大学の施設がイントラネットで接続 専用回線で24時間使用 2005.2.22. 最終講義 15 USPNetの課題 帯域幅1.5Mbps(11 x 64kbps, 128kbps x 4) 改善の必要 広帯域化、IP化 イントラネットとしての衛星回線の拡張 遠隔教育教材等のデイジタル化に対応 出来るネットワークの必要性 2005.2.22. 最終講義 16 インターネットの改善 USP全体で1Mbps を改善するため、 AARNET(オーストラリア学術研究ネット) の利用が2005年2月から可能に 155Mbps のブロードバンド化へ IP化への対応、USPNetのIP化とブロード バンド化の必要性 宇宙通信部分のインフラを改善するため の財政的課題 2005.2.22. 最終講義 17 5.電気通信大学の事例 国際技術協力論のクラス開設 1988年度電気通信普及財団の支援で全国で最 初の国際技術協力に関する授業 外務省、総務省、JICA,国際協力銀行、日本 ITU協会、国際協力推進協会、国連、大学等の 専門家を非常勤講師として招聘 大学卒業者の中から、JICA、公務員、技術協力 コンサルタント企業、NGOなどで活躍している 卒業生から国際協力賞受賞者 2005.2.22. 最終講義 18 UECとUSPとの交流協定締結 USPとの遠隔教育の新たな展開と発展 2000年2月から行われた、新ポスト・パート ナーズ計画による遠隔教育の実施(USP のICTによる強化技術協力プロジェクト)、 電通大からのJICA短期専門家の派遣、 USPからの研修者及び責任者の訪問 今後の新たなUSPとのパートナーズとして の関係強化 2005.2.22. 最終講義 19 電気通信大学の国際貢献を目指して 交流協定の量ではなく実質的且つ具体 的内容を 教職員だけでなく、学生の積極的な参加 が必要、 ICTを利活用する人材育成、技術協力こ そ本学の特色を生かすもの コミュニケーション・スキルを重視する パートナーズとして、共に生きる(共生)か ら共に助ける(共助)へ 2005.2.22. 最終講義 20
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