がんの 予防 がんの予防(化学予防) chemoprevention 予防 目標・手段 対象 1次予防 生活習慣の改善による 生活習慣病の罹患回避 健常人 2次予防 がん検診による 早期発見・早期治療 健常人・ハイ リスクグループ 3次予防 がんで死なない がん死の延長 ハイリスクグループ・ がん患者・がん克服者 がんの三次予防 三次予防とは、がんで死なないためのあらゆる予防措置 1) 再発(局所の再発)予防 2) がん転移の予防 3) プログレッションの予防 小林 博 「がんの予防」新版 岩波新書; p.153-181, 1987: p.60-63, 1999. 1) 遺伝子変異を抑制することで 浸潤がん細胞の出現を予防する 2) 遺伝子変異を持つpremalignantな がん細胞のプログレッションの予防 3) 遺伝子変異を持つpremalignantな がん細胞を正常復帰させることに よる予防 Hong,W.K. and Sporn,M.B. Recent advances in chemoprevention of cancer Science, 278: 1073-1077, 1997. がん予防戦略 発がん要因の抽出 発がん要因 からの離脱 発がん要因 の不活化 疫学的解析 (科学的根拠の提示) 発がん要因 の消去 がん細胞の誕生と成長 Latent perlod Latent cancer Clinical cancer Malignant conversion (Progression) Initiation ・ Promotion Generation number 0 10 20 30 40 Cell number Weight Size (diameter) 1 1ng 103 1µg 106 1mg 1mm 109 1g 1cm 1012 1kg 10cm< 長寿と がん 長命病 り げん しゅう らん 「俚言集監」 太田全斎 著 (1797年) 長命病 = 五十肩 り げん しゅう らん 「俚言集監」 太田全斎 著 (1797年) 江戸時代の50歳は長生きであった 五十肩 炎症反応 frozen shoulder 急性期 慢性期 回復期 期間 2週間〜2ヶ月 2〜4ヶ月 3〜6ヶ月 痛み 激しい痛み 動かすと痛み 痛み無し 肩の運動性 動かない 動かない 動かない 対処 冷やす 安静 暖める 動かす 暖める 動かす がん予防の標的(1) I. 発がん物質阻止剤 1)発がん物質吸収阻害 カルシウム 2)発がん物質形成・活性化阻害 Arylalkyl isothiocyanates, DHEA, NSAIDs, polypherols NSAIDs: non steroidal anti-inflammatory drugs 3)発がん物質の非活性化・解毒 GSH 促進剤, oltipraz 4)発がん物質のDNA結合阻害 Polypherols, oltipraz 5)DNA修復能の亢進 NAC, protease inhibitors Kelloff GJ, et al. In: Principles of Chemoprevention. IARC Scientific Publication No. 139; 203–219, 1996. がん予防の標的(2) II. 抗酸化物質・抗炎症作用 1)不対電子の補足 GSH 促進剤 2)活性酸化窒素種の消去 Vitamin E, polypherols 3)アラキドン酸代謝の抑制 Glycyrrhetinic acid, NAC,NSAIDs, polypherols, tamoxifen Kelloff GJ, et al. In: Principles of Chemoprevention. IARC Scientific Publication No. 139; 203–219, 1996. がん予防の標的(3の1) III. 抗増殖抑制・抗悪性化 1)シグナル伝達機構の調節 NSAIDs, polypherols, retinoids, tamoxifen 2)ホルモン・増殖因子の調節 NSAIDs, retinoids, tamoxifen 3)がん遺伝子の活性化阻害 Genistein, NSAIDs, monoterpenes 4)ポリアミン代謝の抑制 DFMO, retinoids, tamoxifen 5)最終分化への誘導 カルシウム, retinoids, vitamin D 6)宿主免疫の増強 NSAIDs, selenium, vitamin E Kelloff GJ, et al. In: Principles of Chemoprevention. IARC Scientific Publication No. 139; 203–219, 1996. がん予防の標的(3の2) III. 抗増殖抑制・抗悪性化 7)アポトーシスの誘導 8)DNAメチレーションの是正 9)血管新生の阻害 10)基底膜破壊の抑制 Butyric acid, genistein, retinoids, tamoxifen 葉酸 Genistein, retinoids, tamoxifen Protease inhibitors 11)抗転移関連遺伝子の活性化 Kelloff GJ, et al. In: Principles of Chemoprevention. IARC Scientific Publication No. 139; 203–219, 1996. 究極のがん予防 = がんの悪性化の予防 腫瘍の大きさと悪性度 A 進行がん B C 悪 性 度 天寿がん D 年月 北川先生の写真 瘤取りじいさんの絵 がん予防 の具体例 がんの原因 (Dr.Doll) Others Diet (35%) Infection (10%) Smoking (30%) 禁煙によってもたらされる 臓器発がんの予測減少率 臓器 予測減少率 禁煙後年数 30~50% 10 食道 50% 5 膀胱 50% 2 膵臓 ≒1% 10 合計 30~50% 10 肺 A report of the Surgeon General : The Health Benefits of Smoking Cessation (1990) 欧米のがん罹患率の低下 アメリカのがん罹患率・死亡率 アメリカのがん罹患率・死亡率 アメリカの肺がん罹患率・死亡率の減少 わが国における2015年がん罹患に関する推計 男性 女性 北川貴子、津熊秀明、他:日本のがん罹患の将来予測。 富永祐民他(編)がん統計白書、篠原出版、東京、1999。 生活習慣の改善による予防 Behavioral Prevention 食習慣の改変による予想がん死減少率 (Doll and Peto, 1981) がん 回避率 肺 大腸・直腸 乳 膵臓 胃 20% 子宮 50% 胆嚢 50% 喉頭, 膀胱, 子宮頸部,口腔, 咽頭, 食道 20% その他 10% 合計 35% 90% 50% 50% 35% 口腔・咽頭 ● ● ● 鼻咽頭 ● 食道 ● 肺 ● ● 肝 ● 大腸・直腸 ● ● ― 喉頭 ● が ん 予 防 の た め の 栄 養 乳腺 ● ● リ ス ク を 高 め る も の ● ● ● ● 胃 ● ● ● ● ● ● 膵 ● ● ● ● 胆嚢 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 卵巣 内膜 ● 子宮 ● 前立腺 ● ● 甲状腺 ● 腎 ● ● ● ● 膀胱 ア ル コ ー ル 塩 蔵 食 品 肉 卵 菓 子 脂 肪 ロ コ ー レ ル ス テ 乳 製 品 砂 糖 熱 い も の コ ー ヒ ー ● カ ビ 肥 満 早 熟 タ バ コ ◎ ◎ 喉頭 ◎ ◎ 食道 ◎ ◎ 肺 ◎ ◎ ◎ ◎ 胃 ◎ ◎ ◎ ◎ 膵 ◎ ◎ 口腔・咽頭 鼻咽頭 が ん 予 防 の た め の 栄 養 ― リ ス ク を 減 ら す も の ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 胆嚢 肝 ◎ 大腸・直腸 ◎ 乳腺 ◎ ◎ 卵巣 ◎ ◎ 内膜 ◎ ◎ 子宮 ◎ ◎ 前立腺 ◎ 甲状腺 ◎ 腎 ◎ 膀胱 ◎ ◎ 野 菜 果 物 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ カ ロ チ ノ イ ド ビ タ ミ ン C ミ ネ ラ ル 穀 物 で ん ぷ ん 繊 維 茶 運 動 冷 蔵 庫 生まれ (遺伝) heredity 育ち (環境) life style 老化 aging がん予防 の実践 スリ・ランカにおける噛みタバコ誘発口腔がんの 分子疫学的解析と化学予防 QuickTimeý Dz ÉtÉHÉg - JPEG êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ Ç™Ç±ÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ …ÇÕïKóvÇÇ• ÅB “The best treatment of diseases is its prevention” 北海道医療大学歯学部口腔衛生学講座 千葉 逸朗 教授 スリランカにおける臓器別がん罹患率 男性 (%) 口腔 36.8 食道 女性 (%) 子宮頸部 22.8 8.2 乳腺 21.9 肺 8.0 食道 9.9 白血病 5.3 口腔 8.7 リンパ腫 5.1 卵巣 7.0 咽頭 4.9 甲状腺 4.6 スリランカにおける噛みタバコの習慣 びんろうじゅ 檳榔樹 タバコの葉 消石灰 エリカナッツ 噛みタバコ スリランカにおける典型的な 噛みタバコ誘発口腔がんの症例 スリランカにおける典型的な 噛みタバコ誘発口腔がんの症例 噛みタバコ習慣の停止による 前がん病変(白板症)の消失 噛みタバコ → クルクミンガム 1998年9月 1999年3月 前がん病変 正常口腔上皮 白板症 口腔がん 噛みタバコの発がん物質代謝 グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (解毒酵素) 摂取 前がん物質 活性化がん原物質 Cytochrome P-450 (活性化酵素) 不活化 がん原物質 排泄 CYP2A6 遺伝子欠損が口腔癌のリスクを下げる CYP2A6 健常群 (%) 症例群 (%) W/W 36.3 40.6 1.00 W/C 39.3 41.3 0.94 0.59-1.50 C/C 9.6 13.3 1.23 0.61-2.52 C/D 5.9 3.1 0.48 0.17-1.30 W/D 4.4 1.0 0.21 0.05-0.88* D/D 4.4 0.7 0.14 0.03-0.72* Total 135 286 W: 野生型、C: 置換型、D: 欠損型 OR 95% CI *有意差あり 口腔内健康診断 による現状の確認 健常者に対する口腔衛生の教育 口腔衛生に関する若年者教育 がん予防の基本 生活習慣 の是正 がん 検診 早期発見・ 早期治療 教育 がん細胞の 悪性化の抑制
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