大学教育学会2008年度課題研究集会シンポジウム 「『大学人』能力開発に向けて-国立大学の現在-」 山形大学SDと大地連携 ~若手職員発の大学改革の展開~ 山形大学マネージングプロフェッサー 教授 山崎 淳一郎 2008年12月7日 山崎プロフィール 大阪大学 1980.4~1985.5〔5年2月〕工事経理/物品調達業務 文部省初等中等教育局職業教育課 1985.6~1987.2〔1年9月〕学習指導要領改訂 文部省初等中等教育局高等学校課 1987.2~1991.3〔4年1月〕 6年制中等学校・単位制高校制度/定時制・通信制高校修業年限弾力化/高校海外留学制度 放送大学学園 1991.4~1993.12〔2年8月〕学生募集/入学手続/カリキュラム改革 文部省大臣官房総務課 1993.12~1995.9〔1年10月〕国会連絡調整/広報・広聴 文部省高等教育局医学教育課 1995.10~2000.3〔4年6月〕 科大学・看護大学経常費助成/看護系大学・大学院設置 師学校養成所指定規則等改定 公立医 保健師・助産師・看護 山形大学総務課長 2000.4~2002.3〔2年〕工学部入試合否判定過誤問題/法人化対策 東京大学学務課長 2002.4~2004.3〔2年〕 大学院 制度/大学院入試/附属中等教育学校 担当 団法人化/海洋研 研究船・乗組員移管問題 特命:国立大学協会の社 文科省研究振興局学術研究助成課学術団体専門官 2004.4~2006.3〔2年〕 科研費の審査、不正対策、繰越、機関指定/学会法人・研究助成法人指導監督 山形大学教授 2006.4~現在〔2年8月〕 部資金の獲得/プロジェクト型共同研究のコーディネート/研究マネジメントの企画立案等担当 版国際化推進プログラム(若手教員海外研修)制度化/競争的資金申請書ライターetc. 科研費等外 山形大学 2 山形大学の概要 1949.5設置*6学部5研究科を擁する地方中規模総合大学 エリアキャンパス もがみ 100km 鶴岡キャンパス 農学部 小白川キャンパス 人文学部 地域教育文化学部 理学部 飯田キャンパス 医学部 ○21世紀テーマ:自然と人間の共生 ○Leading concept: 地域に根ざし、世界を目指す ○経営の基本方針: ◇学生が主役となる大学創り ◇教育、特に教養教育の充実 ○学生数:9,284人=学部 7,971人、 大学院 1,313人 ○職員数:1,846人=教員853人、職員993人 ○H20収支予算 330億円 教育研究診療等 285億円 うち授業料等収入 54億円、 附属病院収入104億円、 運営費交付金120億円 外部資金 13億円 施設整備費補助金 32億円 ○科学研究費補助金 4億円(239件) 50km 3 米沢キャンパス 工学部 index Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 山形大学SDの源流 山形大学存廃の危機に立ち上がる若手職員4人衆 法人化前不祥事その2 山形大学SDの軌跡 Ⅴ エリアキャンパスもがみ Ⅳ 今後の山形大学SDの方向 4 Ⅰ 山形大学SDの源流 山形大学SDなどの改革は、工学部入試過誤 遠 山プラン<法人化>の危機意識がスタート 仙道前学長 5 1.工学部入試過誤とは… ~「偶数じゃなくて奇数だ。」~ 1. 平成13年5月14日、平成13年度入試の受験生からの情 報公開請求によって、平成13年度の一般入試「国語」で合 否判定過誤が判明。 2. 大学入試センター試験の「国語(近代以降の文)」の成績を2 倍して200点満点に換算して判定すべきところ、「国語(近代 以降の文章、古文、漢文)」の成績の合計点(素点)を判定 資料としたことによる過誤。 3. その結果、平成9年度~13年度の5年間で、本来合格であ るのに不合格とされた受験生が428名、不合格であるのに 合格となり学生となった者が413名いることが判明。 4. 過誤は、学習指導要領の改訂による合否判定システムの変 更が原因 6 2.入試過誤危機管理モデル ~「改革の火を灯す」リスクマネージメント~ 「天地人」直江兼続 対処方針 大学存亡の危 機であるが、これを大学改革転回 の好機と捉える= 鷹山DNA 「なせばなる…」 米沢藩9代藩主 上杉鷹山公 1. 改革の組織文化を醸成 利益情報、 不利益情報の別なく全て情報公開。隠蔽排除。 2. フラットな対策チーム 事案に応じ てフレキシブルに責任者を変更。 若手教員が教 授を指揮、職員が教員を指揮 =教職協働意識の 高揚:職員力を再評価。 3. 緊密な情報共有 事務局は支援 型リーダーシップ(スポンサーシップ)を取ると同時に、工学 部に職員を派遣し、変革リーダーと協働して問題に対処 7 ※肖像画出所:「米澤人國記<中・近世編>」米沢市史編集資料より 3.大学(国立大学)の構造改革の方針 平成13年6月 -活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として- 1.国立大学の再編・統合を大胆に進める。 ○各大学や分野ごとの状況を踏まえ再編・統合 ・教員養成系など→規模の縮小・再編(地方移管等も検討) ・単科大(医科大など)→他大学との統合等(同上) ・県域を越えた大学・学部間の再編・統合 など ○国立大学の数の大幅な削減を目指す→スクラップ・アンド・ビルドで活性化 2.国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。 ○大学役員や経営組織に外部の専門家を登用 ○経営責任の明確化により機動的・戦略的に大学を運営 ○能力主義・業績主義に立った新しい人事システムを導入 ○国立大学の機能の一部を分離・独立(独立採算制を導入) ・附属学校、ビジネススクール等から対象を検討 →新しい「国立大学法人」に早期移行 3.大学に第三者評価による競争原理を導入する。 ○専門家・民間人が参画する第三者評価システムを導入 ・「大学評価・学位授与機構」等を活用 ○評価結果を学生・企業・助成団体など国民、社会に全面公開 ○評価結果に応じて資金を重点配分 ○国公私を通じた競争的資金を拡充→国公私「トップ30」を世界最高水準に育成 8 ※文部科学省公表資料 Ⅱ 山形大学存廃の危機に立ち上がる若手職員 4人衆~入試過誤・法人化による危機意識発現~ 4人衆の「法人化改革レポート」は、山形 大学SDを生み出す力の一つになった! 仙道前学長 9 1.山形大学人の危機意識 工学部入試過誤事件 遠山プランの衝撃→大学の法人化・再編統合 他の国立大学との再編統合の噂 教育学部→福島大学・宮城教育大学と統合 工学部→福島大学と統合 農学部→新潟大学との統合 などの噂 山形大学が無くなるかもしれない! 10 2.若手職員「法人化改革レポート」 山形大学リニューアル・プランー今、山形大学がとるべき行動ー 平成13年11月19日 30代前半の若手職員4名が勤務時間外に自己啓発のため、自主 的に、法人化に向けた「山形大学の将来構想」案の策定を目指し、 10月に勉強会を組織。1ヶ月の議論を経ての成果物がこのレポー ト。 「学生に魅力ある大学」、「地域に大切にされる大学」、「北東アジア 地域との連携を重視する国際大学」など、将来を見据えた山形大学 が目指すビジョンとともに、事務職員の能力開発方策を提言。タウ ンミーティング、エンロールメント・マーケティングや大学の営業マン 的人材の育成など、現在の山形大学改革の源流がここに。 このほか、南東北3大学の統合試案が盛り込まれ、遠山プランを強 く意識。 11 3.学長と若手職員4人衆を取り持つ 山形大学リニューアルプラン前文(抜粋) ◇ 「山形大学が無くなるかもしれない。そんなことを考えたこと があっただろうか?」で始まるレポート。 ◇4人衆の改革の願い 一般係員レベルで取りまとめた「将来構想(案)」がそのまま 採択されることは全く想定していないが、希望することはただ 一つ、早急にアクションを起こしていただきたい…本学がこの たびの変革期を乗り越え、この地に根ざして、更なる発展を 進めていくために、全学的な検討の開始を切に切望したい。 当時の総務課長(私)は、学長にこのレポートを伝え、 学長と彼ら4人衆をつなぐ役割を果たす。学長との 懇談が実現。 12 学長はその後4人衆を様々な企画立案に登用 Ⅲ 法人化前不祥事その2 仙道前学長 ◇文科省在り方懇報告の対応で教育学部 の再編問題が全国区に ◇セクシャル・ハラスメント事案が続い てマスコミ報道される 13 Ⅳ 山形大学SDの軌跡 仙道前学長 山形大学SDを支えた企画グループは、あ る意味、超トヨタ式チェンジリーダー的役割 を果たしていたのでは… 国立大学協会主催大学マネジメントセミナー「企画・戦略編」より 14 1.学長の大学改革への危機意識 1.国立大学旧来のいわゆる教員民主主義による、学内委員 会-学部教授会-教育研究評議会-役員会という重厚な意 思決定システムのみでは大学改革はできない! 2.大学の内在する問題点を見つけ出しそれを迅速に改良す るシステム、時代を先取りするようなアイデアを考え出し、それ を学長に提言、実行していくシステムの構築が必須 ◎異なった遺伝子を持つ社員の声を会社経営に反映させる 経営幹部は社内(組織内)の慣習に挑戦する社員を見つけ、評価する 役員会まで上がってくる懸案プロジェクトは、既存の事 業体系と同じものばかりだ。私は従来の事業体系に 当てはまらない新規プロジェクトや、従来の事業体系 を変革してくれそうなプロジェクトを探している 資料:「コアコンピタンス経営 未来への競争戦略」Gary Hamel,C.K.Prahalad著(1995年3月 日本経済新聞社)から引用 15 2.中堅事務職員合宿セミナーのあゆみ 戦 略 企画力 運営力 プレゼンテーション力 企画力 運営力 調査力 交渉力 プレゼンテーション力 大地連携(地域連携)=地元力 評価・点検 文章力 大 学 の 事 業 シ ー ズ 発 掘 企 画 事業数 17事業 15年度 3 名 」〕 16年度 」 * 第 3 回 【 社 会 貢 献 】 18 名 〔 6 班 3 名 〕 17年度 第 4 回 F D よ り 」 霞 出 版 刊 「第 あ4 っ回 と お【 どS ろD く研 大修 学の 事歩 務 改み 善出 山版 形】 大 17 学名 - 〕 24 名 〔 8 班 報 告 書 「 S U C C E S S - 6 名 第 2 回 【 社 会 貢 献 】 7事業 × 30 名 〔 5 班 報 告 書 「 山 形 大 学 活 性 化 プ ロ ジ ェ ク ト × 」 第 1 回 【 大 学 改 革 】 × 報 告 書 「 山 形 大 学 創 出 プ ロ ジ ェ ク ト 8事業 18・19年度 16 * SUCCESS:Skill building, Up to date, Challenging, Creative and Encouraging Study program for the YU Staff 3.山形大学SDの特徴 教授会→評議会→役員会or委員会→評議会→役員会という重厚 な意思決定システムではない、学内NGO、NPO的事務職員参加 による新たな意思決定システムの構築 ボトムアップに基づいたトップダウン:大学運営基本モデル 外部講師は呼ばない→講義形式の研修はしない 参加職員同士の議論、学長との対話及び教職員・市民対象の発 表会を組み合わせたSD 若手中堅事務職員の企画・運営・交渉・プレゼンテーション能力開 発 提案した企画は山形大学改革のための事業にプロジェクト化し実 施→大学新規事業シーズの発掘 地域連携を地元出身者が多数を占める事務職員の力で開拓する 大地連携戦略→職員の地元力=大学のコア・コンピタンス 学長の共鳴型リーダーシップにより、事務職員に緊張感・使命感・ 17 充足感が醸成→仕事をするのに必要なワクワク感 Ⅴ エリアキャンパスもがみ 仙道前学長 「エリアキャンパスもがみ」は、山形大学 SDでの若手職員による企画提案を契機 に生まれ、大学の中核事業となった… 18 1.エリアキャンパスもがみとは? ◇大学固有の教育施設を持たずに、最上地域の8市町村(新庄市・金山 町・最上町・舟形町・真室川町・大蔵村・鮭川村・戸沢村)が持つ 施設を活用し、出張大学祭、自然塾、タウンミーティング等の種々の 事業を展開するソフト型キャンパス。 ◇平成17年3月、山形大学と最上地域の8市町村と包括的連携協定を締 結、エリアキャンパスもがみの取組がスタート。 ◇地域とのダイナミックな双方向的連携により、「地域の活性化と人材育成」 と「学生の課題探求能力育成」が目的。 ◇キャンパスは、キャンパス長と教員、現地スタッフ、それに「キャンパス 生」が在籍し、教職員・学生・地域住民からなる「キャンパス運営委員 会」によって運営。 ◇本取組は山形大学SD合宿研修における若手職員の企画提案がきっかけ。 ◇平成19年2月、日本計画行政学会 第11回計画賞最優秀賞を受賞。 19 事例:「伝承 鮭川歌舞伎」~歴史を感じる~(鮭川村) 鮭川村に伝わる「鮭川歌舞伎」(平成18年山形県無形文化財指定)の歴史的背 景を学ぶとともに、衣装を身につけ、台詞や演技を習得する。最終日には実際に 舞台に立ち上演する。 <講師> 佐藤雄昭 鮭川歌舞伎保存会座長 鮭川歌舞伎の実演。舞台に立つ学生たち 20 2.エリアキャンパスもがみ誕生秘話 ◇エリアキャンパスもがみは、若手職員の企画提案がきっかけ ◇仙道前学長が主導した中堅事務職員研修がはじまり 山形大学初の新しい大学全体の取組を! 従来の(意思決定)方式でないものを! 学長裁量経費による新プロジェクトの募集で! 21 3.エリアキャンパスもがみ誕生 県内移動オープン・キャンパス「一日山形大学」班の取組 平成16年9月7日 最上広域教育研究センター訪問(第2回) 【最上地区山形大学指首野川キャンパス(仮称)構想】 1 センターを教職員の研修のほか、地元企業から要望のあるリカレント教育 のための利活用の場に見直し 2 地域の教育関係団体、山形大学同窓会、関連企業等で支援団体を組織し、 山形大学の財政支出は伴わないようにする。 3 支援団体から非常勤職員を配置する。 学長に報告→「山形大学としてありがたい話なので今後も 進めるように」と後押し 9月8日 本構想を検討するプロジェクトチーム発足 22 Ⅵ 今後の山形大学SDの方向 職員育成 幅広い視野と専門的な能力を備え、 使命感と情熱に溢れるプロパー職員 集団を育成する ー結城プラン2008よりー 結城学長 似顔絵イラスト: 地域教育文化学部4年生 小野としみ さん 作 23 1.立命館大学との協力協定 協定締結の趣旨 FD、学生主体 の大学づくりで共通点があり、規模は異なるが、国立・私立の異質 な組合せによる連携が相互発展につながる 協定締結 平成20年6月19日 20年度の事業 学長交流、学生交流、職員交流の各事業 学長・総長交流 山形大学学長講演会 7月3日(立命館大学) 立命館大学総長講演会 10月17日(山形大学) 学 生 交 流 10月~11月 山形大学 9名、立命館大学 11名 職 員 交 流 10月~11月 山形大学、立命館大学 各5名 報告会開催 12月20日 16:00~ キャンパスイノベーションセンター(東京都・田町) 学生交流・職員交流に関する成果報告会<一般公開> 24 2.立命館大学との職員交流 目的 若手職員が、学生が 主役、学習者中心という両大学のミッションを共有した上で、その実 現をめざすために、大学職員がとるべき行動目標を策定して学長に 提案する テーマ 「学生が中心の大学」 を実現するための大学職員像を考える 対象者 採用後10年程度の大学職員 5名 交流期間 2009年末まで アドバイザー職員 両大学とも1~2名 交流内容 STEP2 キックオフミーティング 現状分析=高等教育を取り巻く情勢分析/各大学の現状分析 STEP3 「学生が中心の大学」を実現するためのあるべき大学職員像の共有化 STEP4 「立命館大学・山形大学における事務職員の行動目標」の提案25 STEP1 まとめ 従来型の研修では、知識の獲得による「今日の業 務改善」(負けない改善)につながるのみ。 山形大学SDは、智恵の発揮によってイノベーティ ブな「明日(未来)の準備」(勝つための改善)につ ながるチェンジリーダー型人材育成への挑戦。 変わり続ける組織文化のしくみを持つことが強い 大学を創る。 26 ご静聴ありがとうございました。 山形大学研究プロジェクト戦略室 山崎 淳一郎 TEL.023-628-4838 FAX.023-628-4849 E-mail:[email protected] 「研究プロジェクト戦略室」HPアクセス方法 山形大学HP→「研究案内」→「研究助成金情報」→ 「研究プロジェクト戦略室」 この中に研修会資料などが検索できます。 (トップページからアクセスできます。) http://www.yamagata-u.ac.jp/kenkyu/kenindex.html 27
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