欧州の新たな化学品規制(REACH規則)の 概要と状況について 平成20年3月 経済産業省 製造産業局 化学課 機能性化学品室 1.REACH規則導入の背景と経緯 (注)REACHとは「Registration(登録), Evaluation(評価), Authorisation(認可) and Restriction(制限) of Chemicals(化学品)」の略。 ○背景と経緯 ・ 国際的な化学物質管理政策の枠組みは、1992年のリオサミットで取りまとめられたアジ ェンダ21第19章「有害化学物質の環境上適正な管理」の7項目の対応に端を発しており、 2002年のWSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)において、2020年達成を 目標に化学物質の著しい悪影響を最小にすることが決定。 ・ 欧州におけるREACH規則の導入についても2020年の目標を意識。 ・ 新規化学物質に比べて、既存化学物質(約10万物質、生産量1トン以上は約3万物質) の安全性評価の遅れ。 (参考)従来OECDのプログラムで各国分担し、既存化学物質の安全性評価を官、民で実施するも、なかなか進まず。 (2007年2月時点で733物質終了) ・ 複雑な欧州における化学品管理法。(各国毎。欧州化学物質関連規制に関する法は40 以上で、複雑かつ各国で運用等不統一) ・ 環境団体からのPressure。 → REACH規則は、人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の向上などが目的に 掲げられ、2003年10月に欧州委員会により提案され、2006年12月に欧州議会採択 と環境理事会承認を受け、2007年6月1日に施行、2008年6月1日より本格運用。 1 2.REACH規則のポイント ○ポイント ・ 安全性評価の義務を、規制当局から産業界に移管したこと。 ・ 新規化学物質だけでなく、既存化学物質についても、登録(安全性評価の情報など)等の 義務を設けたこと。欧州で年間1トン以上製造又は輸入される物質(ただし、食品、医薬品、 農薬等特定の用途を除く)が対象となり、数量に応じて用途毎に登録を行わないと製造・ 輸 入ができない。(ノーデータ・ノーマーケット) ・ 原則、事業者ごとに登録等を義務付けたこと。(個別事業者の取扱い量によって規制レベ ルが異なる) ・ 特定の有害性物質は原則として使用禁止の認可制度を導入。(許可されれば使用可能) ・ 化学物質の製造・輸入者だけではなく、化学物質を含有する成形品の製造・輸入者に対 し ても、一定条件の化学物質が含有される場合に、登録や届出等を義務づけたこと。 ・ サプライチェーンにおける情報伝達を義務付けたこと。(危険有害性物質に該当する場合 は受領者に安全データシートを提供。成形品中に一定量の高懸念物質が含まれる場合 は 受領者や、要求に応じて消費者に名称等の情報提供。川下ユーザーからの用途情報等を 要求) 2 3.REACH規則の概要(4つの要素) (注)REACHとは「Registration(登録), Evaluation(評価), Authorization(認可) and Restriction(制限) of Chemicals(化学品)」の略。 登録(Registration) ・年間1t以上製造・輸入する場合、事業者毎に 物質を登録。登録情報は数量に応じ段階的に 増加。 ・一定条件を満たす成形品中の物質も対象。 ・試験データの共有を義務づけ。 ・一部、対象外、適用除外、軽減免除措置あり。 認可(Authorization) ・極めて懸念が高い物質(発がん性、変異原性、 生殖毒性等)の中から認可対象物質が選定。 ・対象物質は原則販売禁止とし、用途ごとに申 請して個別に認可を受ける(リスクが小さいこ とを産業界が証明)。 ・代替の可能性、代替計画が必要。 評価(Evaluation) ・当局が登録情報の適合性の確認、試験 提案の評価を行い、必要に応じて産業 界に追加情報を要請。 制限(Restriction) ・制限対象物質は、登録要否に係わらず、いか なる物質も、人や環境に許容しがたいリスクが ある場合、製造、販売、使用について制限。 ・禁止、特定用途、条件付き許可(社会経済的 影響分析、代替品の有無を考慮)。 3 (参考1) 既存化学物質も対象 REACH 旧法 世の中に存在しなかった新 規化学物質を市場に出す前 には届出を義務付け 有害性評価 新規化学物質 既存化学物質 (約4千物質) 昔から世の中にあり、既に使 われている既存化学物質 ・規制当局(行政)による評価 に時間がかかる。 (※規制当局が実施) 既存化学物質 (約3万物質) 事業者 が実施 リスク評価 (※事業者が実施) リスク評価 有害性評価 ・試験不要の既存物質を使 い続け、 新規物質の開発 が遅れる。 新規化学物質 ・(EU域内での)製造量・(EU への)輸入量が年間1トン以 上の物質は、安全性評価結 果と併せて登録が必要。 4 4.登録・届出(概要) ○義務対象者:EU域内の製造者又は輸入者。EU域外企業の指定代理人。 ○義務内容:①欧州化学品庁へ物質(注1)・調剤(注2)中の物質を安全性評価結果と併せて登録。 1事業者当たり1トン/年以上の製造又は輸入する物質が対象。 ②成形品(注3)(電機・電子製品、自動車、玩具等)中に含まれる高懸念物質(0.1% 重量比超)を届出。なお、成形品中の意図放出物質(インクジェット等)は登録。 ③物質・調剤、成形品の中に高懸念物質を含む場合は、受領者(事業者)に物質の 情報を伝達する義務。 ④物質の登録のために物質情報を共有する目的で、登録者はフォーラム(注4)に加入 し、安全性評価のコストをシェアする義務。 (注1)物質(Substance) 自然状態のまま製造工程によって得られる化学元素とその化合物を指し、その安定性を保ち使用工程で生じる不純 物を防ぐのに必要な添加物を含む。ただし当該物質の安定性に影響を及ぼさず、またその組成を変えずに分離する ことのできる溶剤は除かれる。(※一般的な化学物質だけでなく、金属も対象) (注2)調剤(Preparation) 2つ以上の物質(Substance)からなる混合物又は溶液。(※合金も調剤に該当) (注3)成形品(Article) 成形品とは、その化学組成よりも機能を指向するよう、特定の形状、外面、あるいはデザインを付与された物。 (注4)フォーラム(Substance Information Exchange Forum: SIEF) 製造・輸入者間の情報交換を容易にし、同一項目の試験実施の重複を避けることを目的とした物質情報交換の場。 5 (参考2) REACHでの登録対象範囲 REACH規制対象 登録対象 登録対象外 • 1t/y以上の物質(新規・既存物質ともに) • 製造・輸入1t/y未満 • 調剤中の物質 • ポリマー • ポリマー中の2%<構成モノマー (別途指令対象) 用途限定での適用除外 • 成形品中の意図的放出物質 • 放射性物質 • 人体,獣医学用医薬品用 • 税関監督下の場合 • 食品,飼料添加物用 REACH適用外 • 非分離中間体 • 動物用栄養剤 簡易登録対象 など • 危険物質の輸送 登録免除 • 廃棄物 • 付属書Ⅳ,Ⅴ収載物質 • 防衛用の物質 • REACHで既登録物質である EU再輸入品、回収品 既登録とみなす物質 • 植物保護剤、殺生物剤 • 67/548/EEC届出物質 単離,輸送中間体 制限 対象 簡易届出対象 研究開発用物質 (5年間登録免除) 成形品中の認可候補物質 認可対象(登録対象とは別途申請) CMRなどの認可対象物質 6 (参考3) 登録・届出に係るフロー(輸入者等の義務) 欧州への輸入品 物質・調剤又は成形品の区別の詳細はEUがガイダンス作成中 成形品 物質・調剤 2008年6月~12月1日 までに予備登録 新規化学物質 既存化学物質 (登録) (登録) 予備登録 (注)既存化学物質は予備登録 することにより、以下の登録 猶予期間あり。 1~100 t 11 年 100~1000 t 6年 ≧1000 t 3.5年 但し、CMR等は3.5年。 SIEFに加入し、 情報を入手 登録(注) ≧1t /年 (ハザード評価) ≧10t /年(+リスク評価) 他社が成形品中の化学物質・調剤 を当該用途で登録しているか いな い いる 不要 リストは未だ示されず。 2008年秋以降に公表か。 意図放出物質 高懸念物質 (登録) (届出) 2011年までに届出猶予 届出 ≧1t/年+>重量比0.1% (物質番号、用途、重量、会 社名、連絡先等) ※SIEF(Substance Information Exchange Forum):物質情報交換フォーラム 7 (参考4) REACH規則の登録内容(≧1t/年) 1.テクニカルドシエ(技術書類一式) 登録者情報、物質の特定、用途情報、分類・表示(GHS準拠)、有害性情報、安全な使用 に関するガイダンスなど 2.物質固有の危険・有害性の評価(ハザード評価) 1.摂氏20度,101.3kPaにおける 物質の状態 2.融点/凝固点 3.沸点 4.相対密度 5.蒸気圧 6.表面張力 7.水溶性 8.N-オクタール/水分配係数 9.引火点 10.可燃性 11.爆発性 12.自然発火温度 13.酸化性 14.粒度測定 15.皮膚刺激性または皮膚腐食性 16.目刺激性 17.皮膚感作性 18.変異原生 19.急性毒性 20.水中毒性 21.分解性 22.反復投与毒性 23.生殖毒性 (注)重量別で求められる項目毎の要求内容が異なる。 8 (参考5) REACH規則の登録内容(≧10t/年) 3.危険・有害性の評価(ハザード評価)に加え、そのハザードに接触する可能性も加味した危険 性の評価(リスク評価) パートA 1. リスク管理措置の概要 2. リスク管理措置が実施されていることの宣言 3. リスク管理措置が通知されていることの宣言 パートB 1, 物質の特定および物理化学的特性 2. 製造および用途 3. 分類および表示 4. 環境運命特性(分解、環境分布、生物蓄積、二次 中毒) 5. 人の健康に対するハザード評価 5.1. トキシコキネティクス(吸収、代謝、分布および除 去) 5.2. 急性毒性 5.3. 刺激性(皮膚、眼、気道) 5.4. 腐食性 5.5. 感作性(皮膚、呼吸器系) 5.6. 反復投与毒性 5.7. 変異原性 5.8. 発がん性 5.9. 生殖毒性(生殖力への影響、発育毒性) 5.10. その他の影響 5.11. DNELの導出 6. 物理化学的特性の人の健康に対するハザード 評価 7. 環境に対するハザード評価(水圏(堆積物を含 む)、地圏、気圏、下水処理システムにおける微 生物学的活性) 8. PBTおよびvPvBアセスメント 危険物質、PBT,vPvBに該当する場合 9. ばく露評価 9.1. ばく露シナリオ 9.2. ばく露評価 〔等〕 10. リスク特性化 10.1. 人の健康(作業員、消費者、環境を通しての人 への間接的ばく露) 10.2. 環境(水圏(堆積物を含む)、地圏、気圏、下水 処理システムの微生物学的特性) 9 (参考6) REACH規則の届出内容(≧1t/年) 成形品中の化学物質(高懸念物質) ・製造者名(又は輸入者名) ・連絡先 ・物質の情報(識別、分類) ・物質のトン数範囲(例えば1~10トン、10~100トンなど) ・成形品中の物質の用途 等 10 (参考7) 届出対象(高懸念物質)となりうる物質 (a) 指令67/548/EECに基づく発がん性カテゴリー1又は2の分類基準を満たす物質 (b) 指令67/548/EECに基づく変異原性カテゴリー1又は2の分類基準を満たす物質 (c) 指令67/548/EECに基づく生殖毒性カテゴリー1又は2の分類基準を満たす物質 (d) 付属書XⅢに定める規準に基づき、難分解性、生体蓄積性及び毒性を有する物質 (PBT) (e) 付属書XⅢに定める規準に基づき、難分解性及び生体蓄積性が極めて高い物質 (ⅴPⅴB) (f) (d)項及び(e)項の基準を満たさないが、内分泌撹乱特性、又は難分解性、生体蓄積 性及び毒性を有する、又は難分解性と生体蓄積性が極めて高い特性を有する物質 11 5.REACH規則施行後のスケジュール (2006年12月 成立・官報公布) ○ 2007年 6月 1日 施行 ・危険有害等物質(第31に規定)である化学物質・調剤の供給者は、SDS(Safety Data Sheet)にて受 領者(事業者)に物質情報を伝達する義務発生(※実質的には、EU域内で従前使用されていたSDSの 様式変更)。 ・本年1年間で、欧州委員会において、欧州化学品庁発足の準備、REACH運用のためのガイダンスや ツールが準備される。 ○ 2008年 6月 1日 欧州化学品庁発足 (業務開始) 6月 1日~12月1日 予備登録 (※予備登録が行われれば、以下のとおり経過措置あ り) ◇ 2008年 秋以降 高懸念物質リストの公表 ○ 2010年11月30日 年間1000トン以上 (水生毒性物質100トン以上、発ガン性・変異原性・生殖毒性 物質1トン以上) の製造・輸入量のある化学物質・調剤の 登録期限 ○ 2013年 5月31日 年間100トン以上の製造・輸入量のある化学物質・調剤の登録期限 ○ 2018年 5月31日 年間1トン以上の製造・輸入量のある化学物質・調剤の登録期限 12 (参考8) REACHのスケジュール(主要部分) 2007/6/1 施行 登録 2008/6/1 開始 2008/12/01 2013/5/31 2010/11/30 2018/5/31 2009/5/31 化学品庁 設立準備 Non Phase-in(新規)物質 67/548/EEC 登録 (1事業者あたり1t/y以上の物質。上市ごとにデータやCSRなど提出) Phase-in(既存)物質 予備登録 (6ヶ月) SIEF(Substance Information Exchange Forum 施行後11年間) 登録猶予期間 ≧1,000t/y 登録猶予期間② 登録猶予期間③ ≧100t/y・R50/53 ≧100t/y ≧10t/y ≧1t/y・CMR Cat-1,2 ≧1t/y 施行~3.5年 施行~6年 登録 施行~11年 SDS添付(Safety Data Sheet) 危険有害性分類物質、PBT・vPvB物質 認可 Authorization優先物質勧告 制限 Restriction見直し 76/769/EEC 認可候補/認可(Annex XIV) 制限(Annex XVII) 13 6.予備登録 (※登録することの意思表示。当面の直接的対応) ・ 対象は既存化学物質。 ※Phase-in(段階的導入)物質のこと。(EINECS、NLPリストに収載されている物質) ※ELINCS収載物質はREACHでは既に登録済みとみなされる。 ・ 受付期間は、2008年6月1日から6ヶ月間。 ・ 欧州化学品庁へ予備登録手続を申請する者も、登録義務者と同様。 ・ 予備登録をすればトン数に応じた登録猶予期間あり(年間1000t以上・100t以上の 水性毒性物質・1t以上の発がん性等の高懸念物質は3.5年間、100t以上は6年間、 1t以上は11年間)。 ・ EU化学品庁は、website で物質リスト公開。 ・ 提出情報は以下項目。提出すれば自動的にSIEFメンバー(SIEF:物質情報交換 フォーラム)。 物質名称 IUPAC名、国際的化学名 識別番号 CAS、EINECS、ELINCS 登録者名称・所在地・担当者氏名 指定代理人を立てた場合も同様 数量範囲と登録予定期限 3年(≧1000t/y)、6年(100-1000t/y)、 11年(1-100t/y) 14 (参考9) 予備登録、SIEF形成、本登録へのプロセス 予備登録 IUCLID 5による入力 当局による物質の同定 各登録者への通知 登録者名、物質identity等、登録期限 REACH-ITによる Management SIEFの形成 データ所有者 データの共有化・物質分類・表示の合意 Opt out 別途提出 本登録 IUCLID 5による入力 15 (参考10) SIEFとコンソーシアム ◆SIEFとは:29条に規定する物質情報交換フォーラム ※ SIEF (Substance Information Exchange Forum) ・ 「1物質―1登録」という原則でのSIEFの目的は ① 製造・輸入者間の情報交換を容易にし、同一項目の試験実施の重複を避けること。 (ここでは脊椎動物試験の重複は避けることが義務付けられているが、その他の試 験は義務が課されていない) ② 物質の分類、表示の合意。 ・ メンバーには、通常の登録予定者(Potential Registrant)のみならず、1トン以下の将 来登録する可能性がある者、あるいはデータや情報のみを有する者も参加者となり 得る。 ◆コンソーシアム(Consortium)とは: ・ 第30条の各種データ・情報の共有のため、及び上記の29条を具体的に実施するた め、SIEFの下で自主的に結成される組織・企業集団のこと。 ・ 結成パターンは物質、ビジネスの形態、使用の実態、用途によって様々な形態。 ・ コンソーシアムメンバーにも川下ユーザーや流通業者、第三者も入ることがあり得る。 16 (参考11) コンソーシアムの多様な形態(想定例) SIEF コンソーシアム SIEF参加者で1つのコンソーシアム SIEF コンソーシアム コンソーシアム SIEF コンソーシアム 1会社 SIEF コンソーシアム 川下企業 コンソーシアム SIEF コンソーシアム SIEF コンソーシアム コンソーシアム SIEF SIEF 1会社がコンソーシアム外 SIEF外の川下産業が協力する場合 2つのSIEFが3つのコンソーシアム で特定の目的について協力する場 合 カテゴリーアプローチまたは複数の SIEFに参加するために1つのコン ソーシアムになる場合 コンソーシアム SIEF SIEF参加者で2つのコンソーシアム に分かれる場合 SIEF 17 7.認可 (概要) ○ 認可の目的は、極めて懸念の高い物質からのリスクが適切に管理され、これら物質が適切 な代替物質又は代替技術によって、それが経済的及び技術的に実現可能な場合に、段階的 に置き換えられることを確保しつつ、EU共同体市場が良好に機能することを確実にすること。 ○ 高懸念物質のうち、付属書 XⅣ に収載されたもの(認可対象物質)を欧州で販売または使用 する場合は、数量に関係なく、認可を受ける必要。 (注)認可対象物質は現在未公表で、欧州化学品庁が2009年6月1日までに欧州委員会に対して優先 物質の勧告を行い、少なくとも2年ごとに追加される予定。 ○ 可能性のある認可候補物質 ・発癌性、変異原性、生殖毒性(CMRs)のカテゴリー1又は2の物質。 ・付属書XIII規定の難分解性、生物蓄積性および毒性(PBTs)の物質。 ・付属書XIII規定の極めて難分解性で高い生物蓄積性(vPvBs)の物質。 ・上記のクライテリアを満たさないが人の健康または環境への深刻な影響があり得そうな科学的根拠 があり、上記の影響と同等のレベルの懸念を生じる物質(例えば内分泌撹乱性物質)。 ⇒ 認可候補物質のリストが公表される。(候補リストは来年秋以降か) ⇒ 次のステップ(パブコメ・協議)で認可対象物質を付属書XIVに収載。 ○ 付属書XIVの物質を期限後も使用したい場合は、登録とは別に特定の用途毎に申請が必要。 ○ (i) 使用が適切に管理されること、(ii) (i)が適用できない場合は、社会経済的メリットがリスク を上回り、さらに代替物質・技術がないことが必要。 18 8.制限 (概要) ○登録要否にかかわらず、物質を禁止、用途・使用条件を制限できる仕組み。 ○制限対象 ・ヒト、環境に容認しがたいリスクがある場合。 ・各加盟国当局が提案→付属書ⅩⅦへ(52物質)(これまでの「76/769/EEC 指令」における制限の引継ぎ)。 ・認可対象物質とは重複しない。 ○制限範囲 ・製造/販売/使用の禁止。制限の条件に適合していない限り製造され、 上市されてはならない。「完全な禁止」もありえる。 19 9.サプライチェーンにおける情報伝達義務 1.物質・調剤の場合 ・ 危険物質(※1)、PBT(※2) ,ⅴPⅴB(※3)である物質又は調剤の供給者は、受領 者(事業者)に物質の情報を伝達しなければならない。 ・ 提供する情報は安全性データシート(SDS)(※4) 。(紙面又は電媒で無償提供) ・ 規則の施行後、最初に納品する際に必要。(※実質的には、EU域内で従前使用 されていたSDSの様式変更) ※1.現存の指定の有害性基準に則して有害である旨の 分類結果が得られた化学物質・調剤 ※2.PBT:難分解性、生体蓄積性、毒性物質 ※3.ⅴPⅴB:極めて難分解性、生体蓄積性の高い物質 ※4.SDS:Safety Data Sheet 2.成形品の場合 成形品の供給者は、成形品中に高懸念物質(リスト物質)が0.1%重量比超含 まれている場合には、 ・ 受領者(事業者)に物質の情報を伝達しなければならない。 ・ 消費者の要求があれば消費者にも当該物質の情報を伝達(要求を受けてから 45日以内)。提供する情報は、当該成形品を安全に使用できるのに十分な情 報(最低限、当該物質の名称)。 20 (参考12) REACHの義務内容 (まとめ) ◎登録・届出 製造・ 輸入量 ◎認可 ◎制限 認可対象 物質につ いて原則 上市禁止、 用途毎 認可制 ヒト、環境に 容認しがた いリスクが ある場合、 上市・使用 を制限 成形品中の物質 ハザード 評価 リスク 評価 既存化学 物質※の 登録期限 ~ 1t/y 不要 不要 - 登録不要 届出不要 1~ 10t/y 必要 不要 11年 登録必要 届出必要 10~ 100t/y 必要 必要 11年 登録必要 届出必要 100~ 1000t/y 必要 必要 6年 登録必要 届出必要 1000t/y~ 必要 必要 3.5年 登録必要 届出必要 意図放出物質 リスト物質 :重量比 0.1%超 ※欧州の既存化学物質リスト(EINECS等)の収載物質。但し、2008年6月1日~12月1日間に予備登録が必要 21 10.REACHの運用における不明な点 ・ 化学物質(及び調剤)と成形品の区別。 → 現在、欧州委員会がRIPsにおいてガイダンスを作成中。各ケース毎に確認必要。 ・ 予備登録に関するガイダンス(唯一の代理人について、輸入者への情報提供等)の作成中。 ・ 成形品中に含まれる届出対象(高懸念)物質 → 対象リストは未だに示されず。(1事業者あたり年間製造又は輸入量が1トン以上であり、 0.1%重量比超含まれていれば、届出が必要。) (※候補リストは2008年秋以降公 表か) → 届出義務の0.1%下限の算出における分母の解釈。 ・ 認可対象物質 → 対象リストは未だに示されず。(※2009年6月までに提示予定) ・ 用途のカテゴリー(登録や届出の際の記入項目) → 現在、欧州委員会がRIPsにおいてガイダンスを作成中。 ・ 申請料金、罰則 → 登録や認可の申請料金は欧州委員会が規則案を準備中。罰則規定は加盟国が2008 年12月までに策定。 22 (参考13) RIPsについて ※RIPsとは、REACH Implementation Projectsの略称 ・ REACH施行に向けた具体的なガイダンス、ツールの整備。 ・ 欧州委員会が主導で行い、産業界、EU加盟各国政府も参画。 RIP1 : REACH Process Description REACH手続き全体の説明。フローチャートやQ&A集を作成。 RIP2 : REACH-IT ITシステムの整備。 RIP3 : 産業界のためのテクニカルガイダンスドキュメント RIP4 : 当局のためのテクニカルガイダンスドキュメント RIP5 : 予備化学品庁(Pre-Agency)の設置 RIP6 : 化学品庁(Agency)の設置 RIP7 : 欧州委員会の準備 ※詳細情報は欧州委員会(化学品局)HP参照: http//ecb.jrc.it/reach/rip 欧州化学品庁HP参照: http//ec.europa.eu/echa 23 (参考14) RIP3シリーズの概要と進捗状況 RIP(REACH Implementation Project)の策定については、当初予定(2007年10月)より整備が遅 れており、現在の進捗状況は以下のとおり(2008年1月15日現在)。 RIP No. 内容 状況 RIP 3.1 登録用技術ドシエ作成のためのガイダンス 5種のガイダンス(登録、中間体、ポリマー&モノマー、研 究開発、ナビゲーター)をファイナル済み(2007年6月)。 ※「登録に関するガイダンス」を現在更新中(予備登録、 唯一の代理人の部分を追加)。 RIP 3.2 化学品安全評価報告書(CSR)作成のためのガイダ ンス 2008年3月末に完成予定。 RIP 3.3 物質の特定情報要件に関するガイダンス コンソーシアムではファイナル化済み RIP 3.4 データシェアリングに関するガイダンス ファイナル済み(2007年9月)。 RIP 3.5 川下ユーザーに対する要件に関するガイダンス ファイナル済み(2008年1月)。 RIP 3.6 GHSでの分類・表示に関するガイダンス 昨年10月着手、2008年末に完成予定。 RIP 3.7 認可に関するガイダンス 2008年前期に完成予定。 RIP 3.8 成形品中の物質に対する要件に関するガイダンス 2007年12月CA会合で欧州委員会としては是認。最終は 2008年初頭か? RIP 3.9 社会経済性分析(Socio-Economic Analysis)に関す るガイダンス 2008年3月または6月に完成予定 RIP 3.10 物質の特定と命名に関するガイダンス ファイナル済み(2007年6月) 24 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その1) 1.RIP3.8「成形品中の物質に対する要件に関するガイダンス」に関する昨年12月CA (Competent Authorities)会合の概要 (1)議論のポイント ①アーティクル中のSVHC (Substances of Very High Concern) 届出の算出基準問題 (0.1%閾値算出分母は何か) ②ボーダーライン問題 (容器/担体入り物質/調剤か、アーティクルか) ・①について長時間議論されたが正式採用には至らず。しかし、その後、欧州委員会 は加盟国へ書簡を送付し、ガイダンスの公表ステップに入る旨を通知した模様。 ・また、委員会は付属書XIV(認可対象物質)の候補物質(SVHC)のドラフトリストを本 年6月までに準備し、3ヶ月のインターネットコンサルテーションにかけることを計画。 ・次回のCA会議は本年3月27-28日の予定。 25 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その2) (2)アーティクル中のSVHC届出の算出基準問題 (0.1%閾値算出分母) に関する議論の 概要 ・欧州委員会: 0.1%閾値算出分母をwhole articleとする旨を強調 し、ガイダンスの賛 同 (endorsement)を求めた。 ・スウェーデン、オーストリア、フランス、デンマーク、オランダ、キプロス: 0.1%閾値算 出分母をwhole articleとする委員会の解釈に反対表明。homogeneousまでいかなくて もwhole articleより細かいレベルで妥協を狙っている様子。 ・ポーランド、スロバキア: 委員会の解釈に賛同。 ・長時間議論にもかかわらず、ガイダンス採択については明確にされなかった。 ・しかし、欧州委員会は、1月下旬に加盟国へ書簡を送付し、「0.1%閾値算出分母は whole articleとするが、articleが多くの複数のcomponentsから構成され、それがEU で製造・輸入される場合には、そのcomponentsとspare partsについても情報伝達す る義務がある」とし、今後ガイダンスの公表ステップに入る旨を通知した模様。 26 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その3) (3)ボーダーライン問題 (容器/担体入り物質/調剤か、アーティクルか) において合意 された基準及び事例 (2007年10月CA会合等) ①容器/担体入りの物質/調剤: ・基準: その物の機能が、形状、表面、デザインよりも、化学組成によって同等かそ れ以上に決定される。 ・指標: 下記 a) ~c)の全部または大半が当てはまる場合に該当。 a) その物質がその物から除去/分離されても、あるいはその物から類似タイプの 物に替えられても、意図した目的を果たす。 b) その物が放出のための容器/担体の役割を果たす、あるいは物質/反応生成物 の供給を制御する。 c) その物質の大部分は消費、除去される、あるいは使用の後に(廃棄前に)その物 の外に出される。 27 (参考15) 容器/担体入りの物質/調剤の事例 スプレ-缶 ペンのインク インクカートリッジ (トナーカートリッジも同様 ) ウェットティシュ インクリボン ファイヤークラッカー スキー用ワックステープ 28 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その4) (3)ボーダーライン問題 (容器/担体入り物質/調剤か、アーティクルか) において合意 された基準及び事例 (2007年10月CA会合等) ②アーティクル: ・基準: その物の機能が、その化学組成よりも、形状、表面あるいはデザインによっ て決定される。 ・指標: 下記 a) ~c)の全部または大半が当てはまる場合に該当。 a) その物質がその物から除去/分離され、あるいはその物から類似タイプの物に 替えられると、意図した目的を果たさない。 b) その物の主な目的は、物質/反応生成物の供給を狙うものではない。 c) その物質はその物の使用時(廃棄時)に、通常は廃棄される。 29 (参考16) アーティクルの事例 温度計 バッテリー カーペット止用粘着テープ 車のタイヤ 30 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その5) (4)ボーダーライン問題 (容器/担体入り物質/調剤か、アーティクルか) において合意 された基準及び事例 (2007年10月CA会合等) ③アーティクルから意図的に放出される物質: ・基準: 放出が使用に不可欠で、放出がなければそのアーティクルが十分に機能し ない場合。あるいは、放出がアーティクルの質や副次的な機能に寄与し、新たな 価値を与える場合。 ・アーティクルから意図的に放出される物質の事例: ◇匂い付き消しゴム ◇ローション付きパンティーストッキング 31 (参考17) 物質/調剤と成形品の境界例 (その1) 天然資源・原料 モノマー 合成ポリマー 物質 (登録免除) 再生・非再生の天然 ポリマー 物質/調剤と成形品の 境界例(RIP3.8ドラフト (12月時点版)より) ポリマー物質 (登録免除) (例:セルロースパルプ) Spinning/drawing 成形品 人工の(合成) 繊維 Tow (麻くず) Filament yam (繊維状の毛糸) Monofil (単繊維) Spunlaid & meitblown nonweven forming and bonding 32 (参考17) 物質/調剤と成形品の境界例 (その2) 物質/調剤と成形品 の境界例(RIP3.8ドラフト 鉱石(ボーキサイト) 天然原材料 抽出 物質 (12月時点版)より) アルミナAl2O3 電解 アルミニウム鋳造物 合金組成の添加 調剤 アルミニウム合金鋳造物 形状への連続的鋳造 鋳塊への鋳造 押出鋳造体 圧延体 圧延、さらなる処理 シート 押出形状物 (巻回体) 切断、 形状加工 抽出 成形品 最終アルミ ニウム製品 切断、 形状加工 最終アルミ ニウム製品 アルミニウム合金 鋳造片 成形品 研磨、穴あけ、 表面加工… 最終アルミニウム製品 33 (参考17) 物質/調剤と成形品の境界例 (その3) 物質/調剤と成形品 の境界例(RIP3.8ドラフト 天然素材 原油 (12月案)より) 精製 物質 (モノマー) エチレン 重合、添加剤添加 調剤 (ポリマー) ポリエチレン ペレット フィルム成形 成形品 ポリエチレン フィルム 裁断、接着 ポリエチレン包装材 34 (参考17) 物質/調剤と成形品の境界例 (その4) 天然素材 木 破砕 物質/調剤と成形品 の境界例(RIP3.8ドラフト (12月版)より) 木片 蒸解 物質 セルロースパルプ サイズ剤、糊などの添加 調剤 ストック(パルプを水に溶かしたもの) 抄紙機、巻き取り、乾燥 成形品 板紙 (Paper) トリートメント コート処理された板紙 (Post treated paper) Converting (型押し成形、折りたたみ、プリント) 紙製品 35 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その6) 2.RIP3.1「登録に関するガイドライン」に関する昨年12月CA会合の概要: ・欧州化学品庁は登録に関する多くの質問を受け、ガイダンスを更新中。特に予備登 録(唯一の代理人:OR)について追加。 ・FECC(欧州Distributor協会)は、EU域外のDistributorがORを指名できるか、また、 ORはEU域外のサプライチェーンを通じての輸入がカバーできるか、について質問 状を提出。現時点で欧州化学品庁からの回答なし。 ・上記の新ガイダンス案において、ORはEU域外製造者名を開示する必要はないが、 一方で登録手数料はその製造者サイズで決まるとしているので、いくつかの加盟国 はどう運用できるのか疑問を提示。 ・ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツは同一物質登録についてORの全ての指名 者の量を合算することに反対。欧州委員会は、法務局が見直しをすると説明。 ・上記ガイダンス案は、当初1月14日までに更新されるとの情報があったが、現時点 でも未公表。 36 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その7) 3.REACH付属書IV及びV(登録免除)に関する昨年12月CA会合の概要: ・付属書IVについては、加盟国が登録免除クライテリアに合致する追加を1月10日まで に提出し、リストが限定サイトで提示される。その後関係者で検討された上で、委員 会は、本年12月1日までには、修正ドラフトを完了予定。 ・付属書Vについてはまだ委員会内で進め方を検討中。 37 11.欧州委員会による運用ガイダンス等の最近の作成状況(その8) 4.REACH規則の申請手数料に関する規則案: (1)欧州委員会が規則案を作成、加盟国で協議(2007年10月末第1次案、11月21日第2 次案作成)。12月10日の加盟国代表会議では、加盟国は料金の徴収について基本的 に承認。ただし、今後当局として内容について再度検討・修正等が行われる見込みで、 最終的には2008年2~3月頃に正式な内容となる見通し。 (2)概要 (いずれも個別申請と共同申請で異なる。共同申請は個別申請の概ね75%) ・一般登録申請料金(個別申請):1,600ユーロ(10トン未満)~31,000ユーロ(1000トン以上)。 中小企 業向け減免措置(7割以下)。 ・トン数変更に関する料金:2,700ユーロ~19,500ユーロ。 ・登録者名義、住所、同定・分類の変更に関する料金:1,500ユーロ~2,500ユーロ。 ・CBI(機密情報)リクエストに関する料金:1,500ユーロ~4,500ユーロ。 ・PROD(研究開発)の申請料金: 50ユーロ~500ユーロ。 ・認可申請の基本料金:7,500ユーロ(申請が中小企業の場合)~50,000ユーロ(標準)。 ・認可申請の追加料金:(50,000ユーロ+)10,000ユーロ/追加使用+ 10,000ユーロ/追加物質。 中小企業向け減免措置(8割以下)。 ・認可の更新料金:(50,000ユーロ+)10,000ユーロ/追加使用+ 10,000ユーロ/追加物質。 中小企業向け減免措置(8割以下)。 38 (参考18) 化学品庁への登録申請手数料 (2007.10 欧州委員会提案) (単位:ユーロ) トン数帯 1-10 10-100 フルの 個別提出分 の料金 共同提出分 の料金 1,600 1,200 4,300 3,225 100-1,000 11,500 8,625 >1,000 31,000 23,250 中小企業向けの 個別提出分の料金 中小企業向けの 共同提出分の料金 中: 1,120 小: 640 極小: 160 中: 小: 極小: 840 480 120 中: 3,010 小: 1,720 極小: 430 中: 2,258 小: 1,290 極小: 323 中: 小: 極小: 8,050 4,600 1,150 中: 6,038 小: 3,450 極小: 863 中: 21,700 小: 12,400 極小: 3,100 中: 16,275 小: 9,300 極小: 2,325 ※企業規模の定義は不明確 であるが、2003年欧州委員会 勧告は以下のとおり ・Medium(中): 250名以下 売上:50 million€ 以下 ・Small(小): 50名以下 売上:10 million€ 以下 ・Micro(極小): 10名以下 売上:2 million€ 以下 39 (参考19) Confidentiality request fee item (11月30日現在) 個別申請 共同申請 不純物純度及び同定 4,500 € 3,375 € Tonnage Band 1,500 € 1,125 € Study Summary and Robust Summary 4,500 € 3,375 € SDS 3,000 € 2,250 € Trade Name 1,500 € 1,125 € 新規物質(危険物質)の IUPAC Name 1,500 € 1,125 € 中間体、R&D、研究用の危 険物質のIUPAC Name 1,500 € 1,125 € 40 12.事業者の当面必要とされる対応例 (想定その1) 1.物質・調剤の供給者の場合 (1)予備登録(登録)が必要な場合(2008年6月1日) ・ 予備登録する物質の決定、登録トン数域の決定。(直接輸出物質?サプライチェーンでの 間接輸出物質(調剤・ポリマーの原料、意図的放出物質)?) ・ 予備登録する物質の特定。(物質の名称、CAS番号、EINECS番号) ・ 誰に予備登録申請をしてもらうか特定。(EU域内の現地法人?輸入業者?指定代理人?) (化学物質の専門知識があり、価格が適正で、秘密保持・信頼性のあるところ) (参考)予備登録・コンサル業務等を請け負う機関リスト(日化協調べ): http://www.nikkakyo.org/reach/JCIA_Materials/REACH_Service_Providers.html (2)高懸念物質を製造または販売する場合(2008年秋以降(物質リスト公表後)) ・サプライチェーン上でのビジネス間で、受領者に物質の名称や含有量等を情報 伝達することが求められる可能性。 ※ EU加盟国へ調剤を輸出する場合は原料物質、ポリマーの場合は原料モノマーの登録が必要。 また、成形品中に意図的放出物質または高懸念物質が一定量含まれれば、登録または届出の義務 が生じる。 このため、間接的にサプライチェーン上でのビジネス間で予備登録に関する対応を求めら れたり、取り扱う化学物質に関する情報伝達が求められる可能性あり。 41 12.事業者の当面必要とされる対応例 (想定その2) 2.成形品の供給者の場合 (1)当該成形品に意図的放出物質または高懸念物質が含まれる場合 ①欧州化学品庁へ意図的放出物質の予備登録(2008年6月1日)。 ・成形品メーカーにとっては、上流側の企業(化学物質メーカー等)が、当該物 質を登録(当該製品を用途として)してほしいと希望する可能性あり。 ・化学物質メーカーが登録しなければ、成形品メーカーが当該製品の材料組成 を正確に把握し、自身で物質の登録(安全性評価)をしなければならない。 ②欧州化学品庁へ高懸念物質の届出(2011年6月まで)。 また、高懸念物質が含まれる場合は、消費者の要求があれば、当該物質の情 報(最低限、物質名称)を回答する必要(要求を受けてから45日以内)。 ※高懸念物質のリストは2008年秋以降に公表か。 (2)欧州工場で使用する材料・副資材(洗浄剤、切削油等)の登録が必要な場合 (例:日本から材料・副資材をEUへ輸出するケース) 42 (参考20) 消費者からの質問(サプライヤー側の対応) NGOが提案している消費者からの問合せレター 43 13.サプライチェーン対応上の課題例 (1)流通経路の特定 ・化学物質は最終製品(成形品)になるまでに複雑かつ多岐・多段階の流通を経由 し、消費者の使用する製品となっているが、各供給者は、通常直接のユーザー (顧客)のみを把握しているのが実情。 (2)情報伝達の円滑化 ・様々な加工を含む流通の各段階において、常にREACH又は化学物質の安全性 に関する情報が適切に伝達されるとは限らず、また、企業が機密保持上その情報 公開に躊躇する場合や法的要求事項についての理解不足がある場合には、情報 伝達に支障を来すおそれがある。これらの双方向の情報伝達が確実かつ円滑に 流れるシステムの構築が必要。 (3)規準等の未確定 ・REACHの法的遵守上重要な“認可対象物質(高懸念物質)”が確定するのは、本 年秋以降との見込み。また、現時点では、意図的放出の具体的規準が確定してい ない等、REACHの運用上未解決の問題が残る。 44 (参考21) RIP3の進捗状況と企業の対応例イメージ 2007 - 06 RIP3の 策定状況 09 2007 - 12 2008 - 06 12 2009 - 06 12 2010 - 06 12 2011 - 06 12 2012 - 06 12 2008年3月完成予定 RIP3.2 (CSR) 2008年末完成予定 RIP3.6 (GHS) 2008年前半完成予定 RIP3.7 (Authorization) 2007年12月議論 (未公表) ? RIP3.8 (Article) 予備登録 (本登録猶予期間) (2008年6月~12月1日) REACH スケジュール 本登録期限(≧1000トン) 2013/05/31 本登録期限(≧100トン) 2018/05/31 本登録期限(≧1トン) 本登録受付開始 成形品中の高懸念物質の届出 (高懸念物質リストの公表は2008年秋以降) 認可候補物質の公表 (2009年6月まで) 企業の 対応例 欧州へ輸出している 自社製品の把握 コンソーシアム、SIEFでのデータシェア協議 サプライチェーン上での取引社との 相談(誰が登録するか等) REACH対応の要否検討 (欧州ビジネスの選別) 予備登録者の決定(輸入業 者or代理人or現地法人) 安全性データの収集、必要な試験の実施 成形品中の含有化学物質情報(高懸念物質)の収集 高懸念物質の届出期限 45 14.我が国各業界の対応状況 (1)化学業界 ①大手・中堅化学企業(各社内にREACH対応チームを編成) ②(社)日本化学工業協会 ・REACHタスクフォース ・情報提供(①わかりやすいパンフレット、②登録業務・唯一の代理人、委託試験を行う サービス機関等の情報) http://www.nikkakyo.org/reach/ ③石油化学工業協会(C2C3タスクフォース(コンソーシアム)) http://www.jpca.or.jp/5safety/REACH_ver8.pdf (2)自動車業界 ・日米欧韓の自工会・部品工会による連携。WG(ブレーキ摩擦、タイヤ等)。仕入先説明会 の開催。 ・自工会発行「REACHに関するガイドライン」: http://www.japia.or.jp/ (3)電機・電子業界 ・欧州化学品規制WG (4)横断的(JAMP) http://www.jamp-info.com/ 46 15.主要国の対応状況 (その1) (1)欧州 ①化学業界 ・大手化学企業(BASF、Bayer、EvonikはREACH対応完了か) ・欧州化学工業協会(CEFIC): サプライチェーン対策マニュアルを整備。化学産業向けのビジネスコンサル業務開始。 ・ドイツ化学工業協会、ドイツプラスチック工業会: サプライチェーン対応ガイドラインを作成。 ②欧州自動車工業会(ACEA): REACH対応ガイドラインの作成。 ③欧州産業協議会ORGALIMEもサプライチェーン対応ガイドラインを作成。 ④資源・素材業界のコンソーシアム設立の動き(一部設立準備中): ・欧州ニッケル工業協会及びニッケル協会(Nickel Institute):ニッケル金属及びその化合物に係る3つ のコンソーシアムを設立(評価の質向上、コスト削減が狙い)。 ・欧州硫酸協会:硫酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄をカバーするコンソーシアムを設立中。40程度の製造 企業と接触。 ・欧州フルオロカーボン技術委員会メンバー:自主的なコンソーシアム結成の可能性について議論開始。 ・バナジウム関係製造3社がコンソーシアム形成中で他の10社も参加見込み。 ・欧州グリース製造・輸入者連合33社がコンソーシアム形成中。 ・火力発電所がセメント用添加剤のフライアッシュのような副産物登録の準備としてコンソーシアム形成 を計画中 ・その他、欧州工業鉱物協会(European Industrial Minerals Association)、金・銀、スズ・マグネシウム、 白金属金属(Platinum group metals)、タングステン、塩素系有機溶剤、塩化ビニルモノマー、シリコン・ シリカ・シリコン属、金属シリコン合金(Metal Silicon alloys)、調味料・香料、金属色素(Metal based Pigments)、アンチモン等でコンソーシアム形成の動きあり。 47 15.主要国の対応状況 (その2) (2)米国 ・ASTM International(米国材料試験協会)がREACHに関するサプライチェーン管理に関す る手引書の作成を目指して9月5日会議開催。 ・ANSI(米国規格協会)主催での全米製造者(NAM:米国製造者協会 14,000社加盟)の サプライチェーン・ネットワーク構築構想。 ・米国商務省によるREACH解説書(http://www.buyusa.gov/europeanunion/reach_116.pdf) (3)中国: ヘルシンキにヘルプデスク設置。 (4)韓国: ・ブラッセルに、KECE(韓国在欧州ビジネス協議会)と韓国化学工業会によるヘルプデスク 設置(なお、現時点では、ブラッセルには化学専門か不在で、HPコンタクト先は主に韓国) http://www.korea-helpdesk/eu/ 48 16.REACH規則解説・アンケートセミナー ○ 平成19年度事業「REACH規則の中小製造業への影響調査」(受託先:(社)産業環境管理 協会)により、地方経済産業局等と連携しつつ、全国各地で「REACH規則解説・アンケートセミ ナー」(REACH規則の概要説明、アンケート調査を実施するセミナー。主に中小企業向け)を、 以下の日程で開催。 11月 9日 11月19日 12月10日 12月11日 12月27日 1月15日 1月18日 1月24日 1月25日 1月29日 福島県産業振興センター(郡山) 日本電線工業会(東京) 東京商工会議所(東京) 中部経済局(エコプロネット)(名古屋) 中小企業基盤整備機構(東京) 日本接着剤工業会(東京) 印刷インキ・ワニス工業会(大阪) 福岡県工業技術センター(博多) 九州経済産業局(熊本) 日本塗料工業会(東京) 1月31日 2月 5日 2月 6日 2月 7日 2月14日 2月20日 2月21日 2月22日 2月27日 日本化学工業品輸出入組合(東京) 近畿経済産業局(大阪) 中部経済産業局(名古屋) 経済産業省講堂(東京) 北海道経済産業局(札幌) 中国経済産業局(広島) 中国経済産業局(岡山) 四国経済産業局(高松) 東北経済産業局(仙台) 49 (参考22)情報伝達スキームの構築(産業界の自主的取組) ○アーティクル・マネジメント推進協議会 (Japan Article Management Promotion Consortium、通称:JAMP) サプライチェーンにおける製品含有化学物質の適切な管理及び円滑な情報の開示を促進し、 もって産業の国際的な競争力確保に寄与することを目的して、 業種横断的な産業界の自主的 取組により、平成18年9月11日にアーティクル・マネジメント推進協議会(JAMP)が設立。 事務局は社団法人産業環境管理協会。 ○主な活動内容 ①アーティクル含有化学物質情報管理ガイドライン(管理ガイドライン)の作成、検証 ②アーティクル情報記述シート(AIS)の作成、検証 ③自己宣言に基づくアーティクル含有化学物質情報の基盤整備 ④アーティクル含有化学物質情報管理の国内・国際標準化の推進 ⑤その他上記の普及に向けた広報、中小企業支援 等 ○活動目標 ・我が国の産業の環境への積極的な対応による「ものづくり」基盤の強化を通じた国際的な競 争力の確保 ・アジア諸国を含めた製品含有化学物質の適切な管理の実現への寄与 ○会員数220(化学、電気・電子等企業210社、自工会等10団体)(平成20年1月28日現在) URL:http://www.jamp-info.com/ 50 (参考23) 主な参考情報ソース ○ 一般情報: ・ 欧州化学品庁:http://ec.europa.eu/echa/ ・ 欧州委員会(化学品局):http://ecb.jrc.it/reach/ ○ REACH本文: ・オフィシャル原文:http://reach.jrc.it/legislation_en.htm http://eur-lex.europa.eu/JOHtml.do?uri=OJ:L:2007:136:SOM:EN:HTML ・和訳:(社)日本化学物質安全・情報センター編 (前文・条文、付属書) 環境省 (前文・条文、付属書):http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html ○RIPs(運用ガイダンス): ・欧州化学品庁:http://reach.jrc.it/guidance_en.htm#GD_PROCC_I ・和訳: (社)日本化学物質安全・情報センター ○ REACH Q&A、関連情報: ・欧州委員会(化学品局)(2007年2月版): http://ecb.jrc.it/documents/REACH/REACH_PROPOSAL/Questions_and_Answers_on_REACH.pdf ・ 欧州化学品庁(2007年12月版):http://echa.europa.eu/reach/faq_en.html ・和訳: (社)日本化学物質安全・情報センター(2007年2月版) 環境省(概要、Q&A、アンケート等):http://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html ○その他有用情報: ・国が財産権を有する化学物質情報(試験データ)の提供: http://intra-policy2/chemical_management/kasinhou/kizonpro/challenge/jouhouriyou.pdf http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/06DB/index.htm ・欧州ヘルプデスク:欧州化学品庁:http://echa.europa.eu/reach/helpdesk/echahelp_en.html 欧州委員会:http://ec.europa.eu/enterprise/reach/helpdesks_en.htm ・(社)日本化学工業協会(①中小企業向けパンフレット、②登録業務代理人・委託試験を行うサービス機関等リスト等): http://www.nikkakyo.org/reach/ ・「REACH登録準備支援室」((社)産業環境管理協会):http://www.reachcenter.jp/ ・「アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)」:http://www.jamp-info.com/ 51
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