LCA講義全部 東北大学使用版

リスク評価は何のため?
それは幸福を得るため!
話題はダイオキシン、エコナから放射線まで
安井 至
国際連合大学名誉副学長・東京大学名誉教授
http://www.yasuienv.net/
(独)製品評価技術基盤機構理事長
1
“リスク”対応は打算か? いや知恵では?





ルカの福音書15:4~7
「あなたがたのうちに羊を百匹持っている人がいて、
そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を
野原に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し
歩かないでしょうか。見つけたら、大喜びでその羊を
かついで、帰って来て、友だちや近所の人たちを呼
び集め、『いなくなった羊を見つけましたから、いっし
ょに喜んでください。』と言うでしょう。」
これを、かけがえの無い愛、打算の無い愛、忍耐深
い愛、喜びを分かち合う愛だと教えている。
質問1:あなたならどうするか?
質問2:「羊」が「自分の生徒」だったら?
2
なぜリスク評価を行うか



生存しているということは、膨大な種類のリスクとの戦
いに勝利し、リスクを制御できているからである。
しかし、寿命との戦いには必敗。これが現実。
リスク評価を行う理由=生活の知恵の一種




平常時には無用なリスクは避ける → 常識
非常時にはリスクのトレードオフ → 過度に気にすると生じ
る経済的・精神的ストレスから逃れるのが賢い
最後は必敗という冷徹な事実を受け入れる → 哲学を得る
寿命が延び同時に哲学を得る → 幸福感の獲得
しかし、かなり高度な幸福感の獲得法であることは事実
3
生存のためのリスク

内因的リスク




もともとヒトという生命体は、体のサイズだけから言
えば、40年の寿命(本川達雄氏)。
しかし、優れたDNA修復能力によって、50年の寿命
を獲得した。
その後、他の生命体では有り得ない十分な栄養素の
摂取を行うことによって、そして、医療の充実によっ
て、現在の寿命となっている。
具体例


女性ホルモンは発がん物質である
酸素を呼吸することによって、DNAに多数の傷がつく
4
外因的リスクの例
すごいものが許可されている


それはタバコとアルコール
IARCのグループ1の発がん物質でそのリスクは
格段に高い
2002年に分かったすごい毒物



それはポテトチップス、かりんとうに!
IARCのグループ2Aのアクリルアミドを大量に含
んでいる
それでも歴史的にみて大丈夫だった?
5
IARCの発がん物質グループ1







放射性物質・放射線:14種類
食品関係:タバコ、アルコール飲料、アセトアルデヒド
、中国塩漬け魚、アフラトキシン:7種
職業:アルミニウム製造、鉄鉱石採掘、比較加工業、
塗装業、ゴム工業、製材業など
工業用化学製品:ベンゼン、ベンジジン、1,3-ブタ
ジエン、ダイオキシン、5塩化ベンゾフラン、塩ビモノ
マー、酸化エチレン、ホルムアルデヒドなど
紫外線:UVA、UVB、UVC、日焼けマシン、太陽光
化石燃料:石炭、石炭ガス化、コールタール、ピッチ、
コークス製造、未処理の鉱油、シェール油、煤。
植物:ビンロウの実、噛みタバコの成分
6
続き
 医薬品類:白血病治療薬、白血病抗がん剤、免疫抑
制剤、シクロスポリン、フェナセチン、DES、
 寄生虫:肝吸虫、肝ジストマなど
 ウイルス・細菌:ペルペスウイルス、ピロリ菌、B,C型
肝炎、ヒトパピローマウイルス、カポシ肉腫
 天然無機化合物:アスベスト、シリカ粉、エリオン沸石
 化学兵器:マスタードガス
 女性ホルモン:そのものとそれを用いた治療
まとめると
 工業用化学品16種、医薬品15種、放射線関連14
種がベスト3だが、食品やウイルス、医薬品も多い。
7
LNT仮説の実体は?
Linear Non-Threshold Theory
8
石川明氏の作成による
9
石川明氏の作成による
10
石川明氏の作成による
11
石川明氏の作成による
12
しきい値なし線形モデル(LNT)
= linear and non-threshold Model
線量・線量率効果係数は2
NITEのHP(化学物質)
放医研のHP(放射線)
13
過敏な反応なのか?
当然の反応なのか?
ICRP勧告の年次変化から
読み取れるものは?
14
日本の過去の“原発リスク”対応






原発が最初に導入された頃、日本の経済発展のためには、安
価で、かつ、石油のような大幅な価格変動が無いエネルギーが
必要だった。
原発の立地を受け入れた地域では、「100%安全」、「リスクは
ゼロ」だと思い込むことで、心の平安を得る。しかし、それが本当
ではないことはお互いに分かっている。
実際、3.11が起きるまでは、それなりに上手く行っていたが、
単なる偶然だったことが判明。
むしろ、「リスクはゼロ」故に、「より高度な安全」は存在しないと
せざるをえない。その追求は非論理的な行動になってしまった。
そのため電力会社の経営陣は、二重三重の非常用電源等への
追加投資を決断できなかった?
「リスクゼロ」が正しいという誤解が不幸の始まり。
15
福島県の小学校の校庭利用


小佐古東大教授の発言(緊急事態でも子どもに20mSvの
数値を適応すべきでない。1mSvで行くべき、などと4月29
日に記者会見し、内閣参与を辞任)で方向性が変わった。
「文科省は学童の学校での被曝を年間1mSv以下にする」
と表明。





1日8時間在校するとすれば、200日として1600時間
0.6μSv/時なら条件を満たす。
校庭は高線量なので、6月までは、校庭を使用しなかった。
校庭で遊ぶかどうかを、保護者の判断に委ねた。
保護者の判断は、半々だった。特に、母親は慎重派で、子
どもを校庭で遊ばせることを躊躇した。これは正しい対応で
はない可能性もあると思われる。
16
放医研のHPなど
17
この図の本来の読み方:ICRP流

緊急事態期・復旧期



100mSV/年以下であれば、それほどひどい
事態は想定されないので、対策を取る際に副
次的に生ずるリスクとのリスク・トレードオフを
考慮した上で、ALARA原則で対応すべし。
ALARA原則
=As Low As Reasonably Achievable
平常時

LNT仮説を証明できる訳ではないが、LNT仮
説を否定できるデータが存在しない以上、無
用な放射線の被曝を避けることが賢い。
18
非常事態でのリスクトレードオフ

移住するか、留まるか



校庭で子どもを遊ばせるか



外で遊ばせれば、放射線被曝量が増える
家の中ばかりでは、ストレスが増える
母親がどこまで細かく、被曝を減らす努力をするか



留まると放射線被曝量が増える
移住をすれば、それなりのストレスが増える
努力しなければ、被曝は増えるかもしれない
余り努力をすると、子どもも親も心理的に不安定
要するに、「被爆量」vs.「ストレス」のトレードオフ


「被曝」は発がん確率を上げる
「ストレス」は免疫機能を下げ、発がん確率を上げる
19
ICRPという組織をどう評価




ヒトは、DNAのすぐれた損傷修復能をもってい
るという事実を無視して、LNT仮説を用いてい
るため、安全サイドの結論になっている。
リスクを決して過小評価しないことを目的とし
ている学者集団。
ECRPのように、別の意図を実現するために、
リスク評価を行う団体とは根本的に異なる。
しかし、「謀略説」に囚われ、自ら情報難民に
なりたがる人が増え(内田樹氏の論説) 、
ICRPを支持すると「ご用学者」と呼ばれる。
20
データは未だに広島・長崎依存
以下の出展の大部分は
放射線と健康 (岩波新書) [新書]
舘野 之男 (著)
21
広島の爆心地から500m



爆心地から500m以内 生存者78名
500mだと被曝線量は20Gy(≒Sv)になる
1972年から調査開始






被曝線量の平均は2800mGy(≒mSv)
1972年から25年間の死亡者数45名
その平均寿命は74.4歳
cf.平均余命1975年:男71.8、女77.0
同上 1985年:男75.0、女80.8
同上 1995年:男76.7、女83.2
22
フォールアウトと放射化による環境放射線


広島・原爆のケース
放射化:中性子照射による(推測値)




フォールアウト:「黒い雨」=火災の炭素



1日後:10mSv/時
1週間後:10μSv/時
1年後:0.1μSv/時
定量的データはほとんど無いが、この影響で死者がで
ていることは確実
しかし、主な核種は、セシウム137やヨウ素131よりも
、さらに半減期の短い不安定核種だったのではないか
福島のケースよりも瞬間被曝に近い?
23
寿命調査(対象:広島・長崎)

1950年10月1日に登録した




被爆者 :82,000名
非被爆者:27,000名
合計 :109,000名
1958年当時、放射線の影響は白血病



結論:「いろいろなタイプの悪性腫瘍の中で、
白血病はもっとも確率の高い結末である」
1975年までの発症数 70例
1985年までの発症数 80例
24
LNT(linear non-threshold)仮説へ
1.遺伝影響(被曝の次世代への影響)





1953年、ワトソンらによるDNAの構造
遺伝子の確立 → 生殖細胞のDNAが放射線で損
傷を受ければ、当然、遺伝影響がでる
それ以前の状況 ショウジョウバエの突然変異への
放射線の影響 = 有り → 遺伝影響仮説
仮説(1)総線量に比例、(2)線量率には無関係
メガマウス実験(1951~1965)


線量率を下げると突然変異率が低下
照射後、受精までの時間を長くすると突然変異率が低下
遺伝影響仮説が揺らぐ
25
遺伝学調査 → 影響は見つからない





寿命調査と並行した被爆二世の調査
死亡率調査、細胞遺伝学調査、細胞生化学調査
(1)両親とも直接被爆(2000m以内)した子ども18
946名
(2)遠隔被爆した親(少なくとも一人が2500m以内)
の子ども16516名
(3)両親とも、広島・長崎以外の子ども17263名
遺伝的影響( =次世代への影響)は見つからなかった。
=生殖細胞への影響は被曝後6ヶ月から1年程度で消える
=ただし、胎児であれば、受ける影響は大きい
ICRP1977年勧告:「過去約20年に得られた知識からすると、
遺伝影響は重要ではあるけれども、飛び抜けて重要ではない」26
LNT(linear non-threshold)仮説へ
2.発がん影響

発がんの原因がDNAの損傷



少しでも損傷があれば、必ず発がんにつながる可能
性がある → 自然に“LNT”へ向かった
ICRPの1965年勧告



紫外線、化学物質、放射線、なんでも
「しきい値が存在しないという仮定、および、完全に線形で
あるという仮定は正しくないかもしれないことを知っている
が、この仮定によって過小評価をすることになる恐れはな
いことで満足している」。
すなわち、ICRPはLNTが過大評価であることを認識。
過大評価であるということを「コミュニケーション」に
組み込むにはどうするか?
27
LNT(linear non-threshold)仮説へ
2.発がん影響 その2


実は、放射線ががんを発生させることは、X線の発見
と医療への応用の課程で、すでに既知
ドイツのヘッセは1911年までにX線によって発生し
た皮膚がんを94例も集めていた。



広島・長崎の白血病の発症数よりも多い
そして、その症例から、レントゲンがんとでも言うべき
皮膚がんには、どうみても「しきい値」があると考えら
れていた。
しかも、その考え方は、1950年頃まで放射線傷害
を受けた放射線科医や放射線技師で繰り返し追認さ
れていた。
28
LNT(linear non-threshold)仮説へ
2.発がん影響 その3




DNAポリメラーゼの発見 1956年
米国アーサー・コーンバーグ
DNAの修復機構は、現時点でもまだ新発見の
続く課題
ICRPは影響を過小評価をしないことだけを考え
ている機関であるが、適正なリスクコミュニケー
ションを考えるべき機関であれば、DNAの修復
機構の進化を評価しているだろう。
具体的には、LNTを捨てているだろう。
29
LNT(linear non-threshold)仮説へ
2.発がん影響 その4

ICRP1977年勧告


LNT仮説があてはまる影響を「確率的影響」と定義した。
ICRP1990年勧告 被曝1Svあたり





1977年:発がん死亡リスクは125/10000
1990年勧告では500/10000と4倍にした
理由:1950年~1975年のがんの過剰発生数
135例が、1950~1985年では260例に。
理由:中性子線の被曝値を修正(湿度による吸収補正)
理由:相加予測モデルから、相乗予測モデルへ



自然発生率に一定数を加えるか、一定数を掛けるか。
発がんは長寿命化によって増えているので、相乗予測は大。
その他:致死性がんからすべてのがんを対象に
30
ICRP1990年勧告 死亡確率の年齢依存
公衆
従事者
31
LNT(linear non-threshold)仮説へ
2.発がん影響 その5

ICRP2007年勧告 余り変わっていない。



線量・線量率効果係数は依然として2
過剰のがん発生率は1シーベルトあたり5%
しかし低線量についての表現が変わっている


1990年勧告:何年もの期間にわたり放射線被ば
くをした場合、約 500mGy 以下の線量では重篤
な影響は起こりそうもない
2007年勧告:吸収線量が約 100mGy の線量域
まででは臨床的に意味のある機能障害を示すと
は判断されない
32
菅原努教授の中国での疫学
天然放射線が強い地域 2~3mSv/年
線量(mSv)
人数
相対リスク
95%信頼限界
0-99
142
1
100-199
261
0.83
0.65-1.06
200-299
211
0.98
0.76-1.26
300-399
263
0.9
0.68-1.18
82
0.66
0.45-0.98
>400
妥当な説明には、この地域は注目されているため、無料検診を
受ける機会が多いことを考慮すべきか?
33
ICRPが信用されていない?





放射線防護学者が様々なことを言う
それはデータが無いから
データがなければ、ICRPの2007年勧告のような結
論を出すことが、科学者として当然。
ECRRのように、原発反対主張のために、放射線影
響を意図的に過大評価する団体とICRPとの信頼性
の違いを誰も報道しない
東京新聞がECRRのバズビー博士の記事を載せる
理由は?
34
推定値:ICRP、ECRRの関係
限界被曝量 100mSv(瞬間)
限界被曝量 100mSv(1年?)
基本部会
修復機能を考えると
20mSv(1年)
ECRRの主張
内部被曝による
平常時 1mSv/年
35
化学物質の場合
それほどの論争はない
そもそもリスクをどう考えるか
36
暴露マージン 農水省のHPより
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/guide.html#17
37
発がん物質に関する安全係数
(暴露マージン)


安全係数=下限ベンチマーク用量/摂取量
発がん物質の場合、安全係数が10000倍あれ
ば、安全だと判定する。
IARCが示すヒトの発がん物質(物質以外多数)
=グループ1は108種類
 IARCの恐らくヒトの発がん物質
=グループ2Aは66種類

38
そもそもリスクとは?

“リスク=risk”の日本語訳は?



危険、冒険
危険、恐れ
それなら、dangerとどう違う?

類義語辞典によれば
danger 「危険」の意の最も普通で広義の語.

リスク=risk 自発的に冒すことによっ

て、付随して起きる危険.
39
キーワード「リスク管理」
ところが、これが日本人にはもっとも難しい
言葉である。なぜか?
 日本にはコタツがあるのに、欧米にはなぜ
ないのか? 実は「答」は同じ。
 農耕民族 vs.狩猟民族
 リスクを避ける習性:例外がフグ
 「穢れ=他人と違う」を嫌う
-> なじみの無いものへの警戒感が強い
 例えば、遺伝子組換え作物(GMO)
 新型インフルエンザ
40

リスク感覚=リスク分布
典型例:ノンフロン冷蔵庫、臭素系難燃剤
日本流
個人・空間etc
我慢型のリスク受容
欧州流
個人・空間etc
保険型のリスク受容
41
フグのリスクとチャレンジ





食中毒による死者の最大の原因は、いまだに
フグ。次がキノコ。
フグを食べることは、まさにリスクである。
世界的に、フグを食べる国は日本のみ。
フグ毒に関しては、世界で唯一チャレンジした
国民。例外的。
場合によっては、ヒジキもそうかもしれない

ヒジキは無害な有機ヒ素ではなく無機ヒ素を含む
42
ISO31000による新しい定義



ISO31000 リスクマネジメントが発行
2009年11月
もちろん任意規格である 認証は無い
リスクという単語の意味が相当議論された
(三菱総研 野口氏)
 risk=effect of uncertainty on objectives

「リスクとは、(その組織などの)目的に対して、不
確実性が引き起こす影響である」。
リスクとは悪い影響だ、と言っていない。
43
化学物質をなぜ意図的に使うか


それは日常生活を便利にするから
例えば、プラスチックが無かったら?





使える材料は、金属、木材、紙、ガラス、陶器などに限られ
る
食品の包装が無ければ、傷みが速くなる
家電製品の価格が、相当高くなる
少なくとも液晶テレビ・ノートパソコンは存在しない
もしも化粧品が無かったら?


昔は、鉛白、京紅、椿油、、、、
今は、多種多様な化学物質を使っている
44
白粉(おしろい)、京紅(べに)

白粉 中国から輸入された高級品は鉛白 (塩基
性炭酸鉛:有毒)であった。国内では、伊勢白(多
分、塩化第一水銀:有毒)。



鉛白は、1934年に禁止に。
お岩さんは鉛中毒?
京紅 ベニバナから



もともとは黄色
水にさらすと紅くなる
乾燥して粉末に

天然アカネ色素が禁止に。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten/040705/index.html
45
46
安全性の目安=安全係数



安全係数(マージン)とは
吊り橋の安全の判断は?
ワイヤーロープの強さと荷重


安全係数=ワイヤーロープが切れる荷重/想
定される最大の荷重
ワイヤーロープのように機械的な部品の場合、
安全係数が3倍程度以上でOKと考える
http://www.rope.co.jp/products/technical/th_03.html

工業製品であるため、特性がほぼすべてワイ
ヤーロープについて同じ
47
発がん物質に関する安全係数



安全係数=下限ベンチマーク用量/摂取量
発がん物質の場合、安全係数が10000倍あれば、
安全だと判定する。
発がん物質には2種類。


1.遺伝子に傷を付ける物質(本当の発がん物質)
2.発生したがんを増大させる
IARCが示すヒトの発がん物質
=グループ1は107種類 (04.03.11現在)
 IARCの恐らくヒトの発がん物質
=グループ2Aは58種類 (04.03.11現在)

48
エコナはなぜ自主的販売中止に


そもそもエコナ(花王製)とは何か
特別保健用食品
体脂肪に
なりにくい食用油


食油の分子構造を
人為的に変化
不純物として
グリシドール脂肪酸エステル

49
グリシドール脂肪酸エステル

事実その1



消化時に、グリシドールと脂肪酸に分解される。
このグリシドールには発がん性(グループ2A)が
あるとされている。
事実その2


パーム油などの他の食用油にも存在している
しかし、エコナには、比較的多いとされているパ
ーム油の30倍以上が含まれている
50
51
52
エコナの結論



エコナは不純物として、消化時に発がん物質を
発生する可能性がある物質を含む。
他の食用油にも含まれている物質ではあるが、
30倍ぐらい多い。
もしも、全量がグリシドールになると仮定し安全
係数を計算すると、通常10000倍必要とされ
ているが、どうも1000倍ぐらいしか安全係数
がないか?
53
真実はさらに複雑





グリシドールという物質は、水があると反
応して、グリセリン(無害)になる。
酸があると反応はさらに速い。
消化管には、水分は大量にある。また、胃
酸などがあり酸性。
グリシドールは消化管の中では不安定な
のではないか。すぐ分解?
となると、安全係数はやはり10000倍あ
るのではないか?
54
消費者委員会





特定保健用食品という「健康を謳う」食品に発がんの
可能性があるということは、大きな自己矛盾がある(
=社会の目的に反する)
「特定保健用食品を取り消すべき」と主張
花王は、自主的に取り下げた
しかし、「まともに化学物質のリスクの議論ができれ
ば勝てた」のか
論点が全く違うので、「単純なリスク論(=ヒトの健康)
でまともに戦って勝つ可能性がない」という理解を受
け入れたと推量
55
天然食品は安全なのか?
畝山智香子「ほんとうの食品の安全」より

タマネギを食品添加物として見なすと



ジャガイモの毒性がもし残留農薬由来ならすべて
回収の対象。




カレー一皿に許容される量は、0.016g
サラダなら、0.008g
ソラニンなどの毒性物質を含むため
5~50mg/kgで危ない
英国では、ヒジキは危険物(乾物は危険)
大豆(特に豆乳)に含まれるイソフラボンを環境ホ
ルモンだとして疑問視する国は多い
56
天然食品の安全係数





多くの天然食品について、人工物なみの毒性の試験
は行われていない。
そのため、確実なデータはないが、推測では、安全
係数が10~20程度のものが多いか。
それでも「安全な」理由は、まず、10倍も食べられな
い。
しかも歴史的に証明ずみ=文化的な継続性がある
ゆえに、「社会の目的に適合」。
しかし食塩など事実上安全係数の低いことが分かっ
ている食品もある。
57
野菜・果物は健康によい。しかし、、
だからといってすべての植物が食べられるわけで
はない。むしろ、食べられない。
 理由:植物は動けないから、、、
 植物は、一般に自己防衛のために、天然農薬を
せっせと作る。
 有機農法は極めて難しい。方法は唯一
=「分かち植え」:生産性が低い
 ネギ、ニラ、などの虫が嫌う野菜の活用
 一方、穀物、果実に毒は作らない

58
成分を濃縮した健康食品は?
不確実性が大きいエリア





100倍も濃縮すると、かなり怪しい。現在、人体実
験が進行中であるとも解釈(個人的)できる。
理論的に利かないことが分かっている健康食品も
多い。
代表例は食べるコラーゲン
→ (独)国立健康・栄養研究所のホームページに
詳細な情報がある。
http://hfnet.nih.go.jp/
59
日本人のリスク感覚は
日本のビジネスにも悪影響
60
オゾン層破壊物質で学ぶ
日本人のリスク感覚

モントリオール議定書による禁止








・クロロフルオロカーボン(特定フロン5種類)
・ハロン(消火剤に使われた3種の化合物)
・四塩化炭素(CCl4)
・1,1,1-トリクロロエタン(CH3CCl3)
・ハイドロクロロフルオロカーボン(40物質)
・ハイドロブロモフルオロカーボン(34物質)
・ブロモメチル(CH3Br)
・ブロモクロロメタン(CH2BrCl)
61
温室効果ガスとしてのフロン類

温暖化係数の比較
CFC
HFC

CFC-11
CFC-12
HCFC-22
HFC-23
HFC-134a
R410A
3800
8100
1500
11700
1300
1730
PFC
CF4
C2F6
6500
9200
SF6
SF6
23900
京都議定書では、PFC,HFC,SF6がF-gasと呼ば
れて、規制対象に。
62
自然冷媒が高く評価された





エコキュート(ヒートポンプ型湯沸器)にはCO2が
冷媒 2001年発売開始
冷蔵庫の冷媒は、ほぼ炭化水素になった
そのため、「脱フロン=フロンはダメだからゼロに
しよう」、が主要なトレンドとなった。
リスクゼロが大好きな日本メディアはこれを賞賛
一般市民も理由も分からず支持した
自動車用エアコンの冷媒の開発が手遅れに
http://www.marklines.com/ja/amreport/rep202_200309.jsp
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未来型冷媒 ダイキンのHPより
http://www.daikin.co.jp/csr/information/influence/05.html
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欧州の自動車用エアコン規制
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ゼロリスクに見えるものが好きな日本人
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植物起源のプラスチック
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水素燃料電池車
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CO2面は有利。
カーボンオフセットを考慮?
土地利用、水資源の限界を考えたとき、本当に持続
可能性が高いか?
走行時CO2排出量ゼロ。「出すのは水だけ」
Well to Wheelで、ハイブリッド並の効率
電気自動車
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走行時CO2排出ゼロ。効率も高い。
しかし、最大も問題は電池の性能・価格ではない。
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電気自動車最大の問題はコストでも寿命でもなく充電時間
電気自動車 16kWhのリチウム電池
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普通充電(200V) 充電時間7時間
設置コスト 65~90万。
中速充電(20kW) 充電時間1時間
設置コスト 250万円+工事費
急速充電(50kW) 充電時間30分
設置コスト 800~1000万円
5.2kWhのプラグインハイブリッドなら
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普通充電(100V) 充電時間 3~4時間
中部経産局作成の報告書 平成22年3月
クルマの未来とすそ野の広がりを考える懇談会
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IEA予測 EVとPHVの販売量
電気自動車 プラグインハイブリッド
プラグイン
ハイブリッド車
電気自動車
電力も低炭素
BSEは未だに全頭検査中
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世界で唯一の全頭検査を継続
国は費用負担を止めたが、自治体が自主
的に継続
年間2億円弱なので、それほどの金額で
はないが、別の使途に使うことができれば
、その方が良いのでは。
継続する理由は、「我が県単独では止める
ことはできない」。
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朝日新聞
9月13日
朝刊
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内田樹氏の紙面評価(朝日9.13)
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新しい情報格差ができつつある
良質の情報を選択的に豊かに享受している
「情報貴族」
良質な情報とジャンクな情報が区別できない
「情報難民」
格差は急速に拡大しつつあり、「情報無政府状態」が
出現しかねない。
「情報難民」の特徴
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話を単純にしたがる
もっとも知的負荷の少ない世界解釈法である陰謀史観に
飛びつく → 他の人は知らないという全能感を獲得
自らが情報難民であることを知らない
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ダイオキシンが最大の恐怖だった時代
1999年頃をどう振り返るか
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現在の状況と同じような感覚が残る
その当時も、同じような情報難民が多かっ
たのではないか。
ジャンク情報ばかりが報道された。それは、
ジャンク情報の方がインパクトが強いから、
という単純な理由だったのでは。
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理系的判断
明度で表現
白色
白
か
灰色
文系的判断
リスク理系
黒
数学理系
黒色
文系一般
まとめ
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リスクの評価は、なかなか難しい問題を含んでいる。
ある特定のリスクのみを削減することに大きな意味は
ないが、リスクを横断的に見ることは、余り行われな
い。
今回の大震災が契機となって、リスクの概念が一般
化することを期待していたが、現時点で、期待が消え
つつある。
国が信用されない状態、責任を誰も取らない政治家、
メディアがリスクに関して正しい報道をしない現状、こ
れは日本の不幸である。
正しくリスク評価ができる人は、情報貴族である。
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