リスク評価は何のため? それは幸福を得るため! 話題はダイオキシン、エコナから放射線まで 安井 至 国際連合大学名誉副学長・東京大学名誉教授 http://www.yasuienv.net/ (独)製品評価技術基盤機構理事長 1 “リスク”対応は打算か? いや知恵では? ルカの福音書15:4~7 「あなたがたのうちに羊を百匹持っている人がいて、 そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を 野原に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し 歩かないでしょうか。見つけたら、大喜びでその羊を かついで、帰って来て、友だちや近所の人たちを呼 び集め、『いなくなった羊を見つけましたから、いっし ょに喜んでください。』と言うでしょう。」 これを、かけがえの無い愛、打算の無い愛、忍耐深 い愛、喜びを分かち合う愛だと教えている。 質問1:あなたならどうするか? 質問2:「羊」が「自分の生徒」だったら? 2 なぜリスク評価を行うか 生存しているということは、膨大な種類のリスクとの戦 いに勝利し、リスクを制御できているからである。 しかし、寿命との戦いには必敗。これが現実。 リスク評価を行う理由=生活の知恵の一種 平常時には無用なリスクは避ける → 常識 非常時にはリスクのトレードオフ → 過度に気にすると生じ る経済的・精神的ストレスから逃れるのが賢い 最後は必敗という冷徹な事実を受け入れる → 哲学を得る 寿命が延び同時に哲学を得る → 幸福感の獲得 しかし、かなり高度な幸福感の獲得法であることは事実 3 生存のためのリスク 内因的リスク もともとヒトという生命体は、体のサイズだけから言 えば、40年の寿命(本川達雄氏)。 しかし、優れたDNA修復能力によって、50年の寿命 を獲得した。 その後、他の生命体では有り得ない十分な栄養素の 摂取を行うことによって、そして、医療の充実によっ て、現在の寿命となっている。 具体例 女性ホルモンは発がん物質である 酸素を呼吸することによって、DNAに多数の傷がつく 4 外因的リスクの例 すごいものが許可されている それはタバコとアルコール IARCのグループ1の発がん物質でそのリスクは 格段に高い 2002年に分かったすごい毒物 それはポテトチップス、かりんとうに! IARCのグループ2Aのアクリルアミドを大量に含 んでいる それでも歴史的にみて大丈夫だった? 5 IARCの発がん物質グループ1 放射性物質・放射線:14種類 食品関係:タバコ、アルコール飲料、アセトアルデヒド 、中国塩漬け魚、アフラトキシン:7種 職業:アルミニウム製造、鉄鉱石採掘、比較加工業、 塗装業、ゴム工業、製材業など 工業用化学製品:ベンゼン、ベンジジン、1,3-ブタ ジエン、ダイオキシン、5塩化ベンゾフラン、塩ビモノ マー、酸化エチレン、ホルムアルデヒドなど 紫外線:UVA、UVB、UVC、日焼けマシン、太陽光 化石燃料:石炭、石炭ガス化、コールタール、ピッチ、 コークス製造、未処理の鉱油、シェール油、煤。 植物:ビンロウの実、噛みタバコの成分 6 続き 医薬品類:白血病治療薬、白血病抗がん剤、免疫抑 制剤、シクロスポリン、フェナセチン、DES、 寄生虫:肝吸虫、肝ジストマなど ウイルス・細菌:ペルペスウイルス、ピロリ菌、B,C型 肝炎、ヒトパピローマウイルス、カポシ肉腫 天然無機化合物:アスベスト、シリカ粉、エリオン沸石 化学兵器:マスタードガス 女性ホルモン:そのものとそれを用いた治療 まとめると 工業用化学品16種、医薬品15種、放射線関連14 種がベスト3だが、食品やウイルス、医薬品も多い。 7 LNT仮説の実体は? Linear Non-Threshold Theory 8 石川明氏の作成による 9 石川明氏の作成による 10 石川明氏の作成による 11 石川明氏の作成による 12 しきい値なし線形モデル(LNT) = linear and non-threshold Model 線量・線量率効果係数は2 NITEのHP(化学物質) 放医研のHP(放射線) 13 過敏な反応なのか? 当然の反応なのか? ICRP勧告の年次変化から 読み取れるものは? 14 日本の過去の“原発リスク”対応 原発が最初に導入された頃、日本の経済発展のためには、安 価で、かつ、石油のような大幅な価格変動が無いエネルギーが 必要だった。 原発の立地を受け入れた地域では、「100%安全」、「リスクは ゼロ」だと思い込むことで、心の平安を得る。しかし、それが本当 ではないことはお互いに分かっている。 実際、3.11が起きるまでは、それなりに上手く行っていたが、 単なる偶然だったことが判明。 むしろ、「リスクはゼロ」故に、「より高度な安全」は存在しないと せざるをえない。その追求は非論理的な行動になってしまった。 そのため電力会社の経営陣は、二重三重の非常用電源等への 追加投資を決断できなかった? 「リスクゼロ」が正しいという誤解が不幸の始まり。 15 福島県の小学校の校庭利用 小佐古東大教授の発言(緊急事態でも子どもに20mSvの 数値を適応すべきでない。1mSvで行くべき、などと4月29 日に記者会見し、内閣参与を辞任)で方向性が変わった。 「文科省は学童の学校での被曝を年間1mSv以下にする」 と表明。 1日8時間在校するとすれば、200日として1600時間 0.6μSv/時なら条件を満たす。 校庭は高線量なので、6月までは、校庭を使用しなかった。 校庭で遊ぶかどうかを、保護者の判断に委ねた。 保護者の判断は、半々だった。特に、母親は慎重派で、子 どもを校庭で遊ばせることを躊躇した。これは正しい対応で はない可能性もあると思われる。 16 放医研のHPなど 17 この図の本来の読み方:ICRP流 緊急事態期・復旧期 100mSV/年以下であれば、それほどひどい 事態は想定されないので、対策を取る際に副 次的に生ずるリスクとのリスク・トレードオフを 考慮した上で、ALARA原則で対応すべし。 ALARA原則 =As Low As Reasonably Achievable 平常時 LNT仮説を証明できる訳ではないが、LNT仮 説を否定できるデータが存在しない以上、無 用な放射線の被曝を避けることが賢い。 18 非常事態でのリスクトレードオフ 移住するか、留まるか 校庭で子どもを遊ばせるか 外で遊ばせれば、放射線被曝量が増える 家の中ばかりでは、ストレスが増える 母親がどこまで細かく、被曝を減らす努力をするか 留まると放射線被曝量が増える 移住をすれば、それなりのストレスが増える 努力しなければ、被曝は増えるかもしれない 余り努力をすると、子どもも親も心理的に不安定 要するに、「被爆量」vs.「ストレス」のトレードオフ 「被曝」は発がん確率を上げる 「ストレス」は免疫機能を下げ、発がん確率を上げる 19 ICRPという組織をどう評価 ヒトは、DNAのすぐれた損傷修復能をもってい るという事実を無視して、LNT仮説を用いてい るため、安全サイドの結論になっている。 リスクを決して過小評価しないことを目的とし ている学者集団。 ECRPのように、別の意図を実現するために、 リスク評価を行う団体とは根本的に異なる。 しかし、「謀略説」に囚われ、自ら情報難民に なりたがる人が増え(内田樹氏の論説) 、 ICRPを支持すると「ご用学者」と呼ばれる。 20 データは未だに広島・長崎依存 以下の出展の大部分は 放射線と健康 (岩波新書) [新書] 舘野 之男 (著) 21 広島の爆心地から500m 爆心地から500m以内 生存者78名 500mだと被曝線量は20Gy(≒Sv)になる 1972年から調査開始 被曝線量の平均は2800mGy(≒mSv) 1972年から25年間の死亡者数45名 その平均寿命は74.4歳 cf.平均余命1975年:男71.8、女77.0 同上 1985年:男75.0、女80.8 同上 1995年:男76.7、女83.2 22 フォールアウトと放射化による環境放射線 広島・原爆のケース 放射化:中性子照射による(推測値) フォールアウト:「黒い雨」=火災の炭素 1日後:10mSv/時 1週間後:10μSv/時 1年後:0.1μSv/時 定量的データはほとんど無いが、この影響で死者がで ていることは確実 しかし、主な核種は、セシウム137やヨウ素131よりも 、さらに半減期の短い不安定核種だったのではないか 福島のケースよりも瞬間被曝に近い? 23 寿命調査(対象:広島・長崎) 1950年10月1日に登録した 被爆者 :82,000名 非被爆者:27,000名 合計 :109,000名 1958年当時、放射線の影響は白血病 結論:「いろいろなタイプの悪性腫瘍の中で、 白血病はもっとも確率の高い結末である」 1975年までの発症数 70例 1985年までの発症数 80例 24 LNT(linear non-threshold)仮説へ 1.遺伝影響(被曝の次世代への影響) 1953年、ワトソンらによるDNAの構造 遺伝子の確立 → 生殖細胞のDNAが放射線で損 傷を受ければ、当然、遺伝影響がでる それ以前の状況 ショウジョウバエの突然変異への 放射線の影響 = 有り → 遺伝影響仮説 仮説(1)総線量に比例、(2)線量率には無関係 メガマウス実験(1951~1965) 線量率を下げると突然変異率が低下 照射後、受精までの時間を長くすると突然変異率が低下 遺伝影響仮説が揺らぐ 25 遺伝学調査 → 影響は見つからない 寿命調査と並行した被爆二世の調査 死亡率調査、細胞遺伝学調査、細胞生化学調査 (1)両親とも直接被爆(2000m以内)した子ども18 946名 (2)遠隔被爆した親(少なくとも一人が2500m以内) の子ども16516名 (3)両親とも、広島・長崎以外の子ども17263名 遺伝的影響( =次世代への影響)は見つからなかった。 =生殖細胞への影響は被曝後6ヶ月から1年程度で消える =ただし、胎児であれば、受ける影響は大きい ICRP1977年勧告:「過去約20年に得られた知識からすると、 遺伝影響は重要ではあるけれども、飛び抜けて重要ではない」26 LNT(linear non-threshold)仮説へ 2.発がん影響 発がんの原因がDNAの損傷 少しでも損傷があれば、必ず発がんにつながる可能 性がある → 自然に“LNT”へ向かった ICRPの1965年勧告 紫外線、化学物質、放射線、なんでも 「しきい値が存在しないという仮定、および、完全に線形で あるという仮定は正しくないかもしれないことを知っている が、この仮定によって過小評価をすることになる恐れはな いことで満足している」。 すなわち、ICRPはLNTが過大評価であることを認識。 過大評価であるということを「コミュニケーション」に 組み込むにはどうするか? 27 LNT(linear non-threshold)仮説へ 2.発がん影響 その2 実は、放射線ががんを発生させることは、X線の発見 と医療への応用の課程で、すでに既知 ドイツのヘッセは1911年までにX線によって発生し た皮膚がんを94例も集めていた。 広島・長崎の白血病の発症数よりも多い そして、その症例から、レントゲンがんとでも言うべき 皮膚がんには、どうみても「しきい値」があると考えら れていた。 しかも、その考え方は、1950年頃まで放射線傷害 を受けた放射線科医や放射線技師で繰り返し追認さ れていた。 28 LNT(linear non-threshold)仮説へ 2.発がん影響 その3 DNAポリメラーゼの発見 1956年 米国アーサー・コーンバーグ DNAの修復機構は、現時点でもまだ新発見の 続く課題 ICRPは影響を過小評価をしないことだけを考え ている機関であるが、適正なリスクコミュニケー ションを考えるべき機関であれば、DNAの修復 機構の進化を評価しているだろう。 具体的には、LNTを捨てているだろう。 29 LNT(linear non-threshold)仮説へ 2.発がん影響 その4 ICRP1977年勧告 LNT仮説があてはまる影響を「確率的影響」と定義した。 ICRP1990年勧告 被曝1Svあたり 1977年:発がん死亡リスクは125/10000 1990年勧告では500/10000と4倍にした 理由:1950年~1975年のがんの過剰発生数 135例が、1950~1985年では260例に。 理由:中性子線の被曝値を修正(湿度による吸収補正) 理由:相加予測モデルから、相乗予測モデルへ 自然発生率に一定数を加えるか、一定数を掛けるか。 発がんは長寿命化によって増えているので、相乗予測は大。 その他:致死性がんからすべてのがんを対象に 30 ICRP1990年勧告 死亡確率の年齢依存 公衆 従事者 31 LNT(linear non-threshold)仮説へ 2.発がん影響 その5 ICRP2007年勧告 余り変わっていない。 線量・線量率効果係数は依然として2 過剰のがん発生率は1シーベルトあたり5% しかし低線量についての表現が変わっている 1990年勧告:何年もの期間にわたり放射線被ば くをした場合、約 500mGy 以下の線量では重篤 な影響は起こりそうもない 2007年勧告:吸収線量が約 100mGy の線量域 まででは臨床的に意味のある機能障害を示すと は判断されない 32 菅原努教授の中国での疫学 天然放射線が強い地域 2~3mSv/年 線量(mSv) 人数 相対リスク 95%信頼限界 0-99 142 1 100-199 261 0.83 0.65-1.06 200-299 211 0.98 0.76-1.26 300-399 263 0.9 0.68-1.18 82 0.66 0.45-0.98 >400 妥当な説明には、この地域は注目されているため、無料検診を 受ける機会が多いことを考慮すべきか? 33 ICRPが信用されていない? 放射線防護学者が様々なことを言う それはデータが無いから データがなければ、ICRPの2007年勧告のような結 論を出すことが、科学者として当然。 ECRRのように、原発反対主張のために、放射線影 響を意図的に過大評価する団体とICRPとの信頼性 の違いを誰も報道しない 東京新聞がECRRのバズビー博士の記事を載せる 理由は? 34 推定値:ICRP、ECRRの関係 限界被曝量 100mSv(瞬間) 限界被曝量 100mSv(1年?) 基本部会 修復機能を考えると 20mSv(1年) ECRRの主張 内部被曝による 平常時 1mSv/年 35 化学物質の場合 それほどの論争はない そもそもリスクをどう考えるか 36 暴露マージン 農水省のHPより http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/guide.html#17 37 発がん物質に関する安全係数 (暴露マージン) 安全係数=下限ベンチマーク用量/摂取量 発がん物質の場合、安全係数が10000倍あれ ば、安全だと判定する。 IARCが示すヒトの発がん物質(物質以外多数) =グループ1は108種類 IARCの恐らくヒトの発がん物質 =グループ2Aは66種類 38 そもそもリスクとは? “リスク=risk”の日本語訳は? 危険、冒険 危険、恐れ それなら、dangerとどう違う? 類義語辞典によれば danger 「危険」の意の最も普通で広義の語. リスク=risk 自発的に冒すことによっ て、付随して起きる危険. 39 キーワード「リスク管理」 ところが、これが日本人にはもっとも難しい 言葉である。なぜか? 日本にはコタツがあるのに、欧米にはなぜ ないのか? 実は「答」は同じ。 農耕民族 vs.狩猟民族 リスクを避ける習性:例外がフグ 「穢れ=他人と違う」を嫌う -> なじみの無いものへの警戒感が強い 例えば、遺伝子組換え作物(GMO) 新型インフルエンザ 40 リスク感覚=リスク分布 典型例:ノンフロン冷蔵庫、臭素系難燃剤 日本流 個人・空間etc 我慢型のリスク受容 欧州流 個人・空間etc 保険型のリスク受容 41 フグのリスクとチャレンジ 食中毒による死者の最大の原因は、いまだに フグ。次がキノコ。 フグを食べることは、まさにリスクである。 世界的に、フグを食べる国は日本のみ。 フグ毒に関しては、世界で唯一チャレンジした 国民。例外的。 場合によっては、ヒジキもそうかもしれない ヒジキは無害な有機ヒ素ではなく無機ヒ素を含む 42 ISO31000による新しい定義 ISO31000 リスクマネジメントが発行 2009年11月 もちろん任意規格である 認証は無い リスクという単語の意味が相当議論された (三菱総研 野口氏) risk=effect of uncertainty on objectives 「リスクとは、(その組織などの)目的に対して、不 確実性が引き起こす影響である」。 リスクとは悪い影響だ、と言っていない。 43 化学物質をなぜ意図的に使うか それは日常生活を便利にするから 例えば、プラスチックが無かったら? 使える材料は、金属、木材、紙、ガラス、陶器などに限られ る 食品の包装が無ければ、傷みが速くなる 家電製品の価格が、相当高くなる 少なくとも液晶テレビ・ノートパソコンは存在しない もしも化粧品が無かったら? 昔は、鉛白、京紅、椿油、、、、 今は、多種多様な化学物質を使っている 44 白粉(おしろい)、京紅(べに) 白粉 中国から輸入された高級品は鉛白 (塩基 性炭酸鉛:有毒)であった。国内では、伊勢白(多 分、塩化第一水銀:有毒)。 鉛白は、1934年に禁止に。 お岩さんは鉛中毒? 京紅 ベニバナから もともとは黄色 水にさらすと紅くなる 乾燥して粉末に 天然アカネ色素が禁止に。 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten/040705/index.html 45 46 安全性の目安=安全係数 安全係数(マージン)とは 吊り橋の安全の判断は? ワイヤーロープの強さと荷重 安全係数=ワイヤーロープが切れる荷重/想 定される最大の荷重 ワイヤーロープのように機械的な部品の場合、 安全係数が3倍程度以上でOKと考える http://www.rope.co.jp/products/technical/th_03.html 工業製品であるため、特性がほぼすべてワイ ヤーロープについて同じ 47 発がん物質に関する安全係数 安全係数=下限ベンチマーク用量/摂取量 発がん物質の場合、安全係数が10000倍あれば、 安全だと判定する。 発がん物質には2種類。 1.遺伝子に傷を付ける物質(本当の発がん物質) 2.発生したがんを増大させる IARCが示すヒトの発がん物質 =グループ1は107種類 (04.03.11現在) IARCの恐らくヒトの発がん物質 =グループ2Aは58種類 (04.03.11現在) 48 エコナはなぜ自主的販売中止に そもそもエコナ(花王製)とは何か 特別保健用食品 体脂肪に なりにくい食用油 食油の分子構造を 人為的に変化 不純物として グリシドール脂肪酸エステル 49 グリシドール脂肪酸エステル 事実その1 消化時に、グリシドールと脂肪酸に分解される。 このグリシドールには発がん性(グループ2A)が あるとされている。 事実その2 パーム油などの他の食用油にも存在している しかし、エコナには、比較的多いとされているパ ーム油の30倍以上が含まれている 50 51 52 エコナの結論 エコナは不純物として、消化時に発がん物質を 発生する可能性がある物質を含む。 他の食用油にも含まれている物質ではあるが、 30倍ぐらい多い。 もしも、全量がグリシドールになると仮定し安全 係数を計算すると、通常10000倍必要とされ ているが、どうも1000倍ぐらいしか安全係数 がないか? 53 真実はさらに複雑 グリシドールという物質は、水があると反 応して、グリセリン(無害)になる。 酸があると反応はさらに速い。 消化管には、水分は大量にある。また、胃 酸などがあり酸性。 グリシドールは消化管の中では不安定な のではないか。すぐ分解? となると、安全係数はやはり10000倍あ るのではないか? 54 消費者委員会 特定保健用食品という「健康を謳う」食品に発がんの 可能性があるということは、大きな自己矛盾がある( =社会の目的に反する) 「特定保健用食品を取り消すべき」と主張 花王は、自主的に取り下げた しかし、「まともに化学物質のリスクの議論ができれ ば勝てた」のか 論点が全く違うので、「単純なリスク論(=ヒトの健康) でまともに戦って勝つ可能性がない」という理解を受 け入れたと推量 55 天然食品は安全なのか? 畝山智香子「ほんとうの食品の安全」より タマネギを食品添加物として見なすと ジャガイモの毒性がもし残留農薬由来ならすべて 回収の対象。 カレー一皿に許容される量は、0.016g サラダなら、0.008g ソラニンなどの毒性物質を含むため 5~50mg/kgで危ない 英国では、ヒジキは危険物(乾物は危険) 大豆(特に豆乳)に含まれるイソフラボンを環境ホ ルモンだとして疑問視する国は多い 56 天然食品の安全係数 多くの天然食品について、人工物なみの毒性の試験 は行われていない。 そのため、確実なデータはないが、推測では、安全 係数が10~20程度のものが多いか。 それでも「安全な」理由は、まず、10倍も食べられな い。 しかも歴史的に証明ずみ=文化的な継続性がある ゆえに、「社会の目的に適合」。 しかし食塩など事実上安全係数の低いことが分かっ ている食品もある。 57 野菜・果物は健康によい。しかし、、 だからといってすべての植物が食べられるわけで はない。むしろ、食べられない。 理由:植物は動けないから、、、 植物は、一般に自己防衛のために、天然農薬を せっせと作る。 有機農法は極めて難しい。方法は唯一 =「分かち植え」:生産性が低い ネギ、ニラ、などの虫が嫌う野菜の活用 一方、穀物、果実に毒は作らない 58 成分を濃縮した健康食品は? 不確実性が大きいエリア 100倍も濃縮すると、かなり怪しい。現在、人体実 験が進行中であるとも解釈(個人的)できる。 理論的に利かないことが分かっている健康食品も 多い。 代表例は食べるコラーゲン → (独)国立健康・栄養研究所のホームページに 詳細な情報がある。 http://hfnet.nih.go.jp/ 59 日本人のリスク感覚は 日本のビジネスにも悪影響 60 オゾン層破壊物質で学ぶ 日本人のリスク感覚 モントリオール議定書による禁止 ・クロロフルオロカーボン(特定フロン5種類) ・ハロン(消火剤に使われた3種の化合物) ・四塩化炭素(CCl4) ・1,1,1-トリクロロエタン(CH3CCl3) ・ハイドロクロロフルオロカーボン(40物質) ・ハイドロブロモフルオロカーボン(34物質) ・ブロモメチル(CH3Br) ・ブロモクロロメタン(CH2BrCl) 61 温室効果ガスとしてのフロン類 温暖化係数の比較 CFC HFC CFC-11 CFC-12 HCFC-22 HFC-23 HFC-134a R410A 3800 8100 1500 11700 1300 1730 PFC CF4 C2F6 6500 9200 SF6 SF6 23900 京都議定書では、PFC,HFC,SF6がF-gasと呼ば れて、規制対象に。 62 自然冷媒が高く評価された エコキュート(ヒートポンプ型湯沸器)にはCO2が 冷媒 2001年発売開始 冷蔵庫の冷媒は、ほぼ炭化水素になった そのため、「脱フロン=フロンはダメだからゼロに しよう」、が主要なトレンドとなった。 リスクゼロが大好きな日本メディアはこれを賞賛 一般市民も理由も分からず支持した 自動車用エアコンの冷媒の開発が手遅れに http://www.marklines.com/ja/amreport/rep202_200309.jsp 63 未来型冷媒 ダイキンのHPより http://www.daikin.co.jp/csr/information/influence/05.html 64 欧州の自動車用エアコン規制 65 ゼロリスクに見えるものが好きな日本人 植物起源のプラスチック 水素燃料電池車 CO2面は有利。 カーボンオフセットを考慮? 土地利用、水資源の限界を考えたとき、本当に持続 可能性が高いか? 走行時CO2排出量ゼロ。「出すのは水だけ」 Well to Wheelで、ハイブリッド並の効率 電気自動車 走行時CO2排出ゼロ。効率も高い。 しかし、最大も問題は電池の性能・価格ではない。 66 電気自動車最大の問題はコストでも寿命でもなく充電時間 電気自動車 16kWhのリチウム電池 普通充電(200V) 充電時間7時間 設置コスト 65~90万。 中速充電(20kW) 充電時間1時間 設置コスト 250万円+工事費 急速充電(50kW) 充電時間30分 設置コスト 800~1000万円 5.2kWhのプラグインハイブリッドなら 普通充電(100V) 充電時間 3~4時間 中部経産局作成の報告書 平成22年3月 クルマの未来とすそ野の広がりを考える懇談会 67 IEA予測 EVとPHVの販売量 電気自動車 プラグインハイブリッド プラグイン ハイブリッド車 電気自動車 電力も低炭素 BSEは未だに全頭検査中 世界で唯一の全頭検査を継続 国は費用負担を止めたが、自治体が自主 的に継続 年間2億円弱なので、それほどの金額で はないが、別の使途に使うことができれば 、その方が良いのでは。 継続する理由は、「我が県単独では止める ことはできない」。 69 朝日新聞 9月13日 朝刊 70 内田樹氏の紙面評価(朝日9.13) 新しい情報格差ができつつある 良質の情報を選択的に豊かに享受している 「情報貴族」 良質な情報とジャンクな情報が区別できない 「情報難民」 格差は急速に拡大しつつあり、「情報無政府状態」が 出現しかねない。 「情報難民」の特徴 話を単純にしたがる もっとも知的負荷の少ない世界解釈法である陰謀史観に 飛びつく → 他の人は知らないという全能感を獲得 自らが情報難民であることを知らない 71 ダイオキシンが最大の恐怖だった時代 1999年頃をどう振り返るか 現在の状況と同じような感覚が残る その当時も、同じような情報難民が多かっ たのではないか。 ジャンク情報ばかりが報道された。それは、 ジャンク情報の方がインパクトが強いから、 という単純な理由だったのでは。 72 理系的判断 明度で表現 白色 白 か 灰色 文系的判断 リスク理系 黒 数学理系 黒色 文系一般 まとめ リスクの評価は、なかなか難しい問題を含んでいる。 ある特定のリスクのみを削減することに大きな意味は ないが、リスクを横断的に見ることは、余り行われな い。 今回の大震災が契機となって、リスクの概念が一般 化することを期待していたが、現時点で、期待が消え つつある。 国が信用されない状態、責任を誰も取らない政治家、 メディアがリスクに関して正しい報道をしない現状、こ れは日本の不幸である。 正しくリスク評価ができる人は、情報貴族である。 74
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