国際課税をめぐる課題 2007年7月9日 国際課税の概要 • 適正な課税の確保 – 非居住者・外国法人の課税範囲 • 国際的二重課税の調整 – 外国税額控除 国内法 : 中立(neutrality) 国内法+租税条約 • 国際的租税回避への対応 : 公平(equity)・公正(fairness) – – – – – 移転価格税制 国内法+租税条約 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制) 国内法 過少資本税制 国内法 租税条約を利用した租税回避行為の否認 租税条約 情報交換 租税条約(+国内法) • 投資交流の促進 : 活力(economic vitality) – 源泉地国課税の減免(配当・利子・使用料等) – 差別的取り扱いの禁止 租税条約 租税条約 国際的二重課税の調整 • 外国税額控除方式 – 限度額管理のための所得区分の方法 • 一括限度額管理 (我が国の現行制度) • 所得種類別管理、国別管理 – 間接外国税額控除(対象範囲 等) – 限度超過額・余裕枠の繰越等 • 国外所得免除方式 – 投資所得等、税額控除方式を採る範囲 – 国際的租税回避防止策(CFC等) 等 二重課税の調整:外国税額控除 • 外税控除制度の在り方に関する勉強会 – 参加 • • • • 経済界(6業種+経団連) 金融庁 財務省 経産省 – 2005年8月~ – あり得べき制度改正における論点について、共 通の頭の整理(適正化&緩和要望、インパクト) 二重課税の調整:外国税額控除 • 外税控除制度の在り方に関する勉強会 – 検討の視点(財務省) • 必要以上になされている控除への対応 – 彼我流用、外国法人税の範囲、内外所得の区分 • 我が国への配当還流という側面 • 事務負担への影響 – 制度設計上のバランス • 限度額管理:個別の管理 • 内外の区分:精緻な調整 大括りの管理 マクロ的な調整 – パッケージとしての制度設計の必要性 二重課税の調整:外国税額控除 • 限度額管理 – 限度額なし(“full credit”) – 限度額あり(“ordinary credit”) • • • • 国別 所得別 Passive / Active 一括 (“Overall credit”) 複雑 彼我流用 リスク小 ||| || || | | | | || || ||| 簡素 リスク大 • 子会社配当の取扱 – (部分的な)免除 – 間接外国税額控除 – 国内配当と同様の課税 等 二重課税の調整:外国税額控除 • 資本輸出中立(Capital Export Neutrality) 【内国法人の拠点立地の判断に、法人税が中立】 – 内国法人が拠点をどこに置いても、全世界所得 に対する総税負担(自国・外国)の割合が、国内 にのみ拠点がある内国法人の実効税率と同じ。 • 資本輸出中立(CEN)が成立しない局面 – 現地留保・再投資 – みなし外国税額控除 – 赤字法人 – 高負担国拠点 二重課税の調整:外国税額控除 • CEN不成立:現地留保・再投資 – 海外拠点が支店ではなく現地法人である場合、 間接外国税額控除の対象。 – 親会社である内国法人に配当して始めて外国税 額控除が機能。現地に留保され若しくは現地で 再投資された所得に関しては、資本輸出中立が 保持されない。 – 例えば、軽課税国で活動する子会社は、所得を 現地に留保・再投資する限りにおいて、軽課税の 恩恵を受ける。(→国外所得免除方式と同等) 二重課税の調整:外国税額控除 • CEN不成立:みなし外国税額控除(TS) – TSは資本輸出中立効果を減殺することが目的。 – 資本輸出中立が保持される外国税額控除制度 の下では、進出先国における税負担の軽重は内 国法人の総税負担に影響を与えないため、企業 誘致のための進出先国の優遇税制(税負担軽 減)は無効化。 – TSは、進出先国の優遇税制により減免された租 税を(外国税額控除の適用上)納付したものとみ なすため、この限りで資本輸出中立が崩れる。 二重課税の調整:外国税額控除 • CEN不成立:赤字法人 – 全世界所得が赤字で居住地国の納付税額が無く とも、特定の拠点が黒字であれば、黒字拠点の 所在地国で法人税を納付。 – 納付外国税額は居住地国において損金算入でき るが、後年度の税効果を考慮しても外国税額を 相殺するには至らない。(税額控除>損金算入) – したがって、全世界所得に対する総税負担は、黒 字拠点の税負担が重いほど重い。 二重課税の調整:外国税額控除 • CEN不成立:高負担国拠点 – “Ordinary credit”:居住地国における実効税率よ りも実効税率の高い国に進出した場合、両国の 実効税率の差に相当する部分は外国税額控除 で調整されない。 – “Full credit”:控除できない場合に還付することと すれば、資本輸出中立が保持される。 • 企業全体の(全世界における)税負担割合が居住地 国の実効税率となるまで、高負担国に拠点を置く企業 に補助金を付与することと同じ 二重課税の調整:国外所得免除 • 資本輸入中立(Capital Import Neutrality) 【進出先国で、同一の競争条件】 – 進出先国において、進出法人の居住地国がどこ であっても、国内源泉所得に対する総税負担(自 国・外国)の割合が同じ。 ※ 全ての国が国外所得免除方式を採用する場合 • 国外所得免除が貫徹されない局面 – 投資所得 – CFC (外国子会社合算税制) – その他の租税回避防止措置 二重課税の調整:国外所得免除 • 国外所得免除の不適用:投資所得 – 本国で直接受け取る海外からの投資所得(配当、 利子、使用料)については、原則として外国税額 控除方式(OECDモデル条約でも同様)。 – 投資所得については、源泉地国課税を減免して 最終的な課税を居住地国に委ねるのが国際潮 流であることから、国外所得免除の対象とする必 要が少ないばかりか、免除してしまうと投資所得 について二重非課税が蔓延する恐れがある。 二重課税の調整:国外所得免除 • 国外所得免除の不適用: CFC – 国外所得免除の下では、タックスヘイブン等を活 用した租税回避行為を野放しにする恐れ。 – 国外所得免除方式であっても、外国子会社合算 税制(以下、「CFC」)を措置するのが通例。 – CFCは、タックス・ヘイブンに留保された所得を (配当されたものとみなすなどして)課税所得に 加えるものであり、国外所得免除の例外。 二重課税の調整:国外所得免除 • 国外所得免除の不適用: その他 – 租税回避防止のための方策 • 条約締約国に進出した場合にのみ、国外所得免除。 • 軽課税国に進出した場合に、国外所得免除不適用。 等 – 免除となる国外所得に対する費用配賦 • 費用配賦ルールの設定の仕方が、企業の総税負担に 直結する。 二重課税の調整:制度比較(外税vs免除) • 外国税額控除と国外所得免除とで、差異が 生じない局面 – 現地留保 現地法人税負担のみ – 投資所得 必ず外国税額控除 – みなし外国税額控除 現地減免分が有効 – 高課税国への進出 調整されない ※外国税額控除の下で、限度額管理が緩やかな場合、調整さ れる場合もある。 二重課税の調整:制度比較(外税vs免除) • 外国税額控除 (資本輸出中立) 進出企業の競争条件悪化? – 資本輸出中立は進出先国選択に関する「中立」 であり、進出先国における進出企業の競争条件 が他国企業よりも劣る結果になる場合がある。 – 進出先国が(居住地国に比べて)軽課税の国で あった場合、国外所得免除方式の国の企業は進 出先国の税のみ負担すれば良いのに対し、外国 税額控除方式の国の企業の税負担は本国の実 効税率による。 二重課税の調整:制度比較(外税vs免除) • 国外所得免除(資本輸入中立) 「税の引下げ競争」の激化? – 資本輸入中立は海外企業を受け入れる国の側 から見た「中立」。進出企業の側から見れば、進 出先国の税負担が直接に企業全体の税負担を 左右するため、なるべく税負担の低い国に進出 する誘因が働く。 – したがって、(海外展開する企業を抱える)大国が 国外所得免除を採ると、税の引き下げによる外 国企業誘致競争が起きる恐れが強い。 二重課税の調整:制度比較(外税vs免除) 簡 素 国外所得免除 ? 複 雑 外国税額控除 「国外所得免除方式の方が簡素」は本当か? – 内外の費用配賦 – 移転価格 – 子会社配当 – 租税回避のリスク/防止策のコスト 非居住者受取利子の課税をめぐる問題 • 既存の非課税措置 – オフショア勘定 – レポ取引 – 振替国債 – 振替地方債 – 民間国外債(「ユーロ債」) 非居住者受取利子の課税をめぐる問題 • ダブルSPC(WSPC)スキーム – 使用地主義(租税条約) • PE帰属の利子について、国内源泉所得として課税権 – 債務者主義(国内法) • 内国法人の発行する社債の利子について、国内源泉 所得として課税権 • 外国法人の発行する社債の利子は、国内PEに帰属 する(負担する=損金)ものであっても、課税しない 外国投資家(非居住者)に対する 外国法人発行の社債の利子の課税 国内法 債務者が誰かに着目し、内国法人の 社債の利子は課税し、外国法人の社債 の利子は課税しないこととしている。 日本支店 社債の利子を負担するこ とにより、日本での課税所 得が減少する。 租税条約 調達した資金がどこで用いられている かに着目し、わが国で用いられた資金 に係る利子(日本支店が負担する利子) は、わが国で課税することとしている。 利子 投資家 (条約非締約国) 債務者が外国法人 であるため非課税 外国法人 (本 店) 利子 投資家 (条約締約国) わが国で用いられた 資金であるため課税 外国投資家(非居住者)に対する 外国法人発行の社債の利子の課税 債務者が外国法人 であるため非課税 利子 日本支店 社債の利子を負担するこ とにより、日本での課税所 得が減少する。 条約と国内法の規定の差異を利用した スキームにより、わが国の課税所得が減少 しつつ、利子にも課税できない結果となる。 SPC2 (条約非締約国) 外国法人 SPC1 (本 店) 投資家 直接利子を受け取れ (条約締約国) ば、課税 民間国外債利子非課税制度 内国法人が発行した民間国外債の利子又は発行差金で、非居住者又は外国 法人が支払を受けるものについては、所得税及び法人税を課さない。 (一定の本人確認が必要) 債券発行者 内 国 法 人 ①国内債の利子 起 債 国 内 ②民間国外債 の利子 (国外払い・ 国内交付) 国 市 場 ①源泉徴収 居住者・内国法人 ③民間国外債 の利子(国外 で直接受領) ②源泉徴収 (水際源徴) 外 起 債 市 場 ③源泉徴収の 上、総合課税 国外の 口座 ④民間国外 債の利子 ④本人確認の 上、非課税 非居住者・外国法人
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