被服人間工学 - 宮崎大学 情報基盤センター

被服人間工学
A0702003
川口 はるか
被服人間工学が対象としてきたもの
人間ー衣服系をどのように考え、出来上がった
衣服の着やすさや着心地を満足させるための
計画であり、それに具体的な形態をあたえるも
の
人体と被服の機能
動物はそのおかれた環境に適応した皮膚を持
つ。その役割は...
・身体を外傷から守る
・気候環境の適応
人間は被服によりこの機能を補っている。
今日の被服の役割

被覆能:被服として人体を覆いこむことのできる能
力を指し、被服の成形、着装、耐久の可能性を要素
として成り立っているものである。

防護能:被服が人体を被覆した際に、自然環境に対
し、生理的機能補助及び、肉体防御をなしうべき性
能で、保健・適応能力を必要とするものである。

装飾能:対人社会環境において、被服の外貌を整え
うべき能力で、外観・容儀の項目を備えていることが
必要である。
被服の機能
生体内機能:人体防護のための個体的な機
能
 個性的機能:人間表示のための社会的機能

被服構成からみた被服の機能
被服の人体に対する機能を、被服構成の立場
から端的に表現すると、protect of body 及び
smartness の二つの概念に集約される。
Protect of body
人体の外部よりの全ての人的・物的・心理的・
社会的攻撃及び内部よりの主として生理的・心
理的攻撃に対する防護を含んでいる。
Smartness
装身性・審美性の概念のほかに、自己満足的
な要求、(つまり他人に評価されなくても、自分
だけスマートであると自負しているもの)をも含
んでいる。
この二つの概念の重要度は、その時代時代の
人々の好みと社会の風潮により、決まる。
衣服の設計
衣服の設計をする際基本的に知っておかなけ
ればならないことは、人間の機能である。
設計に必要な知識を、人間の行動を中心にし
て整理しておくことが重要。
あと、目的の設定。
どんな人が着るのか?
(性別・年齢...)、用途
は?
衣服特性
復元性
被覆性
可動性
吸汗性
適合性
接触性
人間側の属性を
満足させるための
衣服の評価項目
操作性
人体の属性
関節可動域
皮膚伸縮度
筋膨隆度
骨の移動量
人体寸法
体型
体表面積
形態的属性
皮膚表面温度
運動機能的属性
生理的属性
不感蒸泄
発汗
分泌物
皮膚感覚
被服デザイン(設計)における人間因子
頸部
頸部は襟ぐりや襟の形態を決
める際のネックラインとして重
要な部位
肩部
衣服の物理的な重量を支持す
る部位。その適合性の良否が、
衣服の着心地を決めるといっ
て良いほど重要な部位。
上肢部
肩関節より遠位の部位で、その
運動範囲が大きく、さらに上腕
と前腕との間に肘関節があって、
日常の動作の際に絶えず屈
曲・伸展の行われる部位である。
体側部
上肢の運動により、体表面に
変化が現れる部位。
腹部
衣服設計上重要な基礎的基
準。ウエストラインの位置付け
や解釈の仕方は、流行変遷の
中でも様々。
腰部及び殿部
肩関節につぐ運動量の大きい股関
節があって、日常の動作、つまり体
幹の前後屈あるいは、立ったり座っ
たりの動作はすべて股関節が中心
となって行われる。
上半身について

頸部
頸部は体幹部と頭部との連続部位で、衣服デザイン
上、体幹部との境界線は、えりぐりやえりを決める際
のネックラインとして重要な部位である。
頸の長さ
頸部における
人体属性
頸の太さ
寸法属性
頸の周径
前中心傾斜角+後中心傾斜角
頸の傾斜角=
2
頸の傾斜角
(成人女子50人測定例による)
頸部は頸椎により支えられている。この頸椎が
脊柱のうち最もフレキシブルな部分なため、頸
部の人体属性は複雑。
頸部は前後屈・側屈及び旋回運動をする。
つまり
筋の形態が変化すると共に部位寸法がかわり、
さらに皮膚の伸展・収縮が行われる。
そこで...
運動による頸つけ根ま
わりの形態に対する配
慮も必要になる。
右図は成人女子の頸部の各運動
による頸付けまわりの運動を見た
ものである。
肩部
重量を支持する部位で、その適合性の良否が、
衣服の着心地を決めるといって良いほど重要
な部位。
肩部における人体属性
成人女子で平均
23°前後
★肩傾斜角度
★上肢の運動による肩幅の変化
肩先の上限は上肢挙上時に見られ
る肩幅の約1/3くらいまで頸部よりに
設定できる。
上肢の運動範囲や運動量、運
動機構などを考慮して設計す
る。
人間工学的要素を含んだ上着(例)
首の回りもわ
りとゆったりと
設計してあり
ます。
このウェアはランニング用に作られ
たものです。ランニングする際に快
適な構造になっています。
肩の運動量が多いの
で、ラグランスリーブ
にし、肩の運動がしや
すくなっています。
速乾性。水分(汗)を生地裏面に残さないよう
に点接触、かつ裏面から表面に水分が移動快
適素材を使っています。
紫外線から肌を守る素材
10分で肌が赤くなりはじめる場
合、その時間を200分に遅らせ
ることが可能
上肢部の運動によりす
れる部分は少し集め
の素材で作ってあるよ
うです。
下半身について
腰部及び殿部
肩関節につぐ運動量の大きい股関節があって、
日常の動作、つまり体幹の前後屈あるいは、
立ったり座ったりの動作はすべて股関節が中
心となって行われる。
股関節の運動特性およびその運動による
体表面の変化を知っておくことが大切。
股関節運動に伴う体表面の変化について調べ
る
石膏テープ法
石膏テープを体に貼り、それが固まってきたら
はがす。→展開する。
モデリング法
股関節運動に考慮した衣服の設計
股関節を90°屈折させ、大
腿を前挙上する動作
石膏テープ法で、この動作による
体表面の変化を見ると、特に前
面では鼠径溝から会陰部にかけ
ては横方向の伸展が大きい。
後面では殿溝から会陰部にかけ
ての変化が著しい。→殿溝が運
動により伸展し、60~80%の伸
展率を示すため。
車に乗るとき、階段を上がる時など
下股のつけ根の形態変化は
大きく、特に殿裂及び殿溝の
運動による変化の影響が
大きいため、衣服では、
つれやしわによって、
皮膚と衣服との間に
適合状態を作っている。
人間工学的要素を含んだボトムス(例)
その1
これは某ブランドで開発されたパンツです。
気になる腰まわりはフィット感のあ
るシルエットですっきり見せていま
す。
動きやすいストレッチ素材
にしてあります。
もちろんしわのよりにくい素材です。
何といっても、このパンツの魅力
は下着の柄が透けないことです。
その2
汗が拡散、蒸発する際の気化熱
を奪いやすいので、帰着時には清
涼感が得られる素材にしてある。
汗をすばやく吸収、拡散し外部へ放出し、
ウェア内をドライな状態に保つ。
動きやすいゆったりとした設計(ノンストレ
ス)