1C1 協創と地球環境保護の 時代

1C1
協創と地球環境保護の時代に向けた
知的財産権制度
2007年6月30日
日本知財学会第5回年次学術研究発表会
(SMIPS 特許戦略工学分科会)
久野 敦司
Email: [email protected]
Web: http://www.patentisland.com
1
いつまで、
環境に無関心に
生産と消費の拡大を
継続できるか?
環境に悪影響を与えない
ようにしながら、
多くの問題を解決するための
技術を急速に開発
できる体制が必要
協創と地球環境保護の
第2世代知財
2
環境に余裕がある間は、新分野を開拓してはそこでの
生産や消費を増加させていくことが産業の発達であった。
新分野の開拓を促進するため、最先端で開拓をした者に、
一定期間だけ開拓地を独占させるということにした。
開拓
3
人口が爆発的に増加している
出典: http://www.unfpa.or.jp/p_graph.html
4
大気中の二酸化炭素の濃度が急増している
出典: http://www.ipcc.ch/present/graphics/2001syr/large/02.21.jpg
5
地球が急速に温暖化しつつある
出典: http://www.ipcc.ch/present/graphics/2001syr/large/05.24.jpg
6
すさまじい、汚染の状況を示す衛星画像
(2005年9月の記事から)
中国国土資源部が中国の耕地の1割、
1230万㌶が汚染された水・過剰に使用さ
れる肥料・重金属・固形廃棄物などで汚
染されており、状況はますます悪化してい
ることを明らかにした。(2007年4月23日)
出典:
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifo
od/asia/news/07042301.htm
出典: http://yellow.ap.teacup.com/8727/478.html
7
環境が飽和すると、生産と消費の増大をさせることは
生活や幸福を破壊することになっていく。
新分野の魅力を用いて、環境破壊につながる活動を減少させるような制度設計
が必要。
技術が混み合ってくると独占排他権が技術開発を促進させるとは限らなくなる。
8
新しい知識の活用を最適制御する法的手段が知的財産権である
1. 価値創造の源泉は知識である。新しい知識である知的財産はエネルギー、物質、情報
の新しい組み合わせをもたらし、新しい価値をもたらす。
2. 新しい知識の活用を制御する法的手段が知的財産権である。
知識=基盤知識+新知識(知的財産)
対価:P1
エネルギー
物質
アクター
(制御、組み合わせの
実行)
対価:P2
エネルギー
物質
情報
情報
価値:A
価値:B
自分にとっての価値Aを有するエネルギー、物質、情報を対価P1を払って受け取り、
自己の有する知識を用いてそれらに作用を与えて外部にエネルギー、物質、情報と
9
して出力する。外部から見るとそれには価値Bがあり、対価P2が払われる。
新しい知識の活用を最適制御するという観点から
みると、
知的財産権が独占排他権でなければならないと
いう理由は無い。
産業の発達の概念も変化すべきである。
10
特許法などの産業財産権法の目的としている
「産業の発達」の概念を、
世界に先駆けてGNP拡大主義から地球環境保護や
幸福の増大に寄与できる概念に変革すべきである。
11
(産業の発達の新しい定義の提案)
当該産業が、次の全条件を満足する状態になることを、当該産業
での産業の発達と言う。
1. その産業の活動によって、全産業の環境負荷の総和が減少
すること
2. その産業の活動によって、一世代では回復不能な悪影響が
特定の国や地域の範囲にさえ、もたらされることがないこと
3. その産業の活動によって、人類の幸福の総和が増大し、人
類の不幸の総和が減少すること
4. その産業の活動によって、人類の物質的または精神的活動
の自由度と規模が拡大すること
12
知的財産権制度は、単細胞生物の行動原理である独占排他権を
中心とした「第1世代知財」から、多細胞生物の行動原理である協
創と環境保護を中心とした「第2世代知財」に進化をすべき時期に
来たと考える。
他のプレイヤーとの協力を行ない、
技術や事業を組み合わせることで新
市場の創造や整備を実現するという
「協創」
細胞膜で囲われた単細胞生物が
細胞膜内への他の生物の侵入を防
止しつつ周囲から栄養を取り込み
成長する
進化
ゼロサムゲームの単細胞生物
(独占排他権中心の第1世代知財)
プラスサムゲームの多細胞生物
(協創と地球環境保護の第2世代知財)
13
【第2世代知財】
1. 支払うべき実施料は、簡単な手続できちんと支払う。
(請求項記述言語を用いた自動的な侵害判定の実施によって、実施料の支払いの
要否が即座に決定される。供託によって実施料の支払いも可能。)
2. 実施料をきちんと支払う善意のライセンシーには合算実施料率上限制度が適用
され、事業が継続できなくなるほどの実施料支払いにはならない。
3. 公益(例:地球環境保護)に連動した知的財産権の行使を促進することで、
公益の実現に知的財産権制度を活用する
4. 実施料をきちんと支払おうとしない侵害者には、侵害罪が積極的に適用される。
14
権利範囲にはいるかどうかの自動的判定
請求項記述言語で記述された
製品やサービスの技術的構造
製品や
サービス
製品やサービス
の特徴をもたらす
技術的構造を
請求項記述言語
で記述する
請求項が、
請求項記述言語
で記述された特許
の
データベース
A
B
C
D
E
グラフマッチングによる包含関係
の判定
製品やサービスをカバーする
特許のリスト
15
【合算実施料率上限制度の概念図 】
実施料率の合計
善意ではない
ライセンシーに
適用される
通常の
利益率β
上限の
実施料率
γ
1
2
3
4
5
6
カバーする
特許の個数
善意のライセンシーに適用される(環境保護規制に違反している場合は不適用)
16
環境保護規制に違反し、知的財産権をも侵害する製品やサービス
への権利行使や侵害罪の適用が促進される。
環境保護規制に違反しない
侵害製品
損害賠償金として得られる金額は
通常のものの数倍になる。
環境保護規制にも違反
した侵害製品
環境保護規制に違反していた
場合には、自らの技術を開示し
ても知的財産権者からの明示
のライセンスを得なければ正当
なライセンシーにはなれない。
自らの技術を開示して実施
料を支払う善意のライセン
シーによる正当品
権利範囲
17
請求項記述言語については、
本日の17:30からの1G5の発表をご覧ください。
請求項記述言語(PCML)による特許文章の構造化
請求項記述言語の思想を応用したシステムについては、
本日の17:30からの1F5の発表をご覧ください。
特許明細書の作成・分析・評価を支援する統合的特許工学
支援システム
18