ブレイクスルー”ってどんな意味?

“ブレイクスルー”ってどんな意味?
ブレイク(break)は“壊す”、スルー(through)は“通り抜ける”で、
合わせて“突き抜ける、突破する”という意味になります。
何を“突き抜ける”のかというと、「壁」。
私たちは、個人的にも、家庭的にも、学校や職場といった場面でも、
また、社会や国といったレベルでも、様々な問題を抱え、行く手を
「壁」がふさいでいます。
この壁は何らかの方法で取り除かなければなりません。打ち砕くか、
穴を開けるか、動かすか、乗り越えるか、迂回するか、あるいはその
下にトンネルを掘ってっくぐり抜けるか...。いずれにせよ前進する
ためにはその壁の向こう側に到達しなければならないのです。
“ブレイクスルー”は壁の向こう側に到達するイメージの総称です。
“ブレイクスルー思考”の根幹は?
目的4
ブレイクスルー思考は数多くの提言(原則)を提供していますが、その
目的3
中でも根幹をなす考えが次の2点です。
目的2
・人間が作った道具や仕組みには必ず「目的」がある。
・一つの目的にはより大きな目的(=「上位目的」)がある。
目的1
例としてトンカチを取り上げてみましょう。
トンカチ(道具) 目的は?: 釘を打ち込む
その目的は?: 板を固定する
その目的は?: 犬小屋を作る
その目的は?: 犬を飼う
・
・
当たり前すぎて「だから何なの?」と言われそうですが、日常生活の
中でこれに反する(わかっていたら起こらないだろう)事件が多発して
いるのです。
典型例1:マニュアル人間
典型例2:組織間の対立
典型例1: マニュアル人間
有名な笑い話があります。
マクドナルドの店員「いらっしゃいませ」
客「ハンバーガーを30個ください」
店員「ありがとうございます。お持ち帰りですか、それともこちらで
お召し上がりになりますか?」
マニュアルの1行1行にも「目的」があり、「目的の目的」があります。
上記の持ち帰りかどうかの質問も、目的を考えればこの場合、不適
切であることがわかります。
にもかかわらず、「マニュアル通りにしています」「言われた通りにし
ています」(だから私は悪くありません)という方が多いようです。
【応用】
上司から依頼されたレポートを作成する際、「目的は何か?」「その
目的の目的は何か?」を自問することにより、作成の方法や出来上
がったレポートの良否を、上司の視点で判断できるようになります。
典型例2: 組織間の対立
一般に営業部と製造部は仲が良くないようです。
営業部「製造部が良い製品を安く作らないから売れない」
製造部「営業部に販売力がないから売れないのだ」
営業部も製造部も同じ会社に属していて、それぞれの部門の独自の
目的はあるものの、その上位目的は「会社の業績を上げる」ことです。
上位目的の視点(上記のケースでは社長の視点)で対立点を眺めれ
ばどこかで合意せざるを得ないことが分かり、最善の選択肢を見つ
けることが出来ます。
【応用】
現在、官公庁でも私企業でも、多くの場合縦割り組織になっていて、
組織間の対立は日常茶飯事です。ご自身がそのような対立に巻き込
まれても、上位目的の視点を持っていれば冷静に対処でき、関係者
全員が納得する提案ができるようになります。
“ブレイクスルー思考”がなぜ必要?
ある統計によると、「問題」と呼ばれるものが1990年にはxx万件、そ
れが10年後の2000年には倍の△△万件に増えていたとのこと。
2010年の数字はわかっていませんが2000年の時より増えているこ
とは間違いありません。
近代文明の発展を支えてきたのは真実や事実を思考の出発点とす
る「科学的思考」です。しかしその「科学的思考」もってしても、現在の
問題の数を減らすことが出来ないことがはっきりしてきました。
【科学的思考で対処できない問題】
・真実や事実をいくら追究しても対処できない問題
例:いじめ、高齢化社会、沖縄の米軍基地、国境問題
・科学的思考自体が引き起こしている問題
例:部分最適化、もぐらたたき現象、対立文化
結局、問題を起こすのも人間、問題と感じるのも人間なのです。
まず人間ありきのブレイクスルー思考が必要になってきた理由です。
“ブレイクスルー思考”と“科学的思考”の違いは?
水の滴る水道を見て皆さんは何を考えるでしょうか?
科学的思考に長けた方なら、すぐに蛇口の構造を思い巡らし、「多分
パッキンが古くなっているのだろう、交換しなければ..」と考えます。
これに対し、ブレイクスルー思考家は 「水道の蛇口という仕組みの
目的は何かな?..必要な時に必要な量だけ水を出し、不要な時は
止める..かな、だとすればコックやパッキンに囚われる必要はない」
...
科学的思考が目に見える「実態」に焦点を当てて事態を認識するの
に対し、ブレイクスルー思考では目に見えない「目的・機能」に焦点を
当てて事態を認識します。つまり、「思考」を大きく左右する「認識」そ
のものが全く異なるのです。ブレイクスルー思考が初めて紹介された
とき「パラダイムチェンジ(思考の枠組みを変える)」と称された所以で
す。
実例:臼杵市役所(平成8年)のケース
事例: 臼杵市役所(平成8年)のケース
後藤氏は平成8年1月26日に大分県の臼杵市長に就任しました。前市長が長い
闘病の末死去したことに伴う選挙の結果でした。市の運営はほとんど最悪と言って
良い状態でした。以下はその内容です。
財政状態
経常収支比率 93.0% 全国663市の中でワースト7
起債制限比率 15.7% ⇒ 赤字再建団体転落の瀬戸際
= 市役所運営にお金がかかりすぎる
市役所所員の
仕事振り
ダラダラ仕事、仲間でおしゃべり
課長は仕事をしないで、新聞読んで印つく人
電話の応対が悪い、横柄、不親切
陳情に対して、「予算がないからできません」
苦情は聞かない、言い訳名人、たらい回し
課題、負担は先送り
前例習慣どおり、工夫しない、体を動かさない
市民からの評判 市役所の始業時(8時半)と終業時(5時)は市役所周辺の交差点
はラッシュの交通渋滞。
電話しても無愛想な対応。
何を頼んでも「お金が無いから無理です」
=一言でいうと、「税金ドロボー」、「市厄所」
企画計画学会 学会誌Vol xxより抜粋
そもそも「市役所」は何のための仕組み(組織)なのでしょうか?
その中における「市長」とはどんな役割なのでしょう?
その中における「市役所所員」はどうあるべきでしょう?
財政状態はどうあるべきでしょう?
市民からの評判はどうあるべきでしょう?
これらの質問への回答を考えた上で「後藤市長の報告」をご覧ください。
事例: 後藤市長の報告(平成12年)
ビジョン
市役所・・・市民のお役に立つ所、『「市厄所」から「市役所」へ』
⇒ 「日本一の市役所をつくる」
市長・・・市民から市役所へ派遣された特派員
= 市職員と目的を同じくしながら立場が違う「パートナー」
就任即行ったこと 就任式を終業後(5時過ぎ)に開催
市長報酬の3割カット
黒の市長専用高級車不使用 ⇒ 競売
大声の挨拶運動
財政対策
平成8年度(残り2ヶ月)の起債制限比率15%以下を目標
進行中の工事、業務もストップ
「予算は余産」・・・予算は使い切るものではなく、余らせるもの
平成9年度 14億の清掃センター、陸上競技場をキャンセル
簿外債務の処理
組織変更
日本一の市役所をつくる係の新設
ゴミ端会議係の新設
保健士(婦)を秘書室に配属
取組中のテーマ 市役所の機構改革
生涯現役のまちづくり計画
「バランスシート」「サービス形成勘定」「サービス・コスト・負担・
目的・成果分析システム」の作成
情報先端都市づくり
中心市街地活性化計画
結果
少ない人数、最小の経費で市役所運営
⇒ 起債制限比率 15.7% ⇒ 13.4%
市民に評価される仕事振り
・てきぱき仕事、市民の先頭に立って体を動かす
・課長は最も仕事する実務の責任者
・明るい挨拶、親切応対、丁寧電話
・「予算が無くても知恵と工夫と熱意でカバー」
・すぐやる、間違いは謝る、たらい回しにしない
現場主義、自分で出かける、夢を追う
企画計画学会 学会誌Vol xxより抜粋
その後の臼杵市を知りたい方は、は以下のURLをクリック
フロム市長トゥ市職員(平成16年)
http://www.city.usuki.oita.jp/from2/0648.htm
臼杵市Home Page(現在)
http://www.city.usuki.oita.jp/
“ブレイクスルー思考”があれば“科学的思考”はいらないの?
ブレイクスルー思考を学んでも、科学的思考が不要になるわけでは
ありません。
仕組みには必ず目的がありますが、逆に言うと目的を達成するため
には必ず仕組みが必要になります。そしてこの「仕組みづくり」には
科学的思考が欠かせないのです。
科学的思考の本質は「再現性」にあるといえます。Aという条件が
そろえば、必ずBという現象が起きる、あるいはCという原因が
あれば、必ずDという結果になる..
車のハンドルは「車を思い通りの方向に操る」仕組みですが、左に
曲がろうと思って、ハンドルを左に回したのに、まっすぐ行ったりある
いは反対の右に曲がってしまったのでは事故だらけになってしまい
ます。科学的思考を使って、左にハンドルを回せば車が左に曲がる
という現象が100%再現される仕組みが必要です。
「目的」を考えるのはブレイクスルー思考ですが、目的を達成するた
めの「仕組み」を考える時は科学的思考と言えます。
両思考を兼ね備えた「ハイブリッド頭脳」が理想です。
“ブレイクスルー思考”はどんな時に有効?
主に以下の方々にお勧めです。
1) 組織に属していて、ご自身や部下の業務の生産性向上を
考えている方
2) 組織のVisionやMissionを考える立場にいる方
3) 問題を解決したい、あるいは問題解決の方法をマスターしたいと
考えている方
4) 新商品や新サービスの開発を担当されている方
5) 新しいコンセプトを考え付いたが、それを実現する仕組みが
思いつかない方
⇒ 「仕組みづくりは科学的思考で!」なのですが、アイデアは
必要です。日比野博士創出の「パパママ理論」は「類比」を
利用した新しい創造技法です。