PEACE Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education Module7 : 消化管閉塞 消化管閉塞 シナリオ 42歳女性 卵巣がん、腹膜播種の患者 嘔気・嘔吐がつらいと訴えている 画像検査にて消化管閉塞が強く疑われ る 臨床疑問 評価 消化管閉塞はどうやって評価するか ? 治療 薬物治療は何を使うのか? 非薬物的な治療法は? メッセージ がんによる消化管閉塞の患者に手術が 可能かどうか評価する もし、患者が手術不可能であれば、薬 物 投与によって満足できる症状コン トロールも可能である 胃管が必要な場合は、苦痛のない消化 管ドレナージを考える 目的 この項目を学習した後、以下のこ とができるようになる 消化管閉塞の評価 消化管閉塞の薬物療法 消化管閉塞の非薬物療法 消化管閉塞に対するケアと説明 背景 ~定義・罹患率~ 消化管閉塞とは、消化管における食物 と 液体成分の通過の機械的または機 能的な閉塞を指す 消化管閉塞の罹患率は、卵巣腫瘍また は大腸がんにおいて4~25%といわれ 、進行がん患者では、その頻度は約42 %である 背景 ~病態生理~ 消化管閉塞の発症には、多くのメカニズ ムが関係しており、その現れ方や原因も 様々で ある 原因としては、原発腫瘍や手術、化学療 法、放射線治療後の再発腫瘍によるもの がある 炎症性浮腫、便秘、脱水や便秘になりや すい薬剤(例:オピオイド、抗コリン薬 )は消化管閉塞を悪化させる 評価 消化管閉塞による嘔気・嘔吐か確認 病歴・腸蠕動・X線所見:麻痺性イレウス、便秘 を除外 身体所見:腸蠕動を確認 手術記録・紹介状からの病歴、腹部X線:閉塞部 位を推定 優勢な臨床症状 薬物療法の効果 上部消化管閉塞 嘔気・嘔吐 不良。制吐のために、ドレナージが必要 なことが多い 下部消化管閉塞 腹部膨満、疼痛 ドレナージを使用せずに、苦痛を緩和で きる場合が多い 消化管閉塞による嘔気・嘔吐の治療ステップ 制吐薬 完全閉塞・蠕動痛のある 患者には使用しない サンドスタチン ±ステロイド 消化管蠕動促進薬 (プリンペラン) 輸液 100mL+異常喪失量 鎮痛(NSAIDs、オピオイド、ブスコパン) 消化管ドレナージ STEP1 疼痛の治療ステップ STEP2 STEP3 消化管閉塞による嘔気・嘔吐の治療ステップ STEP1~3に共通する治療 手術・内視鏡的治療の適応を外科・消化器科に相 談 輸液 1,000mL/日+異常喪失量を目安に行う 2,000mL/日以上の輸液:腹水、浮腫、胸水を悪化さ せることが多い 鎮痛 鎮痛を優先させる場合:モルヒネを投与 腸管蠕動を維持したい場合:フェンタニルを投与 蠕動痛がある場合:ブスコバンを追加 消化管ドレナージ 消化管閉塞による嘔気・嘔吐の治療ステップ STEP1:消化管蠕動促進薬 不完全閉塞:プリンペランを投与 蠕動が亢進、プリンペラン投与後に腹痛が生 じる:消化管蠕動促進薬は投与しない STEP2:サンドスタチン±ステロイド サンドスタチンとリンデロンを併用し、3~7 日で効果判定→無効であれば中止 STEP3:制吐薬 具体例 ~STEP1~ プリンペラン(10mg/A)持続静 注・ 皮下注 1A/日から開始。蠕動痛、錐体外路症状が ない範囲で、慎重に6A/日まで増量 完全閉塞・蠕動痛のある患者には使用しな い ナウゼリン坐薬(60mg) 2 個/日 分2 具体例 ~STEP2~ サンドスタチン: 0.3mg/日 持続皮下・静脈注射、間欠的皮 下・静脈注射(0.1mg×3) 必要に応じてリンデロンを併用 4~8mg/日 分1(朝)~分2(朝・昼)で 開始。3~5日で効果がみられれば0.5~ 4mg/日に減量維持効果がなければ中止 具体例 ~STEP3~ 抗ヒスタミン薬(クロール・トリメト ン、アタラックスP) 持続静注1A/日から開始。眠気ない範囲 で、4A/日まで増量 ドパミン拮抗薬(セレネース、ノバミ ンなど) 持続静注・皮下注0.5A/日から開始。 眠気、錐体外路症状がない範囲で、2A/ 日まで増量 判定効果とコンサルテーション 効果判定 3~7日で効果判定 治療目標の設定 薬剤でコントロール 症状の消失が達成できない場合:経鼻胃管の使用を考 慮。ただし、処置内容とその効果に対して、患者と相 談して 満足できるようにする コンサルテーションのタイミング 嘔気・嘔吐が緩和されない 使用した経験のない制吐薬を投与する 嘔気・嘔吐のケアと説明 嘔気・嘔吐についての説明 環境調整 嘔気・嘔吐を誘発するような 、 においへの配慮を行う • • • 吐物の臭気を部屋にとどめな い 食事のにおい、香水のにおい を避ける 温かい食物はにおいが強くな るので注意 衣類による締め付けがないか も確認 嘔気・嘔吐のケアと説明 嘔気・嘔吐についての説明 環境調整 消化を助けるために右を下にし、少し頭を高くして横にな ると、嘔気が起こりにくいことがある 嘔気・嘔吐のケアと説明 食事の工夫 嘔気・嘔吐が強い場合は、食事を控えるよう指導する 症状が緩和されてから、症状を悪化させない食事を、患者 ・家族と検討 口腔のケア 毎日、口腔内を観察して、口内炎、口腔内汚染の有無を確 認し、さらに、水分や氷片を用意し、口渇への対処を行う 便秘対策 嘔気・嘔吐が便秘による場合は、積極的に排便管理を行う もともと、患者の生活習慣にある便秘対策を確認し、それ を活かしながら薬剤によるマネジメントの必要性も伝えて いく リラックス・気分転換 FAQ 胃管がつらいです 胃管の挿入が必要か確認(例:排液がないのに挿入されてい る) 胃管を抜去するために、サンドスタチンなどの治療を行っ たか 確認 PEGやPTEG の適応があるか確認 胃管を軟かく細いもの(口径の細い経腸栄養チューブなど )に 変更 鼻翼にかからない固定方法にする 一時的に挿入して、用手的に吸引し、抜去する方法を検討 する 胃管を使わずに嘔吐することを好む患者もいる シナリオに戻ると・・・ 42歳女性 卵巣がん、腹膜播種の患者 嘔気・嘔吐がつらいと訴えている 画像検査にて消化管閉塞が強く疑われる プリンペラン3錠分3で症状は少し改善したが、 満足できる結果ではなかった リンデロン4mg(iv)、サンドスタチン0.1mgを 1日3回、間欠的皮下注射を併用し症状改善した まとめ がんによる消化管閉塞の患者に は、 手術適応がないか検討する 手術が不可能であれば、薬物投与によ り 症状コントロールが可能である 胃管が必要な場合は、苦痛のない消化 管ドレナージを考える
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