LSA 手法を用いたソフトウェア 変更情報のクラスタリング手法 井上研究室 博士前期課程 2 年 今枝 誉明 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 Software Engineering Laboratory, Department of Computer Science, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University 1 研究の位置付け ソフトウェア開発・保守コストの増大 ⇒ 版管理システムなどの活用 ソフトウェアを効率よく開発・管理 開発情報が 蓄積される 過去の開発情報を参考にして,開発・保守を効率化 開発者が必要とする情報を的確に取得するのは困難 蓄積された情報は膨大 版管理システムに蓄積された 変更記録の間の関連を抽出する 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 2 発表構成 版管理システム 問題点と本研究の目的 提案手法 適用事例 まとめと今後の課題 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 3 版管理システム C 変更 せず C B A 変更 変更 B’ A’ チェック アウト A A' コミット B B' C 「~の欠陥を 修正した」 リポジトリ 版管理システムの用語 リビジョン: コミット時にリポジトリに作成される,ファイルの状態 リビジョンには連続した番号 (リビジョン番号) が割り振られる コミットトランザクション: コミット時の変更群 コミットログ: コミット時に付記できる,変更理由等を記述した文章 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 4 発表構成 版管理システム 問題点と本研究の目的 提案手法 適用事例 まとめと今後の課題 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 5 変更記録を参考にする際の問題点 システムに蓄積された過去の変更を参考にする 例) 「あの時の欠陥修正ではどのような変更を施したのだろう?」 ↓ 同時に参照すべき変更が存在することがある その変更の影響で,他の箇所が変更されていた その変更で欠陥を混入させてしまい,後に修正されていた そのまま参考にすると同じ欠陥を混入させてしまう 変更を個別に見るだけでは誤解が生じうる ⇒ 開発者は関連する変更を把握する必要がある 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 6 目的と方針 関連する変更を抽出する ある変更と同時にどんな変更がなされているか ある変更が後に何処に影響を与えているか 方針: 蓄積された変更を何らかの方法でグループ化する コミットログや変更箇所中に出てくる単語に着目 変更理由等 2007/02/19 識別子, 変更作業を特徴付けて コメント文等 いるのでは? コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 7 発表構成 版管理システム 問題点と本研究の目的 提案手法 適用事例 まとめと今後の課題 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 8 提案手法の概要と流れ 変更を,単語に着目してクラスタリングする 1. 版管理システムのリポジトリから,コミットトランザク ションを取り出す 2. 潜在的意味解析手法 (LSA) によりトランザクション間 の類似度を算出し,クラスタリングする リポジトリ 2007/02/19 トランザクション コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 クラスタ 9 手順 1 コミットトランザクションの取り出し トランザクション抽出 -if (0 <= value) { +if (0 <= value && value < 10) { …… 直前のリビジョンから削除された行 直前のリビジョンから追加された行 リポジトリ 変更情報 ・ コミットログ ・ 変更内容 (差分) 等 トランザクション (同時にコミット された変更群) の集合 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 10 手順 2 トランザクションのクラスタリング トランザクションの クラスタリング トランザクションの集合 クラスタの集合 1. LSA を用いて,トランザクション間の類似度を計算 2. クラスタリング (階層的クラスタリング手法) 2.1. クラスタ集合の中から,類似度が最大となるクラスタの組 C,D を求める 2.2. C,D の類似度がある閾値以下ならば,クラスタリング終了 2.3. クラスタ C,D を統合し 1 つのクラスタとし,繰り返す 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 11 潜在的意味解析 (LSA) LSA: Latent Semantic Analysis トランザクション 情報検索 (Information Retrieval) の分野で用いられる, ベクトル空間モデルに基づく手法 LSA の効果 コミットログ・変更内容 (差分) に 文書間の類似度がより鮮明になる 出現する単語 間接的に関連している文書間の類似度も高くなる LSA を用いた文書間の類似度計算 ベクトル空間モデルにおける文書間の類似度計算 単語 A 単語 B 単語 C 単語 D 文書 1 2 2 0 0 文書 2 3 1 1 0 文書 3 0 1 1 0 文書 4 0 0 2 1 2007/02/19 3.2 2.1 0.4 ベクトル (文書ベクトル) LSA 適用 間の cosine2.2尺度により, 1.6 0.6 文書間の類似度を求める -0.3 0.2 0.7 0.5 0.7 0.7 -0.1 0.2 2.5 2.8 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 ベクトル (文書ベクトル) 間の cosine 尺度により, 文書間の類似度を求める 12 発表構成 版管理システム 問題点と本研究の目的 提案手法 適用事例 まとめと今後の課題 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 13 適用事例 本手法により関連のある変更群が抽出できるかを確認する 適用対象: ソフトウェア部品検索システム SPARS-J† 開発期間 2003 年 3 月 ― 2006 年 1 月 開発言語 C/C++ 総リビジョン数 2795 総トランザクション数 834 総ファイル数 345 クラスタリング終了のための類似度閾値: 0.8 ⇒ 複数トランザクションからなるクラスタ数: 116 † 横森,梅森,西,山本,松下,楠本,井上: ”Java ソフトウェア部品検索システム SPARS-J”, 電子通信情報学会論文誌 D-I, Vol.J87-D-I, No.12, 2004 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 14 適用方針 複数のトランザクションからなるクラスタに関して,その トランザクション間の関連により,以下の 7 つに分類 欠陥修正 リファクタリング 共通の目的 クラスタ内のトランザクションを 同時に参照することが ある変更と,その箇所のリファクタリングのための変更 望ましいと考え,有用と判断 ある変更と,その欠陥修正のための変更 ある変更と,それと共通の目的を持つ変更 影響波及 ある変更と,その影響が波及したための変更 変更取り消し ある変更と,その変更を取り消すための変更 その他の関連 上記以外の何らかの関連.仕様変更,マージ,等 無関係 トランザクション間に関連が無い 有用でないと判断 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 15 適用結果 複数のトランザクションからなるクラスタに関して,その トランザクション間の関連により,以下の 7 つに分類 欠陥修正 リファクタリング 共通の目的 33 (28.4%) 10 (8.6%) 14 (12.1%) 影響波及 2 (1.7%) 変更取り消し 5 (4.3%) その他の関連 28 (24.1%) 無関係 24 (20.7%) 計 116 (100%) 2007/02/19 計 64 クラスタ (55.2%): 有用なクラスタを抽出できた コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 16 「欠陥修正」分類のクラスタの一例 3 つのトランザクション からなるクラスタ (抜粋) • データベース操作時に必 要な比較関数の定義 トランザクション 変更 SPARS/src/DB/db_common.c (2004/08/25) +u_int8_t *ai; +ai = a->data + a->size – 1; … (省略) … 1. 変数 ai は u_int8_t * 型と宣言 2. キャストを行うよう修正 3. キャストが間違っていたた め更に修正 比較関数の欠陥修正に 関連のある変更集合を 抽出できた 2007/02/19 SPARS/src/DB/db_common.c (2004/12/14) -ai = a->data + a->size – 1; +ai = (u_int8_t)a->data + a->size – 1; SPARS/src/DB/db_common.c (2004/12/14) -ai = (u_int8_t)a->data + a->size – 1; +ai = (u_int8_t *)a->data + a->size – 1; コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 17 考察 関連のある変更群を含むクラスタを生成できた 識別子を共有している 変更内容が似ている 関連のない変更からなるクラスタも生成された avoid, files, version 等の単語のみを共有している 仕様変更により,変更箇所がインデントされている 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 18 発表構成 版管理システム 問題点と本研究の目的 提案手法 適用事例 まとめと今後の課題 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 19 まとめと今後の課題 版管理システム中に蓄積された,関連する変更のクラ スタリング手法を提案 変更内容に出現する単語に着目 実際のソフトウェアに対して適用 単語に基づく手法の有用性・問題点を確認 今後の課題 単語の抽出・除去手法の確立 閾値決定方法の確立 定量的な評価 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 20 終わり 2007/02/19 コンピュータサイエンス専攻 修士論文発表会 Software Engineering Laboratory, Department of Computer Science, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University 21
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