鈴木猛康・秦康範・佐々木邦明・大山勲 総合化学専攻 30016016 坂内佑紀 中央防災会議(2003)で災害対応業務を支援し、情報 の共有化を図る手段として防災情報システム導入の 必要性が指摘され、中央省庁はもちろん、都道府県 や市町村でも防災情報システムの導入が進みつつあ る。 災害対応の最前線であり、情報共有による的確な判 断が被害の軽減に直結する市町村では防災情報シ ステムの導入が拡大しつつあるものの、そのスピード は極めて遅い。 防災情報システムは、地方自治体の災害対策本部ができ るだけ多くの災害情報を早期に発見することにより、的確 な災害対応を迅速に行うことを目的としている。しかし、シ ステムを有効に活用するためには情報提供者である住民 が十分な訓練を受けている必要がある。 地域防災力の向上を支援する 「住民・行政ユビキタス減災情報システム」を構築 特に、地域コミュニティの情報システムである地域防災SNSが中心である。 山梨県は、平成25年10月ま でに防災拠点を整備し、運用 を開始することを目指している。 これに伴い、住民・行政協働 による地域の減災活動を支援 する有効な情報共有ツールと して住民・行政協働ユビキタス 減災情報システムを構築していく。 下位から上位への一方向の報告ではなく、行政機関間で相 互に情報共有が可能になり、さらに住民と行政とが互いに災 害情報を共有することもできる。 (1) 地域防災SNSの概要 地域SNS : •行政により運用される信頼性の高いウェブを用いたコミュニ ティサイト •特定地域を対象とし、リアルな地域社会と連動して情報提供 サービスを行う 地域防災SNS: •住民と行政が協働するためのツール •いつでも、どこでも、誰でも災害情報を共有できる環境を提供 する (2) 地域コミュニティ単位のコミュニティ設定 地域防災SNSのコミュニティ=地域コミュニティ 地域防災SNSのユーザー =地域コミュニティ内に居住する住民とその 家族 ID パスワード 世帯主 地 域 防 災 S N S 地域外の家族 (3) 平常時利用に対する対処 災害情報システムが災害時に使われるためには、そ のシステムが平常時から使われていることが必要不 可欠な条件とされている。 平常モード ・自主防災活動支援のための基本的な機能を提供 ・電子かわら版の回覧 ・防災map閲覧 など (4) 安否確認と世帯情報登録 2度のワークショップの後、行政職員立会いの下、災 害時並びに平常時における個人情報の取り扱いに関 する会合を開催した。 会合の結果、全世帯が情報登録を行うこと、登録する 情報項目は各世帯の判断に任せることが決定された。 (5) 市町村との連携 地域防災SNSは、住民が市町村と双方向の情報交換 を可能とする機能を有することを特徴としている。 例 Google Map上で被害情報を共有 など (6) ユビキタス環境への対応 通信ツールとして携帯電話、携帯ゲーム機の使用が 可能である。 中央市の公民館より半径100Kmの範囲で無線LAN を使った山梨大学の地域防災SNSサーバーへのアク セスが可能である。 (7) 平常、訓練、実災害モードの設定 普段→平常モード 災害時→災害モード 事前訓練⇒訓練モード 家族の情報しか見られなくなる状態 災害時のほう自治体の対応活動を支援する庁内情報 共有システム 新潟県見附市の協力を得て開発、現在は同市で試験 運用中 本研究では、この災害対応管理システムの基本仕様 を変更することなく、組織の未山梨県市川三郷庁並び に中央市に適応させ、両市の町内情報共有システム として開発した。 体制配備指示、避難情報発令など緊急情報 地域防災SNSを通して市民へ情報が伝達される。 「災害対策本部の指示」情報は、情報共有データベースに登 録される。 地域防災SNSは一定の時間間隔で新規登録された情報を サーバーに転送する。 転送された「災害対策本部の指示」情報は、地域防災SNSの 災害情報として住民に閲覧される。 (1) 訓練の目的と概要 市川大門六丁目防災会 東海地震を想定した防災訓練 地域コミュニティの減災体制の有効性を検証する 実験では、 1. 地域防災SNSを用いて住民が町からの情報を入手し、対応でき たこと 2. 地域防災SNSを用いて住民が町へ支援を要請し、その結果、町 が災害情報管理システムを情報共有のツールとして住民の要請 に応えることができること の二点を以て、システムが有効であったと評価することにし た。 (2) 防災訓練の結果 参加者: 実証フィールドの防災会を構成する全4組 のうち、3つの組のすべて 合計33世帯 (3) 評価実験の結果 防災訓練を行った1時間30分の間に、多くの対応と 情報共有が行われた。 住民は市川三郷町災害対応管理システムの指示情 報を受け取って安否確認を組織的に行い、救助活動 を行った。 町は住民からの救援要請を受け取り、災害対応管理 システムを有効に活用した情報共有によって要請に 応えた。 住民・行政協働ユビキタス減災情報システムの 有用性を検証できたことを確認した。 (1) トリアージ訓練の目的と概 要 平成20年5月、山梨大学医学部 付属病院で実施されたITトリアージ 訓練 負傷者の情報を災害対応管理シ ステムに病院から登録することに より、市町村名が不明の負傷者 のトリアージ結果も表示するよう にした。 (2) トリアージ訓練の結果 病院関係者約450名 が参加 その他、市から5名 地域住民から5名 ITによるトリアージの 円滑化 訓練後、参加者が世 帯情報登録のメリット を実感したことが報告 され、住民・行政協働 ユビキタス減災情報 システムの有効性を 確認することができた。 ① ② ③ 住民・行政協働の住民向けの情報受発信ツールである地域 防災SNS ならびにその運用方法は、以下のような特徴を有 する。 地域コミュニティ単位でコミュニティを形成し、参加者を地 域住民に限定するSNSである。 地域コミュニティを構成する全世帯がコミュニティに参加す ることを原則とするSNSである。そのため、人間関係を豊 かにし、地域コミュニティの結束力を高める事前活動を必 要とする。 地域コミュニティの減災を可能とするため、世帯情報として 同居家族、地域外の家族(緊急連絡先)の個人情報項目を 事前に登録する。ただし、登録する情報項目は各世帯の 判断に任せる。 ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 平常時に使用される地域SNS上に構築されたソーシャル・ ネットワーキング・サービスである。 平常モードと災害モードを有しており、平常時は普段の地 域防災活動支援ツールとして、災害時は減殺のための情 報共有ツールとして使用する。 市町村の災害対応管理システムとシステム連携させ、災 害対応管理システムと連動したモードの切り替えが可能で ある。 災害モードにはさらに訓練モードを有しており、防災訓練 に活用できる。 市町村の災害対応管理システムと双方向で情報伝達が可 能であり、病院等の公共機関との情報システム連携が可 能である。 住民主体、かつ行政との双方向の情報伝達を可能とする防災情報システムはこれま で例を見ない。 この地域防災SNSの開発により、初めて住民・行政協働の 減災情報共有が可能になった。 災害時の情報過多を解決する手段として有力と期待されている。 ただし、 地域防災SNS を用いて住民が適切な対応を行うため には、地域コミュニティにおける住民の防災意識醸成、 活発な自主防災活動が不可欠である。 地域の結束がまだ乏しい地域への研究成果の展開、地域コ ミュニティの防災力向上等、まだ課題が多く残されている。
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