サンテクノ技術セミナー 高周波技術入門 講座テキスト その9 平成18年11月17日 9.電磁適合性 電気機器などが備える電磁的な不干渉性およ び耐性をいう。電磁両立性とも言う。 電磁的な不干渉性:ある機器の動作によって他の 機器の動作を阻害したり、人体に影響を与える一定 レベル以上の干渉源となるEMIを生じないこと。 電磁的な耐性:付近にある電気機器などから発生 する電磁波などによって、自身の動作が阻害されな いEMSを持つこと。 EMI:電磁干渉(Electro Magnetic Interference) EMS:電磁感受性(Electro Magnetic Susceptibility) 9.電磁適合性 携帯電話による脳 への影響(右図) 9.電磁適合性 EMC設計 近年のEMI規制強化と電子機器のマイコン・クロッ ク周波数が高くなる状況では、設計段階でのEMC 設計の盛込みが重要。 EMC設計方法に関しては特に規定化された設計 手順書等は無く、設計者各人の能力とノウハウに 依存している。 9.電磁適合性 (1) PCB設計 ポイント パターンがアンテナを構成していないか。 共振周波数の1/4波長の奇数倍で共振(片端接地) 共振周波数の1/2波長の整数倍で共振(両端接地) 共振した導体のQファクターが大きいほど、放射効率は高 くなる 共振した導体の特性インピーダンスが大きい程、放射効 率は高くなる パターンが”見えない結合経路”を構成していない か。 9.電磁適合性 具体的設計方法 PCB材質の誘電率が大きいものを選び、P CB配線の特性インピーダンスを下げる PCB厚みを薄くして、PCB配線の特性イン ピーダンスを下げる 筐体へのアースポイント数を増やして共振 周波数を高い周波数に追いやる 筐体とPCBの間に誘電体を充填し、筐体か らみたPCBグラウンドの特性インピーダンス を下げる 9.電磁適合性 (2) 部品選定 ポイント 部品選定基準の第一はその構造・寸法 インピーダンス素子のQの最適化 表面実装部品は、外部との電磁的結合が小さい トランス・コネクター端子・リレー等PCB表面から飛び出し た構造の部品は、外部との電磁的結合が大きい Qが大きいと素子上にQ倍の高周波電圧(電流)が生じる IC等スイッチングデバイスのスイッチングスピード 不要な高周波エネルギーの発生を抑えるため、必要以上 のスイッチングスピードのデバイス使用は避ける 9.電磁適合性 具体的方法 EMCの観点から見ると、使用部品は極力表 面実装部品にすべき 表面実装部品以外の部品を使用する場合 抵抗追加によるQの低下させる 低Q部品の採用する 部品配置の工夫する 高周波シールド付き部品の採用 IC等は、機能上必要なスイッチング速度以 上のスピードを有する部品の採用は控える 9.電磁適合性 (3)部品配置・プリント配線 ポイント 通常プリント基板は、電磁シールド効果のある筐体 中に置かれるため、主なEMCの伝播経路はコネク タ等の外部インターフェース部である コネクタは構造上、端子により一度空中に飛出して いるため、特性インピーダンスが高く特に結合し易い CPU等のICは、チップの内部配線から電磁エネエ ルギーを放射するため、まず遠ざける事が先決 配線は、基本的にはなるべく短くする 9.電磁適合性 具体的方法 突出部品は、コネクター端子から出来るだけ 遠避ける 距離が取れない場合はシールド板を追加 CPUチップは、なるべく距離を置く 配線は、太く・短く(特性インピーダンスを下 げる) 配線間の結合を最小にするには、互いに直 交させるか又はなるべく間隔を大きくする 9.電磁適合性 (4)筐体設計 ポイント EMCに最適化設計されたPCB単体であっても、P CBが直接高周波強電界にさらされるモードがある 場合は、誤動作・損傷を生じる 電磁シールドは、基本的には導体でPCB全体を覆 う構造 導体は物理的に連続である必要は無く、電気的に 連続であれば問題ない 筐体の「穴」は電磁波の通り道。但し、一般的に使 用周波数の1/10波長以下の場合は無視できる 9.電磁適合性 具体的方法 筐体は、良導体であること コネクター等の「穴」は最小にすること 筐体から外部へのグラウンドの長さは最短 であるべき 長さの許容値は当該周波数の1/10波長 以下が目安 9.電磁適合性 (5)配線設計 ポイント 低周波*でのケーブルのシールドは、信号回路が1点 接地なら1点で接地 *)1MHz未満、又はケーブル長が波長の1/20の場合 高周波配線ではシールドは、多点接地 R ノイズ電流 ループ 多点接地すると 9.電磁適合性 信号源 VS A 受信回路 C1 C2 C3 B D C VG1 VG2 ・A点で接地: 信号源が非接地のため、全く効果なし ・B点で接地: Vノイズ=C1/(C1+C2)×(VG2-VG1) ・C点で接地: Vノイズ=0 ・D点で接地: Vノイズ=C1/(C1+C2)×VG1 9.電磁適合性 信号源 VS VG1 A 受信回路 C1 C2 C3 B D C VG2 ・A点で接地: Vノイズ=0 ・B点で接地: Vノイズ=C1/(C1+C2)×VG1 ・C点で接地: 受信回路が非接地のため、全く効果なし ・D点で接地: Vノイズ=C1/(C1+C2)×(VG1+VG2) 9.電磁適合性 具体的方法 信号源 VS 信号源 VS 信号源 VS 信号源 VS シールド付ツイスト ペア・ケーブル シールド付ツイスト ペア・ケーブル 同軸ケーブル 同軸ケーブル 受信回路 受信回路 受信回路 受信回路 9.電磁適合性 シールド効果(50kHzにおける測定例) 9.電磁適合性 誘起電圧の計算 サージ電流による誘起トランジェント電圧 2×10-7RL d+(OD-OC) Lt V = As・l・ln ・ Rs+R d l L L Rs:被害側のソースインピーダンス[Ω] RL:被害側の負荷インピーダンス[Ω] l:並走長さ[m] d:ケーブル間距離[m] As:サージ電流変化率[A/sec] OD:被害側単線外形寸法[m] CD:被害側単線銅線直径[m] Lt:被害側ツイストピッチ[m] 9.電磁適合性 誘起電圧の計算 パルス電流による誘起トランジェント電圧 R Lt V (n) =φ(n)・ ・ Rs+R +Rw l L L L Rs:被害側のソースインピーダンス[Ω] RL:被害側の負荷インピーダンス[Ω] Rw:被害側DC抵抗算出値(次ページ計算式による) [Ω] Lt:被害側ツイストピッチ[m] Φ(n):鎖交磁束算出値(次々ページ計算式による) [A] 9.電磁適合性 被害側DC抵抗算出式 4ρl Rw = CD2π ρ:被害側単線DC抵抗率[Ω/m] l:並走長さ[m] CD:被害側単線銅線直径[m] 9.電磁適合性 鎖交磁束算出式 φ(n) = 2×10-7ω(n)・I(n)・l・ln d+(OD-OC) d Sin[πf(n)T] Sin[πf(n)τ I(n) =2A・T・Pr・ πf(n)T ・ ] πf(n) τ l:並走長さ[m] A:パルス電流[A] d:ケーブル間距離[m] T:パルス周期[sec] OD:被害側単線外形寸法[m] Pr:パルスレート[pps] CD:被害側単線銅線直径[m] τ:パルス立上がり/立下り時間[sec] Lt:被害側ツイストピッチ[m] 9.電磁適合性 RFノイズによる誘起電圧 R VL(n) =- L ・jω(n)l(OD-CD)(μ0H+ Rs+R L RsCE) 8.85×10-12π cosh-1(OD/CD) C= H= E/120π Rs:被害側のソースインピーダンス[Ω] l:並走長さ[m] RL:被害側の負荷インピーダンス[Ω] OD:被害側単線外形寸法[m] E:電界強度[V/m] CD:被害側単線銅線直径[m] 9.電磁適合性
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